月刊レジェンドモータース
アレキ!ハマサキ!!快進撃!!
“下克上!!刻むファステストラップ!!”
─────今年、WRCCで優勝できなければ撤退する。
背水の陣で走り出したハマサキが、優勝を飾り復活の狼煙を上げた!
初戦オーストラリアGPにて3着の表彰台(トップチェッカーはホンマGBR1000RR)に上がるというフルモデルチェンジの手応えを掴むと、続くマレーシアGPプラクティスでは全メーカーで一番時計を叩き出しポールポジションを獲得!へカティとの接戦を制してポールtoウィン!数年ぶりの優勝に湧いたハマサキ陣営は意気揚々と次戦バーレーンGPに臨む!
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今季のWRCC注目は陣営の悲願、三連覇の懸かったホンマとアイデルン・リゲルだがまさかの伏兵が潜んでいた。
EUリーグで勝ちはあるものの、まだ若きアンドレイ・アレキが駆るZR-10Xがかつてと同じように蘇る……こんなドラマがあるからこそWRCCは面白い!止められない!
フルモデルチェンジしたZR-10Xは従来ハマサキのフレーム構造を廃しオーソドックスとも言えるフレームに変化。
これに熟成を重ねたサスペンションを組み合わせ、路面を押さえ付ける乗り味から受け止める方向にシフトした結果手に入れた驚異的なコーナーリング性能!レースよりフィードバックした市販機マシンは鋭利な見た目にそぐわぬユーザーフレンドリーなマシンに変化した!ZR-10Xを元に600ccクラスの兄弟機ZR-6Xのモデルチェンジマシンも登場し、ますますハマサキがアツい!
▼今年のWRCC開催国
第一戦 オーストラリアGP
第二戦 マレーシアGP
第三戦 バーレーンGP
第四戦 サウジアラビアGP
第五戦 イタリアGP
第六戦 ベルギーGP
第七戦 イギリスGP
第八戦 アメリカGP
第九戦 ブラジルGP
最終戦 日本GP
買い物に行けば、目的の物以外が目に付いてしまう事なんてよくある事だ。
なんとなく目に付いた雑誌を手に取って、ぱらぱらと捲って見れば、男達の奮闘が大きく見開きに載っていた。
以前、富士で初対面にも関わらず尊大な態度だったあの生意気なクソガキは確かに速かったようで、ハマサキは息を吹き返した
……何事も最初は気合いが入るものだが、シーズンを続けていくうち、人間は必ず
その上、出る杭は打たれる。運営は速いマシンには必ずキツい
人間がいくら天賦の才を持ち、マシン制御が上手くとも原付がスポーツバイクには勝てない。サーキットではマシン差はモロに出る。これは極端な例え方だが、それ程にマシン差があるように感じるのだ。
それだけ、もどかしさを感じる。
言い換えれば無力感だろうか。自分は全開で走っている筈なのに、遠ざかっていく相手のマシン。そんな光景を何度も見た事がある。
「おい買い出しだってのに、何道草食ってんだよ?」
「わりーな。目に付いちまってさ」
しまった、見つかってしまったか……。不満な顔を隠しもせず、じっとりと視線を向けてくるウオッカに肩をあげる身振りだけで返事しつつ彼女の荷物を片方持つ。
「買い物終わったんなら声掛けろよな」
「いやあ女の子の買い物は長いって言うじゃん?」
「……オレは目的のモンだけストレートに買いに行く派なんだよ。そういうのはスカーレットな。アイツは凄いぜ?すんなり終わったことが一度も無え」
「だろうなぁ……」
普段から付き合わされてるだろう被害者第1位。ダイワスカーレットのようなタイプはしっかりと自分の目で確かめて、その上で選定するまできっちり悩み抜く……と目に浮かぶ。それでいて見るだけの時もあるんだから女子の買い物は分からん。
「それにしても随分真剣に雑誌読んでたじゃねーの」
「本屋に来ることもあんまり無いしな。情報のアップデートってやつよ」
「やっぱりハマサキが載ってる記事は気になるのか?」
「……まあ、それなりにナ。乗ってるバイクのメーカーだし」
「どうだか」
一人だと、こうした複合ショッピングモールに足を向けることはなかなか無い。今日はちんちくりん達の必要物品買い出しにウオッカと連れ立って来た次第である。大型のスポーツ用品店や様々な店舗が入っており、いちいち個別の店に寄らなくてもここのモールで済んでしまうから楽でいい。
休日は人が多過ぎるから絶対来ないけど。平日なら閑散としていて、店員も暇しているから相談もし易い。
「プロテインはバナナ味とニンジン味にしたけど……。ブルースリの膝のサポーターは?」
「良いのがあったよ。まさか安定し始めてすぐサイズが合わなくなるとはな……ウマ娘の本格化って恐ろしいわ」
身長はガンガン伸びるわ(個人差アリ)、体型が変わるわ(個人差アリ)、手足も1週間前のデータが役に立たなくなるほど太くなるわ(個人差)、体操服やジャージなどのサイズも(個)
女のトレーナーならいざ知らず、その辺はデリケート案件なのでウマ娘本人に任せているが……いろいろ苦労もあるのだろう。中等部からトレセン学園に入寮し、久しぶりに実家や地元に帰省してみたら身体が変わりすぎてて引かれただとか、GⅠウマ娘ともなると皆が色を通して見てくるだとか様々な話を聞く。この辺は卒業生談である。
「シューズとか蹄鉄は?スカイはNHKマイルが明後日だろ?」
「その辺はトレーニング後の身体データを送ってるし、それを元に
「じゃあ少し見ていっていいか?」
「そりゃもちろん」
使用するのはウマ娘達なのだからいくらメーカーが営業を掛けたって合う合わないが必ずあるのが難しい所だ。なんならモデルが変わっただけで足に合わないなんてこともある。
このモールはスポーツ用品店とは別に、専門で靴を取り扱っている店舗があり当然のごとくウマ娘専用のシューズを扱っているコーナーも充実している。
トレセン学園にはカタログをもってメーカーが営業に来ることもあるけれど、こうして実物を手に取って比較しながら購入できるからこそショップで見たいというウマ娘も一定数いる。我が担当ウオッカもフィーリングで走るからこそ、実物を試したい派だった。
蹄鉄とひとことに言っても、様々な材質のモノがあってメインは鉄でできたモノがオーソドックスだ。
やはり日本は鋳物の国。鉄は蹄鉄以外にも車やバイクのフレーム、鉄器、茶器にも使われている通り加工しやすく丈夫、値段が控えめといった利点がある。反面、重量は重くこれを足に括り付けて振り回すのはなかなかパワーが求められる。トレーニングで使用する蹄鉄はだいたい鉄製でこの重量感が良い、と好むウマ娘も居る。
まだ足の安定しない子供のウマ娘にはウレタンやアルミを使用するのが一般的で、角度を付けて足の向きを矯正する目的でも用いられる。軽量かつ柔らかいため衝撃を緩和してくれるのだ。
子供のパワーなら保つだろうが、その柔らかさから身体が本格化を迎えたウマ娘には向かず、踏み込んだ1回でへし割ってしまう。
ここにしっかりとコストを掛けられるかどうかでウマ娘の将来が決まる。
有名なのはチームカノープス所属のイクノディクタスだろうか。彼女は幼少期に脚部が弱く屈腱炎を発症してしまったものの、徹底した蹄鉄管理による脚部矯正の甲斐あって治癒。50戦を超えるレースを戦い抜き“鉄の女”と呼ばれるほどの頑強さを見せた。それ程にウマ娘にマッチする蹄鉄選びは重要で、合わないものは危険を伴う。
URAがレースで使用許可を承認する蹄鉄は鉄、マグネシウム合金、アルミ合金、銅、チタン等上記の規格で製造されたものとされている。
ウマ娘のフィーリングに任せて合わせるのがベターだ。もちろんベストはウマ娘の希望に合わせられれば良いが、どれも長所短所があり一概には決定できない。
例えばチタン製は軽さ、強度、対腐食性とも非常に優れるが、加工難度が高く元の金属の価格もかなりするから、頭一つ抜けて価格が高い。それはもうべらぼうに。これが熱加工されると綺麗な焼き色が入るため、虹蹄鉄と呼ばれている。
反面マグネシウム合金製は軽さに優れ、加工も容易、値段も安いと利点があるが、腐食に弱くすぐに変形してしまう欠点を持つ。完全に一発使用のみとして考えなければならないだろう。いちいち交換してシューズバランスをチューニングしなければならない手間を考えれば現実的ではない。
よってバランスが良いのはトレーニング用に丈夫で強度の高い鉄や銅、いわゆる灰蹄鉄、茶蹄鉄を使い、レース前からアルミ合金製に切り替え調整しレースに臨むというローテ。
気をつけなければならないのは、URAがレース出走にあたり蹄鉄の重量を定めた、いわゆる斤量規定があり基準値を超えても少なくてもいけない。コレを破ればせっかくの掲示板も失格に泣く事になる。
──絶妙なバランスを見つけなければならない。これが本当に難しいのだ。
あれやこれや考えている内に、色々フィッティングを試していたウオッカがしっくりくるものを見つけたようでこちらに寄ってくる。トレ鉄以外にも色々試したようで、蹄鉄売り場の前には店員が様々な蹄鉄を広げていた。
「あ、あのよ」
「なんだ?歯切れが悪いな」
「これ、すげーいいんだ……けど……」
「……虹蹄鉄じゃねぇか。コレをトレ鉄はちょっと厳しいぞ」
「んなわけないだろ!!使うなら勝負鉄にするっつうの!!」
ウオッカの持ってきた箱の中には燦然と輝く極彩色のチタン鉄が鎮座していた。“職人が手曲げで一つひとつ仕上げています”なんて触れ込みで、値札は付いていないが如何にもなお値段がしそうだ。あえて付けていないのかもしれない。
「ま、まあ……値段もアレだろうし今の勝負鉄もイケるから……忘れてくれ」
「それ、本当にしっくり来たのか?」
「……今までで一番かもしれねぇ」
「買うぞ」
「おいおいおい!?マジか!?」
「お前の足にはそんぐらい価値があるんだよ」
「ッ……」
店員に買うものを包んでもらうと、少し時間が欲しいとの事。なので座って待つ事になった。喫煙所も遠く暇つぶしもない。
横に座る彼女はソワソワして落ち着かず「あー」だの「うー」だの悩ましげな声を上げて尻尾をあっちこっちに暴れさせる。チラチラと視線を突き刺してきて、こちらまで落ち着かないようで……。
ちょっと待てよ?冷静に考えれば俺もめちゃくちゃ小っ恥ずかしい事言ってないか?
「ウオッカ」
「はひ!?なななんだよ!」
「はひってお前……なんでそんな落ち着かないんだよ」
「な、なんでもないんだぜ!?」
「んなわけ「嬉しかったんだよね?」
「ヴェッ!?マヤノ!!?マーベラスも!!?」
いつの間にか目の前にいたマヤノトップガンとマーベラスサンデーがニマニマとした表情で「ねー☆」と微笑みながらお互いに首を傾ける。
どちらも私服で、どうやらオフを満喫していたようだ。トレセン学園生御用達のシューズショップだから彼女らが居てもおかしくはない。おかしくはないが、考えうる限りで一番よろしくない奴らに見つかった。
「何でいるんだよ!!!!どこから見てたんだ!!!?!?」
「「あ、あのよ……」ってほっぺ赤くしながらトレーナーに蹄鉄おねだりしてた時から」
「最初からじゃねーかああぁぁぁあ!」
「「お前の足にはそんぐらい価値がある」だって!きゃー☆マーベラス!!」
顔を覆って奇声を上げ、頭を抱えるウオッカ。ソファーに撃沈。
おっと、こっちにも飛び火してきたぞ?というかこれ即延焼するやつじゃないか?何か手を打たなければ……!
「マヤノ、マーベラス、何か食べたい物がないか?」
その言葉を待っていた!とばかりにマヤノとマーベラスのパリピコンビはニンマリと口元を吊り上げた。
「マヤ、最上階のレストランのパフェが食べたいな~?」
「期間限定のやつだよ?きっとマーベラスに美味しいんだよ!」
「……分かった。それで手を打とう」
「ん~!話がわかるトレーナーさんなのね!!」
さらば給料、また会おう給料。パフェを頬張る3人を見て、一番安いチーズケーキがやけに酸っぱく感じられたのだった。