今日は休日。
なので自室でのんびり読書としていたのだが、しれっと入ってきたエミリーが何やら神妙な面持ちで椅子に座りながらじっとこっちを見ている。
こういう場合は大体お悩み相談のはず。
ぱたん、と本を閉じ向き直る。
「……」
それでエミリー。何用か?
「ソラさん。これを御覧になって頂けます?」
そういって手渡されたのは真ん中に穴の開いたフライパン。
なんて事のないただのフライパン。
うーん?
「これ、昨日シャーロットさんが魔法ですって」
この穴を?
どう観察したって工具か何かでぶち抜いたようにしか見えない。
「ばこんと指で開けておりましたの」
まほ……う……?
「こう、だだだだーと連打して」
「……」
「あり得ませんわよね!?」
こくりと頷く。
確かにあり得んな。もっと魔法とは非科学的な手段であるべきだ。
「まるでこの鉄板を紙のように──」
穴が開いてるしもう捨てる物だろう。
ぐいっと曲げて二つ折り。ぐにゃっとやって四つ折り。
「ソラさん?」
何となくやっちゃったけど、これ端っこがとげとげしてて危ないな。
もうちょっと念入りにやっておこう。
ぐちゃぐちゃぐちゃ。ぎゅっぎゅ。ころころころ。
「ヒェ……」
よいしょっと。それで、シャーロットは魔法に憧れているのか?
ころころと手で丸めながら顔を向けるとエミリーは何故かドン引きしていた。
そんな顔をしているところ悪いが、私は科学の結晶なので使えるわけではないし何も助言できんぞ。
「あ、あの、ソラさん。その、鉄を、紙屑みたいに……」
駄目だったのか。リサイクルとかの何かに引っかかっちゃうかこれ。
元に戻すのは流石に不可能なので、どうしよう。
サイコロにでもしとく?
「少し触ってもよろしいでしょうか……?」
「……」
「かったい! こんなカチカチのを、そんな簡単にっ!」
そりゃただの鉄だし。
これについてはさておこう。
「こほん。えっとソラさん、ともかく、鉄に穴を開けたのは魔法ではないですわよね?」
「……」
「というか人間技でもないですわよね?」
後半はともかく、前半にはしっかりと頷いて返答。
うむ。私がやったこともシャーロットがしたことも、全ては物理。
世界は物理に支配されている。人間技なのかは疑問なのでスルー。
「実は、シャーロットさんが“シャロも魔法が使えるはずっすー”とここしばらく騒いでまして」
「……」
なんか聞いた気がする。
確か昨日、そんな叫びと共に投石で雪だるまを爆発四散させていたな。
あれも魔法のつもりだったのだろうか。どう計算しても威力が小銃のそれだったが。
「魔法なんてもの存在しないと否定したのですが、シャーロットさんの普段を見ているとおかしいのは自分なのではないかと……」
ずぅぅんと地響き。
ちなみに今朝からは裏庭で何かを叫びながら雪の積もった地面を殴ったりしている。
全部物理的なアプローチというか、拳を使っているのは根本から間違えていないだろうか。
小説等で出てくる魔法とは杖をアンテナのようにして発信するものだ。
ちょうど先ほど読んでいた「ベリテット冒険記」にもエルフの魔法使いが出てくるが、この者も杖を握って色々操っている。
絶対にそう、と断言できるほどの材料はない。しかし少なくともシャーロットは間違えてるといえるだろう。
「……」
「ソラさん。せめて暴れさせるのをやめさせたいのですが、どうしたらいいと思います?」
どう、ねえ?
首を傾けお悩み返し。
「分かりませんわよね……」
今のところ魔法を使えると屋敷の面々に思われているのはネズミのアンのみなのだが、そのアンが獣人だからと実際に魔法を使えるのかは本人の口から出ていないので現在不明だ。
みんなに魔法と思われている事象のそれは、アンはアンでも怪奇現象アンのイタズラなのだし。
で。その彼女に「魔法はありません」とハッキリ言ってもらえればきっと、あのシャーロットでも流石に諦めておとなしくなるだろう。
だがそもそもアンの姿を見つけるのからして難しいし嘘を言えと話が通じるか半分半分だし。というか、万が一にも「シャーロットさんはまほうがつかえます!」と言われてしまったらますますだ。
うーん。他に手段か。
「……」
そうだ、トリブレに聞いてみようか。
昔からの仲と言うし、どうせシャーロットの明後日に向かった暴走も今に限った事ではなかろう。
問題は道化師トリブレをどうやって呼びつけるのかという話になるけども。
「魔法での決闘で決着をつける、とか
「……」
如何でしょうか、じゃないよ。一体何を言ってるんだエミリー。
お前まで狂ってしまったらどうしたらいいんだ私は。
「ソラさん。わたくしも実家にベリテット冒険記が置いてあったので存じ上げておりますが、対立した際には決闘をすればだいたい解決するそうです」
「……」
「故に、シャーロットさんをぼこぼこにいたしましょう!」
だから何を言ってるんだお前は。
だいたい、今の時代に決闘も戦闘も何らかの法律に触れるだろう。
「……」
首を振って否定。
すごいがっかりな顔をした。
「戦うソラさんが見たかったのに……」
本音はそこか。
「……」
ずぅぅん。またしても振動と、何事かを叫ぶ声。
なんにせよだ。
これ以上なんかして私の裏庭を荒らされても困るので、出陣致そう。
「ソラさん、どちらへ?」
「……」
ぐっと親指を立ててサムズアップ。
任せろエミリー。ひとまずあのでけぇメイドを止める。
「お供いたしますわ!」
エミリーを伴い裏庭へ足を踏み出すと、そこには建物二階相当の巨大な三段雪だるまが鎮座していた。
その周囲には設置した覚えのない真っ白い生け垣がいつの間にか飾り付けられている。たぶんこれも雪で作ったのだろう。
その元凶たるシャーロットは……いた。
「次は何しようっすかねー!」
降り積もった雪の真ん中、地面へその巨体を投げだして手足をばさばさしてる。
流石にメイド服では色々と支障があるからなのか、見慣れないジャージ姿で湯気を出していた。
……湯気て。どんだけ遊んで熱を発したんだ。サーモで見たら真っ赤だし。
「しゃ、シャーロットさん? まさかこれ全部、お一人で……?」
エミリーがドン引くのも無理はない。
朝にはこれら全て存在していなかったので、少し目を離した数時間で創造しているのに間違いないのだから。
どう考えても重機のひとつふたつと必要なレベルだぞこれ。
「むお? んっふふー、シャロひとりじゃないっすよー」
「──んふふふ。あ、
ぼこっと雪だるまの中段に隙間ができて、そこから眠たげな黄緑色の瞳が覗いた。
なるほど、トリブレと一緒に遊んでた訳か。それならこの大工事的雪景色も納得がいく。
昨日の夜から今朝にかけては大雪だったからさぞ楽しめたことだろう。
「そ、ソラちゃん、も。いいっしょ、にぃぁ……あ遊びたかっ……た?」
いやそういう訳でここへ来たのではないんだけども。
「んむふぅ……」
隙間からトリブレの瞳が消え、代わりに近くの生垣から声。くぐもっていて分からないが、何か言いたそうだ。
一応追記しておくが、巨大雪だるまの二段目から地面の生垣へは直接移動できる距離でなければ空間もない。
流石は道化師。常識にとらわれない。
「んふふ」
「そだ! ソラっちって今日お休みっすよね!」
「そういうシャーロットさんはお仕事ですわよね?」
うん。今日の非番は私とアンだけのはず。
なにジャージ姿で遊んでるんだ。お前。
「ならァッ!」
爆発音と共に雪が舞う。
「一緒に、遊ぶっす!」
「お仕事ですわよね?」
言うが早いか、シャーロットが駆けて生垣の奥へ走り抜けていった。
こんな足元でよくあんなに走れるというか、朝から動いてまだまだ元気だね。
一回くらいあいつがダウンしている所をみてみたい。風邪ひかないかな。
「……」
「遊ぶって、いったい何を──」
ぽす、とエミリーの頭に雪玉が当たった。
「雪の日にみんなで遊ぶとしたら、雪投げしかあんめーっすぜぇ!」
……雪投げ?
とんできた雪玉を回避しつつ生垣で射線を切り、のそのそ移動。
ああそうか、戦争とか合戦とかの言葉使えないのか今の時代。
「ちょっとソラさん! 止めないと!」
「……」
声抑えて。バレる。
そう手で指示を出そうとして、しかしそのように動けない。
やはり明確な指示は無理か。代わりに首を横振り。
「止めないの!?」
そっちじゃなくって。
というか、今日の目的は魔法が云々だったような。
言葉が出せないというのはしょうがないけれど、目的がズレても修正できんのはなんだかなぁ。
エミリーを伴いのしのし移動して、シャーロットが潜む地点の側面を取る。
着弾音は散っているし「どこいったっすかー!」と聞こえるので潜伏は成功しているだろう。
このまま不意を取って一本取れば──
「こ、ここにい! るぅ、よ!」
──トリブレ!?
しまった、道化師なら諜報も簡単か!
「そこっすかぁーっ!」
ちゅどん。
潜伏地点を変更しようとした矢先、遮蔽にしていた生垣が破裂した。
幾らか雪を被ってしまったがアウトではない。だがこれ……。
「ふっふっふー、見つけたっすよぉー!」
走れ!
「ちょっとぉおお!?」
エミリーを突き飛ばし、散開し隠れる。
流石に同行しつつはこれ以上無理。それぞれがあの砲台を叩くしかあんめぇ。
「わっはっは!」
わざと立ち上がり発見させると、やはりすぐ狙ってきたな。
剛速球が飛んできたのでこちらからも射出し撃ち落とし、隠れる。
隠れた直後にもう一発来て石垣がはじけた。再び雪を被ってしまった。
ヒット判定ではなかろうとはいえ、この役割は何だか損だな。
「……」
そもそも囮役が得する場面なんか限られるか。
ぶるぶるばさばさ。雪を払うと近くからパシャリと音がした。
「ねね猫、みたいだっとぉ、んふふふ……」
地面から生えたレンズからトリブレの声がして、引っ込んでいく。
猫みたいってさ……。
「ソラさん! どうされますの!?」
「エミはそっちっすね! 魔法ッ!」
「魔法ではないですわよね!」
ちらっと覗くと、シャーロットが強烈なアッパーで雪を巻き上げている所だった。
まるで木を揺らしたかのような落雪がエミリーへ降り注いでるけど、あれ大丈夫かな。
「からのぉ! ぶる~、ばーすとぉ!」
今度はぐっと握って正面突き。
シャーロットのパワーが高すぎたのか、設置されていたノーマル雪だるまがその場で弾け散るだけとなる。
しかしそろそろ仕留めに掛からないとまずいぞ。怪我人が出る。
せっかく彩ってくれた裏庭だというに多少壊してしまう事になるのが懸念だなぁ。
「壊ししても、ま、また、作る」
「……」
「次、は。そそソラちぃ……や、ちゃん、とも。あそ、遊び、た、たいなぁ」
「……」
まぁ、トリブレがそういうならいいか。
ついでに裏庭の片付けともしよう。
「……」
では!
「とーぅ!」
「そりゃーっ!」
おお、すごいなエミリー。あのシャーロット相手に撃ち返してる。
流石に威力は普通の人のそれだけど、やり合うだけでも相当なものだ。
だって一発着弾する毎に何かが吹き飛んでるもの。雪玉の出していい威力じゃないよ。
戦うにも準備が必要だな。
「……」
「そ、それ。ご、合ぅ法ぉ?」
私が投げても空中分解しないよう雪玉を圧縮しているだけだが。
素材に変化はないし合法でしょ。
「……そぅか。なぁ」
ぎゅっ、ぎゅっ。
「エミリー撃破っす! ソラっち! 次はおまえだーっ!」
む。結局エミリーはやられたか。……生きてるかな。
できた弾数は心もとないが仕方がない。私が決着をつけよう。
ひーふーみーで3発。当たれば流石のシャーロットも撃破できよう。
「ごーごー。んふふふ」
道化っこの声援を背に潜伏地点から一気に距離を詰める。
「こいやーっ!」
「……」
向こうからはアンダースロー球速160km、雪玉でこれって本当に人間か?
回避不能と判断し、迎撃のため雪玉射出。
「おわっ!」
発射された凝縮雪玉はシャーロット弾を破裂させ貫通。しかし撃ち落とした際に弾道が逸れたのか、狙いは逸れて地面へ吸い込まれた。
向こうは次弾装填まで間があるらしく、雪玉製造を諦めて拳を構え魔法の姿勢だ。
強烈なアッパーで雪を巻き上げるという全く魔法ではない物理だけども。
「マ・ホーゥ!」
「……」
正面全体が危険地帯なので勢いのまますれ違い、構えなおして発射姿勢。
「と見せかけて発射っす!」
腕を振り上げた姿勢のシャーロットの手には雪玉が握られている。一発隠し持っていたのか。ぐりんと回転して撃ち下ろしてくる。
偶然か狙ってか、これも回避は不可能なタイミング。撃ち落とすのもできなくないが、その為に残り少ない雪玉を消費するのは勿体ないな。
ならば。
「……」
腕を振り上げて肘カバー展開。
ブースター点火。
「おわっ! 魔法を使うとはやるっすね!」
魔法ではない。科学だ。
片肘だけかつ一瞬であれば跳躍やパンチ以外でもこのように高火力近接攻撃へ転用できる。
エネルギー消費や重心制御、あと危険性の都合で奥の手としたかったが仕方がなかろう。
「ならば!」
シャーロットの手に乗っていた圧縮雪玉こと雪弾が一瞬で溶解したため、距離を取るためか彼女は思いっきり雪を蹴り上げた。
ばふんと雪崩のような白い壁が私を覆いホワイトアウトと相成る。
「……」
そういえばさっきの一瞬、シャーロットの手は炎に触れていたはずなのにノーリアクションだったのはどういうことなの……?
「危ないですわ!」
生きてたらしいエミリーからのメッセージが届く。
だが心配は無用。額のバイザーを降ろし、サーチモード。
なるほど、距離を取ると見せかけて攻撃か。
何かを掲げている。あれは……雪だるま?
ならば両肘でのブーストをかますしかあるまい。
「トリブレさん! 脇!」
「んっ!」
なんか変な声とシャッター音が聞こえたけど無視し、両腕を振り抜き白い壁ごと雪だるまを真っ二つに。
肩肘だけとは異なり、両方なので火力二倍。均等に推進力が発生するため姿勢よし。
振り抜いた勢いで中央の巨大雪玉の一部が欠け、傾いて館へ寄りかかる。
どうだ恐ろしいだろう。普段適当に小動物扱いしやがってこんにゃろ。
「……」
がしゃこんと腕を戻して雪玉セット、発射!
「ぬん!」
半透明の超圧縮雪玉は真っ直ぐ飛び、シャーロットの額で弾ける。
ぱりんといい音が鳴った。
──しかし。
「まだまだぁ!」
踏ん張って耐えた巨躯は両手に残っていた雪だるまの半分をぱしんと合わせて圧縮し、最後の大勝負とばかりに大きく右腕を振りかぶる。
私自慢の雪玉は残り一発、ここで決めてしまうしかない。
「れっどぶるーまうんてんぶらす──」
前振りが長い!
ので、胸元へシュート!
「におつ!」
どすん。シャーロット、撃破。
今度の弾は砕けなかったので地面へ落ちた。
拾い上げて手元で遊ぶが、これを二発でようやく撃破とは頑丈過ぎだな。
やっぱり人間ではない説が濃厚。
「やりましたわね! ソラさん!」
「おめ……っとぉ……!」
わっとと、抱き着くな抱き着くな。
「熱っっっぢいですねっ!?」
──めちゃくちゃそこ熱いから。
計3発、右は2発も吹かしたんだ。
特に右腕は結構ほっかほかになっているぞ。
「……ソラさん、それは?」
エミリーが私の手にある弾丸こと圧縮雪玉に注目する。
気になるならあげるよ。
「ゆき……だま……?」
「合法ぉ、っら、らし、しぃいよ」
「先ほどの炎の柱といい、これ本当に合法の雪投げですわよね……?」
そもそもこれに合法も非合法もあるんだろうか。
「もはや氷ですわよねこれ。凝縮し過ぎて」
「て、鉄もつ潰せるぅ。から、ね」
シャーロットが自身の勢いで雪玉を潰さぬよう固めていたのと同じことだ。
尤も、これは完全に特定の個人をぶち倒す為だけに製造していたがな。
相手が相手だからこそよ。
「ちょっとその勢いであの雪だるまへ投げてみませんこと?」
「……」
ほい。ばしゅん。かこーん。
遠く離れた雪だるまの頭に乗っていた鉄バケツが良い音を出しながら跳ねた。
あれは元々底に穴の開いてた飾り用なので、側面に穴が空くくらいは問題ない。
「それを、二発……?」
「ちょっち痛かったっすね」
痛いで済ますなよ。人として。しかもちょっちって。
「そそそれをぉ、う。撃つの、も、どぉうな……の?」
いやシャーロットなら耐えるし大丈夫かなって。
「さってと。第二ラウンドは疲れたからやめるとして、次は何するっすか?」
「仕事だろ」
上階から第三者の声。
みんなで見上げれば、窓から身を出した領主ジョージが先ほど倒した巨大雪だるまの背を滑り降りて来た。
傾斜が緩やかなのですごいゆっくりしてる。楽しそう。
「さっきからドカンドカンなにしてんだお前ら」
「雪投げっすよ」
「雪投げです」
「……」
雪投げだが。
「これが? この惨状が? マジで?」
周囲を見渡す。
先程まであった綺麗な生垣は半壊し、中央の雪だるまは倒壊。地面も抉れて所々土が見えてる。
うーん、どうみても戦地。
「うおぉー! 滑り台っすー!」
「いや仕事しろや」
あーあ。さっきジョージが遊んじゃうから。
止める声も聞かず、シャーロットはべしべし叩いて形を整え始めた。
「ったく……」
「滑り台なんてソラさんでも遊びませんわ」
というか私の場合は重量がな。
「一番ガキだなあいつ」
「シャーロットさんらしいといいますか」
「つか、滑り台なんてアンでも遊ばな──」
すさささささ。きゅっ。
目の前に正座で滑り降りてきたのは、大きな耳の小柄な人物。
マフラー着用のアンだ。私服姿は珍しい。
「そういやアンは休みだったな」
小動物はとても良い笑顔で我々を見上げている。
「たのしいでございます! すべりだい!」
「そうなんだ……」
その言葉にエミリーが惹かれてシャーロットの滑り台作りに加わっていった。
三段重ねの横倒し雪だるまは削られ、形を整えられ、二階からの脱出シュートへとその姿を変えていく。
美的センスはともかく、重量で私は遊べないから休憩だ。
というか、電気の残量がね。動いたし。
「そす、そソラち、も。おお疲れ、さま」
「……」
あらトリブレ。
そういえばしばらく席を外していたけど大丈夫?
「ちょっとさ寒く、て、か。か、ィロ取ってきてた」
カイロあるんだ。
というか、トリブレでも寒いとかあるんだ。
「さささ、っ流石に、ね」
まあこれだけ積もってるならか。
雪の隙間から顔(瞳)出してる訳だからな。
「ね」
どこ温めてるのかは皆目見当つかないけど。
「え」
「どうでもいいから仕事して……」
「……」
隣で哀愁漂う声がした。
そういえば今日の担当の二人とも遊んでるね。
楽しそうだしいいんじゃない?
「いんだ」
いいんです。
「トリブレはさっきからぶつぶつなんか言ってるし、みんな遊んでるし、ソラは無言だし、こりゃあ俺も遊ぶしかねぇな!」
ジョージが駆けて、雪景色へ消えていった。