ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
大変お待たせしました。
もう12月。月日が経つのは早いです。
年末で忙しいですが、徐々に更新頻度を上げていかないといつまでたっても完結できない。エタらないようにしないと・・・。
「くそ! 一体どういうつもりなんだ!? まさか、あの人も魔人族──!?」
ユエの魔法で脱出路の奥に吹き飛ばされた光輝は荒れていた。
わけもわからず突然吹き飛ばされ、さらには脱出路が崩落した。タイミングからしてもユエが何かしたのだろう。
彼女の真意が分からずに光輝は邪推を重ねる。ユエも魔人族なのではないかと。かつてから雫達幼馴染が問題視していたご都合解釈が始まろうとしていたが、
「そういうことか。あの嬢ちゃん、貧乏くじを引いてくれたらしい」
「え? どういうことですかメルドさん」
苦虫を噛み潰したようなメルドの言葉に中断される。
「とりあえず、脱出を急ぐぞ。歩きながら説明してやる」
そう言って納得できていない光輝達をまとめて、先に入った住人達の下へ向かう。
住人達も入り口が崩落したことには動揺していたが、メルド達に促されて先を急ぎ始める。
脱出路の中には灯なんていう気の利いた物はないので、何人かの騎士団員が魔法で灯りを灯して、行く先を示す。
そんな彼らの後方を守りながらメルドがさっきの言葉の意味を説明する。
「俺はこの撤退戦に穴があることに気が付いていた。だが、もう避難が始まっちまっていたからそこを指摘して止める時間が惜しかった。それにこれだけ大胆な作戦を考えた嬢ちゃんが、俺程度が気が付く穴に気が付かないはずがないと思っていたからな。何とかする方法があると思ってはいたが……」
「その穴っていうのは一体何ですか?」
光輝が疑問を口にするとメルドではなく、龍太郎が口を開いた。
「あ、そのままになる入り口か」
「正解だ。リュウタロウ」
龍太郎の言葉をメルドが肯定する。
すると、他の勇者パーティーも気が付いた。
「そっか。入り口をそのままにしていたら逃げたことがばれちゃう。穴に入ってきたらすぐに追いつかれる。だから崩して塞いだんだ」
結界師の天職を持つ小柄な少女、谷口鈴の言うとおり、いくら逃げたとしてもその入り口が残っていては、町に侵入されたら逃げた先がばれてしまう。
だから逃げた後の入り口を何とかする必要があった。だから、ユエは入り口を崩落させたのだ。
鈴の言葉に光輝達が納得していく。そこに彼女の隣を歩いていた降霊術師、中村恵里が補足を加える。
「それと、逃げる時間を稼ぐために入り口を崩落させた後も隠さないといけない。そのためには敵の気を逸らす必要がある。あの人は僕達が逃げる時間稼ぎをするために残ってくれたんだ」
「そうだ」
2人の言葉を肯定するメルドに全員がユエの行動の理由に納得した。
だが、それは十万の魔物の軍勢に囲まれた町で孤軍奮闘するという事。助かる可能性は限りなく低い。そのことに光輝が思い至る。
「そんな。だったら彼女ともう一人の冒険者の人が危険じゃないですか!?」
「静かにしろコウキ。騒ぐな」
咄嗟に光輝の口を押えるメルド。
避難していた住人の幾人かが何事かと振り向くが、何でもないと返す。
ここで騒いでは避難に遅れが出る。それではこれまでのユエ達の苦労が水の泡だ。
「いいか。これが戦争だ。味方を見捨てる選択をするときがいくらでも起こるんだ。辛くても飲み込め。最優先事項を忘れるな」
静かに戦争における心構えを語るメルドに、光輝は遂に何も言えなくなった。
それは一緒にメルドの話を聞いていた愛子も同様だった。
いや、彼女の場合は入り口が崩落した時点で、ユエの考えを薄っすら察していた。
社会科教師であった彼女は、地球で起こった戦争の歴史に関する資料に目を通すこともあった。だから撤退戦における殿や足止めの事を知っており、ユエの行動がそれに通じるものと理解できた。
「うっ……くぅ」
こみ上げてくる後悔と罪悪感を必死に押しとどめる。自分達の為にハジメの仲間であるユエを取り残してきてしまった。そして、もしかしたらあの場には生徒である香織も残っていたかもしれないのだ。
(脱出路を作るために先を進んでいるかもしれません。でも、白崎さんならきっとユエさんと残っているかもしれない。私は、生徒を危険な場所に置き去りにしてきたかもしれない!!)
生徒を死なせないために尽力してきた愛子。それでもその手から零れ落ちる生徒が出るかもしれないと、覚悟はしていた。特に光輝を始めとした勇者パーティーは戦争参加を表明しているのだ。自分の下に彼らの訃報が届く悪夢を見ては、飛び起きるという事を何度もしてきた。そのたびに自分の無力さを嘆きながらも、せめて目の届くところにいる生徒は護ろうとしてきた。
だが、今まさに生徒の1人が死地にいるかもしれないという状況に、愛子は凄まじい苦しみに苛まれていた。
彼女の苦しい様子は傍にいる優花しか気が付いていなかった。
暗い雰囲気の一行の中で、1人の少女は静かに物思いにふけっていた。
(やっぱりメルドがいると天之河も暴走しないか。大分、増長してきたからそろそろ爆発させたかったんだけどなあ)
チラリと手を握っている隣の少女を見やる。
(やるべきことはやった。後はなるようになるしかないね。勝負はここを出てから。さぁ~てどうなるかなあ? ちょっとワクワクしてきたよ♪)
「クフッ」
少女の口から洩れた小さな嗤い声は隣にいた少女と、彼女の服の中に隠れた相棒だけが聞いていた。
■■■■■
「なんだ!? 一体何が起こった!?!?」
ウルの町を包囲する魔物の軍勢の最後方から、全体の士気を取っていた魔人族達の部隊では混乱が起こっていた。
10人にも満たない規模の隊だったが、魔国ガーランドで生み出された特別な魔物と、メフィスモンと檜山という協力者のおかげで10万もの軍勢の司令塔として動いていた。
しかし、突如ウルから発生した強烈な閃光に目をやられてしまい、状況確認もままならない状態になっていた。
「ふ、不明です!? 突然の光で、目が見えません!!」
「私もです! くぅうッ」
「ぐあっ!? 魔物が暴れています! 落ち着けたいですが、我々も目がぁ!!」
香織達が使った魔法──〝聖絶・金剛爆破〟
それは聖十字に組み込まれた最終プログラム。
防護結界を構築していた魔力を電気エネルギーに変換し、外側に向けて放出させる。
放出された電気エネルギーは10億ボルトにも達する。試算したハジメは、どこかの学園都市の最強の電撃使いかと内心で突っ込んでいた。
膨大な魔力を変換させるために、結界を維持していた全てのアーティファクトが自壊してしまうが、効果は絶大だ。
全方位に向かって放たれた電撃は防護壁に触れていた魔物を一瞬で炭化させ、近場の魔物は感電死した。例え死を免れても、感電して動けなくなった魔物はバタバタと地面に倒れる。特に飛行していた魔物は墜落して、地面に激突して死んでいく。
それはデジモン達も例外ではない。
X抗体持ちとはいえ、アロモンやティラノモン達は成熟期。攻撃を受けたものは魔物と同じく倒れている。飛んでいたプテラノモンもバランスを崩して墜落している。もっともデータに分解されていないので、完全には倒れていないが。
この攻撃によって町に迫っていた軍勢の内、1万匹の魔物が死亡、または行動不能になった。デジモンも30体が攻撃に巻き込まれた。
しかし、それでもまだ敵は9万近く残っている。
なんとか魔人族達は、魔物達の混乱を鎮めて、体勢を立て直そうとするがそううまくいくわけがない。すると、
「世話の焼ける」
魔人族達に闇色の靄がまとわりつき、瞬く間に視力を回復させた。
つい先ほどまで誰もいなかった空間から、闇の魔法陣が現れ、そこからメフィスモンが姿を現した。メフィスモンの暗黒魔術が魔人族達を癒した。
メフィスモンの魔術によって魔人族達は視力を取り戻し、混乱の立て直しを図る。
魔物を落ち着かせるために右往左往する彼らの様子を、メフィスモンの後ろから出てきた檜山が嘲る。
「ちっ。大丈夫かよこいつら。昨日は町ごと勇者を殺すなんて楽勝とか言ってなかったか?」
その言葉に部隊長の魔人族が激昂しかけるが、指揮官としての冷静さで抑える。
檜山はそんな彼らからすぐに目を逸らし、ウルの町の方へと目を向ける。
「亀みたいに引っ込みながら死ぬよりも打って出たってか。いくら不意打ちで花火を上げても、まだまだ魔物は多いんだぜ? それとも勇者様お得意の光魔法でも使うのか?」
ニヤニヤと嗤いながら戦いの推移を見ようとする檜山。
もはやウルの町にいる人間達の未来は決まり切っていると確信している彼は、ささやかな抵抗がどこまで続くのか高みの見物としゃれこもうとしていた。
だが、町から飛び出したのは、檜山が予想した勇者の光魔法ではなかった。
「──
突然、無事だった魔物達の眼前に漆黒の球体が出現。大きさは直径1mほどだが、出現した瞬間、周囲の物を猛烈な勢いで吸い込み始めた。空気や大地、魔物の死体はもちろん、無事だった魔物達でさえ、あまりの吸引力に逆らえず、球体に引き寄せられる。
そして、球体に触れた物体はそのまま球体の闇の中に消えていった。
球体はある程度ものを吸い込むと、溶けるように消失。後には半球状に抉れた大地しか残っていなかった。
これこそライセン大迷宮でミレディから授けられた神代魔法の1つ、重力魔法の奥義。全てを飲み込む漆黒の球体を出現させる〝黒天窮〟。
制御に失敗すると使用者の魔力が尽きるまで周囲のものを飲み込み続けるという危険な魔法だが、魔法弾に刻み、遠隔で発動させることで安全性を持たせた。
当然、そんなことを知る由もない魔物達は、意味不明な現象に呆然としていた。
それを見かねたメフィスモンは遠距離を映し出す魔術を使い、〝黒天窮〟が発動した辺りを空中に映し出す。それを見た魔人族達が息をのむ。
メフィスモンはさらに周囲を映し出し、〝黒天窮〟を誰が引き起こしたのか探る。
そこに彼女達は現れた。
ブオンブオンというエンジン音を唸らせ、魔力駆動二輪に跨ったユエと香織。傍らにはレキスモンが並走し、香織の肩にはテイルモンが捕まっている。
2人とも変装用のアーティファクトを使わずに堂々と現れた。どうせ、檜山が魔人族についているのだから、顔を隠す意味はない。
2人は一台の魔力駆動二輪に乗っていた。香織が運転手を務め、後部座席にユエが座っている。
ユエは大口径の魔導電磁加速式大型ライフル〝シュラーゲン〟を持っており、先ほどの〝黒天窮〟の魔法弾はこれを用いて発射した。
〝黒天窮〟の魔法弾は強力無比な弾だが、強すぎるせいで制約も多いという、ユエの持つ弾丸の中でも特別な魔法弾だった。
作成するために付与する魔法が複雑で高度だ。そのため、拳銃の弾サイズの弾丸では付与しきれず、大口径用の弾丸に付与しなければならない。結果、数があまりない。
さらに問題なのは魔法の影響力の広さ。周囲の物を問答無用で呑みこむという危険な性質ので、先のメフィスモンの襲撃では周囲まで巻き込んでしまうため無闇に使えなかった。
今までの襲撃や防衛戦では使えなかった武器を、ユエと香織は今ここで使うことにした。
当然それは、〝黒天窮〟の魔法弾だけではない。
「〝光爆龍〟」
ユエは新たな魔法弾をシュラーゲンに装填し、発砲する。銃口からは眩い光でできた龍が現れた。その姿は蛇を彷彿とさせる、東洋の龍だった。
魔人族達も初めて見る龍に驚愕する。
「な、なんだあれ……」
魔人族の誰かが呟いた瞬間、龍は大きく顎を開き、魔物の群れに襲い掛かった。
ゴォガァアアア!!!
龍が凄まじい轟音を響かせながら魔物の群れを蹂躙する。龍が大きく口を開くと、何とその場にいた魔物が自らその中に飛び込んで行く。
この龍は重力魔法と既存の魔法を組み合わせた複合魔法だ。
本来は放たれるだけの魔法を重力魔法で纏めて任意でコントロールしている。
香織の光爆龍には光属性魔法の〝縛光刃〟と〝天灼〟を組み合わせており、重力魔法で引き寄せた相手を〝縛光刃〟で龍の中に捕縛し、魔法が消えるまで〝天灼〟の雷撃で焼き焦がし続ける。持続時間が長く、魔法でありながら防御力も高いというえげつない魔法だ。
そして、しばらく魔物を呑み込んだ龍はその場でとぐろを巻き、巨大な光球へとなった。
ここでユエが口にした魔法名を思い出してみてほしい。
この龍の名前は〝光爆龍〟。つまり──爆発する。
カッと閃光が迸る。先ほどの防護壁の自爆には劣るものの凄まじい光だった。
龍を構成していた重力が崩壊し、束ねられていた〝天灼〟の魔法が解放されたのだ。
結果として魔物達は光爆龍だけで千体ほど倒された。
それでも魔物の数は膨大だった。光爆龍が呑み込み損なった魔物が香織達に迫る。
アイアンマウントが岩塊のように丸まって、猛烈な勢いで迫りくる。
「〝アイギス〟! 〝イージス〟!!」
それを香織の鉄壁の防御が防ぎきる。
愛用の盾であるアイギスを取り出し、空中に固定する。
実はアイギスにもハジメのオルクス同様に感応石が組み込まれ、両手で持たなくても空中に浮遊させて使用できるようにしていた。この機能のおかげで香織は運転しながらも魔物の攻撃から身を護れるようになった。
さらにアイギスの周囲にはアイギスを小型にしたような盾が浮遊している。数は七つ。
アイギスと共に香織が宝物庫から取り出した小型の盾は、魔力駆動二輪で走る香織達の周囲に広がると、彼女達を守る結界を展開した。
これはハジメが香織の為に開発した新武装〝イージス〟。
七つ全てがアザンチウム鉱石でできており、〝聖絶〟の魔法も付与されている。
これだけならばただアイギスを小型化しただけなのだが、最大の特徴は挙動が
香織のアイギスの位置から、防御の死角となり、接近する攻撃の位置を瞬時に計算し、そこを補う様に自動的に動く。もちろん、香織が手動で位置を調節することも出来る。
現に、今もユエの魔法攻撃を避けてきた魔物が放った炎、風、毒針などの遠距離攻撃を、自動で縦横無尽に動き、全ての攻撃を悉く防いでいく。
イージスのおかげで香織の防御はさらに強固になり、魔法を撃ち続けるユエに魔物を寄せ付けない。
加えて並走していたレキスモンとテイルモンも魔物の攻撃を防ぐ。
そのまま二人は魔力駆動二輪を爆走させていく。
後ろに座るユエは次の弾丸をシュラーゲンに込めて、発砲する。
第二、第三の〝光爆龍〟の弾丸が亜音速で飛び出し、一瞬で龍を展開させ、魔物の群れを蹂躙する。しかもそれらをシュラーゲンの圧倒的な射程をもってして予測不可能な場所で炸裂させていく。次の瞬間には凶悪な魔法がすぐそばで発動する。
さらにユエはダメ押しをしていく。
「〝雷龍〟」
ゴアアアアアアアアアッ!!!
突然、立ち込めた暗雲より雷で出来た龍が現れた。天空から雷でできた龍が舞い降りてくる。龍はそのまま光爆龍と同じように魔物を呑み込み、体を構成する雷で焼却させていく。
重力魔法と〝雷槌〟という空に暗雲を創り極大の雷を降らせるという上級魔法のオリジナル複合魔法〝雷龍〟。最上級魔法に分類されるが、〝光爆龍〟と比べると使うのは容易いので、ユエは自分で使用する。
結果、さらに正体不明の攻撃に魔物の軍勢はさらされることになった。
たちまち軍勢の混乱が再発していく。
「くっ、何者なのだあの女どもは!?」
メフィスモンが映し出した香織達の姿に、魔人族の隊長は口調を荒げる。
「まさかあれが勇者!?」
「勇者じゃねえよ」
魔人族達の勘違いを檜山が否定する。
「それよりもやばいやつらだ。ま、俺ほどじゃねえがな。だからお前らでも頑張ればなんとかなるんじゃねえの?」
「くッ。再編を急げ!! 圧倒的な数で押しつぶすのだ!!」
檜山に煽られながら魔人族達は再編を急ぐ。
だが、彼らの努力も軍勢を蹂躙する香織達に掻き乱されて、一向に混乱は収まらない。
ここで隊長は軍勢を統括している要の者の姿が無いことに気が付いた。
もともと魔人族達のみで用意した魔物達の総数は1万ほどだった。
本国で
そこにメフィスモンの助力によって檜山と、闇術師の天職を持つ神の使徒の1人、清水幸利が加わった。檜山のアイズモンという強大な力はもとより、清水の闇魔法による魔物の隷属化は支配種たちの支配力をさらに加速させた。
結果、予定では1万だった魔物の軍勢は10万にまで膨れ上がった。
清水はまさにこの軍勢の要なのだ。
その清水の姿が見えない。
「ええい!! シミズは何をやっている!! 軍勢の指揮はあいつに任せてやったはずだぞ!!」
「彼は今別の任務中ですよ」
メフィスモンが淡々と答える。
「なっ!? どういうことだ!!」
「少々気になる点がありまして。ああ、ご安心ください。ちゃんと保険はかけてあります」
勝手なことをしたメフィスモンに怒る隊長だが、メフィスモンはどこ吹く風。
しかし、メフィスモンの言葉通り、保険とやらが動き出す。
倒れていたデジモン達が起き上がり、さらに町を挟んで反対側にいたデジモン達が彼女達の所に移動し始めた。
さらにもう1つ、動き出したものがあった。
一夜にして町を囲むように出現したダークタワーが赤黒く点滅を始めた。
ユエ達は大群への撹乱を重視して破壊していなかったタワーが、まるで血のように、不気味に輝く。
すると、まるでタワーの点滅に共鳴するように、倒れていたデジモン達が起き上がり始めた。
実はこのダークタワーはメフィスモンが、デジモン達を操るためのコントロール装置だったのだ。タワーを媒介にデジモン達に指示が送られ、彼らはメフィスモンの意のままに動かされていく。
「行け。デジモン達よ。闘争の時間だ」
■■■
ある程度魔物達を倒したユエ達にアロモンとティラノモン、そしてダークティラノモンの群れが迫る。
墜落していたプテラノモンも再び空に舞い上がり、他の個体と共に2人へと爆撃を仕掛ける。
彼らは通常の個体と違ってX抗体を植え付けられ、デジコアが覚醒した姿だ。当然、強さも並みの成熟期を超えて、完全体に迫るほどだ。
ティラノモンの真紅の炎のブレス──通常種の『ファイアーブレス』が強化された『クリムゾンブレス』が放たれる。
ダークティラノモンが体内の悪質ウィルスを操作し、肉体の一部を硬質化し緑色の炎を発しながら、迫りくる。そのまま二人を握り締めて緑の炎で敵を燃やす『フレイムスナッチ』を喰らわせようとする。
脚力が発達したアロモンが俊敏に動きながら、閃光の如く瞬間的に口から放つ超高熱の熱風『ディノフラッシュ』を絶え間なく放って来る。
上空からはプテラノモンの爆撃だ。
当然、ユエはティラノモン達へも〝光爆龍〟や〝雷龍〟を始めとした魔物を蹂躙した魔法を放っていく。
だが、魔法の龍達はティラノモン達に受け止められる。魔法で肉体が焼かれるが、肉体強度が魔物よりも高いティラノモンは苦悶の声を上げながらも、しっかりと龍を押さえつける。
そこに緑色の炎を手に宿したダークティラノモンが飛び掛かり、『フレイムスナッチ』で魔法でできた龍の身体を貫いた。
物理的に肉体を構成していた魔法を崩された龍達は崩壊し、光や雷をまき散らしながら消えていく。
邪魔者を消し去ったデジモン達は改めてユエ達に襲い掛かって来る。
絶体絶命の危機だが、彼女達はすでに次の手を打っていた。
デジモンに対抗できるのは、デジモンだけだ。
「「カードスラッシュ! マトリックスエヴォリューション!!」」
──MATRIX XEVOLUTION─
「レキスモン進化! ──クレシェモン!!」
レキスモンが光に包まれて、完全体のクレシェモンに進化する。
「テイルモン進化! ──エンジェウーモン!!」
テイルモンも光に包まれてエンジェウーモンに進化。白翼を羽ばたかせて空に舞い上がる。
そのままエンジェウーモンは『ホーリーアロー』を連射して、上空からのプテラノモンの爆撃を撃ち落としていく。さらにプテラノモンにも雷撃の矢を射る。矢は正確にプテラノモンのつばらを貫き、彼らを再び地に落としていく。
クレシェモンも迫りくるティラモン達に対して、幻惑のステップを踏みながら放つ斬撃攻撃『ルナティックダンス』で斬り刻んでいく。
「そこ」
クレシェモンがティラノモンの付けた傷に目がけて、ユエが弾丸を撃ち込む。
「──
弾丸が撃ち込まれた傷から猛烈な冷気が発生し、氷の龍が現れた。ティラノモンは体内から凍てつき、砕け散った。
現れた氷の龍は周囲の他のデジモンに襲い掛かる。
この龍も雷竜と同じくユエのオリジナル複合魔法。氷属性がベースになっている。
傷口から体内に撃ち込んだ魔法攻撃ならば、デジモンにも効果があった。
クレシェモンは多数の敵を相手にするのは不得手だが、ユエが援護していく。
しかし、傷口という狙い難い個所を狙撃するためには集中する必要がある。
ユエが攻撃されないように、香織が魔力駆動二輪を巧みに操り、アイギスとイージスをフル活用して攻撃を防ぐ。
ユエとクレシェモンがメインの攻撃を行い、移動と防御を香織とエンジェウーモンが担い、アシストしていく。
魔物とデジモンの軍勢に対して、ユエ達はデジモンテイマーとしての本領を発揮して対処していく。
例え二人と二体でも、協力すればその力は万の軍勢にも劣らないのだと、彼女達は戦いで示していった。
そうして魔物と一緒にデジモン達も倒していくユエ達だが、一体のティラノモンが攻撃をやめた。そして、周囲で倒れていたデジモン達に喰らいついた。
そのままデータに分解して、ロード──捕食し始めた。
「何……あれ?」
「不味いよユエ!!」
ティラノモンの行動に首を傾げるユエに対し、焦りを見せる香織。
ハジメからデジモンの生態を聞いていた香織はティラノモンの行動が分かった。
本能的な危機を察知し、生き残るために自己を強化しようとしている。
つまり、進化しようとしているのだ。
それがこのティラノモンだけでなく、他のデジモン達も倒れた仲間を喰らい始める。
「急いで止めないと!」
「クレシェモン!!」
「エンジェウーモンもお願い!!」
香織から話を聞いたユエとクレシェモンがティラノモンの捕食を止めようとする。
プテラノモンの迎撃をしていたエンジェウーモンも、上空からティラノモンを攻撃する。
しかし、遂に一体のティラノモンが進化を果たした。
体内のデータが肥大化し、体格が一回りも二回りも大きくなっていく。
さらに肉体の一部が機械化、サイボーグとなっていく。
対地用迎撃デジモンとして改造された、脅威のサイボーグデジモン。
ユエがデジヴァイスでデータを確認する。
「メタルティラノモン。ウィルス種のサイボーグ型デジモン。必殺技は『ギガデストロイヤーⅡ』」
進化したメタルティラノモンは右腕を掲げて、エネルギーを集中させる。
そこから強大な破壊力を誇るミサイル『ギガデストロイヤーⅡ』がユエ達に向かって放たれた。
〇デジモン紹介
ティラノモン(X抗体)
レベル:成熟期
タイプ:恐竜型
属性:データ
有史以前の世界に存在した古代の恐竜のようなデジモン。発達した2本の腕と巨大な尾で全ての物をなぎ倒す。知性もあり、おとなしい性格のため、とても手なづけやすい。そのため、初級テイマーからは重宝がられ、だいじに育てられることが多い。もっとも基本的なデジモンの代表的存在と言えるだろう。必殺技は身体の色と同じ、深紅の炎を吐き出す『ファイアーブレス』。
X抗体によるデジコアへの影響で、デジコアに刻まれた原始のデータが引き出され、獰猛な恐竜らしさがより強調された姿となった。肉体が巨大化したことでパワーもスピードも増したティラノモンを、以前のように手懐けることは難しい。発達した背ビレは、宝石のごとく透き通るような美しさと頑強さを備えており、武器としても使えるようになっている。必殺技は従来の『ファイアーブレス』が強化された『クリムゾンブレス』に加え、全身を丸めて猛スピードで突撃し、すれ違いざまに敵を背ビレで斬り刻む『クラッシュローリング』がある。
軍勢との闘いは初めて描いたので難しいです。
あと久しぶりの戦闘描写だったのでなかなか苦労しました。
序盤は原作みたいな無双を香織達にやらせたいと思いながら書いたのですが、これでいいのか不安です。
最後に登場のメタルティラノモン。無印リメイクでは完全体としての格を見せつけてくれました。果たして次話はどうなるのか。せめて年越しまでには更新したいです。