古代兵器のお屋敷のんびりメイド暮らし。   作:親友気取り。

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最近ソラちゃんがポンコツ化してきてる気がするけど、気のせいかな……


13 ゆうれい

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「……ん? あれ、もしかしてこの体って喋れるの?」

 

 しゃべっている。わたしのすがたが。

 だれかがわたしのからだをつかっている。

 だれだ? こいつは。

 

「ごめんねー、ちょっと借りるだけだよ♪」

 

 かりるな。

 かえせ、わたしのからだを。

 

「こんなにしてもやっぱり何も言わないし、どんな反応してるか分かんないや」

 

 なに?

 

「あーあ。私だけでも喋ってくれると思ったんだけどなー。ソラちゃんはー」

 

 ──いや通じてないんかい!

 あ。私の心は読まれてないとの認識で思考言語が復活した。何だその判定。てか認識頼りなのかこの言語障害。

 もしかしてこれって、未来の世界に戦争技術を伝えないための意図的な処置なのか……?

 

 まぁとりあえず直ってよかった。

 やっぱり思考時の言語くらいは周囲と合わせたいから助かる。

 助かるし良いんだけど、いややっぱりこの状況全然良くないわ。

 

「一方的な断りだけど、ちょっとくらい良いよね……?」

 

 まったく良くないが?

 私の視界はいつもの通りメインカメラのままだが、しかし今現在体を動かしているのは私の意志ではない誰か。

 さっきから、私の身体が乗っ取られているのだ。

 

 屋敷内で鏡越しだったり窓の反射だったり、時折見かける実体のないメイド服の少女。

 名を知らないので怪奇現象と呼称しているそいつがついに接触してきたのだとは思うが、こんなこともできるのかこいつは。

 あとこいつが主導でボディを操作してる時は普通に喋れるの、すごい納得いかない。スピーカーのシステムだけ今からオフラインに変更出来ないかな。

 

「ふっふっふー♪」

 

 窓に映る私の顔が、無表情で口を動かさないまま歌うような笑い声を漏らす。

 何というか、不気味だ。

 てか私って喋るとしたらこんな可愛らしい声なの? 思考時のと声質が全く違うんだけど。

 あれかな。人間の喉と違って変幻自在なスピーカーだからそこは怪奇現象の地声を参照してんのかな。知らんけど。

 

 何にせよ今の私は意識があれど抵抗のできない状態……。

 

 この怪奇現象が何を目的としているのか分からないし、乗っ取りは機密的にもよろしくない。

 何とか出来ないかな。セキリュリティスキャンとか。

 ウイルス扱いしてファイアウォールでこんがり除霊とかできるかも知れない。

 非科学的な存在の怪奇現象相手に通じるかわかんないけど。

 

 

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 ええぇぇえええええぇ!?

 定期購入必要なの!? 嘘でしょ!?

 どうなってんのさ開発状況!

 

 

「じゃ、さっそ──」

 

 ──どごっ!

 

「あ、あれ?」

 

 ……おいコラ、勝手に動かして勝手に転ぶな怪奇現象……!

 1000年越しにもメンテなく稼働できる超頑丈な私のボディがそう簡単に壊れるとは思えないけど、私が壊れなくとも床が壊れてしまう可能性があるんだぞ……!

 

 いいか怪奇現象。教えてやる。

 人間と同じ見た目で騙されてはいけないが、私は頑丈さと超重量の暴力を周囲へ与えない為に日々努力しているのだ。

 例えば全力で廊下を走って誰かにぶつかってもみろ。完全に交通事故となるんだぞ。

 シャーロット以外の人間は轢かれた瞬間即死すると思う。彼女はたぶん耐える。

 

「おも、いぃ……」

 

 怪奇現象が動かす私のボディは、ぎぎぎと油が切れたように何とか立とうとしているが中々上手くいかない。

 人間生物と同じ感覚でこの体を動かせると思ったかへたくそ。

 子供の平均体重の何倍もあるこの重量ボディを扱いきれるか? でなければ出ていけぽんこつ。

 

「だけど! 諦めぇ……ないぃ……!」

 

 諦めてくれー。

 

「──ソラさん?」

 

 ッ! エミリー!

 普段から物陰で私を監視しているエミリーなら、私が乗っ取られている事に気が付くはずだ。

 この怪奇現象を何とかしてくれ!

 

「何か大きな音がしましたが、どうかされましたの?」

「……」

 

 怪奇現象操作の我がボディは床から小さなゴミをひとつ摘まんで拾うと立ち上がり、エミリーへ見せて、首を横に振った。

 無言で一連の動作を終える辺り、私のフリをして誤魔化そうという魂胆らしい。

 あ、こら、エプロンのポケットにゴミを入れるんじゃない。洗濯が面倒だから。

 

「ゴミ拾い、ありがとうございますわ。ソラさん」

 

 エミリーが頭を撫でる。やめろ撫でさせるな。

 首を振って抵抗しろ怪奇現象。

 うう、ちくしょう……撫でられ放題だ……。

 

「ソラさん」

「……」

「そういえば先ほど、何か子供の声が聞こえたのですが」

「……」

 

 いいぞエミリー、そのまま攻めたてろ!

 この必死な首振りに惑わされるな!

 

「……分かりました。ソラさんはお仕事中でしたもの……。邪魔をして申し訳ありませんわ」

 

 なんかエミリー、口調がちょっと怖いんだけど。

 もしかして気が付いてくれた? それとも私の頭を撫でられたから興奮してるだけ?

 暴れたい意志を抑えているのか?

 なんでもいいけど去らないでくれ。助けてくれー。

 

 あーあ、行っちゃった。

 

 誰でもいいから早く気が付いてくれこの状況に。

 ジョージとブロンテは食事か排泄のタイミングまで部屋から移動しないだろうし、次にチャンスがあるとすれば自由徘徊型のシャーロット。

 シャーロットかぁ……。

 

 気が付くかなぁ、あの人。

 ブロンテといい大事な所で無駄にすれ違って上手くいかないから心配だ。

 

「にししっ♪」

 

 エミリーをやり過ごせたと変な笑い声を出して、怪奇現象操作のボディが動き出す。

 うおぉう、すんげぇ見てて不安な動き。ちゃんと歩いてよね? ぶつけないでよ?

 完全に気分は教習所の教官的なあれ。

 

 しばらくぎこちない動きで廊下を進み辿り着いたのは、階段。

 どうやら一階へ向かいたいらしい。私としては非常にやめて頂きたい。

 歩くのも苦労してるのに階段なんか無理だろう。

 

「……よし」

 

 やめろせめて下るなら階段は私がやる。

 下まで動かしてやるから操作変われ、ハンドル寄越せ。

 ひいぃ、こわいぃ!

 うわあ! やめてくれぇ!

 

「……」

 

 片足を上げて、がごんっと一歩下る。

 手すりを支えにもう片方。

 ぐらっと、傾いてがしょん。

 うわぁ! やめてくれぇ!

 

 

「あ、やばっ」

 

 ああ!

 本気で手すり握りやがった、手すり壊しやがった!

 私が本気で掴んだらこんな木製の手すりなんか握り潰せるの分かるだろ!?

 てかこれ、こんな破壊の仕方できるの私しかいないから私が謝るしかないじゃん!

 あぁ、ああああ……。もう、はぁ……。

 

 

 ──そんなこんなで格闘すること十数分、手すりを破壊すること数か所。

 

 

 私の操作なら何ら問題なくかつ短時間で済んでいた、階段を下るというだけの行動がようやく完了した。

 あーあ。私が操作してればなー。はーマジ。

 人間相手に暴力を振るう状況にならなかっただけ、まだマシと捉えてポジティブに行こう。

 

 

「もうっ。どうしてこんなに動きにくいのさっ」

 

 みっともないから私の体で地団太を踏むんじゃない。床もぶっ壊すぞ。

 つかなに勝手にキレてるんだ。怒りたいのは私だぞ? 機械だから感情ないけど。

 

 やめとけばって思うなら今すぐ出て行ってもらおうじゃないかぁ!

 こっちはセキュリティソフトが期限切れでお手上げなんじゃいおらぁ!

 感情が無くて良かったな怪奇現象ァ!

 

「危ない危ない……やめとこう……」

 

 

 そうそう。破壊はもうやめるんだ。

 フルパワーを出そうものならこんな屋敷のひとつやふたつ簡単に滅ぼせる。

 いかに私が普段から繊細な振る舞いをしているのか、それを体感し私に優しくするがいい怪奇現象。

 

 

「あ、こんにちは」

「……」

 

 

 目的地不明のまま流れで廊下を歩かせていると、丁度近くの扉が開いて中からトーマスが出てくる。

 そういえばティーセットを運んだっきりセットも台車も厨房に戻してなかった。

 すまないトーマス。二階の廊下に放置してあると思うからよろしく。

 

「そうだ。またクッキー焼いたんですけど、食べてみますか?」

「……」

「よしっ。ちょっと取ってきますね」

 

 いやいや待て怪奇現象。首を縦に振るんじゃない。

 お前はクッキーを食べてみたいんだろうが、無理だぞ。消化器官ないんだぞ。

 ただでさえ口の中の部位がホコリまみれって言われたばっかりなのに……。

 

「──どうぞ」

「……」

 

 小包みに入れられたクッキーを受け取った怪奇現象は、ぺこりと頭を下げるとその場を後にする。

 受け取っただけで、その場では食べないか。いやまぁ目の前でやっぱり無理と吐き出すよりかまだいい。

 

 で。どこに向かってるのかは分からないし、誰も私が乗っ取られてることに気が付いてくれないけど。

 

 ちょっと借りるだけとは言ったがどこまで借りるつもりなんだ。

 何が目的とも聞きたいがやはり難しいからなぁ。

 

 

 

 

 

 ぎこちなさを残しながらまだまだ歩き、現在地は裏庭のその先。

 つまりは前にシャーロットの案内で入った事のある獣道。

 こんな所に何の用があるんだ?

 

 しかも片手に鍬なんか持って。

 倉庫から鍬を手にして歩き出したかと思えば山へ向かうし、独り言は時折出るのに目的に纏わる物事が全く出てこない。

 小言より先に説明をしてよ。

 

「この体にも慣れてきたけど、日が暮れてきちゃったな……」

 

 残りのバッテリーは24%か。

 怪奇現象が私の体に慣れる為に非効率的に動かしたのと、冬の日暮れが早いのが合わさって少し不安になる電池残量だな。

 この時期は日照時間が少なく充電できるタイミングが限られるので、今日の行き帰りだけじゃなく明日の事も考えたい。

 

 何でソーラー発電にしたんだろうな。めんどくさい。

 外部からの給電ってできなかったっけ? ポートはあるんだしできない事はないんだろうけど。

 

 

「……急がないと」

 

 

 急ぐ割にはやはり大変非効率だ。

 目的を話してこちらに操作を任せてくれれば手伝ってもやるのに、なんで乗っ取るかな。

 

「……」

 

 二階の廊下で乗っ取られてから、山道を進み早いものでもう3時間。

 身体を人質にされてるかのような感覚だからなのか、所謂ストックホルム症候群的な状態なのか、なんか怪奇現象に味方してもいいかなって心理になってる。

 ああ、いや、私は機械だし心理はな……あれ、あるんだっけ。深層心理。

 

 まぁ……その。

 あれだよ。

 怪奇現象にも事情があるんだろうし、イタズラじゃないんだったらちょっとくらい手伝ってやりたいかなっていうさ。

 ほら……。理由があるなら聞いてやろうっていう、ね?

 

 以前訪れた広場を目前にして道を逸れて、裏の裏手へと向かう。

 こっちは獣道よりさらに深くと言った様子だが、こんな所に何があるって言うんだ?

 

 

「……」

 

 

 足が止まる。

 どうやら到着したらしい。

 殆ど森の中というか、森の中には違いないんだけど森林っていうか。

 

 怪奇現象は鍬を適当な地面に突き刺すと、まずは素手でがさごそと手前の草木をかき分けていく。

 何かを探しているらしいが中々見つからないらしい。

 

 

「──やっぱり、ここへ向かうと思っていましたわ」

 

 

 後ろからエミリーの声。

 しかも声ぶりからして、最初から何かを感じ取って追いかけてきたっぽい。

 いよっ、待ってました!

 

「……」

「ふふ、分かってます」

 

 手持ちの明かりで周囲を照らしながら横に並んだエミリーが微笑む。

 

「ソラさんは、ここの石碑のお手入れをしたかったのでしょう?」

 

 ……。

 …………。

 ………………あれ、乗っ取りに気が付いてたとかは!?

 そういう雰囲気だったじゃん!

 本当にただ私の頭を撫でられて興奮してただけなのかエミリー!

 そしてここにお墓があるなんて知らないよ。

 

「年の瀬に一回掃除してくれればと言われてるとはいえ、見てくれが悪いですものね」

「……」

 

 そうだったんだ。私に言ってくれれば手伝ったのに。

 流石にお墓の手入れが重要な事柄であることくらい分かるぞ。

 

「言ってくれれば手伝いましたのに」

 

 そーだそーだ。

 

「……」

 

 がさごそ。がさごそ。

 しばらく経って見えてきたものは、小さな石碑のようなものだ。

 

 ずいぶんと古びている。

 掘られている文字も暗さが合わさって確認しにくい。

 しかし重要なのは分かるが、どうして今になって突然と聞きたい。

 

「ソラさん?」

 

 怪奇現象は先ほど突き立てた鍬を掴むと、小さな石碑を支えにその背面へ向かう。

 石碑の後ろはちょっとした崖だ。私の重量では地面いかんでは戻れないかも知れない。

 鍬を差しながら慎重に下っていくが、どこを目指しているんだろう?

 

「……」

「危ないですわ!」

「……」

「明かりを持って行ってくださいまし!」

 

 10メートルほど下って傾斜が落ち着きエミリーへ手を振った所で、明かりを投げ渡された。

 ランタンのおかげで周囲は分かるが、これではエミリー側が暗くなってしまう。

 もしこちらが別ルートでの帰還を選択した場合、怪奇現象は私のフリをするせいで上手く意図が伝えられないだろう。エミリーは闇の山林を戻らねばならなくなるし危ない。

 あとバッテリーの残量も気になるし、用事は早めに済まそうな。怪奇現象。

 

「やば、服が泥だらけだ」

 

 それ今気にする?

 

「流石にソラちゃん、怒るかな……」

 

 そこは気にしないでいいぞ。

 なんせ私は感情のない機械だからな。えっへん。

 

「見て、ソラちゃん」

 

 どうした?

 ……あ。

 

「これ、何か分かる?」

 

 もう殆ど自然に還っていて、よく見てもどれが自然の石なのか分かりにくいが、観察してみれば先ほどと同じような石碑がいくつも倒れて転がっている。

 ここはもしかして墓地だったのか?

 

「ずっと昔のお墓だよ。がけ崩れで私のだけ残って、他はみんな落っこちて埋まっちゃってた」

 

 “私”の、だけ? 

 とすればさっき崖の上にあった石碑は怪奇現象のお墓か。

 ……つまり、怪奇現象はマジで幽霊なのか……?

 そんな非科学的な存在なんて、いるわけないだろ?

 今乗っ取ってるのは何かって言われても困るんだけど、でも、そういうの非科学的じゃんか。

 

「この前の雨とシャロちゃんが走った振動で掘り起こされたんだ」

 

 埋没した物を掘り起こす揺れを発生させるとか、シャーロットってもう何なんだよ。

 

「あ、ジョージくんとかは悪くないからね? 詳しく話すと長くなるんだけど、もうこうなって何百年って経ってたから」

 

 怪奇現象、もとい幽霊(幽霊を認めた訳ではないが、便宜上)は足元の墓石を一つ掴んで起こした。

 ぺしぺしと土を払って、ポケットから貰ったクッキーの袋を出して上に置く。

 自分で食べる為ではなくお供えの為だったのか。

 最初からそう言ってくれれば協力したのに、不器用な奴め。

 

「みんな、遅くなったけど来たよ」

 

 手を合わせて、瞳が閉じられる。

 

「これからは、ちゃんと休めるからね」

 

 ……私任せではなく、まずは自分が直接としたかったか。

 私の体を乗っ取るっていう少しあれなやり方だったけど。

 

「よし」

 

 立ち上がった私の体が崖を見上げて、地面を見て、後ろを見て。

 

「……どう帰ろっか」

 

 もう操作変われよお前!

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