古代兵器のお屋敷のんびりメイド暮らし。   作:親友気取り。

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学園生活騒音部とか書いてました。
太陽が出て元気な季節なので投稿です……(作中は冬)


19 お買い物

 

 

 

 機械仕掛けの専用メイド服を得て、裏庭の整備も任されて。

 趣味や感情といった人間的なモノは未だ分からず言われるがまま“人間らしい生活”を続けているが、そろそろ自分でも動くべきだろう。

 裏庭へ植えられるらしい品々はジョージが注文を出しているので私からすべきことは無いに等しいとはいえ、こう……なんかアクションを起こすに悪い事はないはずだ。

 

 

 明日は休日。そして今日は給料日。

 機械とて従業員扱いの私にもその二つは存在し、しかしお金の使い道は未だ分からないままだった。

 それは全てジョージのせい。私を人間扱いして可愛がりたいからってあんまりやり過ぎないで欲しいんだけど。

 

 子供が欲しいのかな。

 さっさとブロンテとくっつけばよかろうに。

 

 それはさておき自室備え付けの机の引き出しを開けて中を確認。

 今手元にある給料袋と同じものがもう複数ある。

 

 

「……」

 

 

 これは最初に渡されてから今に至るまで全く手を付けていない給料袋達。

 ほんとうに。ほんとーに、まーったく使ってない。

 お陰で給料を渡されて仕舞う度に存在を思い出し、仕舞う度に人間でいう溜息物である。

 

 こうなっている理由は明白だ。

 なんせお金を使うことも、お金を誰かに渡す場面が無かったから。

 

 

「……」

 

 

 理由として衣服はアンを始めとした屋敷の面々が私に着させようと続々持ち寄り、食費と言うか活動の為の電力は太陽光依存。

 住み込みなのでその料金だけは給料から幾らか天引きされている──とは以前シャーロットから聞いていたんだけれど、疑って明細を確認したらその欄は無かった。たぶんジョージ的に私は機械人形という所有物なのでってことなんだろう。散々人間扱いしておいてそこはか。

 

 というなんやかんやなワケで、衣食住がタダ。

 普段読んでいる本も書庫から借りてきただけだしタダ。

 

 

「……」

 

 

 アンへ礼としてお金を渡そうにも受け取ってくれないし、太陽はそも。

 自室代も言葉を喋れないなら交渉不可。

 シャーロット的には趣味へ使えとの事だが、人間で言うなら読書が趣味となろう私なので同上。

 新しく趣味の候補として存在する裏庭も前述の通りジョージが揃えてくれるし。

 

 さてどうしたものか。

 熱に弱い機械の私の為にみんなが作ってくれた専用のメイド服から私服へ着替えながら──。

 

 

「……」

 

 

 ──ふむ。物か。

 そういえば読んでいた小説でも、礼として品を渡す場面があった。それに倣ってみよう。

 

 

 

 

 

 翌日。

 機械の身に休日は不要だが、自由に使える時間というのは貴重なものだ。

 太陽光が弱く、日も短いこの時期は特に。

 屋敷という室内で働いている身としては、殊更に。

 

 

「……」

「あの、ソラさんや? そう無言で睨まれても何も分からないと言いますか……」

「……」

 

 

 喋れないのは今更伝える必要もなかろうジョージ。

 なぜか扉の代わりに暖簾(のれん)が掛けられた執務室でジョージを見つめていると、勝手に根負けして彼は両手を上げた。

 うーむ。そろそろ言語を介せず行動を理解して頂けないものだろうか。

 稼働してから半年と少しでは流石にか。あるいは、バディ物小説限定の能力か。

 

 道化師トリブレや本物のアンこと怪奇現象がいるしそれくらいできてもいいじゃん。

 化学の結晶たる私の前でフィクションみたいなことをするのだ。だったら都合のいいこと全部起きてくれ。

 

 

「あ、なんか欲しいモンでもあったか? ここにカタログあるけど」

「……」

 

 

 なんか家財道具の写真が沢山乗っている冊子をくれた。

 

 

「お前の部屋って殺風景だし模様替えもいいな。欲しいのにペン入れしといたらまとめて頼んどくよ」

 

 

 はー。うむぅ、こういうの見て部屋の家具配置とか考えるのも面白いかも。

 じゃなくって。

 

 

「……」

「違うのか? やっぱ分からんて」

「……」

「お答えいたしましょう! それは!」

 

 

 どたばた音がしたかと思えば、エミリーが暖簾を風圧で吹き飛ばしながら現れた。

 

 

「ソラさんは、町にお買い物へ行きたいのですわ!」

 

 

 そうそうそれそれ。

 なんでわかったのかは知らないけど乗っかろう。

 

 

「ええー? ソラっていつも部屋で本読んでる家猫だろ? んなわけ──」

「……」

 

 

 首を横へ振りながらエミリーの肩に手を乗せ頷く。

 はひゅえ、という謎の奇声がした。

 

 

「ま、たまには買い物に行きたいか」

 

 

 うむ。ようやく本題だな。

 というのも、私が町へ繰り出した回数は片手で数える程しかないのだ。

 最初にエミリーがぐるりと案内してくれているとはいえ、折角なら他もオススメを知りたい。

 迷子になる心配はないが案内役は欲しいのだ。

 

 それにほら、本にも女の子を一人で出かけさせるなってあるし。

 

 自警団の見回りもあるしないとは思うが、見た目は兵器よりも少女な私へ悪い虫が付かないとは限らない。

 バグは機械の敵だ。ともすれば大変だろう?

 主に事後処理が。

 

 

「んー。迷子になったらソラは人に聞けないし、案内がいるな」

 

 

 うんうん。

 

 

「シャーロットはなんでか機械整備の資格取りに行ってるし、アンはそもそも町へ出らんないし」

「ちらっ、ちらちらっ」

「はい。エミリーさんに任せますぅ」

 

 

 言わされた感がすごい。

 この屋敷の主従関係ってどうなってるんだろう。

 機械の私が最低辺とするのは当然だが、ジョージはてっぺんにいるハズじゃないのか?

 

 

「……」

「じゃあ出る前に紅茶入れてってくれ」

 

 

 エミリーはもういない。1コマでも早く私と出かけたいのか、準備の為に颯爽と場を後にしたらしい。

 となれば、残っているのは私こと休日機械人形ソラのみ。

 だが以前休日に趣味で働いてたら怒られたので同じ轍は踏まない。

 

 

「ア、スンマセン」

 

 

 紅茶のパックを机に置いたらなぜか謝られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケィヒンの町はのどかで空気も良く、平和の時代を象徴する景色として代表してもよいですわ」

「……」

「この町へ来てよかったと、いつも思います」

「……」

 

 

 こくりと頷く。

 しかしそんな場に兵器である私は不釣り合いではないだろうか?

 首を傾げたら撫でられる。撫でるなっての。

 屋敷から出て道なりに進みながらエミリーがしみじみと言葉を続ける。

 

「首都の方はなんといいますか、息が詰まりますもの」

「……」

 

 

 そうなのか。確かにケィヒンという町の魅力は風景だけで成り立っている訳ではないな。

 ところで以前から気になっているんだけど、首都ってどんなところなのだろう。

 くいくいと袖を引っ張りながら首を傾げてみる。

 

 

「う゛、かわいい……!」

 

 

 やめろよせ撫でるな。

 見上げながら首を傾げただけだぞ。

 

 

「ごほん。ソラさんは首都についてお聞きしたいのかしら」

「……」

 

 

 頷く。

 息が詰まるとは一体どういうものだろうか。

 人が多くて酸素が薄いのか、それとも我々(兵器)のせいで環境汚染が引き起こされているのか。

 

 

「そうですわね……。監視が厳しく規制も多く、制約に縛られた不自由な町」

「……」

「わたくしはそんな町と後継ぎという立場が嫌でこの町へ来ました。……無一文で宿もなしというわたくしの為に必要もなく雇い入れてくれたジョージ様には感謝ですわ」

 

 

 ふむ。エミリーもやはり苦労しているな。

 普段の奇行も過去の反動だと聞いているし、大変だったのなら“褒める”に値する。

 

 

「……」

「あら、どうされましたの?」

 

 

 くいくいと引っ張ると、エミリーは目線を合わせようと屈んでくれる。

 身長差からしてこうでもしないと届かないのだ。

 苦労をさせるがこれで許してくれ。

 

 

「あ、あ、ああ!」

 

 

 屋敷の住人が私を褒めようとするように、頭を撫でてやる。

 私は発電をする為や万が一の感電を警戒してあまり嬉しく思えない行為だが、人間相手ならこうしてやるのが正解なのだろう。

 言語を介さず褒めていると示す動作。首を振る以外にこれならできるとは。

 

 

「うへ、へへへ……ヒヒ」

 

 

 エミリーが人に見せてはいけない顔をしている。ヤバ。

 

 

「……はっ!」

 

 

 あ、気を取り戻した。

 これでどうだろうか。

 

 

「ソラさん、ありがとうございますわ」

 

 

 この上ないにっこり顔でエミリーがすたすたと歩く。

 少し早い。小走りでついて行く。

 

 

「ソラさん! こちらのアクセサリーショップがおすすめです!」

 

 

 おお、案内ありがとう。

 さっそく入って皆へのプレゼントを決めていこ──

 

 

「──店員さん! 一番高くて一番すごいのを! この子に似合う! とても良いのを!」

 

 

 待てエミリー、それは私の本意ではない。

 というかその流れ、また私がお金を使えないやつだ。

 ぐいぐいと引っ張って困っている店員から引き剥がすと、今度は私の頭をじっと見始めた。

 

 

「ソラさんの紺色の髪の毛、日の当たりようで不思議に煌めくその髪の毛……」

 

 

 繊維型太陽光発電機だ。

 一本一本が硝子(ガラス)に包まれているため人間の髪の毛とは色々と異なる。

 で、その目は?

 

 

「お似合いなのは……こちらの……いや……」

 

 

 ああ、私に何か買おうとしているのは変わりないのか。

 先も言った(無言)通り私の頭についているのは発電機であり髪の毛ではないので、そういうヘアピンとか髪飾りはごめん願いたい。

 というか既に頭には追加のバイザーが付いてるしな。

 

 店内を見渡して、ブローチが目に入ったので指差す。

 機体温度の上がってしまうスカーフや関節の動作に影響しそうなネックレス系統とは違い、こういう服に追加する小物なら全然大丈夫。

 

 

「……」

「あら、可愛らしい。こちらから選びますわね」

 

 

 喋れないのでもうエミリーが買ってくれるのを断る術はない。

 ふふふ。だがただでは私も負けん。ちゃんと勉強している。

 さぁエミリー、選ぶがいい!

 

 

「こちらの招き猫、いや……肉球……。いえ」

「……」

「ソラさんにはこれかこれですわ」

 

 

 悩んだ末にエミリーが手に取ったのは、カブトムシと木の枝の二択だった。

 

 

「……」

「どちらにいたしましょう?」

「……」

 

 

 うん、そのカブトムシなに?

 

 

「……」

 

 

 木の枝は、まぁまだ裏庭を任された身として自然ではあるか。

 カブトムシよりは深そうだけど。

 

 

「ふふ、ではこちらですわね」

 

 

 かっこいいのは分かるけどカブトムシは無しで。

 

 

「店員さーん!」

 

 

 私の左胸辺りにオリーブの枝を象ったブローチを取り付けると、そのまま会計を行っていく。

 当然エミリーが支払うが慌てる私ではない。

 店員さんと世間話、あるいは情報交換を行っている二人を尻目に棚に並んだブローチを選定。

 

 そう!

 

 私は今、プレゼント返しをしようとしている!

 送られたら送り返す。それの上位版らしい、お互いにお互いのプレゼントをその場で買うという行為。

 感情的な意味は分からないが、人間的にこれが中々正解らしい。

 

 

「ソラさん」

 

 

 む?

 

 

「その枝はオリーブといい、平和の象徴とされています」

「……」

「ふふ、お似合いですわ」

 

 

 そう、か。私が平和の象徴たるオリーブの枝を、身に着けるのか。

 皮肉なものと受け取るか、それとも赦されたと取るべきか。

 

 

「それにオッペンハイマー商会にとっては信仰の対象でもあるので、こういった品を一つ持っているだけでもどこかで役に立ちますわよ」

 

 

 兵器たる私に平和のシンボルは似合うとはまだ思えない。

 エミリーには悪いけど、後者を選択して受け取ろう。

 喋れないし顔にも出ない機械の顔に今は感謝する。

 

 

「……」

 

 

 さて。折角のお出かけへ付き合わせてしまっているのにそういう暗い話は無しだな。

 

 

「そちらも気になりますの? でしたら」

 

 

 手にしたものを確認したエミリーがこれもとお金を出そうとするが、首を振って拒否。

 カウンターへ持って行き、会計。意図を察したらしい店員さんが懇切丁寧に接してくれた。

 

 

「……」

 

 

 無事に買えたので、ちょいちょいと手招き。

 付けて欲しいと勘違いしたらしいエミリーは手を伸ばすが、拒否。

 代わりにエミリーの胸元へブローチを付けてやる。

 

 

「わ、ぁ!」

 

 

 カブトムシやオリーブの枝のようなセンスや知識はないが、これは印象も良かろう。

 

 

「まさか、ソラさん!」

 

 

 翼を広げているその姿は自由な感じがして、なんかこう、いい感じだと思う。

 どうかな。もう買った後に確かめるのはあれだけど。

 

 

「白い鳩には愛や平和の意味があります。ソラさん、嬉しい……」

 

 

 うぉ、また顔がヤバい事になってる。

 偶然とはいえ意味合いも悪くない。それほど嬉しがってくれるならこちらも嬉しいよ。

 

 

「一生大事に致しますッ!」

 

 

 それほどとは。

 じゃあ、次行こうか。

 袖を引っ張り店を出る。さぁ案内したまえ。

 まだまだお出かけは始まったばかりだぞ。

 

 

 

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