こちら単冠湾特別遊撃隊   作:tk_stranger

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筆がのったので初投稿です
キリが良い所でバッサリ切るので1話1話が短いのはもう諦めてください。


新人

「昨日、緊急で依頼があったとはいえ・・・それで次の日の予定が無くなるわけではないのが仕事の辛い所だな」

 

朝8時。提督は眠気覚ましのコーヒーを啜りながらとにかく頭を回転させようと必死にぼやいた。

ここの提督は朝に非常に弱い。

 

「まぁ、仕事柄やむなしといった所だね」

 

そう言いながら隣の秘書官用デスクでお茶を啜る時雨。

深海棲艦という未知の化物(最近は色々と解析が進んではいるらしい)が突発的に襲い掛かってくるという現状、基本鎮守府や警部府等といった場所は24時間体勢である。

かつてのように毎日というわけではないにしろ、偶にはあるという程度にはまだまだ海は平和ではない。

 

「というかだよ、提督」

 

うん?と手に持っていた書類から視線を外し、時雨に向ける。

見惚れてしまうほどの、儚さが混じった笑顔だ。きっと、これからの激務、戦いの事を憂いているに違いない。

優しい子だからな・・・と胸中を温かさで満たしながら、どうした?と声を返す。

 

「今日は新しい艦娘を迎え入れるだけで他に仕事ないよね?」

 

笑顔とは裏腹に声は低く、飽きれの感情が入っていた。笑顔とは本来は威嚇目的のものである、というのは本当らしい。

 

「あー、うん、はい」

 

すぅ、と視線を手元の書類に戻す。

言っては何だが、この部隊は基本そこまで忙しくなく、業務が終われば全員を集めることも簡単なのであり、緊急で案件が入ってくる可能性は有れどわざわざ所属している人員全てを休みにする必要もないのだ。

なのでこれは、業務があるという空気の中では互いに心身に余裕がある状態での顔合わせもできないだろうという提督の気配りのようなものである。

 

「提督は優しいね」

 

時雨が傍に寄り、頭をなでてくる。この優秀な秘書艦にはお見通しのようだ。

敵わない、改めてそう思う提督だった。

 

---

 

「寒い」

 

本土から輸送船と一緒にやってきた特型駆逐艦の吹雪は、単冠湾の地に降り立った際に思わず呟いた。

本土の気温27度、単冠湾の気温14度。温度差が激しすぎてこのままでは風邪を引きそうなぐらいには体が冷える。

ここでちゃんとやっていけるのだろうか、という不安が一層強くなる。

 

「えっと、今の位置がここだから・・・右」

 

とはいえ、ここに居てもしょうがないので、地図を頼りに歩を進める。この港は丁度中間点のようで、左をまっすぐ進むとそこそこ規模の大きい泊地があるらしい。

今回自分が向かうのは、それと逆方向にある、何故か逸話が多い小さい小さい拠点。

20分ほど道なりに歩けば、建物が見えた。入り口に、おそらく艦娘であろう女性が立っていた。こちらに気づいたのか、手を振っている。待たせるわけにはと歩を早めた。

 

「初めまして、今日着任予定の子ですか?」

 

「はい!特型駆逐艦の吹雪です!」

 

元気よく返事をすると、目の前の女性は笑顔でよろしくお願いしますと答えてくれた。

綺麗な笑顔に、少しだけこの先の不安が和らいだ気がした。

 

その後は、簡単な自己紹介――目の前の女性は軽空母の祥鳳という艦娘だった――と、とりとめのない会話を交わしながら建物の中を進む。

やがて執務室と書かれた札の部屋の前に着き、ノックの後入室した。

 

「失礼します。着任予定の子、案内してきました」

 

その言葉に、大きめのデスクに座っていた提督が腰を上げる。

 

「ありがと、祥鳳。さ、立っているのもあれでしょう。座って座って」

 

そう、自分をソファに促した。あちらがソファに座るのを確認した上で自分もソファに腰を降ろす。

すかさず、自分の前に湯呑が置かれた。視線を上げると同じ駆逐艦であろう艦娘がお盆を持っていた。

 

「まずは身体を温めよう。正直ここは寒い。慣れたらどうということはないけど本土から来たんなら温度差で身体が可笑しくなるわな」

 

俺たちが今から本土行ったら暑くて耐えられないのかねぇ、時雨、とお盆を持った艦娘に問いかけるその表情が凄く穏やかで、ああ、この人はいい人なんだなと感じた。

喉を通るお茶の温かさも手伝って、最初に合った不安はすでになくなっていた。




祥鳳:素敵なお姉さん

時雨:提督を甘やかすのが好きなので砂糖の量は提督の好みに合わせている

提督:砂糖の量で時雨と矢矧が熾烈な争いをしているのに気づくことなく「これが個性か」で流している能天気野郎

吹雪:真面目な常識人。ここから訪れる気苦労を彼女はまだ知らない
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