古代兵器のお屋敷のんびりメイド暮らし。   作:親友気取り。

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38 どっかーん!

 

 

 日も暮れて執務室。本日のお仕事(メニュー)を終えてブロンテと近況報告がてら雑談してたんだけど、そういえばソラが喋れるか否か問題についての答えをブロンテに伝えてなかった事を思い出した。

 本人が喋れないフリしてる訳とかじゃなくって、録音してたやつを流してたっぽいぞ。理由は知らんが。

 

「む? わたしが聞きたかったのはその魂が語れるか否かという話だが」

「喋れないのに変わりはないっぽいってば」

「だーかーらー。ソラくんの内側にある魂についてだよ言ってるのは」

「はぁ」

 

 ソラの中に魂があるのはアン協力により判明している。

 はっきり元気よく“あります!”と答えてくれたし、その話は終わったろ。

 だから手紙に書いてあった通り、本当に喋れないかどうかを気にしてるんだと思ったんだけど。

 

「わたしが言いたいのはね。アンくんの検知した魂、それが当人のモノではないのではないかという話だ」

 

 じゃあ誰のだよって、あー……。

 

「ソラ・ヒナタか……」

 

 裏山で見つけた墓石の名前。

 1000年前の機械戦争時に亡くなった同じ名前というだけでソラへ「これお前じゃね?」と尋ねるほど、俺も短絡的じゃあない。そこにはきちんと推測があって聞いた。

 それっていうのが──

 

「──裏山の墓、名が刻まれた棺はからっぽだったのだろう?」

 

 正確には棺ではなく骨壺なんだけど、いずれにせよ当人のそれのみが骨片一つ収まっていなかったことは確かだ。こぼれたとかではもちろんなく、副葬品として硬質な長方形の物体だけが入っていた。

 一部金属を除いて皮とも厚紙ともつかない素材の使われている副葬品の価値は分からないけど、少なくともこれが機械であり何の意味もなく入れてあったとは思えない。なぜかって考えたら、そりゃソラの関連を疑うだろ。

 

 ソラが元々蘇生目的だったことは映像により知っている。蘇生が失敗し、新たな生命として覚醒したことも。

 だから状況証拠的にあのかわいい機械の身体の中に干乾びた死体がそのまま残されてるんじゃね? っつう恐ろしい考察をブロンテはしているのに、これ以上どんな恐ろしい話をしようってんだ。

 

「なら中に魂も囚われたままだと思わないのか」

「思わない」

 

 だって怖いじゃん! エミリーが聞いたらたぶん漏らすぞこういうホラー!

 

「はぁ……」

 

 ため息交じりにブロンテはどすっとソファへ座った。

 俺もため息をつきながら対面へ腰を下ろす。それで?

 アンが答えてくれたソラに魂がありますって答えが正確には誤りで、やはり機械に魂はないって話を?

 

「魂があろうとなかろうがソラくんの存在は否定のしようがないだろう?」

 

 じゃあ何を言いたいんだ。

 

「わたしはね、憐れに思ったのだよ。彼女が可哀想だとは思わないか」

 

 そりゃあなぁ。アンを保護した時と同じく、何とかできる範囲なら全力を尽くしたいとこだが。

 

「だからどうにかソラくんの中にいるその魂と対話し、どう弔われたいかを聴ければよかったんだが……」

「死者との対話ねぇ。無理じゃないか? そもそも俺やお前じゃユーレイってもんを見ることもできないし」

 

 かたん、かたかたかた……と窓枠が風に吹かれたのか細かく震えた。

 事情を理解し協力できうる獣人はアンしかいないが、悪いけどアンへこういう話はしたくないな。

 なんせあいつはかつて墓荒らしで生活していた。死者の弔いや安眠についての理解を深めるにはまだ純粋過ぎる。

 確かに気付いたからには今すぐにと動いてやりたい。でもそうはできない。悩ましいねぇ。

 

「……」

 

 こんこんと壁を叩く音がして、振り返ればソラがいた。

 メイド服のまま手には着替え一式を手にしているし、この様子はこれからお風呂行ってきますの挨拶だな。

 

「おぉうソラくん。どうしたのかね」

 

 ブロンテが問いかけると右手に持った着替え一式を天に掲げながら左手でサムズアップ。

 うーん、仏頂面のままだがその所作にシャロイズム(シャーロットの影響)を感じる。

 

「……通訳」

「これからお風呂だとさ」

「ああ、あの着替えはそういうことか」

 

 そういやブロンテがこれを見るのは初めてか。

 最近のソラは終業後そのままお風呂へ行く。メイド服から私服へのチェンジを兼ねてね。

 そして誰が強要したわけでもなく、いつからかこれから行ってきますの挨拶をするようになった。

 棺から目覚めて仕事を始めた当初は休日すら理解してくれなかったってのに、今じゃ時間になりゃ自主的に退勤してくれるしこんな習慣まで生まれている。

 人工的に作られた魂を持たない機械ったって、接してみりゃあただの人間だよ。かわいらしい。

 

「……」

 

 ヘンな姿勢のままこちらを見ていたソラは首を傾げると、とてとてと歩いて先ほど風に吹かれて鳴っていた窓へ近付くと着替えを掲げた。

 

「あれは何をしているんだい?」

「時々あるんだよな。窓見てリアクションしてるの」

 

 唯一この行動だけが分からないんだよなー。

 

「内なる自分と対話してるとか!?」

「聞いてみろよ」

「そうだね。ソラくん、そこに何かあるのかい?」

 

 ソラが肩越しにこちらを向き、窓を向き、しっかりこちらを振り返って首を横に振った。

 なんだそのテンポ。まるで口止めされたみたいな感じだったぞ。え、なに、マジでなんかいんの?

 

「……」

 

 ぶんぶんと首が降られ続ける。

 

「そっかー誰もいないかー」

 

 こくり、と頷いた。

 うん。よし!

 

「悪いな引き留めて!」

「うわ声でか」

「……」

「お風呂楽しんで来いよ!」

 

 首を傾げつつ、再び頷いたソラが部屋を出ていこうと歩く。

 しかし、途中で止まってブロンテへ着替えを見せつけた。

 どうしたんだろ。

 

「ああ、わたしも一緒にって?」 

 

 ほうほう。ソラはお誘いをするようになったか。

 

「ふむ。丁度良いし──」

 

 ──ブロンテとはまだちょーっとお話したいからゴメンネ!

 

「ど、どうしたんだい急に」

「……」

 

 ふむと顎へ手をやったソラがひとつ頷くと、すすすっと動いて部屋を出ていく。扉はないので、枠越しに廊下で手だけがしばらくひらひらと振られてやがて消えた。

 無表情でツリ目。手振り身振りのみ。でもなんか、お構いなくだとかごゆっくりだとかそういう意図が感じられちゃって仕方がない。なんか勘違いしたかあいつまさか。

 でもそれでもいい、それでもいいからブロンテを連れていかなくてありがとう。

 今ひとりにされたら俺は漏らす!

 

「情けな……」

 

 ソラの目つきよりジトっとしたそれがブロンテから向けられる。

 だって、仕方がないぢゃん!

 

 

 

♪ 

 

 

 

「ぬるいっすね」

「ぬるいですわね」

「ひぅ」

 

 浴槽へ足を付けた三名、三者三様のリアクションで温度を伝えてくれた。

 私は隣の専用浴槽なので分からないが、どうやらあちらは上手く温まっていないらしい。

 珍しく獣人のアンも共にお風呂という全員集合だったのに、なんたることだろう。

 気になって私もその温いらしい浴槽へ手を入れてみる。

 

「……」

 

 うーむ。

 全身を長時間は流石に厳しいだろうが、少しであれば私でも入れそうな程度と。

 

「どうしちゃったんすかねぇ」

「そういえばレアさんがボイラーを見て壊れているかもとおっしゃっておりましたが、もしかして」

「そうなんすか?」

「き、きのこはうえてません!」

 

 ボイラーの故障かぁ。

 物理的か寿命によるものなのか、いずれにせよキノコは関係なかろう。

 そういえばここのってどう沸かしてるんだろ。ガス灯があるんだしガスかな。アナログな薪の可能性もあるけど、薪を置いてあるところは見たことないし。

 

「でもシャワーは温かかったっすよ?」

「恐らくタンクに貯まっていた分でしょう。シャワーは浴びられましたし、残念ですが今日は……」

 

 確か脱衣場の壁にそれっぽいハッチがあったような気が。

 

「お風呂入ったって気になれないっす!」

「ふゆにこれほどあたたかいおみずがあれば、じゅうぶんにございます!」

「風邪ひくっすよー」

 

 ばしゃばしゃと水面を叩くアンと、それを嗜めるシャーロットを背に心当たりを探っていく。

 脱衣場の確かこの辺に……あったあった。水道管ふたつに、それぞれ赤と青のレバー。

 

「ソラさん、どうなさいました?」

「……」

「配管に問題はない様子ですが」

 

 だねぇ。いやさ、レバーの捻りミスで水だけ出てたーってオチかなと期待してたんだけど。

 まぁ殆どこれで済んでくれって希望だったからしゃーなしやね。

 ボイラーの故障なら私は分からないし、こりゃもうお手上げかなぁ。

 それこそ私からレアに頼めばすぐやってくれそうだけど、この時間じゃもう帰ってるか。

 

「よし!」

「ぴゃー!」

 

 ばしゃーん! と後ろで大きな音がなった。同時に、私の背中にずぶ濡れが抱き着く感覚。

 

「折角アンっちが来てくれたのに入れないなんて許せねぇっす!」

「シャーロットさん、どうなさるおつもりで?」

「みなのしゅー! そこで身を寄せ温まっておれー! っす!」

 

 なにその取ってつけたような「っす」は。

 振り返ってその姿を視界に捉える前に、デカメイド(メイド服抜き)は一陣の風となり消えていった。

 

「な、何をなさるおつもりでしょう」

「おそとはひえます!」

「……」

 

 あの人、全裸ダッシュしていかなかった?

 身内とはいえ弟君構わず風呂を共にしたがるし頓着がないんだろうか。

 町へ出ることはないだろうけど、ジョージや警備の方々等々男性陣がおられるし大丈夫かなぁ。

 

「ひえてまいりました!」

「とりあえず、ブランケットで身を寄せておきましょうか」

 

 極めて冷静にエミリーは申したものの、酷いニヤケ顔を隠せてない。

 

「アンさんとこうして接する機会はないので嬉しいですわ……」

「ぴっ! み、みみをかじらないでほしいのですがっ!」

 

 アンのおっきな丸い耳を口に含むなエミリー。少しは理性を保つ努力しろ。

 お前がその様子だから全裸ダッシュビッグメイド(メイド抜き)を止められなかったんだぞ。

 

「獣人と言われ、初めは毛むくじゃらを想像していましたが」

「な、なんでしょう……」

「大きな耳や細長い尻尾がある以外、普通の女の子ですわね。ぅへへ」

「それは」

 

 そういえばそうだ。アンは動物寄りの思考というか、本能を優先してしまいその行動を習性や生態と言えるほどであるが、かといって獣そのものに外見が寄っている訳ではない。

 我々の想像する獣人と言うものが偏見による勘違いであれば話は終わりだけれども、不思議に思う話だ。

 

「アンめのあにやあねは、ははとちちは、ふつうのひとでしたが」

「え」

 

 ん?

 

「なぜか、アンめだけが、このすがたで──」

「あー! わー! やめましょうこの話は! ね!」

「……」

 

 隔世遺伝、あるいは先祖帰りという奴か。聞いたことある。

 両親ではなくその親、はたまたさらに遡ったどこかの遺伝子が世代を隔て現れてしまう現象。

 人の血が混じったものの、それによって耳と尻尾と本能が色濃く出てしまったのがアンという事だろう。

 親であるソフィア会長が絶対に純粋な人間ではないのにも関わらず、一切その気配をさせないエミリーとも関連があるな。獣人の性質は潜伏してしまいやすいのだろうか。

 

「……たいへんでした」

 

 そりゃあ、大変だったろうよ。

 小さく震え出したその身へ少し体重を寄せる。

 本人の性質を利用するようで悪いが、これが安心に繋がるなら利用させて頂こう。

 

 家にいられなくなったか追い出されたのか、墓荒らしで生活し害獣呼ばわりされ迫害を受け町から町へ流れ。

 アンは本能的に群れという単位を好む。人のぬくもりを得たいというところだろう。

 そのアンが家を出されて単独で生活するという事が、いかに酷で心細い状況であるか!

 

「……」

 

 怪奇現象の方のアン()には悪いが、あそこの墓地が空っぽだったお陰で行き倒れこの屋敷へ拾われた。

 ソフィア会長からはもっと教育しろと小言を言われたが、そんな自身の名も知らぬ状態から言葉を教え仕事を教えとやっているジョージは頑張ってるよ。

 このような者を決して見捨てないその心意気、私に恋心があれば惚れていたという所だろう。ないし信頼を寄せるで済むが。

 

「す、好きな食べ物はありますか!?」

 

 俯きかけたアンの頬を両手で挟み、ぐりんとエミリーは自身の顔へ向け叫んだ。

 その声量に逃げかけるがこのブランケット群衆からは逃げられない。

 私も逃がすつもりはない。この際だし仲を深めておきたいからな。

 

「えっと! あ、ピーナッツはだいじにいただきます」

「ピーナッツですね。分かりました」

「あとはクルミも、かたいからをかじるのがすきでした」

「種実類を好むという訳ですね、かわいい!」

 

 これ後日大量に用意されるやつだわ。

 

「ソラさんは、食べてみたい物とかありますか?」

「……」

 

 おおっと、私? 唐突に話を振られ固まってしまった。

 エミリーも私は戸惑ったことに気が付いたのか、「ソラさん、何かあります?」と再度問うてきた。聞き間違いではないらしい。

 

 と、言われてもだな。

 うーん……食べたい物……?

 元たる“空”ならともかく、(ソラ)は意識が芽生えて以来一切何も口にした事がない。

 データとして「おいしそう」や「おいしそうに食べる」等の表現こそするものの、実際のところ食べ物を見ても一切欲する思考は浮かぶことがないのだ。食欲がないからこその状態といえようか。先ほどの恋心云々と同じ系統だろう。

 

S.Message: Suiton was a regular meal for me.ヾ(・∀・)

 

 おお、“空”じゃん久しぶり。あんまり喋ってなかったけどどうしてた?

 ……応答がない。もしかして怪奇現象が乗っ取った時と同様、一方的に喋ってるだけなのかな。

 でも思い返してみても明確に会話できてた時あるしなぁ。

 っとと、質問の返答をどうするか考えないと。伝える方法はともかく。

 

「……」

「なにも、思いつきません?」

 

 頷く。“空”からの答えはあるが、それは私の解ではない。

 

「すいとん、とはなんでございましょうか!」

 

 え?

 

「……すいとん、すいとん……? アンさんは、どうしてそれを?」

 

 エミリーが困惑しているが、私だって混乱している。

 その名は我が内部にいる“空”が先程、よく食べていたと語ったものだ。

 システムメッセージとして表示されたのみのそれを、なぜアンが?

 

「ソラさまがもうされていたようなきがして」

 

 ……あ、もしかして魂を検知したのか?

 アンは私の内部に魂が存在していると以前から指摘していたし。

 てかそれじゃアンが見てたのって私じゃなくて“空”の魂じゃん。なーんだ。

 

S.Message: Is that a bad thing? I'm having fun, though.(^^♪

 

 別に。私は身体も魂も借り物だなって。

 

「エミリーさま! すいとんとはどのようなたべものでしょうか!」

「え、そうですね……。実はわたくしも頂いた事がなくて……」

「アンめも存じ上げませぬが、できうるならいつものおれいにふるまいたいとおもいます!」

「……ソラさんが、食事を……?」

 

 この身が機械である事を忘れていないエミリーは懐疑的な目でこちらを見る。

 実はこっそりご飯食べてますとか実は喋れましたとか、そういうの一切ないけどなんだか居心地が悪いな。

 

「そうですわね。でしたら一度、試してみるのもいいかも」

「はい! ではごじつ!」

 

 ぱぁっと明るい顔で笑顔を向けているところ悪いけど、しっかり目を見張ってないとアンはドブ飯作るらしいからな。

 実はと言う訳でもなく食べられない私に代わって誰が食べると思う? ジョージだ。

 

「……ソラさん、すいとんはともかく本当に食べられますの?」

 

 小声で問われたので、アンに悟られないようこっそり横に振っておく。

 やっぱりと呟いていたあたり、本気では考えていなかったらしい。

 エミリーのことだ。大方、あまり姿を現さないアンと一緒に何かできるのが嬉しくて断り所を見失ってしまったというところだろう。

 被害を被るのは我らがジョージなんだぞ。ドブ飯を泣いて喜んで食べると噂の。

 

「甘い物、辛い物、硬い物柔らかい物。温かさや組み合わせ、沢山のおいしいがあるのに楽しめないのは心苦しく思いまして」

 

 ぎゅっと我ら小柄二人がまとめられる。

 彼女にとって我々揃って食事を楽しめていない組なんだろう。

 いい所の出だしより様々なおいしさを知っているのも合わさって。

 てかアンは普段何を食べているんだか。屋根裏の食料は全部未料理だったぞ。発酵はしてたが。

 

「ぴ!」

「どうされましたの?」

「な、なにかしんどうがちかづいております!」

「振動?」

「……」

 

 言われ、静かにする。

 各々の心臓の鼓動とファンの振動しかマイクに届かないが……。

 

「ぅぉぉおお!」

 

 あ! 振動と共にシャーロットの雄叫びが聞こえた!

 

「一体シャーロットさんは何を──」

 

 言い切る前に浴室の壁が破壊される音が響き渡った。

 どんがっしゃーん、ばしゃーん! と派手な音はしばらく続き、やがて収まる。

 こらこら、アンが驚いてしまうじゃないか。今度は何をしでかしたんだあいつは。

 

 そーっと揃ってブランケットから顔を出し浴室を見る。

 そこにあった物は……。

 

「ドラム缶……?」

 

 にしては少し大きい。背負った四角い箱と合わせてどこから調達してきたのだろう。

 それらを置いたシャーロットは再び表へ出て、今度は倒木らしきものを丸ごと持ってきた。

 

「シャーロットさーん! それは一体なんですかー!?」

 

 近付きたくないのでエミリーが声を張り上げる。

 

「お風呂っすよ! もちろん!」

 

 なんとかする方法がパワフルすぎやしないか。

 大き目のドラム缶を横倒しにして煉瓦で足元を固めると、上を向いた側面部を肘の連続殴打で器用に穴を開けていく。

 そして最後に元底辺現側面の部分へ拳を叩きつけ穴を開け、鉄の箱を組み立て取り付けていった。

 なんだろうあれ。決して小さくない箱に煙突のようなものがついてるけど。

 

「もしかして、ボイラーですの?」

「ですのですの。使ってないやつが倉庫にあるの思い出して、引っ張り出してきたっす」

 

 ほほう。つまりお風呂を自作したという所か。

 浴槽部分については裏山の工事現場からくすねてきたらしい。

 

「あ、先に水入れておけばよかった」

 

 一度ボイラーを外すとドラム缶を持ち上げ浴槽へ浸し、バケツで水を汲むようにざばっと組み上げてしまった。

 漏れないよう手で抑えつつ、片手でボイラーを取りつけ水漏れを確認。しっかりくっ付いている。

 

「ソラさん。あれ人間に可能ですの?」

「……」

 

 無理でしょ。持ち上げた時、水の重みに負けてドラム缶の方がちょっと変形してたもん。

 指定方向外からの圧力とはいえおかしいっすよ。

 ソフィア会長が何を察したのかは分からないが気になるな。レアを通せば教えてくれるだろうか。やっぱり口が欲しい。

 

 そうこうしている内に倒木を手にしたシャーロットは腕力だけでバキバキ折って行き、手慣れた様子ですり合わせ火を起こすとボイラーへとくべていく。

 どうやら上手くいっている様子で、見守っていると湯気が立ち始めた。

 

「そろそろいいっすよー!」

「……行きましょうか」

 

 だね。三人がドラム缶へと収まり、私はいつもみんなが浸かる浴槽へと入る。

 いい感じに冷めておりちょうど良いなこれは。

 

「えへへー、いつもと逆っすねー」

 

 逆? ……ああ、確かに逆だな。

 いつも皆が浴槽へ浸かる時、専用浴槽にいる私はこう見えていたのか。

 

「夏になったら海で一緒に泳げるっすかねぇ」

「どうでしょう。潮風程度は大丈夫なように見えますが」

「アンめはあまりおよげません!」

 

 海水はどうだろう。厳しいかな。

 なんやかんやで機械の身体であることに変わりはないし、稼働は摩訶不思議でも物理的に私は存在している。

 お試しで動けなくなってしまっては元も子もないので少しずつ試していく他なかろう。

 ……さて、そろそろかな。

 

「お、ソラっち分かってきたっすね」

 

 言うが早いか、シャーロットからがくんと力が抜けた。

 折角時間かけて用意したのにのぼせるのが早すぎる。どういう事なんだろうなこいつは。

 

「わたくし達はもう少し温まりますので、ソラさんにお任せしても?」

「……」

 

 頷いて大きなメイドを引っこ抜く。

 いつものぼせるまでよくもと言いたいが、これが彼女なりの甘え方なのだろう。

 手間はかかるが、頼られて悪い気はしないな。

 

 

 

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