古代兵器のお屋敷のんびりメイド暮らし。   作:親友気取り。

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アンケート参加してくれた人、ありがとう!
というわけで、何故か投票数ぶっちぎりの怪奇現象回です!
他のメンバーも順々に書いてきますよー!
期待されてる内容に沿えたかな……怪奇現象が注目されてるの意外すぎてな……


22 陽向からみるソラ

 

 

 

 私は(アン)

 お屋敷にいるネズミっ子とは同じ名前を共有する、俗にいう──幽霊的な存在ですヨ。

 元々は今から1000年くらい前にここケイヒン町へ引っ越してきた一人で、同時に運悪く没した一人。

 

 慌ただしくて息苦しい当時を知ってる身からすれば、今って本当(ホント)いい時代になったよねぇ。

 なんせ急になんか飛んできて死んじゃうかもって話に絶対ならんし。

 ……ってぇ、すぐ昔話をするのはおばあちゃんのすることだよね。やめとこう。

 

 見た目は死んじゃった頃のままだけど、やっぱり中身は歳を取るんだねぇ。

 生きてはないとはいえこの自意識で1000年経ってるし──。

 

 

 む。ちゃうちゃう! おばあちゃんぢゃねーし!

 ずっと自分のお墓の周りにいただけな上、特に出来事がなきゃ微睡(まどろ)んでて殆ど意識がない感じだったから!

 ちょっと前に墓荒らしで生計立ててたネズミっ子が遺品を持ち出したからこうしてお屋敷で行動してるの!

 だから、ね! 精神年齢は殆ど当時のまま! だからおばあちゃんじゃないよ!

 

 

「……」

 

 

 ほぅらほら、そこでお茶汲んでるソラちゃんだって全然おばあちゃんじゃないでしょ?

 なので私の年齢については享年で触れること。いいねー。

 

 ……うん、ずっと一人の時間が長かったからこういう一人舞台よくやっちゃう。

 誰への言い訳かも分からない誤魔化し糊塗(こと)(ごと)並べつつ、給仕風景をよそに窓から町を眺める。

 

 

「……」

「どうしたソラ。散歩にいきたいのか?」

「……」

「なんもないとこ見るのって猫もやるよなー」

 

 

 過ごした期間自体は短いから細かい違いまではいえないけど、ケイヒンの町並みは当時からあまり変わってない……気がする。

 墓地にいる私達の死因であるおっきな爆発は全部吹き飛ばしたと思ったのに、よくもまぁ頑張ったもんだ。

 

 ん、ソラちゃんどしたのこっちみて。

 もしかして遊んで欲しい? 遊んで欲しいの?

 でも、だめー。お仕事はちゃーんとね。

 

 

「そうだソラ。裏のお墓の件で一応伝えておきたいんだが」

「……」

 

 

 なーんっだろー♪

 私も聞きたいぞっ♪

 

 

「これな、見つかった墓石に掘られてたネームのリスト」

「……」

 

 

 ネームって、名前?

 

 

「全部合計で10人分。享年からしてせめて子供達の分を作ったって感じなんだが」

「……」

「これお前のモデルになった子じゃないかと思ってな」

 

 

 お前って……私へ向けてじゃないよね?

 じゃあ、

 

 

「ほら、確かお前のモデルになった子も空って名前だったよな」

「……」

「偶々一緒の名前って事もあるだろうけど、でもほら。生まれがこの町なのかなって気になってさ」

 

 

 ジョージくんは恐る恐るといった様子で一覧を取り出し、目の前で首を傾げたソラちゃんに渡す。

 素晴らしいよジョージくん、大興奮ものだよ!

 だって、だってだってだって!

 

 

「……」

 

 

 ついについにと興奮する私をよそに、一方のソラちゃんの反応は微妙だ。

 上からツツツと指でなぞっていき、その名前で止まる。

 

 

「……」

 

 

(ただの名前被りじゃないよー、それー)

 

 

 以前にソラちゃんが見せてくれた過去の映像。あれに映っていたのは私の時代に有名だった科学者だ。

 金田、天馬といった天才達に並ぶようなすごい人。

 ケイヒン町にあった軍需工場へ務めているってんで私も顔を知ってたし、その娘っ子も近所の噂でまた然り。

 

 私はこの子を知っている。

 なもんで仲良くしたいし、同郷同期のよしみで仲良くしてくれてるかなって思う。

 お墓の件で協力的なのがその証拠。ソラちゃんは分かってるからだよね♪

 

 

「違うのか?」

「……」

 

 

 って、あれ。なんでか首傾げた。

 色々小難しい話で説明しにくいけど、今ここにいるソラちゃんと博士の娘っ子は同一人物で間違いない筈なのに。

 名前だけ墓石に刻んで身体も魂もその身体と棺と一緒にどっか行って1000年も経ったとはいえ、流石に自分の名前を忘れてるのはおとぼけ過ぎない?

 

 うーん……?

 でも初日にすぐ町並みを確認してたし、ケイヒンに居たことは覚えてそうなもんだけど……。

 というか、お墓の件が証拠だし。

 

 

「苗字と合わせてソラ・ヒナタねぇ。昔の呼びならヒナタ・ソラか」

「……」

「日光のヒナタに青空のソラ。お前のモデルと一緒の子ならぴったりネームだと思ったんだけどなぁ」

「……」

 

 

 もしかして本気で忘れてる?

 喋れないのは本人に何かしらの事情があると仮定して、本気で?

 

 

「……」

 

 

 ソラちゃんの視界に収まりながら訴えのじたばた。

 

 

「虫でもいた?」

「……」

 

 

 シッシじゃないよ!

 まさか本気で分かんないの!? 自分の名前くらいさ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 今日は怪奇現象が騒がしい。

 どうにも何か言いたげみたいだけど、仕事中かつ周囲に人がいるので乗っ取りは控えてくれているみたいだ。

 いつも通りにしばらくしたら満足して消えるだろう。あいつもイタズラが好きだなぁ。

 

 あ、ジョージそれ飲み切った? やりたいことあるからコップ貸してくれ。

 じゃーん。リンゴにございます。

 

 

「あの」

「……」

「なんでもないです……」

 

 

 ジョージが何かを言いかけ、握り潰したリンゴを見てやめた。

 昨日シャーロットから搾りたてがおいしいと聞いたのでやってみたんだ。

 向こうと違って手が小さいので2個いっぺんにとはいかないが、しかし効率悪くとも中身に違いはない筈。

 むしろ私こと機械で不純物なくしっかりじっくり潰しているので純度100%。ならばよりおいしいはず。

 シャーロットには負けん。感情無き機械の身にも矜持というものがある。

 

 

「……」

「おわ! なんだなんだ!?」

 

 

 突然置いてあったペンが宙に浮かび上がり、メモ紙へ向かって何かを書き記していく。

 むぅ、放置し過ぎたか。拗ねた怪奇現象のアピールが激しい。

 

 

「アンか? アンの魔法なのか!?」

 

 

 うむ。アンはアンでもしかし幽霊の方のアンだぞ。

 それにしても、怪奇現象がこうして意思を言語化して伝えるのは珍しい。

 そんなに伝えたいことがあるんだろうか。よほど緊迫した内容なんだろうな

 違ったら塩でも撒いておこう。

 

 

「ソラはなんでそんなに落ち着いてるんだよ! 流石にありえねぇだろこれ!」

「……」

 

 

 だって犯人知ってるし。

 あとトリブレの方がもっとすごい事できる。

 あいつ、一瞬視界から外れただけで瞬間移動するんだぜー?

 

 

「……」

 

 

 力尽きるようにペンが震えてころんと倒れた。

 さて、何が書いてあるんだ?

 

 

「“ゾルイテッ合デ名ノソ”……んん?」

 

 

 たぶん逆から読むんだな。

 

 

「ああこっちからか」

 

 

 ジョージもすぐ気が付いたらしい。

 

 

「“その名で合っているぞ”って、ソラについてを言ってるのか?」

 

 

 窓へ目を向けると、やけに疲れた様子の怪奇現象がふわふわ漂っていた。

 どうも物理干渉はとても疲れるらしい。そっとしておこう。

 

 

「アンも普通に伝えりゃいいのに。つか、達筆だな」

 

 

 アンはアンでも怪奇現象の方だからな。私より融通が利くとはいえ、向こうも伝える手段が限られている。

 それにしても、やっぱり同名とはいえごっちゃにされて変な能力を持っている事にされているアンも大変そうだ。

 

 

「……」

「とりあえずこの文面通りなら、じゃあやっぱソラのモデルがこの町にいたって事で合ってる……のか?」

 

 

 たぶん。

 ……じゃあ、私のモデルたる“空”は元々この町に居て、この町で死んだのか?

 

 なんという偶然だ。そんなことってありえるのか?

 世界広しとはいえ、こんな偶然……。

 

 

「……」

 

 

 果たしてこれは偶然で済む話なのか?

 偶然にしては、私がこの町へ戻ってきたのは出来過ぎているような。

 

 きっと怪奇現象は生前の“空”と友達、あるいは知り合いだったのだろう。

 故にやたら馴れ馴れしいし、前に身体を乗っ取った時に「私なら」と言ったのか。

 

 どうなんだ怪奇現象。

 知っているなら全てを話せ。

 私に記憶が無いのは知っているだろう?

 

 すべてを教えてくれ、私がなんであるかを!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──この屋敷へその棺が搬入され、掘られている名前を読んだ時。まさに鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)の嘆きが聴こえたような錯覚がした。

 そりゃあお気楽幽霊生活を謳歌してる私とて狼狽えたよ。

 なんせこのケイヒン町と私達を吹き飛ばし、そして最終的に世界も吹っ飛んだ原因は自立機械人形だもの。

 

 

(鉄の人計画。あるいは、カッコつけた呼びでベアトリーチェ計画)

 

 

 人間の代理に戦わせる獣人が消えて、今でいう魔法使いも姿を消して。

 大戦末期とも言える頃。世界人口が大きく減っても、それでも国々は醜い争いをやめなかった。

 

 意地でも戦い続けたくて、でも損耗はこれ以上出したくない。

 そんなアホみたいな時代の中で考え出された一つの答えが機械の兵士。機械人形。

 

 

『どんな攻撃にも耐えうる鉄の鎧に身を固め、計り知れぬ力で居並ぶ敵を叩いて砕く!

 決して倒れる事もなく、死ぬ事もなく。ただひたすら意のままに闘い続ける、不死身の兵士!』

 

 

 とかっていう声高らかな発表と演説は、長年経った今でもハッキリと覚えている。

 機械で作った機械の兵士を敵陣へ送り込み、暴れさせて暴れさせて、自爆させる作戦なんだとさ。

 生物兵器や改造人間よりも確実で、命令に忠実で、勝てる。なんて言っちゃって。

 

 

(……ブロンテちゃん、これは駄目だ。こいつは、駄目だ……)

 

 

 結果がどうかと言えば、ここにいる私という存在が答えだ。

 世界各地各国が同じ物を作って解き放って、止められる人間がいなくって、壊れてしまった世界がそうだ。

 

 

(歴史を知る商会が機械人形を野放しにするなんて、絶対にありえない)

 

 

 1000年も経てば機械なんて()()()()()()()()()()()()()()()()()壊れてる。

 でもブロンテちゃんの所属してるオッペンハイマー商会はどんな状態であろうと、兵器であるなら鋳潰して回るのが使命だ。

 なのに、どうしてこうも、はっきり機械人形と明記されてるモノを!

 

 

 

(……あれ? この子……)

 

 

 屋敷に機械人形の収められた棺が搬入されてから半年後。

 とうとうブロンテちゃんは、その存在を表へ出したんだけど……。

 だけども。

 

 

(軽自立機械人形、ソラ。ソラって、空のことなの? 陽向(ひなた)さんとこの? ホントに?)

 

 

 空なら確か私と一緒に死んでたはずだよね?

 いやまぁ、死んでるからこの棺に入ってたんだろうけどさ。

 でもあのお墓って誰もいなかったような。骨壺すっからかんだし。

 

 

「ん? なんすかこの子」

 

 

 ブロンテちゃんが退室した後にやってきたシャロちゃんが首を傾げた。

 棺から出されベッドに座らされる機械人形(?)は、名前に反して機械と言うには不思議な状態なんだもん。

 隻腕なのはともかく、全身包帯でぐるぐる巻きって。

 

 

「なんかカビ臭いっすね……」

 

 

 シャロちゃんがわざとらしく鼻をつまみながら呟きつつ窓を開ける。

 

 

(もしや、本物?)

 

 

 

 

 

 ──それからしばらく、私は吟味した。

 ソラちゃんが本物の兵器たる機械人形なのか、それとも空ちゃんなのか。

 最初の行動は駄目。続いて行われた無言の交渉は良しと、私なりに色々考えたよ。

 考えて考えて、結局の答えはソラちゃんの出してくれた映像だ。

 

 

(空ちゃんの身体を使いながら、違う個を持ったひとり)

 

 

 私達のお墓(ところ)に身体が無かったのは、博士が蘇生しようと使ったから。

 でもそれは失敗してて、ソラちゃんという新しい一人ができてしまった。

 そして、時代が悪いからと棺に納めて未来に託し……。

 

 

(んん?)

 

 

 そして現在。

 空ちゃんの名前がようやく登場して繋がった。

 ……んだけどぉ。

 

 

「あの、ソラさん? リンゴはもういらないかな……」

「……」

「あ、すみません、飲みますぅ……」

 

 

 ぎゅうううううと右手で林檎を絞るソラちゃんの動きにぎこちない様子はない。

 まったく問題なく動いてる。

 けど、この場合は全く問題なく動けてるのが問題だねぇ。

 

 

(私がいうのもなんだけどさ、心霊は勘弁よ?)

 

 

 どうして1000年放置された機械が、整備もなく充電しただけで動けてるの?

 どうなんだー、機械人形ぅー。

 知っているなら全てを話してくれ?

 

 すべてを教えてくれ、君がなんであるかをーっ!

 

 

(ったって喋れないんじゃ仕方ないし、ブロンテちゃん待ちだねぇ)

 

 

 いつまで待たせるんだよぉ!

 




登場人物紹介

☆怪奇現象(本名 杏)
 1000年前にケィヒンへやってきた子供。
 情勢的に横文字が規制されていたため固有名詞以外であまり使わず、あと当時の名称である“ケイヒン町”を使い続ける時代に置いて行かれたおばあちゃん
 いたずら好き。
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