お早い投稿えらいですわわわたくし!!!!!!!!!!!!!
シャーロット視点ァ!
壺に手を突っ込んで入浴剤を鷲掴みにし、広い湯船にぶん投げて棒でかき混ぜる。
試供品だぞってブロンテ先生から貰ったけどこれ、なんっか薄っすらどっかで嗅いだ匂いするんすよねぇ。
何だっけこれ。
「この匂いは何でしょう?」
「知らないっす。言っちゃったらちゃんとした感想も聞けないっていうブロンテ先生の拘りっすよ」
「適量は聞いたんでしょうね……」
さーてどうでしょうねー。
試しに手についた粉を嗅いでみる。
えほっ、う゛っ!
「粉を吸い込んだらそうなりますわよ」
そーなりますっすわよね。
まあこんな事は些細な事っすよ。
そう。些細な事。
「はぁ……」
──道化師トリブレ、あるいはまだ見習いの道化師トリブレ。
あの子と最初に会ったのは、確かまだ親が生きていた頃だったと思う。
子供だったシャロは近所へちょっと冒険に出たら迷子になっちゃって、あちこち歩き回って、ようやく帰れたと思ったら変な路地を見つけちゃって、懲りずにまた冒険して……。そして偶然出会った。
路地の片隅に置かれた膝程もない小さな木箱。その中から一切姿を見せず、言葉を詰まらせながら少しずつ喋るトリブレはたぶんシャーロットという個人に始めてできた友達なんだろう。
つい先日ジョージの旦那からソラっちをトリブレに会わせると聞いた時は、驚きつつも喜んだ。
共通の友達ができれば嬉しい。
それに、上手く喋る事が出来ないトリブレと喋る事が出来ないソラを会わせるのは何となくお互い良い経験になりそうだから。
でも……。
「ソラっち大丈夫っすかねぇー」
「その道化師さんは良い方なのでしょう? なら……」
「そっちも心配っすけど、ソラっちって理屈っぽい所あるから道順間違えそうで」
「……? ソラさんは地図を覚えてますでしょうし平気だと思いますけど」
壺を適当な所に置いてつるっとタイルに足を滑らせ、ざばんと頭から湯船に飛び込む。
業務が終わったのでエミリーと一緒にお風呂まで来たけれど、身体と共に頭に思い浮かぶのはまだ屋敷に戻ってきていない新しい妹分の事。
一番心配なのはそもそもトリブレの下へ辿り着けているかどうかだ。
地図に描いた通りにちゃんと歩いてくれているのかな?
あの別世界のような良く分からない場所へ行くには、この町で特定の順路を歩いてから路地の出現する場所まで辿り着く必要がある。道順が鍵のような役割を果たしているらしい。
ソラに見せた地図に示した複雑なルートを、ソラが無意味だ面倒だからと効率のみを考えて無視してしまえばトリブレの場所まで辿り着けない。
一応この町に籍を置き、時々広場で変な鉄の人形を使って芸を披露しているトリブレの事はブロンテ先生もエミリーも町の人達も何となく知っている。
ただし非現実的かつ意味不明な体験、あるいはこの世界の常識に喧嘩を売るように存在するあの家の事は一部の人間しか知らないのだ。シャロとて偶然見つけなければ今も知らないまま。
ジョージの旦那はソラにその秘密の道順の意味をちゃんと伝えただろうか?
道順の意味を知ってるのは偶然発見したシャロ以外にはジョージの旦那しかいないし、注意できる人間も限られる。
シャロがどこかのタイミングで教えてあげられればよかったんだけど、ブロンテ先生やアンが近くにいたから教えられなかった。
……あ、いや、ミニリンゴ渡した時に言えば良かったっすね。
その時に言えば良かったのに忘れてたっす。本当にごめん。
「……シャーロットさん。いつも思うのですけれど、転ばずお風呂に入りませんこと?」
「飛び込んでるだけっす!」
「いつか大怪我しますわ」
「しーないっすー」
「見ていて心配ですの」
ざばざば。ばっしゃん。広い湯船は泳ぐに限る。
ふはは、シャロは子供の頃から身体が丈夫なのだ。
いやまあ転ぶ必要は全くないっすけど。でも転んじゃうんだから仕方ないっすよね。
「全くもう。走らなければいいのに……」
エミリーが湯船へやってきたので泳ぐのをやめてちゃんと肩まで浸かる。
そういえばエミリーはいつも仕事が終わったらだいたいすぐ家に帰っちゃうけど、今日はどうしたのかな。
いやみなまで言うまい。分かってるっす! ソラっちの事が心配なんすね!
ふっふーん。ほんっとにエミリーはソラっちの事が好きなんだから。
……屋敷の個人ロッカーの中、ソラっちの写真だらけなの知ってるっすからね……。
「そういうシャーロットさんだってそうでしょう? いつも子供達のお世話の為にすぐ帰るのに」
にゅ。シャロへカウンターっすか。でもこっちはちゃんと理由あるっすよ。
今日はトーマスが休みっすからゆっくりしてるんす!
チビ共もだいぶ大きくなったし、あまり手は掛からないから不器用な弟のトーマスでも世話はできる。
世話と言ってももうこっちが料理と洗濯をやってれば後は何とでもなるし。
だから今は、ちょっと前みたく慌ただしく生活する必要もあんまないんすよねー。
「それで、本心は?」
「ソラっち&トリっちが超心配!」
「そうですわよね」
いやーあの二人、想定通りに動いてくれるかなーどうかなー。
何とかなるとは思うんすけどねぇ。
「心配しててもしょうがないですし、シャーロットさん」
「なぁに?」
「シャーロットさんから見たソラさんについて教えてくださいませんこと?」
「急に変な事聞くっすねぇ」
「わたくし以外から見たソラさんの事も知りたくて……」
それは……なんか、なんというか、エミリーもなかなかに偏愛してるっすねぇ……。
写真だらけの件といいなかなかにキモい。
もはやストーカー一歩手前だよエミリー。少しは抑えて。
「ソラさんを愛し、何でも知りたいというのがそんなにいけませんか!?」
「いやそこまでは言ってないっすけど」
──いや、はっきり言ってやるべきなのか?
主にソラっちのために。
「で、どうでしょうか?」
ずいずいっとエミリーが顔を近づけて、半ば脅迫するように迫る。
ソラっちガチ勢の目だ。ソラっちの為にここまでやるっすか。恋愛っていうか偏愛。
「んー、じゃあそうっすねぇ」
「……よし」
ソラっちはかわいい妹分! ちょっと背伸びした目の離せないかわいい奴。
見た目はチビっこ末っ子なのに、何というか独り立ちする寸前みたいなほっとけない子。
そんな感じ。
「ふふ。わたくしに妹はいませんが、そういうかわいさは分かります」
「っすよね!」
「喋れない伝えられないからって、ひとりで悩んでそうで放っておけないかわいい妹。ふふ、ふふふ……」
「……そ、悩んでそうっす」
ぶくぶくぶく。
隣のエミリーも自分で言ってから問題を再認識したのか、シャロが繰り返した事には特に何も言わなかった。
「わたくしめがもっと力になれれば……」
目覚めてからメイドになって、ソラっちはずっと自分を機械か人形か、とにかく人間に仕える無機質な道具であろうとしていた。
いや実際のところブロンテ先生や入ってた棺の蓋に書いてあるのを見るに、そのまんま機械人形って事で合ってるっちゃ合ってるらしいんすけどね。
自分が動くための電気を蓄える位しか休みを必要としない、言われた事を忠実に行う機械。電球や昇降機のような人の暮らしを支えるだけの存在。
本人がそういった存在に拘ってそうあろうとしていたのは、顔を見なくても言わなくても行動で分かる。
でもそんな中に先日の映像で、兵器ではない生き方をしろと過去から言われてソラっちは戸惑ってしまった。
戦争も出生も詳しく分からないシャロ達に代わって明確にそう指示されてしまえば、真面目なソラはまず受け入れる。
受け入れて、でもどうしたらいいのか分からなくなってしまう。
兵器の機械として生きてきたのに突然人間らしくしろ幸せになれと言われても、人間的な振る舞いが赤ん坊みたいなソラには荷が重い。
給料を渡して好きな事を探せと言っても当人は好きな事というもの自体を理解していないから何から始めればいいのか分からないし、趣味を探せと言っても同じ理由で何をもって趣味とするのか分からない。
シャロでもそれっぽいことを言えるけど、明確にこうしろああしろなんて言えないし……。
なんとも難儀な立場だ。
「シャロ達は近くにいるだけが、一番力になれるかも知れないっすね」
「そうなのでしょうか……」
「友人のためにしてあげられる一番の事は、ただ友人でいてあげる事って本に書いてあったっす」
「あら、意外に勤勉」
「今シャロのこと貶したっすか?」
「いいえー?」
「そっかー」
今のソラに必要なのは命令をくれる存在ではなくて、対等な人間。
問題となっているのが機械としての自分と人間的な自分とのギャップも、一緒に過ごしていれば、いつか……。
「だってソラっちには、バリバリに感情があるっすから!」
「うわびっくりした」
ちゃんと個人が成っているなら、焦らなくてよし!
ソラっちは昇降機みたいな単調な動きしかしない機械じゃないし、アンの好きなアンティークドールみたいな球体関節の人形でもない。
「ソラさんは少しずつ学んでいるのに、わたくしが焦ってしまってはダメですわよね」
「そそ。まぁそれに、手は打たれてるっすから」
「え」
「ほら、トリっちのことっすよ」
シャロはさっきソラっちとの関係性を友とは言ったけど、ソラっちにとってこの屋敷の面々は家族のような慣れ親しんだ存在だ。
それに対してトリブレは会える時間の限られる外部の存在。
もしかしたらだけどソラにとってシャロ達は身内の存在で友達とは認識されてないかもなので、初めて友達ができたと何か人間的な意識ができるかも。
そうでなくても道化師の行う芸というのを見て芸術や技術というものに目覚めてくれれば……ククク。
やはり。
「あああぁぁ~。思惑通りに進んでくれるか心配っすぅ~」
「ちょ、シャーロットさんが茹で上がってますわ!?」
話し過ぎて長湯し過ぎたぁ。
エミリー引っ張ってぇー……。
「え、えい! おもぃ……! というか、デカい!」
「今年でついに身長180センチの大台に達したっすよぉ~……がんばえ~……」
「もう少し成長を抑えてくださいまし!」
「やーだーもっと伸びるのぉー」
「どこを目指していらっしゃいますの!?」
折角なら伸びるとこまで伸びたいっすよー。まだまだ伸びてるみたいだしー。
ビッグになりた──あっ。
「あっ」
エミリーの手が滑って、お湯の中に逆戻りしていく。
こうなったらホントは嫌だけど、最終手段として冷水を頭から被り何とかするしかない。そう思った瞬間にシャロの腕を小さな手が掴んだ。
その小さな手の持ち主は、シャロどころかエミリーよりも圧倒的に身長のない子供のような……ソラ。ソラが、帰ってきていた!
シャロの体重をあっさりと引き戻したソラは、そのまま引き摺って脱衣場にぽいっと投げてくれる。
どんがらごろごろ。……すんごい雑だね。
いやシャロが丈夫なのを知ってるからなんだろうし、別に痛くはないし気にしてもないからいいんだけどさ。
波にもまれたみたいでちょっと楽しい。人に投げられるなんて経験もうあんまりできないし、ちょっとしたアトラクション。
「……」
続いて甲斐甲斐しくタオルで体を拭いてくれ、その流れで下着も手渡される。というか装着してくれる。とても馴れた手つきだ。
最初は自分の着替えもできなかったのに、あーもう成長に涙がでちゃいそう。
ソラっちって手順があるものは一発で覚えちゃうからこういうの得意なんすねぇ。
「あー! ソラさん! ソラさんあー! 困りました! 困りましたソラさんあー!」
エミリーうるさっ。
何を騒いでるんすか。
「のぼせましたわー! ソラさん! ああー出られません!」
「いつも一時間くらい余裕でお湯に浸かってるくせに──」
「あー! ソラさん! あー!」
「……」
大好きなソラっちに介抱して貰いたいからって必死すぎでしょ……。
ぺいっと残りの私服をシャロに投げ渡したソラは、素直にエミリーを収穫しに行った。
棒読みなのは明らかだし、うるさいから止めに行ったの方が近いっしょこれ。
真面目なソラっちの事だからもしかしたらあの演技を信じるかもしれないけど。
藤の椅子に腰を落としてスツールに足を乗せて、扇風機に吹かれながら休んでいると満足げな顔のエミリーがソラの小脇に抱えられながら出てきた。
そっか。エミリーは身長的にあの運び方できるんだ。
シャロはどう頑張ってもバランス的てか長さ的に無理っすからね。ソラの背だとどうやっても引きずっちゃう。
にこやかに脱力したままのエミリーはソラによって身体を拭かれ、服を着せられていく。
とっても満足そう。それでいいのか人として。いや元お嬢様的にやってもらうのは当然なんだろうけどさ。
「よっと」
紐を引っ張って手元に手繰り寄せてドライヤーをぶおー。髪を乾かす。
家のチビ共は最近ひとりでお風呂に入りたがるし髪の毛も自分で乾かすようになったし、なーんか少し寂しいなぁ。
ちょっと前まではすーぐ走り回って大変だったというのに。
「……後でソラっちの髪の毛、乾かしたい……」
「それはわたくしがやりますッ!」
そ、そんな剣幕で言わなくたっていいじゃん……。
こっちはチビ達が姉離れして寂しいというに……。
「シャーロットさんこそ子離れしてくださいまし。あの子達も年頃でしょう? いくら姉と言えど、異性との入浴は目のやり場に困りますわ」
エミリーがなんかそれっぽい事言ってるけど、自分の事を俯瞰してみ。
ソラっちに全てを託して任せて着替えもさせてもらってるとても情けない姿だから。情けない顔してるから。
「でもチビ共はまだまだ子供っすよ」
「あの子たちはもう12歳ですわ。わたくしは12の頃にはお見合いの話をさせられましてよ」
「そりゃそっちはご令嬢なわけっすしー」
でもそうかなぁ。もう子供じゃないのかぁ。
シャロが12の時ってどうしてたっけ。長女として妹弟の面倒みるの手伝ってたし、なんか今と変わらない気がする。
これからあれこれ手を焼く必要がなくなれば……。
「ああ! そしたらシャロは、シャロはこれからどうすれば!?」
「……」
「ソラっち! シャロはこれから何をして生きていけばいいんすか!?」
「……」
シャロの髪を乾かすのを手伝おうと来ていたソラの肩を揺さぶるけれど、首を傾げられた。
ソラもこれからどうすればで悩んでいるんだし、似た者同士の状態になってるのかも知れない。
「ふふ、仲間外れにしないでくださいまし。わたくしもいますわ」
「エミリ院」
「誰ですのそれ」
最近のソラっち大好きムーブで忘れかけてたけど、令嬢というしがらみから抜け出したエミリーもこれから何をしていこうか悩み中なんでしたっけ。
ここに揃ったメイド三人衆、それぞれ過去が終わってこれからを歩む同志っすね!
……これで三人衆……? なんか一人忘れてるような……。
ぼぅわ!
「……」
「アッツゥい!」
ドライヤーから突然炎が噴き出てシャロの髪の毛を炙った!
「あ、アンの事忘れてたっす!」
「……」
「そういえばいました」
ソラは首を傾げているけど、アンが仲間外れにされたって怒ってる!
「アンも仲間っすよ! 当たり前じゃないっすか!」
「そうですわ! 明日一緒にお絵かきでもして遊びましょ!」
エミリーも必死に呼びかける。炙られたくないから。
「……」
ソラっちは炎が出た理由をよく分かってないのか、首を傾げてドライヤーの口を必死に覗き込んだり指を入れたりこめかみへ線を繋いで自分の電気を使ったりしてる。
というかソラっちで電力供給できるんだ。便利ー。
でも原因はアンだって事には思い至ってないみたい。
「……大丈夫っすかね?」
「そうみたいですわ……」
「……」
というかソラっち、シャロ達は自分で髪乾かせるからドライヤーしなくて平気っすよ。
お風呂に入りに来たんだからゆっくり休んでくるといいっす。
何もそんな、裸んぼで色々しなくてもさ。
「……」
伝えるとこくりと頷いて、やっと浴室へ向かった。
ごめんね手のかかる人ばっかりで。
「ソラさん、いまいちお洋服の重要性というか羞恥心がないですわよね」
「心は人でも身体は機械っすしねぇ」
「熱が籠るのを嫌っているのも……」
エミリーの首が回って、壁際の籠に向く。
そこにはソラっちの脱いだものが入れられてるけど、エミリーさん……?
「ソラさんの下着……」
「ストーップ! エミリーステイ! それは駄目っすよ!?」
本人の脱いだもの漁るって犯罪レベル上がってるぅ!
「ち、違いますわ! ソラさんの為ですの!」
「どう見てもエミリーの趣味が暴走しているようにしか見えないっすァ!」
ぎぎぎぎ。
体格差と子育て経験パワーのフィジカルで引き摺って止める。
エミリー、面会には行くからおとなしく捕まろう……!
「離してくださいまし! ソラさんが暑いのが嫌で下着を身に着けていない予感がして!」
「えっ」
「パジャマの下に付けているのは前に確認した事ありますけれど、最近になってソラさんがいらないという考えに至ってしまっていそうで心配で」
ソラっちは確かに熱いのが苦手……って前にパジャマの中を確認したってどういうことすか。
でも最近のソラっちなら身体に密着してて、外から見えない位置にある肌着を無意味で不要と判断する可能性は無きにしも……。
「エミリー」
「はい」
「シャロはちょっとお風呂上りの牛乳でも取ってくるっす。ちょっと時間かかるかも知れないっすなー」
「はい」
抱えていたのを解放し、一時退散。
事情があれば黙認するのもシャロの流儀。
ソラっちが衣類を漁られた事を怒るなんてないだろうけど、でも一応何かあった際に第三者としての立ち場にいて仲裁できるよう取り計らうのだ。
脱衣場を出てゆっくり歩き、本館に入ってすぐの脇に置いてある冷蔵庫から牛乳の瓶を3つ取り出す。
本当は脱衣場の中にこの冷蔵庫も持っていきたいんだけど、老朽化的に置ける場所が無くて難しいらしい。早く立て直せばいいのになー。
瓶を一つ開けて、中身をごっきゅごっきゅ。ぷはっ。
こっそりいつも一つ多めに飲んじゃってるけど、バレてないよね。バレた所で何も言われないだろうけど大食いだって思われたら何か乙女的に嫌だ。
普通の乙女は180も身長ないだろうしもっと上を目指そうとはしないだろうけど、気にするとこは気にするのだよ。お腹周りとか。
「そろそろいいかなー」
ケースに空き瓶を戻して脱衣場へ。
エミリー。戻ったっすよー。
「すー……はー……くんくん……ああ゛ぁ゛ー……」
……エミリー……!
「はッ! シャーロットさん!」
何を嗅いでるっすか……。
「ち、違いましてよ! これは、その、汚れや匂いが付いてないかの確認で……!」
「いやもうそこはいいっすよ……」
話が進まないからさっきの話の続きを聞かせて欲しいっす。
ちらっと浴室を見れば、身体を洗い終わったソラっちが、自重で破壊しないようゆっくりと専用の水風呂に入るところだった。こっちへ来るまでもうしばらくかかりそうだ。
で、ソラっち肌着問題は?
「肌着は……ありませんでした……!」
「まじすか……」
トリブレと上手くやれたかを聞く前に、優先度の高いもんがまた……。
「普段スカートを身に付けていながらこれは駄目ですわね」
「今日はパンツルックだから良かったっすけど、いつもはメイド服っすからねぇ」
やはり早急にメイド服だけでも改造せねばなるまいっすね。
「改造?」
「ソラっちの快適なように隙間を多く作ってあげたりっす」
はい牛乳。ヘイ乾杯。
で、その改造っすけど……どうせならおしゃれにしたいっすよね?
「可愛さと機能性の両立、確かにそれができればよろしいですけれど」
「ふふん。良い案があるっすよぉ」
そもそも初日というか最初一緒にお風呂入って暑いのが苦手と分かった時点で色々考えてたっす!
えーっと、メモメモ……エミリー紙とペン持ってないっすか?
「はいこれ。で、どうしますの?」
「ありがとっす」
まずここに描くのは普通の普段のメイド服ー。
「これをベースに、ファスナーをいっぱい付けたいと思います」
「えっと、ファスナー?」
「そそ。チャック」
バックやズボンについてるみたいな大きさじゃないっすよ。もっと大げさに。
この絵にここからここまで切れ込み入れますよって印をいれて……。
「大げさって……」
「全開にしたら下が全部見えちゃうくらいがちょうどいいっすね!」
「おバカ!」
あいた!
妙案を叩くことないじゃないっすか!
「いいっすか、全部開けたら下が見えちゃうって事はちゃんと下着を身に着ける口実になるって事っす!」
「そ、それは……」
「それに見たくないっすか、ソラっちがほどいたらバラバラになってしまいそうなメイド服を着ている姿……」
「ああ……」
エミリーが固まる。
今頃頭の中じゃ隙間から肌の見え隠れするメイド服を身に着けたソラや、ちょっとえっちな着回しになっているソラを思い浮かべている事だろう。
まあ当然そうならないように配慮してファスナーは設置するっすけど。
全部開けた所でバラバラにはならないし、下着も見えない。上手くやれば肌も見えない。
というかそもそもファスナーを取り付けるって言うのも開けて風通しを良くするとかよりも、金属を置いてそこから放熱できるようにっていう、なんだっけ。ひーとしんく、だっけ? 機械ならそっちの熱の逃がし方も分かってくれるはず。
んー。でも金属だけだと不安だからそれを冷ますちっちゃい扇風機もくっつけちゃおうかな。
ソラっちの猫耳の中で回ってるあれみたいなのを、どっかに取り付けて……。
「シャーロットさん、やりましょう!」
「んー。ちょっと待ってっす。配線とか給電方法考えてるっすから」
こういう時に家電の手直しや裁縫のスキルはなかなか腐らない。専門家には敵わないだろうけど。
とりあえずソラっちから給電するとして、そもそも小さいモーターなんてあるのかな。ないから作るなんてできる程の知識も技術も資格もないし。
ブロンテ先生に頼めば何とかなるとは思うけど、忙しいだろうしそもそも往復で時間かかったりして細かい打ち合わせできないからなぁどうしようかなぁ。
誰か機械に強くてソラっちの事情を知ってる──
「──あ」
いるじゃん、機械に強そうなの。
でっかい機械持ってる道化師がさ。
シャーロットは家でおねショタしてるってマジ?