「やはり、最強の量産機はビルゴⅡ……プラネイトディフェンサーでビームを弾くんだ!しかも武装がビームライフルとオプションでメガビーム砲と攻防一体だ!」
「出力だけならサイコガンダム並みのスモーは?」
「……ビルゴⅡのほうが好きだからこっちで」
「はいはい」
ここはドルグのフォースネスト、資源衛星シャーオック……の執務室。その机の上で戦艦に搭載するモビルスーツを選考し、今まさに決定した。そこへノックが響く。
「いいぞ」
「失礼しま~す……」
「もう!はやくはいりなよ!」
「お、押すなって!」
選考し終えたカリストとメカマスターの前に現れたのはハヤスたちコズミックファイターズの3人だった。ハヤスはミッション中に原因不明の意識不明となり、入院し数日前に意識を取り戻した……と表向きはそうなっている。だが実際はSEEDのストーリーミッションの最中、原作世界へと介入しそこへ取り残されたことが原因であり、数日前ハヤスを除いた二人とドルグの面々で救出作戦を実行し、無事に帰還したことで意識を取り戻したのだ。
「目が覚めたんだな、退院おめでとうハヤス」
「あぁ、ありがとう。2人から聞いてるよ、色々と助けてもらって」
「いいさ、困ったことがあれば何でも助けてやる。それで今日はどうしたんだ?」
「うん……、ストーリーミッションはもうやらないって決めてきたんだ。俺たちがいると原作通りに進まないと思うし」
「そうか、まあ別にそれでもいいと思うが……あの世界は原作以上に悪くなるだろうな」
「なっ!ど、どうしてそんなことが分かるんだ!」
「決まってるだろ?ハヤス……いやお前たちが介入したからだ」
「でも、それは不可抗力じゃない!」
「そうよ!突然スモーク内から始まって、戦闘が始まってて……」
「故意にせよ、不可抗力にせよ、介入したという事実は変わらない。そして悪化する原因は実のところお前たちであって、お前たちではない」
「?ますますわからないぞ」
「介入した原因はストーリーミッションだな?あれのミッションシステムはなんだった?」
「ストーリーの追体験?」
「そこじゃない、難易度調整の仕方は?」
「人数に合わせて敵を……増やす!」
「そうだ、不可抗力にせよ介入したことが原因でその増やす部分があの世界に流れた。お前たちが幾度となく介入した時にもいたあの大群は実のところ無人だ」
「無人で動いてたってこと?じゃあ大丈夫じゃないの?」
「無人で動いた、自立行動?……!モビルドールってことね」
「そうだ、まさにウィングガンダムの後半のようなことがお前たちがやらなくなったあの世界で起きることだろうよ。しかも嬉々として使いまくる連中しかいない」
「ど、どうやったら止められるんだ!」
「まぁ、製造工場があるんだろう。それに、お前たちがやめるミッションは最後のミッションだろう。案外ジェネシスの近くにあったりしてな」
「……やる、やればいいんだろ!」
「ハヤス……」
「唆すんだ、手伝ってくれるよな」
「あぁ、もちろん。とっておきを用意してるよ」
そう言うとハヤスたちは自らのガンプラを呼び出し、カリストの用意した戦艦、プトレマイオス
3人の搭載した部分は元々ドゴスギアの大型カタパルトのあった部分であり、そこには巨大なコンテナ3つと6機のビルゴⅡが搭載されていた。
ドゴスギア本体部分にもビルゴⅡが搭載されておりその数は少なくとも20機以上は存在した。中にはプラネイトディフェンサーの数を倍にした防御特化に改造されたビルゴⅡもおり何をするのか一目瞭然であった。
「いつの間にこんなものを……」
「ハヤスが訪ねてきたときには戦艦自体は作ってたぞ」
「うわぁ!急にくるな!」
「失礼な奴だな、まぁいいや。ガンプラに搭乗しておけ、あと数分もしたらミッションを受注して始める」
「……分かった、いこう二人とも」
「OK!!(了解よ)」
ハヤスたちが自らのガンプラに搭乗して待つと通信が繋がる、それはカリストたちがいる艦橋からだった。
『くぅ~!一度やってみたかったんだよな。』
『はやくやれ』
『分かった分かった、ン゛ン゛ッ』
『今回の作戦を説明する、俺たちのやることは二つ。まずハヤスチームは用意したメガライダー3機にそれぞれ搭乗しまっすぐジェネシスへと向かってくれ。3機にはビルゴⅡを2機ずつ着ける。
そしてメガライダーに搭載しているビーコンをジェネシスに取り付けてくれ。ビーコンが信号を発信した後は別に破壊されてもいいからそこから脱出だ。
そして俺たちだが、おそらくいるであろう三隻同盟を援護、防衛を主とする。ビーコンからの信号を受信次第……原作から逸脱したパラレルの世界をぶっ壊すとっておきを使う。とっておきが何かって?フフ、秘密だ』
『作戦開始』
『作戦開始!これよりミッションを始める、おそらく戦闘はすでに始まっているだろう。向こうにつき次第順次発進!』
「メガライダーなんて用意してたのか……でも若干大きいな、やっぱりビルゴⅡを左右に乗せるからか」
「初めてのるな~!
「自分たちのガンプラで精一杯だもの、しょうがないわ」
『お前ら、そろそろスモークを抜けるぞ……そら、始まった!』
「メガライダー!ハヤス行きます!」
「メガライダー!リネいっきま~す!」
「メガライダー、ナグサ出ます」
『ビルゴⅡの操作を行う、お前たちに随伴する方はジェネシス到着までは自動防御だ。到着後はお前たちの動きに合わせて攻撃したり防御する、では頼んだぞ』
戦艦から3機のメガライダーが飛び出し、まっすぐにジェネシスへと向かっていく。本来のメガライダーから大きくし航続距離を伸ばしたうえ、出力も上がっているため3機乗せても本来以上の速度が出ている。
「プトレマイオス
「唐突だな」
「唐突で結構!操舵はメカマスター、砲撃はアフサイド!俺はビルゴⅡを操作する!」
「ヒュ~~~撃ちまくるぜ~~~」
「了解」
「もうすぐジェネシスだけど、やっぱり敵の対空砲火が激しいな!」
「ビルゴⅡが防いでくれるけどちょっときついね!」
「二人とも、頑張って。私もカウンター射撃で数を減らしているから」
ジェネシス、原作では100%の出力で撃てば地球を破壊するほどの兵器。そのチャージ量が分からないためいつ撃たれるかも分からない。そんな不安を飲み込みながらジェネシスへと接近する3人。
ジェネシスの鏡面部分へと着陸し、ビーコンを設定して設置をするとすぐさまメガライダーに乗り込み脱出を始める。
ジェネシスを脱出した後、防衛MSが襲い掛かり、ビーコンを破壊されてしまう。ビルゴⅡたちも6機のうち3機も破壊されてしまった。リネの乗るメガライダーからは煙が出始め、いつ動かなくなってもおかしくはなかった。
「ハ、ハヤス!ちょっとやばいかも!」
「リネ、こっちに乗って!」
「ありがとうナグサ!」
煙の出はじめたメガライダーに、残ったビルゴⅡを乗せ来た道を戻らせる。追ってきた防衛MSのいくつかがそのビルゴⅡたちへと向かうと、突如前方から急速に接近する巨大な物体を複数確認する。
それは鉄血のオルフェンズに登場した戦艦イサリビであった。一つ違うところがあるとすれば、船尾に巨大なロケットエンジンを備え、本来の速度以上の速度でジェネシスへとまっすぐ突撃していた。
「今のってイサリビだよな……?」
「もしかしてとっておきって……」
「「「あれ?」」」
『そうだ!』
「「「うわぁ!」」」
突然通信が開きカリストから通信が入る。そしてとっておきの正体を聞き驚愕する。それはイサリビを巨大な質量兵器としてジェネシスへと撃ち込むことだった。
どこかで見たようなことを実行し、そして……。
「ジェネシスが……」
「壊れたね……」
「いいことじゃない」
「戻ろう、戦艦に」
sideアークエンジェル
「いよいよね……ザフトと連合の戦闘に介入。この戦争をここで終わらせます!」
「ストライク、出撃します。続いてバスター、発進どうぞ」
(ムウ……キラ君……)
「フリーダムとジャスティス、敵機と戦闘を開始!戦線を離脱します!」
「周囲状況確認急いで!」
「これは……!戦線の広域にスモーク確認!スモーク内から巨大なエネルギー反応!戦艦クラスです!」
「まさか……!来てくれたの?」
スモーク内から現れた巨大な赤塗の戦艦、そのサイズはアークエンジェルを前後に合わせてやっとというほどの大きさだった。
オーブ上空から降りてきた時よりも大きくなっており、翼の下には巨大なミサイルのようなものを担架していた。
三隻同盟の右舷側に位置するところまで移動すると前方の格納庫が開き、3つの
キラと同い年か年下にも見える少年が乗るガンダムとその仲間が今ジェネシスへと向かって発進していった。
「彼らに……任せるしかないのね……」
「アンノウン艦より通信あり!繋げます!」
アンノウン艦から繋がった映像通信にはオーブ内でアークエンジェル内から救助した少年を奪い去ったロボットが映っていた。
『あー、聞こえてる?こちらベレロフォン艦長代理カリスト。これより貴官らを護衛する』
「どういうこと?護衛は助かるけれどそれをする理由が見えないわ。それに貴方、以前アークエンジェルに侵入した人…人よね?」
『そうだな、侵入したよ。だがそれはアイツを助けるための致し方ないことだ。人は殺してないだろ?』
「……故あれば殺すという事?」
『どうとってもらっても構わない、俺は別に貴官らがどうなってもいいと思ってる。貴官らを助けるのはハヤス……貴官らが救ってくれた友人の願いだからだ』
「……そう。護衛、感謝いたします」
『結構、何か要求があれば可能な限り叶えよう』
「敵艦のドミニオンには友人が……ナタルがいるの」
『そうか……要求を承諾。何とかしよう』
「なんとかって……ちょっと!」
「……彼本当にロボットかしら」
「ロボットなんじゃないですか?」
「でもそれにしては人間味が強い気がするわ」
「勝手に通信切っちゃいましたしね」
「説明不足が目立つわね……」
一方的に通信を切られ、何をするのかが謎のままアンノウン艦ベレロフォンからMSが発進していく。その数は三隻同盟の全MSを含めても足りないほどの数だった。
ザフトにも連合にも、そしてオーブにも見られない特徴を持ったMSが次々と発進するとアークエンジェルの周りを飛び始める。
そして何機かはM1アストレイたちにも追従し、三隻同盟に足りなかったMSの数を埋め合わせてしまった。
「このMSたち一体何だろうね」
「気になるけど敵じゃないっぽいし」
「ちょっと可愛いね」
「そ、そう?」
連合艦隊からの攻撃、しかしその攻撃はアークエンジェルに届くことはなかった。その攻撃の多くはベレロフォンが受けていたからだ。しかし、ベレロフォン自体には緑色のフィールドが張られダメージを無効化しているようだった。
ベレロフォンから攻撃してきた連合艦隊へ全砲塔を向けるとその火力によって跡形もなく消し去ってしまった。一歩間違えればあの砲塔が全てこちらへと向き攻撃してくる可能性があったのかと思うと安心してみることができなかった。
しばらくするとベレロフォンの翼下のパイロンに搭載されていた4つの物体が切り離されたと同時にロケットエンジンを点火しジェネシスへと向かっていく。
すると正面から、ついに現れてしまった。戦友であるナタル・バジルールが艦長を務めるドミニオンだ。
『アークエンジェル、来たぞ』
「えぇ……ごめんなさい、これからやることに手出しはしないで」
『……そうか。だがナタルの件、何とかしてみよう』
「何をするのか分からないけど、お願い」
『……幸運を』
「……何よ、意外とそういうこと言えるのね」
アークエンジェルとドミニオンの戦闘、同型艦と苦楽を共にした戦友が敵に回りお互いの攻撃は五分五分だった。
だが、アークエンジェルはついにドミニオンに捉えられる。ドミニオンから発射されたローエングリンはまっすぐアークエンジェルの艦橋へと進む。
咄嗟に目をつむる、つむってしまうマリュー・ラミアス。しかしその衝撃は訪れなかった。
「へっへっ……やっぱ俺って不可能を可能に……」
ストライクに乗ったムウがアークエンジェルの前に躍り出る。ドミニオンのローエングリンからマリューの乗るアークエンジェルを守るためだ。
ストライクの限界が近づいたその時。
『ハッ!ガンプラも創作も自由なんだよ!!』
オーブ内に現れた黒いカラミティがあの時の大盾を持ってストライクの前に出る。ストライクはビルゴⅡに回収され、ムウはそのまま助け出される。
『ラミアス艦長!ナタルは任せろ』
「ちょ、ちょっと……!」
またしても通信を一方的に切られる。黒いカラミティはそのままドミニオンへと進むとしばらくしてドミニオンから離れる。離れる際に残ったローエングリン砲へビームを放つと黒いカラミティから通信が届く。
その通信からは懐かしい声が息も絶え絶えに聞こえてくる。
『はぁ…はぁ……撃て!マリュー・ラミアス!』
「ッ!ローエングリン砲!撃てぇー!!!」
アークエンジェルの撃ったローエングリン砲はドミニオンへと直撃、ドミニオンは轟沈する。
黒いカラミティは再びアークエンジェルの格納庫にいる。奥には中破しているストライクが固定されている。
黒いカラミティはナタルを引き渡した後再び出撃する。
「この恩は……ちょっとやそっとじゃ返せそうにないわね……」
「ムウ・ラ・フラガ少佐、並びにナタル・バジルール少佐収容完了しました」
「ベレロフォン、本艦に接近。防衛行動へ移行……」
「戦闘中だけど、ちょっと休めるわね……」
アークエンジェルの周囲を囲うようにビルゴⅡが飛び、その近くにはアンノウン艦ベレロフォンが待機している。砲塔は最も近い敵へ向き、牽制射撃を行い艦隊に近づけさせない。
そんなベレロフォンへ数時間前に出撃した
「彼らも激戦だったのね……」
「これは……!艦長!ジェネシス大破!」
「なんですって?!あの子たちがやったのね……」
「連合艦隊も徐々に戦線を離脱していきます」
「ザフト艦からも砲撃が見受けられません、もしかして……」
「くっ!こいつ……!」
キラは苦戦していた。クルーゼの駆るプロヴィデンスガンダムのドラグーン攻撃によって追い詰められていた。ミーティアは破壊され、援護に来ていたアスランのミーティアも破壊された。
クルーゼの正体、それはムウ・ラ・フラガの父親の劣化クローンだった。身勝手に生み出され、そして身勝手に捨てられた男は世界を恨んだ。
キラとアスランを意図的に離され、足を止められた瞬間。キラの周りにドラグーンが展開する。
「しまった!」
ドラグーンから緑色の光があふれ、あと数秒もしたらそれぞれからビームが飛び出し、キラとフリーダムに風穴を開けようとしたその時。
青い光がドラグーンに照射される。そのままビームで薙ぎ払いドラグーンを全て破壊する。
その光景を見てプロヴィデンスは狙撃された方角を思わず見る。わずか数秒の確認ではあったがその隙は大きかった。
そのチャンスを逃さずフリーダムはプロヴィデンスへ肉薄し片腕を切り飛ばす。ジャスティスもその姿をみて足を撃ち抜く。
大きく姿勢を崩したところへさらにフリーダムがビームサーベルでトドメを刺す。
あれだけ苦戦していた相手がたった一つ盤外から撃たれた攻撃によって均衡が崩れ、打ち倒すことができた。
最後に狙撃地点を見ると、自らの戦艦に戻る黒いカラミティが確認できた。キラはアスランのジャスティスへ目配せすると2人はエターナルへと戻っていく。
長い戦いの最後はあっけなく終わった。だが、原因だったクルーゼも、禍根を残すジェネシスも、ブルーコスモス現当主もいなくなったことでヤキン・ドゥーエ戦の幕が閉じた。
『終わったな、ハヤス』
「あぁ……これでもう終わりかな……」
「長かったね、初めてやったストーリーミッションが……」
「まさかこんなことになるなんてね」
『よーし、ミッション完了!停戦の信号弾でも撃っとけ!』
『了解』
ベレロフォンから停戦の信号弾が上がる。ザフトも連合もどちらも矛を収め各々の基地へと帰還していく。あとのことは政治家が決めることだと言わんばかりに。
残存するビルゴⅡを収納したベレロフォンは再び散布されたスモーク内へと潜航する。その光景を見るのはもはや三隻同盟しかおらず、潜航するその艦影を三隻同盟のクルーたちは敬礼をもって見送るのだった。
『なぁハヤス。お前たちもそろそろ強くなったことだし、リベンジマッチ。しようぜ』
「……あぁ!望むところだ!」
「次は絶対勝つんだから!」
「最初の戦いは実際引き分けのようなものだしね」
『あぁ、次は本気で行くぞ』