ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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夏休みの間、色々予定があったので遅くなりました。プロットの構成はしていたので流れは出来ています。
原作ではなかったことの1つ。
勇者VS女神。つまり……。
ではお楽しみください。



22話 勇者VS女神

 突如ウルの町の外壁の周りに出現した11本のダークタワー。

 香織達だけでなく、住民や光輝達も何事かと外に出てきて、すぐに不気味なダークタワーの存在に気が付く。

 町が騒然としていると、ハイベリアを始めとした飛行する魔物が上空を飛び交い始めた。

 しかし、攻撃は仕掛けてこない。代わりにどんどん数を増している。

 その中に、香織は見覚えのある影を見つけ、こっそりと宝物庫から単眼鏡を取り出した。当然、アーティファクトで望遠機能だけでなくサーモグラフィーや暗視機能などがある。それを使って見かけた影を拡大する。

 

「あれってプテラノモン?」

 

 プテラノドンのような姿だが、両翼の下には戦闘機のようなミサイルが装備されている。

 香織はその姿に知っているデジモン、プテラノモンの姿を想起した。だが、よく見ると知っているプテラノモンと違って肉体がメタリックになっている。

 魔物かと思ったが、あんな肉体が機械的な魔物は知らない。ユエ達と建物の陰に隠れて、デジヴァイスからテイルモンに出てもらい、上空を飛んでいる魔物達を見てもらう。

 すると香織が見つけたのはデジモンだと分かった。デジヴァイスでデータを読み込む。

 

「プテラノモン。X抗体。必殺技は『ビークピアス』と『ネイルコーム』。やっぱりプテラノモン。しかもX抗体デジモンなんてッ」

 

 香織の傍にいたユエが顎の下に指を添えて思案する。

 

「あの時、メフィスモンが連れてきたハグルモン達と同じ。つまり、あれはメフィスモンの手勢の可能性がある。……遂に本気を出してきた」

 

 メフィスモンの襲撃を目にしていたユエはメフィスモンの関与に気が付く。

 

「今の今まで手加減していたのは、やっぱり……」

「勇者が来たからかな」

 

 光輝達の到着について、昨日から感じていた作為めいた感覚に確信を持つ2人。

 そこにテイルモンが香織の服の裾を引っ張る。

 

「不味いぞ香織。防壁の向こうからもデジモンの気配がする」

 

 テイルモンの言葉にハッとする2人。メフィスモンの手勢が上空のプテラノモンだけというのは楽観が過ぎる。

 2人は光輝達に見つからないように、住居の屋根の上を飛び移りながら城壁の上に向かった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 一方その頃、光輝と騎士団の面々は町の上役たちと、町役場の会議室で話し合いをしていた。

 王国最強の騎士団長メルド・ロギンスの率いる騎士団と、神の使徒のリーダーである勇者という、望外の極みといえる援軍を得たことで、昨日までの悲壮感が吹き飛んだ上役たちは、全ての命令系統の指揮権を彼らに明け渡した。

 そのおかげで話し合いはスムーズに行ったかというと、そうではなかった。

 まず光輝とメルドが今後の方針で揉めた。

 

 光輝としては王国の生命線ともいえるウルの町を救いたいと主張し、魔物の軍勢を倒す作戦を提案しようとした。具体的にはこのまま防衛戦を続け、王都からの援軍を待ち、ウルを守り切るというものだ。実は昨日突撃する前に連絡員として早馬を王都へ向かわせており、援軍の要請を出していた。彼らの到着を待って、十分な戦力が揃うまで籠城する。

 

 それに対しメルドはウルの町を放棄した撤退戦を提案した。

 彼も自分達が町には入れたことに作為的なものを感じており、このまま籠城しているのは危険だと訴えた。今朝のダークタワーの出現と上空を飛行する魔物の増加もそれを裏付けていると。

 メルドの提案は一見すると住人の安全を考えているように見えるが、ウルという重要拠点を見捨てるというものだった。さらに光輝は撤退時に住人を危険にさらすし、自分達だって彼らを守るために不利な戦いを強いられると指摘した。もっとも、そのことはメルドとしては百も承知だった。できれば気づかれてほしくなかった。

 何せメルドが撤退戦を提案した本当の目的は、光輝を始めとする勇者パーティーを逃がすことだった。

 

(この町は俺達を、勇者を誘い込む囮にされたかもしれない。ならば、今後の戦争の行く末を担う勇者達は逃がさなければいけないんだが、コウキの正義感と優秀さが仇になったか。魔人族め。まさかコウキの性格をどこかで知って作戦を立てたか? とすると……内通者がいることになるぞクソッタレめ!!)

 

 突入前と同じように、話し合いの空気が光輝の作戦に流れるのを感じながら、メルドは最悪の可能性に辿り着く。

 だが、彼はここでそれを言えない。もしも言えば話し合いはさらに混沌とする。内通者がそれに乗じて新たな動きを見せるかもしれない。

 それを阻止するためには、内通者の可能性を出さずに何とかウルの町から撤退する流れに持っていかなければならない。

 しかし、そんな腹芸はメルドにはできない。彼はどちらかと言えば探り合いよりも、シンプルな力比べを好む人間なので、言葉で言いくるめるという事を苦手としており、どうすればいいのか見当もつかなかった。

 昨日話し合いをしていた龍太郎も同様で、メルドの考えを察して何とか光輝に撤退戦をさせられないか頭を捻るが、何も思いつかなかった。

 

「では徹底抗戦です。必ずこの町を守り切りましょう!」

「「「おおおお!!!」」」

 

 そうこうしているうちに光輝が話し合いをまとめてしまった。もはや彼らはこのウルの町で戦うしかない。

 

「すみません。戦うにあたってもう一つやらなければいけないことがあります」

「何でしょうか? 勇者様」

 

 光輝が町の町長を呼び止める。

 

「畑山先生を呼んでくれませんか? 確か、豊穣の女神と呼ばれていたはずです」

「アイコをですか?」

「ええ」

 

 光輝の言葉に神殿騎士隊の隊長であるデビッドが声を上げる。

 この場には愛子は来ていなかった。彼女はカウンセリングをしていた生徒達の所で状況の説明をしながら寄り添っている。

 

 程なくして愛子が呼ばれて会議室に入ってきた。傍には優花もいる。

 再会を喜びつつ、光輝は愛子にあることを要請した。

 それは防衛戦に愛子が連れてきた生徒達を参戦させるという事だった。

 

「そんなこと認められません!!!」

 

 愛子は断固として断った。

 当然だ。

 彼女が連れてきた生徒達は魔物との闘いで心に傷を負っており、そのカウンセリングの為に連れ出した。中には雫のようなPTSDに陥る一歩手前の生徒もいる。

 それなのに魔物の軍勢との大戦なんてさせられない。

 

「エヒト神から力を授かっているんですよ。今こそ、過去を乗り越えてこの世界の為に戦う時です!」

 

 光輝が熱弁をふるう。この場にいる町の上役や騎士団員の幾人かも光輝の言い分に首を縦に振る。彼らからしたら、エヒトからの力を授かった使徒でありながら、戦いに恐怖している生徒達は、神からの使命を放棄した背信者のようなものだ。今までは内心に秘めていた思いが、危機的な町の状況に加え、使命に邁進する光輝との比較によって浮き彫りになってきた。

 やり玉に挙げられた優花に鋭い視線が向けられ、彼女は顔を青くしながら一歩下がる。

 そんな優花を愛子は背中に庇う。

 

「精神的な傷を乗り越えるのは他人が、天之河君が決めることじゃありません! 当人がゆっくりと自分と向き合っていくことなんです! ただでさえ最近の戦いでみんなに負担がかかっているのに、この上戦わせるなんて許しませんよ!!」

 

 周囲の空気をものともせず、光輝に言い返す。

 その様子は彼を勇者としてではなく、自分の生徒の1人として叱りつける様だ。

 見方によっては、光輝を勇者というフィルターを介さずに見てくれる貴重な存在ともいえるだろう。さらに言えば、愛子はハジメ達からこの世界の神の正体を聞いている。だから、エヒトが力を与えた理由も、人間族を救うという崇高な目的ではなく、単なる暇つぶしであると知っている。そんなことの為に教え子たちを危険にさらすなんてもってのほかなのだ。

 だが、勇者の使命に燃える光輝にとっては、愛子は話を聞いてくれない頑固な先生でしかない。

 2人の話は平行線をたどり続ける。そこでふと光輝は昨晩到着したばかりでバタバタしていて聞けなかったことを問いかける。

 

「雫……。雫はどうしているんですか? 昨日から姿を見ていない。まだ傷ついているなら会わせてください。俺なら絶対に雫を立ち直らせてみせます! そうすれば一緒にこの状況を乗り越えるために戦ってくれます!!」

 

 自分が困っていたらいつも助けてくれた雫の名前を出す光輝。幼馴染としての経験から雫なら立ち直れば自分を助けてくれるはずだと。

 だが、雫の名前を聞いた愛子と優花は顔を曇らせる。

 2人の様子を訝しんだ光輝に、事情を知るデビッドが声をかける。

 

「シズクというものは一週間前に行方不明になった。冒険者と天使様もいなくなったから、もしかしたらあの冒険者が攫ったのかもしれん」

「何だって!?」

 

 勝手な憶測を話すデビッドの言葉を真に受けて、激昂する光輝。冒険者とはシア、天使様はエンジェモンの事だ。

 

「デビッドさん勝手なことを言わないでください!!」

「だがアイコ。状況から見て姿を消したあの冒険者が怪しい。所詮冒険者など根無し草の粗暴者がほとんどだ。この町の危機に2人も姿を消している。残っているあの二人とて、いつ逃げ出すものか……」

 

 バチンッ! 

 あんまりな言い方に愛子はデビッドに平手打ちを喰らわせた。

 目を白黒させるデビッド。出会ったばかりの冒険者の為になんでここまで怒るのか、理解できなかった。まさか貶した冒険者たちが、変装した愛子の教え子だとは思いもしないだろう。

 

「いい加減なことばかり言わないでください!! 私は彼らを信頼しています。絶対雫さんを見つけて連れ帰ってきてくれます!!」

 

 デビッドに言い返した愛子は今度は光輝の方を向く。

 

「天之河君もです! 八重樫さんを心配するのはいいですが、それが戦う事前提というのはどういうことですか! あの傷ついた八重樫さんを知っているなら、戦いに出そうなんて絶対に思ってはいけません! それが幼馴染を本当に思うという事です!!」

 

 愛子のあまりの剣幕に、いつかの王宮のように光輝は気圧される。

 あっという間に愛子によって会議の流れは持っていかれた。

 そこに誰かが会議室の扉を開けて入ってきた。

 

「……ん? 何この空気」

 

 入ってきたのは冒険者アルテこと、変装したユエだった。

 香織達と防壁の外の様子を偵察した結果を伝えるためにやってきたのだ。

 なぜユエが来たのかというと、光輝を目の前にすると香織が冷静に慣れないから。それとユエならば光輝の熱弁に浮かされた空気であっても、吸血鬼の国の元王女の経験から場の流れを変えることが出来る自信があったからだ。

 実際にユエはそれまでの空気をものともせずに、自分が持ち帰った情報を伝える。

 

「今の魔物の軍勢の様子を見てきた。控えめに言って……絶望的」

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 同時刻。ウルの町の教会でもピッドモン達デジモン達が話し合いをしていた。

 内容は勇者と騎士団の目があるせいで大っぴらに動けない彼らは、これからどうすればいいのか。

 そこに防壁の外を偵察してきた香織とテイルモンが入ってきて、会議室と同じように外の様子を伝えてきた。

 

「軍勢が今までにない規模で集結しているのですか」

「しかもその中にデジモン多数とはねえ」

 

 ブランとノワールのシスタモン姉妹が苦々しく呟く。

 

 防壁の外には今まで以上の魔物の軍勢が集結していた。

 その数──約10万。

 四方八方、そして上空を完全に包囲していた。

 さらにその中に魔物に比べれば数は少ないが、100匹ものデジモン達が混ざっていた。

 

「アロモンにクワガーモン。ティラノモンとダークティラノモン。しかも全部X抗体とやら持ちなんだろう?」

「見た限りではな。もっと小さいデジモンなら足元に隠れて見えないから、わからないな」

「地下っていう線もあり得るぜ。ハグルモンとかそうだったんだろ?」

「ありえるな」

 

 マミーモンが香織とテイルモンが見つけたデジモンを整理する。

 どれも強力なデジモンで、しかもX抗体で強化されている。

 デジモン達が人目を気にせずに力を振ったとしても数に押しつぶされる戦力だ。

 

「はあ。これどう見ても詰みだろ。逃げるなら俺が車を運転しようか?」

 

 マミーモンがニヤニヤと嗤いながら提案する。

 流石は元悪役。似合いすぎる表情だった。

 

「それもありだけど、最低限出来ることはやるべきだと思う」

 

 香織はそう言うとピッドモンの前に立つ。

 

「ピッドモン。お願いがあります」

「なんだ? 私にできることならば全力を尽くそう」

 

 絶望的な戦いに臨むために、各々が動き始めた。

 




〇デジモン紹介
プテラノモン(X抗体)
レベル:成熟期
タイプ:翼竜型
属性:データ
“愛情のデジメンタル”のパワーによって進化した鋼鉄の翼を持つアーマー体の翼竜型デジモンのプテラノモンがX抗体によって覚醒した姿。プテラノモンが滞空する高高度1万メートル上空に達することのできるデジモンがいまだに存在しないことから、プテラノモンはプテラノモンとの戦いを余儀無くされ、空対空の戦闘能力、機動力を持つに至っている。これは低空での飛行能力の向上も意味し、超低空で最高スピードを出しながらも敵の姿を逃すこと無く、鋭い足の爪で敵を切り裂く必殺技『ネイルコーム』を身に付けている。また、最大速度を出す際は両足を体の中に収納して抵抗を減らす。必殺技の『ビークピアス』は上空から垂直落下し、その鋭い鼻先で敵を射抜く技で、どんなに厚い装甲でも貫き正確無比に敵のデジコアを破壊する。



召喚時の説明回くらいしかなかった、光輝と愛子の対立を書いてみました。
原作でもどこかで何かがかみ合えば、2人の意見って正反対ですから、言い合いになってもおかしくないと思いました。
対立の結果は、女神の勝利ですね。
もっとも、その後かなり絶望的な状況が知らされましたが。
次話は遂に戦いが始まります。
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