ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

98 / 107
感想・評価・お気に入り登録ありがとうございます。

大変お待たせいたしました。まさかこんなに忙しくなるとは思わなかったです。次回はもっと早く書き上げたいです。

原作ではさらっと流されたウルの戦闘ですが、今作では長くなると思います。プチ戦争ですからね。


23話 開戦

「無理だ!! 撤退するしかない!!!」

 

 メルドが大声で叫ぶ。

 ユエから伝えられた情報。10万に膨れ上がった魔物の大群によって町が包囲されつつあるという最悪の状況に、メルドはそれまでの会議の流れを無視して撤退一択だと断言する。

 何せこちらの戦力は勇者と神の使徒である勇者パーティーに、騎士団の精鋭を含めても100人にも届かない。

 10万に対してたった100人ではなす術もない。

 質が良くても圧倒的な数に飲み込まれるしかないと誰でもわかる。

 さっきまで光輝の町を守るという言葉に賛同していた者達も、一様に顔を青くしている。

 

「でも、それじゃあ町やここの人たちを見捨てることに!」

「それでもだコウキ!!」

 

 自分達が撤退するという事はウルと住人を見殺しにすることだと理解している光輝は、反対しようとする。だが、メルドは彼の肩を掴むと歯を食いしばりながら言い聞かせる。

 

「お前達勇者は人間族の唯一の希望なんだ! こんなところで失うわけにはいかないんだ! 例え、この町を見捨ててでも、生きなければいけないんだ!!」

「そ、そんな。町を見捨てるなんて、そんなひどいことしちゃいけない。きっと何とかする方法が「何ともならない! これが戦争なんだよ!!」ッ!?!?」

 

 メルドの言っていることが受け入れられない光輝は反論するが、メルドに怒鳴り返される。

 

「俺達は勝たないといけない。勝たないと人間族は魔人族に滅ぼされる。それを止められる唯一の希望はお前達なんだ。お前達が育つまで護り抜くことこそが最優先事項なんだよ。それが俺の役目なんだ」

 

 メルドはそこまで言うと、顔を俯かせてまるで詫びる様に言葉を再び紡いだ。

 

「すまないコウキ。俺はお前達に辛い思いをさせると分かっていたんだ。わかっていてここまで連れてきたんだ。いつか経験する戦争がどんなものなのか、見せるために。でも、俺の見通しが甘かったせいでこんなことになっちまった。もう、この町は助からねえ」

「そんな……そんなこと」

「覚えておくんだ。これが、戦争だ」

 

 もう一度反論しようとする光輝だが、メルドに気圧されてしまう。

 

「もう一度言う。この町は助からねえ。そして、今のお前達がやるべきことは何が何でも生き残ることだ。例え、この町や俺達騎士団を見捨ててもだ」

 

 メルドの言葉に会議場の空気が重くなる中、徐にユエが身に着けていたペンダントを外した。

 するとそれまでどこにでもいる町娘という風貌だった冒険者アルテの姿から、絶世の美少女であるユエの姿になった。

 変装用のアーティファクトを外したのだ。

 その場を支配する圧倒的なユエの美貌に、重かった空気は一瞬で飲み込まれ、誰もが魅入られる。

 全員の注目が集まったところで、ユエは鈴が鳴るような美声で話しかける。

 

「住民を逃がしつつ、撤退する作戦がある」

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 外に出たユエを追いながら光輝達は色々彼女に質問を投げかけるが、彼女は何も答えない。それでもついてきたのはユエの事を知っていた愛子と優花が何も言わずに付いていくからだった。

 そして、彼女は街の教会前にやってきた。するとユエに付いてきた面々は驚いた。

 教会の前には巨大な穴が出来ていたのだ。

 入り口は斜め下に続いており、少し急だがスロープのようになっている。

 その中に町の住人が続々入っている。

 

「この穴は一体何なんですか? 今朝はこんなものなかったですよね?」

 

 愛子がユエに聞く。

 

「こんなこともあろうかと、作っておいた脱出路」

「脱出路!?」

『!?』

 

 ユエの答えに驚く愛子と他の面々。

 ユエと香織はこの防壁と結界以外にも色々手を打っていた。

 この脱出路もその一つ。元々は脱出路ではなく、一時的に避難するためのシェルターを錬成魔法のアーティファクトで作っておいた。

 それをさらに掘り進めて脱出路に改造した。

 この脱出路は完成しておらず、今現在も掘り進めている最中だ。

 通路の最深部では巨大な車両が、先端に取り付けた巨大なドリルを回転させて猛スピードで地中を掘り進んでいた。

 

「まさかこの車にこんな機能があったなんてなあ」

「いったいどこまで用意しているんだかねえ。あのハジメとかいう人間」

 

 車両の運転席で感嘆の声を出すマミーモン。

 助手席にはシスタモンノワールが同意する。

 彼らが運転している車両はもちろんアークデッセイ号だ。

 車両の前方で地中を掘り進んでいる巨大なドリルは、ハジメが用意していた機能拡張用のオプションパーツのアーティファクト。錬成魔法の効果に特化しており、どんな岩盤でも変形させて掘り進むことが出来る。実際に掘削しているわけではなく、錬成魔法で変形させているので、音も静かだ。

 

 敵の戦力を見た香織とユエは町から脱出するしかないと判断。

 ハジメが愛子に渡したのと同じアークデッセイ号のキーを使って車両を動かし、さらに宝物庫からオプションパーツのドリルを取り出して装着。用意していたシェルターに突っ込ませて通路の作成作業を開始したのだ。

 その頃には起床した住人達が外に出てきた。香織は彼らを集め、脱出路の事を説明して、逃げるように促した。

 

 だが、住人達はそれを拒否した。

 

 原因は勇者だ。エヒト神に遣わされた勇者ならば、町を守ってくれると信じている彼らは逃げる必要は無いと口を揃えて言い、逃げようとしなかった。

 

 とはいえ、香織もそれは予想していたことだった。だから香織は勇者と同等、もしくはそれ以上の信頼を寄せられている存在に、助力を請うたのだ。

 

「聴くのだ! ウルの町の住人よ!」

 

 エヒトからの遣いと勘違いされているピッドモンが、香織の光魔法によって体を光り輝かせながら、住人達の前に現れて声を張り上げる。

 

「勇者はそなたらの身を案じておる。エヒト神も同様である。町を捨てたくないというそなたらの気持ちは神の届いておる。しかし、そのせいでそなたらが傷つくことに心を痛めておるのだ」

 

 ウルの住人、ピッドモンの言葉に胸を打たれる。神と勇者はそこまで自分達の身を案じていたのかと。

 

「そんな勇者や騎士達がもしも町に残ったそなたらが危険にさらされればどうなると思う? 必ずや自分達の身を盾にするだろう。だが、それでは魔人族の思うつぼなのだ」

 

 ハッとする住人達。確かに、そこまで自分達を気にかけている神と勇者ならば、と思い至る。

 

「勇者がその力を存分に振るえる様に、今は町を離れるのだ。例え町が破壊されようとそなたらならば必ずや復興できる。それこそがそなたらのできる勇者への至上の献身である。以上が私よりそなたらに伝えられる神のお言葉だ」

 

 そうして、住人達は避難することを決めた。

 地中を移動する魔物やデジモンがでてきたときに備えて、ピッドモンとシスタモンブランが先導となって、避難準備のできた住人から脱出路の中に入っていった。

 

 脱出路の出口は北山脈の麓だ。普段は魔物が跋扈する危険地帯だが、今はそこに住んでいる魔物達は、魔人族達の手によって軍勢に加わっているため、逆に安全地帯になっている可能性が高い。

 

 これで住人達を逃がす目途が立った。

 

「で、この後の段取りはどうなのさ?」

「とりあえずこの車を隠す。で、天使様たちが住人を連れてくるのをこっそり監視だな」

 

 ノワールの質問に答えるマミーモン。

 監視するのは出てきた住人達の安全を守るためだけではない。

 元々暗黒の勢力の手先になっていた彼には、この襲撃に乗じてメフィスモン達が動いてくることを確信していた。

 奴らがこの一縷の望みをかけた脱出行為を見逃すはずがない。

 そこがアルケニモンを救出するという彼の望みを果たすチャンスだ。そのことを知っているから、ユエは彼にこの役割を任せたのだ。

 

「人、いやデジモンを使うのが上手いやつだ。あの子供達の中にはいなかったタイプだ」

 

 マミーモンの独り言にノワールは何も返さなかった。

 

 2人の会話を運転席の後ろで聞いている集団がいた。

 愛子がカウンセリングの為に連れ出した生徒達だ。

 魔物との闘いに拒否感を持っている彼らは、安全性の高いアークデッセイ号の車内に乗り込んでいた。

 彼らもユエから十万の魔物が迫っていることを知らされており、戦いの気配に震えていた。

 だが同時にこうも思っていた。

 

 ──本当に、このまま逃げるだけでいいのだろうか、と。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 住人達の脱出について説明を受けたメルドと光輝達は唖然とした。

 ユエ達が用意したという脱出路の入り口の大きさは直径で10mはありそうだ。

 地球の重機でも使わないと掘れない。こんなことができるアーティファクトなんて見たことも聞いたこともない。間違いなく国宝級の代物だ。

 驚く彼らに構わずユエは説明を続ける。

 

「全員が逃げたら最後にお前達も逃げる。私とビアンカ(香織)が穴を崩落させて塞ぐ。これで逃げられる」

 

 説明を締めくくった。

 突然用意された脱出路に驚いていた面々だったが、突撃するよりも生き残る確率が高い道が用意されたことを実感し始める。

 さっきの会議では勇者のカリスマと、戦う道しか見えなかったために、籠城戦を覚悟していたが、逃げる道が出来たことでそちらを意識し始めた。

 

 そんな中で難しい顔をする人物が2人いた。

 

 1人は光輝だ。

 住人の命が救えるとはいえ、町を放棄して逃げ出すことは正しいのか疑問を持った。

 自分が奮戦すれば町を捨てる必要もないという考えが離れないのだ。

 そんな彼の考えを親友である龍太郎はすぐに察知して、話しかけた。

 

「光輝。ここは逃げたほうがいいと思うぜ」

「龍太郎。だけど、ここで逃げたら町が無くなって」

「それでも命には代えられねえよ。さっきは逃げる道が無かったから戦うしかないかなって状況だったが、今は道が出来たんだ。町の人たちだけじゃなくて、俺らやメルドさん、アランさん達も生き残れるかもしれないなら、俺はそっちに賭けるぜ」

 

 この世界に来て光輝の補佐に奔走してきた龍太郎は、状況を見る能力が磨かれてきた。

 だから、さっきまでの会議で籠城戦になった時の危険性を実感していた。その選択をしなくて済むのならばと考えて、ユエからもたらされた作戦に賛同した。

 地球では考えられなかった頭を使う彼の姿に、光輝以外の勇者パーティーの面々は級友の成長を垣間見た。

 そして、親友の言葉を受けた光輝は、完全に納得でなくとも、命を守るために賛同した。

 

 光輝以外にもう1人、難しい顔をしていたのはメルドだった。

 彼としては騎士団の最高責任者として、突然現れたユエの作戦に簡単に賛同してもいいのかと悩んでいた。それにもう1つ、彼女の作戦には大きな穴があることに気が付いていた。

 

「(どうするのか問い詰めたいが、住人の避難はもう始まっている。もう作戦は始まっちまっている。だったら何があっても対応できるように俺達が最後尾になるか)わかった。俺もこの作戦に乗ろう。騎士団は全員住人の避難を手伝え!!」

 

 メルドの号令に騎士団の面々が動き始める。

 愛子と光輝達もそれに従い、すぐさま住人達の避難誘導に入る。

 

 そうしてもう少しで全員が脱出路に入ろうかというタイミングで、遂に攻撃が始まった。

 

 町に展開された防護結界に向かって無数の爆発が起こった。

 地上からは魔物達が投石や魔法を放ち、上空からはブレスや爆弾が落ちてくる。

 さらにそこに交じってデジモン達の攻撃も飛んできており、結界が大きな軋みを上げ始める。

 今にも結界が破れそうだ。それを見たメルドは籠城戦は無理だったと悟り、最後の避難を急かす。

 

「早く中へ!」

 

 ユエも結界の様子を注意深く観察する。

 実のところ、結界はすぐにでも崩れてしまう。しかし、それを今この場にいない香織が結界を構築するアーティファクト〝聖十字〟をに魔力を込めながら、ダメージが蓄積して崩壊しないように操作しながら持ちこたえていた。

 

 そして、遂に住人達と騎士団たちが脱出路に入った。

 

「君も早く来るんだ!」

「早く逃げてくださいアルテさん!!」

 

 光輝と愛子がユエを呼ぶ。

 だが、ユエはそれに答えず、彼らに向かって手を突き出して、

 

「〝風撃〟」

「なっ!?」

 

 風魔法を放った。

 咄嗟の事で対応できなかった光輝達は穴の中に吹き飛ばされる。

 全員が入ったのを確認したユエは脱出路を覗き、穴の付近に誰もいないのを確認するとデジヴァイスを掲げて、ルナモンを呼び出す。

 そして、入り口に向かって右手を掲げる。

 

「〝壊劫〟」

 

 脱出路の入り口の上に向けて真っ直ぐにつき出された右手の先に、黒く渦巻く球体が出現する。それはミレディ・ライセンが使っていた重力魔法の1つ。強烈な重力に、急ごしらえだった脱出路の入り口は一瞬で潰され、塞がれてしまった。

 

「ルナモン。誰か巻き込まれた?」

「ううん。誰の心音に異常はないから、大丈夫」

 

 耳を澄ませるルナモンがユエの問いに答える。

 発達した聴覚はユエの魔法に巻き込まれたものがいないことをしっかりと把握していた。

 

 〝カオリ。こっちの準備はできた〟

 〝わかったよ。こっちもそろそろ限界だから思いっきりいくよ! 〟

 

 ユエから念話を受け取った香織は、聖十字を操作して結界を維持から切り替える。

 

「魔力解放!! 〝聖絶・金剛爆破〟!!!」

 

 瞬間、結界が眩い光に包まれて炸裂した。

 

 それがこのウルの町での戦争の開戦の合図となった。

 




〇デジモン紹介
アロモン(X抗体)
レベル:成熟期
タイプ:恐竜型
属性:データ
“勇気のデジメンタル”のパワーによって進化したアーマー体の恐竜型デジモン。恐竜型デジモンの中でもとりわけ凶暴で、同じ恐竜型のティラノモンとは敵対関係にある。強靭な脚力を持っており、頭部を前に倒して水平の姿勢をとることで、猛スピードで走り抜けることができるのもアロモンの特徴である。必殺技は、超高熱の熱風を吐き出す『ディノバースト』。X抗体の影響で、脚力がさらに発達し、大型のデジモンではあるが、小型デジモン並の俊敏性を身に付けている。走るスピードも増したが、この大型のアロモンが飛翔し、飛び掛って敵を捕らえる姿を見たデジモンも多いと言われている。閃光の如く瞬間的に口から放つ超高熱の熱風『ディノフラッシュ』という新たな必殺技を身に付けたのは、自らの俊敏な体に適応した結果である。



今回の話を書いていて何度もプロットを書き直しました。
当初の予定では勇者パーティーと騎士団は残して軍勢に突撃させるつもりだったんですよね。でも流石に一瞬で全滅する展開しか思えなかったので、逃げさせることにしました。
でもユエ達が残って逃げることに勇者がごねると思ったんですよ。そんでユエに無言の腹パンさせるか、時計型麻酔銃を撃たせるかさせようと思ったんです。そこまで書く時間がもったいなかったので、結局吹き飛ばすことに落ち着きました。

他にもアークデッセイ号の新形態。
車体の戦闘にドリルを搭載して猛スピードで掘り進みます。この展開を考えた時、ゴジラVSスペースゴジラを見ていたのは、まあ仕方ないですよね。

ありふれも3期が始まりました。なのにいまだウルとか。遅いなあ、と思いつつアニメに負けないくらい面白い展開を目指して執筆頑張ります。


PS
最近感想で感想数が666件になったのを教えてもらいました。
そしてふと思ったんですよ。
666とはつまり獣の数字……ふむ。そういえばデジモンアドベンチャーで出てきましたね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。