こちら単冠湾特別遊撃隊   作:tk_stranger

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妄想が膨らんだ結果2000字ぐらいになったので初投稿です。


夜戦

「ったく、オレも焼きが回ったもんだなぁ」

 

魚雷と砲撃の雨の中、木曽はため息をついた。

最後の最後で旗艦大破、僚艦に中・大破。流石に夜戦に突入させず撤退命令は出たものの、撤退ができるかと言われると微妙であった。

 

さて、一人でも多く助かるには、と考え腰の軍刀に手をかけたと同時に、空が光った。そして爆音。

これが照明弾の光であり、照明弾が光ったと同時に敵の何隻かが砲撃され、轟沈したのを理解したのは目の前に一人の艦娘が躍り出てからであった。

 

「木曽さん、だね。こちら単冠湾特別遊撃隊、旗艦時雨。撤退の援護するね」

 

自らを時雨と名乗った艦娘は、自分をいつの間にか来ていた別の艦娘に預けると、一気に敵に向かって突撃していった。声をかける暇もなく、だ。

 

「おい、あれ大丈夫なのか?」

 

単冠湾特別遊撃隊という名前自体は知っている。

単冠湾に設けられた泊地拠点とは別に小さな拠点を構え、様々なことを請け負っている風変わりな部隊であると。

そして、そこの艦娘はただならぬ練度であると。

しかし、幾ら練度が高いからといって、単艦で突撃するのは無謀なのではと思う。

 

「ああ、大丈夫でしょ」

 

そんな心配をよそに、自分を支えながら片手で主砲を牽制程度に放っている艦娘――たしか陽炎――はケラケラと笑う。

 

「砲撃支援あるし、照明弾の効果が続いている間にちゃっちゃーって引っ掻きまわして感じじゃない?まぁ、こういうのは何度もやってるし」

 

最近は減ったけどうちんところの主要業務なのよねー、と自分を引っ張りながら後退していく。

後退した先にはひっきりなしに砲撃をしている艦娘の付近に艦隊の仲間がかけることなく全員おり、そのことに安堵した。

 

「鳥海さん、木曽さん引っ張ってきた。これで全員」

 

「ん、ありがとう陽炎ちゃん。じゃぁ撤退しましょうか」

 

全員がいるのを確認して、鳥海と呼ばれた艦娘が再び照明弾を上げる。先ほどとは弱い光で、3つの色が空に上がった。

 

「すぐ戻ってくるかなぁ・・・時雨ちゃん」

 

「いやぁ・・・どうだろ。『残念だったね』『君たちには失望したよ』とか言いながらヒャッハーしてるだろうしなぁ」

 

鳥海のボヤキに陽炎がオーバーなリアクションで返している。

夜の戦場なのに呑気なものだと思ったが、いつの間にか周囲は静かになっているし、鳥海も支援砲撃はもうやめている。

改めてとんでもない・・・と独り言ちていると、陽炎のほうからごん、と軽く、しかし鈍い音が鳴った。

 

「勝手に人の印象をおかしな方向に捻じ曲げて拡げないでほしいな」

 

陽炎がいた場所に、いつの間にか時雨がいた。服がところどころ裂けているがそれだけのようで、涼しい顔をしている。

視線を下げると陽炎が頭を押さえながらのたうち回っていた。それが可笑しくて、思わず笑みがこぼれる。

 

「今回は早かったですね」

 

「木曽さん達が大分削っててくれたみたいだし、これぐらいはね。鳥海さんの砲撃で半分以上持っていってるから、今回は鳥海さんのほうが活躍してるよ」

 

僕の活躍なんて些細なことさ、と困ったような笑みを浮かべる時雨。それに照れたように笑みを浮かべる鳥海。

なる程、良い艦隊だなと木曽は感じた。自分たちもこうありたいと思う。

 

「さ、帰ろう。拠点に全員戻るまでが戦いだよ」

 

その声と共に、再び夜の海をかける。

静かに海を行く木曽の胸中には仲間全員で帰れるという安堵感があった。

 

---

 

「はい。はい・・・いえ。こちらとしても、そちらの艦隊が無事なのは喜ばしいことですので。はい、そちらの方で補給だけしていただければ。ご自身の艦隊を優先させてください。はい、では」

 

救援依頼を寄越してきた鎮守府からの通話を切り、一先ず何とかなった事を確認でき、提督は安堵した。

ふと、コーヒーの香りが鼻をつく。

 

「お疲れ、提督」

 

視線を上げると、マグカップを2つ持った矢矧がいた。ありがとうと一言添えながらマグカップを受け取り、ソファに促す。

ここまで来れば後出来ることは帰るのを待つだけだし、一息ついても問題はないだろうと思ったからだ。

 

ソファに腰を降ろせば、すぐ隣に矢矧も腰を降ろす。色々な意味でもう慣れた。

 

「突然連絡が来た時は何事かと思ったが、まぁつつがなく終わって何よりだわ」

 

「そうね。久々だったんじゃない?」

 

コーヒーで口を湿らせながら、矢矧の久しぶりという言葉に記憶を引っ張り出す。

確かに、半年ぐらいはこの手の出撃はなかったように思う。

基本担当範囲にいる鎮守府はそこそこに艦隊の練度も高かったはずだが・・・そういえば、前に人事異動があったことを思い出した。

 

「この前人事異動があったらしいからなぁ、新人に変わったかな?」

 

「ああ、そういう」

 

いつの間にか肩に重みを感じ、視線をそちらにずらせば、矢矧が身体を預けていた。コーヒーの香りに混じって、女性特有の甘い香りがした。

静かな時が流れる。出撃した艦隊が戻るのはもう少し後だから、暫くはこのままの時間が流れるだろう。

彼はこの時間が嫌いではなかった。





時雨:最近の悩みは陽炎の暴走

陽炎:ムードメーカー。色々しがらみが無いので暴走中

鳥海:艦隊の頭脳、最大火力その1

矢矧:甘党提督の糖分過剰摂取対策のためコーヒーの砂糖を徐々に減らし続けているのが最近の楽しみ

木曽:どこかの艦隊の旗艦。これを機にチームワークの改善を頑張っているらしい

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