シャニこべ   作:あんふゆ

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頼む、シャニマスあべこべ増えて……!

※シャニPを追ってくるアイドルの描写を追加。


とおとお

前回のオチ。

 

鼻血を出して倒れたにちかちゃんは、彼女の身内っぽいスーツを着たイケメンによって無事に保護された。

いや~焦ったよね。人のつながりが薄いこのご時世で私の叫び声を聞いて駆けつけてくれたのは嬉しかったけど、危うく私がにちかちゃんを襲った犯人かと誤解されるところだった。

 

以下はその一部始終である。

 

 

『大丈夫ですか!?……にちか!?な、なんでこんなに鼻血が……もしかしてにちかが貴方を……?』

 

ち、違います私は誓って何もしていません私がチンピラに絡まれていたところを彼女が歌って踊って助けてくれたんです。

 

いや歌と踊りで助かるってなんだよ(混乱)

いったい私は何を言ってるんだ?全部事実だけどこんな意味不明な経緯を説明して納得してもらえるわけないじゃないか。

 

『そうだったんですか……ははっ、頑張ったんだな、にちか』

 

彼はそう感慨深そうにうなずいて、なぜか幸せそうな顔をして気絶しているにちかちゃんを介抱した。

 

信じてもらえちゃったよ。こんな怪しい話を信じてくれるなんて善人すぎるよこの人。

 

 

───プロデューサーさーん!どこ行っちゃたのー!?返事してー!!

 

───なーちゃん、たぶんこっちの方……!

 

 

……!人が来る気配がする。

さすがに他の人に同じこと話しても疑われるだけだ。すぐに逃げてしまおう。

 

さようならー!にちかちゃんには起きたらお礼を言っておいてくださーい!

 

『あ、待ってください!貴方、怪我を……!』

 

待てと言われて待つ奴はいない。

イケメンの声を背に受けて、私は颯爽とその場を後にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

はぁ……お腹へった……

 

最近雑草しか食べてない。私はいつから草食動物になってしまったのだろう。豚や牛のような家畜でもまだマシな食べ物を食べているにちがいない。

 

川で泳ぐ魚たちは捕まえられないし、川沿いで石を引っぺがして見つけたとしてもサイズが小さくて話にならない。ちなみに火は近くの公園から落ちていた渇いた木片を拾って、擦りにこすり合わせて点火した。いや~諦めないで頑張って見るもんだね。ふへへ。

 

しかし完全に目算が狂ったな、ゼロから始める街中サバイバル生活がこんなにも難しいものだとは。

 

お腹からぐるぐると音が鳴って力が出ない。気分は頭にカビが生えたアンパン男、もしくは活動限界の初号機。

 

あのアンパンって全部食われたらどうなるんだろう、首無し状態になっても動くのかな。なんて現実逃避をしながら匍匐前進の要領で地を這って進んでいく。

 

草をかき分け、橋の下からひょっこりと身体を出して仰向けになると、お日様は空のてっぺんで燦々と輝いていた。

 

太陽くんはいつも元気だねぇ、私も光合成しようかな……と茶化していても何も始まらない。そろそろ真面目に生存戦略を建てなければ何時ミイラになってもおかしくはないのだ。

 

 

「ねぇ、なにしてるの?」

 

 

どうしようかなとぼんやりしていた時、その人物は私の視界に入ってきた。

倒れている私を見下ろす形で、一人の女の子が影を重ねていた。

 

その少女のことを説明するのは非常に難しい。容姿が、という意味ではない。容姿で言えば追いかけっこした女子高生にも負けず劣らずの整った顔立ちをしているが、私が言いたいのは彼女の雰囲気である。

街中で有名人を目撃して「あ、なんか私と纏ってる空気が違う」と思うような……なんと形容したらいいのだろう。大物感…透明感?そんな曖昧な印象を持った。

 

思わず気圧されてしまった私は、上ずった声でコンニチハと口にだしたのだった。

 

「おはようございます……あ、こんにちは」

「でさ、なにしてるの?こんなところで」

「危ないよ、最近」

 

なにもしてないよ。しいて言うなら日光浴かな。

この果てしなく広がる青い大空に自分の将来を重ねて仰ぎ見ていたところなんだよね?

 

なぜか疑問の形で閉じた自分の言葉に答えるように、私のお腹はぐぐぅと鳴った。

 

「お腹すいてるんだ」

「なら行こうよ、ごはん食べに」

 

少女はそう言うと、私の身体を軽々と持ち上げてお姫様抱っこした。

 

……え?

 

 

 

 

 

 

えっ?

 

「お待たせしました~。ご注文のオムライスですよ~」

 

「おー、うまそう」

 

こじんまりとした空間。四人掛けのテーブルが四つほどの小さな食堂の中。少女と向かい合うように座った私の目の前にあるテーブルには、出来立てほやほやのオムライスが鎮座している。

 

理解が追い付かない。まるで宇宙ネコ。彼女はこのお店まで来る途中も一度も私を下すことなく移動しきった。その華奢な身体のどこにそんな力があるんだ……?

 

そもそもキミ誰なの……?

 

「浅倉透、高校二年生。アイドルやってます、よろしく」

 

……アイドルってこんなにポンポン会えるものなんだっけ。

少なくともはぐれてるメタルが仲間になったり色違いの携帯獣と出会ったりする以上に貴重なことだと思ってたんですけど。まさか二日連続でエンカウントすることになろうとは。

 

とりあえず彼女の素性に関しては理解した。

それで、なぜ私は透ちゃんと一緒にご飯を食べることになったのでしょうか。

 

「なんでって、お腹すいてたんでしょ」

「じゃ、食べなきゃ」

 

いや、それはまぁそうなのだけれど。

それにしてもフットワークが軽すぎる。いくら力に自信があるからと言って、あんなところで倒れてるような怪しい人に近づいちゃだめだよ。何をされるか分からないし。私は何もしないけど。

 

あと、それにその……誘ってもらって嬉しいのだけれど、私お金ないし……

 

「私の奢りです」

 

これマジ?

と、透ちゃん、あなたが私のアンパン男だったんだね。失礼、アンパン(ウーマン)だったんだね。

奢り……なんて甘美な響きなんだ。私の好きな言葉ランキングの上位に食い込む激熱ワードではないか。

 

きらきらと輝くオムライスを前に、口端からよだれは垂れてお腹はグググぅとギアを一つ上げて唸った。

 

じゃ、じゃあ遠慮なくいただきま───っていかんいかーん!今はサバイバル生活真っ最中なんだぞ。そんなんでいいのか?私のサバイバルに対する思いはその程度だったのか?

 

私は初志貫徹を金科玉条としているのだ。ここで甘えを見せてしまったらサバイバルに挑むと決めた過去の私に顔向けができないじゃないか。

 

心優しい少女の施しを断るなんて非常に、非常に心苦しいと思っている。

しかし!注文してもらってなんだが奢ってもらうわけにはいかないのである!

こんな誘惑には絶対に負けない!

 

「食べないの?……ん、うまい」

 

いただきます(^p^)

 

高校生にたかる情けない成人男性の姿がそこにあった。というか、私だった。

 

 

 

 

がつがつと勢いよく食べ始め、お互い十分もしないうちに黄色い山が盛られた皿は更地になる。久しぶりにまともな料理が食べられたので嬉しすぎて涙腺が緩んだ。

 

「ふふっ、泣くほど?」

 

うん、それはそうだよ。こんなにまともな食事は久しぶりだったから。

 

「えっ……?」

 

最近は雑草しか食べられなかったし、久しぶりに自分が人間なんだって実感できたなぁ。透ちゃんのおかげであと三日は何も食べなくても生きていけるよ。ありがとね!

 

「雑草……」

 

そう言うと透ちゃんは目を閉じて腕を組み、「うーん…橋の下、行き倒れ…逃げ……?」と何か考えているように呟いて難しい顔を見せた。

 

美人は悩んでいる顔も美人だなぁ、などと呑気に思っている場合ではない。

え、なに、もしかしてバッドコミュニケーション?

 

何が彼女の琴線に触れたのかは分からないがいま機嫌を損ねるのは非常に拙い。ここで透ちゃんに「やっぱり奢りは無し」なんて言われたら無銭飲食になってしまう。なんとか別の方向に話をそらさないと……!

 

 

と、透ちゃ~ん、この店リラックスできるっていうか、なんか静かでいいよね~。私たち以外に他のお客さんもいないし、来るときに見かけた表通りの料理屋さんとは大違いだよ~。

 

「……ん? あー…ホールスタッフさ、男の人なんだ、あっち」

「お客さん、軒並み向こうに行ってるのかも」

 

ふ、ふぅん、だから女性客ばかり並んでいたのか。表の店にはよっぽどのイケメンがいるらしい。まっ、私には関係のないことだけど!

 

「ふふっ。上機嫌だね、なんかさ」

 

そりゃそうだよ!お腹も膨れたし、透ちゃんに奢ってもらったし!ほんとにありがとう!

なにか困ってることとかない?私もがんばって力になるよ。

 

「いいよ。今月携帯代、めっちゃ安かったから。超リッチなんだ」

「じゃ、帰りに事務所寄ろうよ。ちょっとプロデューサーと相談したいから」

 

事務所?と疑問を挟む間もなく透ちゃんは伝票を取って席を立ったため、そのまま一緒にレジへと進む。ふー、無事に奢ってもらえそうでよかった。

 

店員さんがいないので厨房の方へお会計お願いしまーす、と声をかける。

程なくして現れたのは先ほどオムライスを持ってきてくれた店員さん。他に人の気配がないあたりどうやらこの女の人が一人で切り盛りしているようだった。

 

「はぁい、お待たせしちゃってごめんなさいね」

「お客さん滅多に来ないし、二人のお邪魔しちゃ悪いかと思って~」

 

そう言って彼女は頬に手を当てて謝った。糸目に加え雰囲気も柔らかいのでなかなか様になっている。

一方の透ちゃんは財布の用意をしているのか自分のカバンの中を漁っていた。

 

「えぇっと、オムライスが二つね~。千二百円になります」

 

結構良心的な価格である。これなら私が出世した暁には透ちゃんにしっかりお金を返せそうだ。そう思って透ちゃんの方を見れば、彼女は未だにカバンと格闘している最中だった。

 

そのまま時間は一分、二分と過ぎていく。

 

「───ふふっ」

 

……あれ、透ちゃん?

 

「前もあったなって、こういうの」

「聞きたい?」

 

うん?……うん、聞きたい。

 

困惑する私をよそに、透ちゃんはカバンから抜いた空っぽの手を見せて自然体でこう言った。

 

「ごめん、財布ないわ」

 

 

あぁ^~逮捕の音ぉ^~!(手錠)

 

 

 

 

 




〇おもしれー男
 数が少なく女と比べてよわよわすぎる男が基本の世界において、強い意志を持ってアイドル事務所を開いている社長とシャニPは『危なっかしいけどおもしれ―男』なヒロイン属性持ち。なので事務員やアイドル達は彼らに興味津々。私たちが守護らねばならぬ……。

ちなみにシャニマスは最終回で暴走したシャニPを恋鐘が泣きながら調理して連載終了、ソースは作者。醬油は智代子。
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