『なんだよ……できるじゃねぇか……!』
以前の必殺技を上書きするように現れた新たな必殺技、
元になったゼロストライクガンダムの面影を残し、ヴィクトリーとウィングの要素を取り込んだような頭部。
左肩はウィングガンダムのような形へと変化し、リネのメインウェポンだったGNソードⅤとシールドのように合体したGNソードビットを装備している。
右肩はV2ガンダムのような形へと変化し、ナグサの機体のバックパックのバスターパックとハヤスのツインアグニを合体させたような手持ちのロングビームライフルを装備している。
バックパックはウィングガンダムEWのような翼が生え、あたりにはフェザーファンネルが機体を中心に飛び回っている。
脚部にもヴィクトリーとウィングの要素が混じった装甲が追加され、防御力が上がっている。
「できた……!これが俺たちの必殺技、
「人呼んでトリニティ……えっと……」
「トリニティストライクでいいんじゃないかしら」
「いいな……いいなそれ!」
そんな劇的な変化を目の当たりにしたカリストの目はギラギラと輝いていた。正しく彼の見たかったもの、早川進に見出していたかつてのライバルを重ねていた。
『ハハハハハハ!そうだ!!それでこそ【ハヤス】だ!!!俺は正しかった!!!!』
そう叫びながら残ったアームドアームのビームガンを撃ちながら急接近する。フェザーファンネルで迎撃するも、次々と撃ち落とされシールド状態だったGNソードビットを飛ばしても飛ばしたビットを殴り飛ばされ防御されてしまう。
正気を失っているカリストの暴走状態の前にトリニティストライクは押されていく。
インファイトの距離に近づかれ思い切り殴りつけられ咄嗟に防御するハヤス、必殺技を使う前の機体であればこの時点で腕を破壊され、そのまま胴体を貫かれるほど強力なパンチだった。
しかし、ただ吹き飛んだだけでダメージと言えるダメージが見受けられなかった。若干へこんだくらいの損傷であった。
『……なんだその馬鹿みてぇな硬さは!!3機分とでもいうのか……?』
「ダメージ!……は無い?嘘だろ?」
「すごい!すごいよ!」
「これなら勝てるわ!でも……」
新たな必殺技
『面白れぇ!!もっと見せろよ!!』
再び急接近し始めるカリストに対し、ハヤスはロングビームライフルを撃ちこむ。咄嗟にカリストは上方へと回避する。しかしそこで思わぬアクシデントにあう。
本来であれば強力なIフィールドによってビーム属性を無効化するはずだった。しかし今の状態のハヤスたちの攻撃はそのほとんどが必殺級の一撃。
躱したはずが脚部を掠めたことで脚部のIフィールドの機能を停止させたのだ。
『Iフィールドを貫通しただと……!』
次々と撃ち込まれる必殺級のビーム、いくつか躱し接近するものの再びインファイトの距離に来るまでにもはやIフィールドは胴体部分にしか機能していなかった。
そして最後のIフィールドもハヤスたちの目の前でパージした。
「な、なにを!」
『奥の手ってのは隠しておくもんだぜ!!!』
ロングビームライフルのためインファイトの距離に持ち込まれると取り回しが不便だったことと、GNソードⅤを持つ手首をつかまれ拘束されるハヤス。
カリストがパージしたIフィールドの下にはカラミティガンダムのスキュラが残されており、近距離で撃ち込まれる。
その威力はすさまじく、ハヤスの持っていたロングビームライフルを破壊しGNソードビットも破壊されてしまった。だが、近距離で使ったことでカリスト側にも損壊があった。スキュラはもはや使い物にならなくなっていた。
『もっと見せろ!!!お前たちの力ってやつをよ!!!』
「はぁぁぁぁ!!!!」
GNソードⅤを振り下ろすも、白刃取りをされ上へと蹴り飛ばされてしまい、さらにそこへ残ったアームドアームを撃ちさらに遠くへと飛ばされ、今の状態で回収することができなくなってしまった。
そして、
「くそっ!!あと少しだったのに……!」
『おい、もしかして時間制限でもついてんのか』
「ッそうだよ……!」
『ハッ……だったら最後にとっておきで決着をつけようぜ!!!』
「……ありがとう」
『勝ってから言え!!!俺が勝つけどなぁ!!!』
「いや、俺が……俺たちが勝つ!!!!」
「「ハヤス!!!」」
「あぁ!!!」
最後の力を振り絞るように光り輝くトリニティストライク、その光は左拳へと収束していく。カリストも右手へと力をためていく。全身にあったIフィールドが壊れたことで光の翼が形成される。だが、その見た目は優雅なものではなく悪魔のような翼だった。
「くらえ!コズミック!!!ナックルゥゥゥ!!!」
『ハァァァ!!極熱!!!デモンフィンガァァァァ!!!』
二つの力が鬩ぎ合い、次第にカリストが押していく。だが、ハヤスの機体の背後に連なるように光が形成されていく、形成された姿はハヤスたちが出会ってきた仲間たちの姿だった。
テックスターから始まり、デクーやトーナメント後から交流のできたインパルスコンビや苦戦を強いられたプロヴィデンスやマスターガンダムの姿もあった。
そしてカリストはその背後をみてしまう。
ハヤスたちを支えるように現れた仲間たちの中には先程戦っていたメカマスターとアフサイド。そしてカラミティパラディン改の姿を。
「いっけええええぇぇぇ!!!!」
(……やっぱり俺は正しかった、お前は【ハヤス】だ。甘々のな……)
背後に現れた仲間たちの姿がハヤスの機体へと吸い込まれていくごとに、その力を増していき、ついにカラミティファントムの右手から肩にかけてひびが入り始める。
ハヤスの左拳がカリストの右手を破壊しながらその背後へと振り抜く。
『ハハハハハ!!!やっぱりお前は最高だ!!!!』
そう叫びながら爆発し、振り抜いたままの姿で固まるハヤス。コクピットの画面には BATTLEEND WINNER COSMICFIGHTERS
の文字が浮かんでいる。そして次第にハヤスたちの視界がホワイトアウトしていき
気付くとハヤスたちは草原に立っていた。周りを見渡していると、見覚えのある二人のロボットがいることに気付く。
緑色のほうはメカマスターであり、青色のほうはアフサイドだった。2人は足元を見ているようでそこに誰かが倒れているとわかる。
ハヤスたちは二人のほうへと歩いていく、倒れていたのはカリストだった。3人は何か会話をしているようだった。
「……負けたんだな、俺たち」
「あぁ」
「楽しかったな、あの戦い」
「あぁ、満足したか?」
「うん……大満足だ」
ハヤスたちが近づく足音が聞こえ、2人がハヤスたちのほうへ顔を向けると、場所を譲るように移動する。
「ありがとう」
「何がだ」
「最後に、決着をつけさせてくれて」
「ハッ……全てを出し切らないと不完全燃焼になっちまうからな」
そう言いながらカリストは起き上がるとどちらからと言わず自然とハヤスと握手する。
握手した際にハヤスはカリストから何かを渡される。それはカリストたちの所属するDOLGのフォースエンブレムとカラミティパラディン改のデータだった。
リネとナグサもいつの間にやら同じものをそれぞれアフサイドとメカマスターからもらっていた。
「お、おい!急にどうしたんだよ」
「あぁ、悪いな。野暮用でGBN離れることになったんだ。おそらく今後できないからよ」
「……現実の事を聞くのはマナー違反だけどもしかして重い病気とかなのか?」
「ちげーよ、本当にできなくなるだけなんだ。だから信頼できるお前らに渡した方がこいつらも喜ぶだろ」
「………」
「そんな深刻な顔するなって、笑顔で見送ってくれよ」
「あぁ……!ありがとう!またどこかで!」
「へっ、あばよ!!!」
三人はそれぞれ別れの言葉を言いながらログアウトしていく、残されたハヤスたちは託されたエンブレムと機体データを見てそっと涙を流す。
さらば、戦友よ。いつかどこかでまた逢おう。
後日、コズミックファイターズのフォースネストの会議室のような場所の中央にそれぞれ背中合わせに立たされた、3つのガンプラが輝いていた。
-fin-
終わり