今日この物語の始まりは彼女の声からだった。
事務所の机と向き合い、資料を見ていると扉の開く音がした。
そして、元気な声が聞こえてきた。
「ハーイ!マネージャー!」
その声の主は、柚葉。
「柚葉、おはよう」
制服姿だったので学校帰りだと思い、再び机と向き合う。
柚葉は俺の隣に座り、カバンからとあるものを取り出した。
机に、とある紙を柚葉は出した。
「なんだ、学校でわからなかったところがあるのか?」
「いいえ。これは私の願い事よ!」
「願い事……?」
柚葉が取り出した紙を手に取り、書いてあったことを読み上げる。
「甘いクレープを食べたい……のか?」
「そうよ」
「わかった、行くのはいつでもいいんだが…もしや今か?」
「Now!」
「わかった、行こう」
机に置いてあった財布を持ち、事務所から出る。
事務所から商店街を通り、駅に向かう途中。
「そういえば、柚葉。どこのクレープ屋なんだ?」
「駅前にあるクレープ屋よ!」
確かにネットニュースに書いてあったな。
なんか…激甘クレープが人気だとか書いてあった気がする。
もしかして、それが目的?
もしやと思い、柚葉に聞いてみた。
「なぁ柚葉。もしかして激甘クレープか?」
「あら、マネージャーも知ってたの?なら話は早いわね!早く行くわよ!」
柚葉は駆け足で商店街の通りを走っていく。こんな走ってしまうなんてよっぽど楽しみだったんだな。
確か、そのクレープってクレープの上にクリームがいっぱいあって、紫色のアイスみたいなのが乗ってたはず。
確かに激甘クレープと呼ばれるのもわかる。
走っていく柚葉の後ろ姿を追うように俺も軽く走る。
この時の柚葉はとても子供っぽくて、すごく楽しそうな顔をしていた。
期待に満ち溢れていた。
駅前につくと、長蛇の列が目に入った。
恐らくクレープでこんなに集まっているのだろう。
「ワオ…すごいわね、いっぱい人が並んでるわ」
「ネットでかなり広まってたからな。多くの人が興味を持ったんだろう」
食べられるまでは時間があるが、楽しい話でもしていればすぐに食べれるはずだ。
「それじゃ、並ぶか。少し時間はかかるが、話して時間潰そう」
「そうね!」
最後尾に並び、柚葉と話を始める。
「実は学校で……」
仕事や学校のことだったり、寮での出来事。
買い物に行って買ったものや、レッスン中でのことだったり色々なことを聞いた。
その時の時間は、すごく楽しかった。
きっと柚葉も楽しかっただろう。
それに、もうそろそろあのクレープが買える。
柚葉は目をキラキラさせ、今すぐにでも食べたいと目で訴えていた。
ついに自分たちの番……。今から俺が注文をしようとしたとき。
「激甘クレープを二つ、くださーい!!」
元気いっぱいの声で店員さんに言った柚葉。
店員さんから激甘クレープを受け取った柚葉は一つ俺に渡し、一緒にベンチに向かった。
「いただきまーす!!」
パクっと二人で一口食べる。
味を噛み締め…顔を見合わす。
「これ、すっごくおいしいわね!!」
「あぁ、甘みが当然だが良い。久々にクレープ食べたが、美味しいな」
「でしょ?」
柚葉はもう一口食べる。
「うーん!サイコーね!!」
ものすごい食べっぷりだ…。さすが柚葉。
クレープを食べ終わると、柚葉の制服にクリームが付いていることに気づいた。
「柚葉、これ使って。制服にクリーム付いてるから」
「あら。なんだか恥ずかしいところ見せちゃったわね」
「大丈夫だ。………また食べに行こうな」
「そりゃもちろん!今度はもっと食べるわよ!!」
事務所に戻ると、あの時柚葉に渡された紙が机に置いてあった。
ふと気になり裏面を見ると、九つの願い事が書いてあった……。
ロマんさんに書いていただきました!