タンデムで見た海   作:印旛沼まで徒歩五分

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強敵─富士4時間耐久

 

 

今日という日のためにサクからの連絡を受け、即席で集まったチームメンバー戸狩(とがり)辰野(たつの)

 

現在、戸狩はタイヤメーカーで働いておりレース用のタイヤ開発を担うポストに就いていた。辰野は相変わらず二輪バカで、趣味が高じてライダー達の集うカフェを開き、少し離れた地方で切盛りしている。

 

かつてハマサキワークスチームに集い、タイヤ管理部門とピットクルーとしてチーフ岡谷(おかや)指揮の元、あくせく動いていた過去があった。

 

──鈴香に散った最速の英雄。その最期を、最前線で見届けていた者達である。

 

「まさか……」

「おい、嘘だろ……?」

 

彼らは知己への挨拶と他チームのマシン偵察も兼ねてパドックを見て回っていた。そしてホンマブースに差し掛かった時、到底居るはずのない人物に驚愕する事になる。

 

 

───アイデルン・リゲル

 

 

「おい!エントリーリストには居なかっただろ!?」

「いや……3日前にホンマからの出走で1台足されてンだ……。ライダーは発表無かったから新型のテストマシンでも捩じ込んだのかと思ったが……」

 

運営からしたらエントリーして規格さえ合っていれば台数が増えようが関係ないのだ。枠は数枠ほど空いていたし、金を出してくれるスポンサーのワークスチームなら尚更。

 

現在最強と名高いアイデルンが来てくれるなら話題性も抜群にいい。他3社のワークスチームだって全日本級のライダーを用意しているが、正直格が違う。もしレースに出るなら相方が余程ヘマでもない限り優勝候補筆頭だ。

 

しかし、不可思議な事はある。

 

ワークスチームの割り当てられるAクラスと、ここに出てくるということは腕に覚えがあるのだろうが、アマチュアチームが割り当てられるBクラスを比較しても力量が違いすぎて、ゴールタイム差が10分以内に収まればアマチュアチームの大健闘だ。

 

力量差が大きいという事は、プロがアマのクラッシュに巻き込まれる事だって無いわけでは無い。怪我でシーズンをふいにする可能性だってある。

それほどのリスクを負ってAクラスで総合優勝したところで、海外のレースに比べ賞金なぞ雀の涙程度。

 

つまるところアイデルン側にとって全く得がないのだ。

 

ウマ娘に例えるなら、海外GⅠを幾つも制した凱旋門賞が日本のGⅢレースに出走するようなものである。

 

「確かイタリアのデカいレースがあっただろ?あれ蹴ってまでこっち来たって事だよな?」

「賞金だってチンケな島国のレースだぞ……?」

 

ポンと億単位の賞金が出るレベルの高い海外レースを蹴ってまでアイデルンは富士(ここ)に来た。

それが分かっているからこそ、戸狩と辰野は一つの結論に至る。

 

「どう考えてもアイツ(サカキ)と決着を付けに来てんだろ」

「それしかねーわナ」

 

──因縁。

 

彼らを知っているならば、奴がここにいる理由はコレしか思い浮かばない。

(ラグナ)を最も追い詰め実力を認めさせた男。

長らく表舞台から姿を消していたが、そんな男が小さいながらもレースに出るのだ。ここで憂いを断ちWRCC三連覇へと弾みをつける。向こうが描く最良のシナリオだろう。

 

「ここでA()()()()()()()()()()()()()おもしれぇじゃねーか」

「ジャイアントキリングってな」

 

だが、そう簡単にやられるような俺たちじゃない。俺たちはいつだって()()だった。

 

開発の拘りを詰め込んだマシンは扱いが難しく、何年も何年もレースに勝てずにいた。遂にはライダー達にも敬遠されるようになった。

それを救ってくれたのは今も超える者なんかいないと思える天才メカニックのサクと、最強のハマサキ乗りと名高いサカキ。あの二人が居なければ俺たちはWRCCの舞台にすら立てていなかった。

 

楽しかったさ。嬉しかったさ。

 

───すべてを賭けてみたくなったさ。だから俺達は、俺達の手でアイツらを勝たせてやりてぇんだ。

 

 

 

 

「世界王者がこんなレベルのレースで走ったって戯れにもならねーよ」

「ホントにな」

 

悪態をつく大町(おおまち)屋代(やしろ)。手を汚してひと仕事終えた彼らは現在缶コーヒーを片手に休憩していた。ピットクルーの彼らはしばらく出番はない。作戦立案組のプランを待つまでだ。

 

「よもや、またお前とこうしてピット裏で缶コーヒー飲むことになるとはね」

「ホントだよ。サクのやつ『力貸してくれ』しか言わねーんだもん」

 

突然旧知のヤツから電話が来たと思えば、なにやら深刻そうな声で話すものだから金の工面か?と疑った。しかし蓋を開ければとんでもない。

──コレは俺達がやらなきゃ()()()()()()ところだった。

 

「サクのやつ、要件そっちのけで話し出すクセ直ってないもんな」

「ホントーだよ」

「スミマセン、ワタシも良いですカ?」

「おー、オタリー。どーよ?嫁さんとは」

「ボチボチです。キョーはデートをキャンセルしてもらったのデ、angryでしょうネ」

 

苦笑いするオタリー。ここに居る3人もまた、彼の走りに魅入られた者達。

 

「そういや、あの時10X持っていったのオタリーだったよな」

「ソウデスネ!でもサクがホしいと言うのでユズったンです」

「な!?レース用だぞ!?」

「ノン、ホアンソウチ付けて公道用にスると……デも、今はサカキ持ってルはずです。アレはカレしか乗レませんから。───だかラ、サクに渡しまシた」

 

マシンだって、自分を操ってくれる人に跨ってもらいたいはずだ。主人を求めるクセに、認めた者でなければ容赦なく牙を剥く獣。檻に繋いで飼い慣らすには、自分の手に余るほどの(マシン)

 

そんな獣を手懐けられるサクが新しく作りあげた機械獣(マシン)。そんな獣を乗りこなせるサカキが操るマシン。

 

あぁ、なんて心躍るんだろうか───。

もう見られないと思ったものを特等席から見られるなんて俺達は運がいい。そのためなら惜しまない。

 

 

 

 

 

★富士4時間耐久観戦スレ★

 

1:名無しの爆走ライダー ID:VTLFMfkfs

今年の富士スピリットウェイ4時間耐久レース観戦実況スレです。荒らし、叩きは回れ右

 

5:名無しの爆走ライダー ID:reXiMHIMu

お、おい……!ホンマのピットにアイデルンおるんやけど

https://umatter.com/superrider/photo/161117317348737

 

 

11:名無しの爆走ライダー ID:xB921K9j2

>>5 はぁ!?ツナギ着てるってことは走るの!?

 

12:名無しの爆走ライダー ID:qQinbeuAB

>>5 イタリアのモンツァチャレンジはどうしたんだよ!?

 

13:名無しの爆走ライダー ID:Ocwr/8TAQ

それよりこっちだろ 出走者にヤベェのいる

https://www.Fuji4-tai/riderlist23.co.jp

 

 

19:名無しの爆走ライダー ID:U3c8/gW12

>>13 サカキってあのハマサキのってたサカキ!?

 

25:名無しの爆走ライダー ID:A7QF91FgI

>>13生きとったんかワレ!!!

 

29:名無しの爆走ライダー ID:WEo2GbTmA

ホンマの出走マシン二機目の登録が3日前、アイデルンがモンツァエントリー取消したのも3日前だよな

 

33:名無しの爆走ライダー ID:iwPz0hgH5

>>29 アイデルン側がサカキを倒しに来たとしか思えねえ

 

35:名無しの爆走ライダー ID:VcKSphVKd

おいおいどうなっちまうんだよ!?敵討ちかお礼参りか!?

 

 

 

 

 

富士4時間耐久レースはコースコンディション(路面状況)とマシンコンディションを確かめるための練習走行(プラクティス)が10周許可されており、その日の路面に合わせたタイヤとセッティングがレギュレーションを外れない範囲で変更することが可能なルールとなっていた。

 

このプラクティスからフィードバックを行って、如何にマシンを状況に合わせ、ライダーの希望に寄せられるかが勝利へのキモとなり、非常に大きなウエイトを占めていた。

このプラクティスでマシンが故障及びクラッシュした場合、タイムアタックまでは修復作業が認められていて時間までにオフィシャルの許可を得られなければ失格となる。

 

プラクティス終了後、各チームの代表ライダー1人が3周ずつのタイムアタックを開始、ベストタイムによってスターティングポジションが決定し、昼を挟んで13時スタートで耐久戦が始まる。

 

アタックから本レーススタートまでタイヤ交換及びセッティングは禁止、アタックを行ったライダーはスタートを務めることはできない。また各ライダー1スティント(走行順番)の最低周回数は3周以上と定められていた。

 

「アタックをどうするかだよな……」

 

レース中はライダー交代規定が4回以上と定められていて、概ねAがアタック、Bがスタートを担当し以降→A→B→A→Bと行くのがオーソドックスな流れだ。

アイデルンがコンビを組むライダーはもちろん生半可な腕ではない。日本でも上位の腕を持つライダーがコンビを組んでいた。

 

サカキがタイムアタックするならば、スタートライダーは三才山(みさやま)となり、まだまだレース経験の少ない彼はポジショニングであっという間に揉まれてしまうだろう。

しかし、いいポジションでスタートする為にはアタックでサカキをぶつけるしかない。

 

三才山にアタックさせる手もあるが、全日本レベルのライダーと比較すると(いささ)か力不足が否めないだろう。

参加台数は48台。中団からスタートした場合前を捲っていくのは容易ではなく、できることならなるべく上の順位を確保しておきたい。

 

「方法があるぜ」

「マジかよ辰野!?」

「サカキが頑張りゃいいんだよ───なぁ?」

 

プラクティスが終わり、セッティングが合わされた黒いZR-10X。

 

サクの手によりセッティングがなされ、辰野が用意したタイヤを履き、ついにスペシャルマシンは完成した。

 

……後はライダー達に託される。

 

 

 

アタックするライダーは、黒い革ツナギを纏った男。アイデルンの頬には深く笑みが刻まれる。

 

そうだ、ボクはキミのその姿が見たかった───。

 

 

 


 

 

 

『6月の梅雨がバイク達の風でやられてしまったように快晴、陽炎が包み込むここ、霊峰富士の麓スピリットウェイ。実況はわたくし志茂田、解説は由羅さんでお送りしていきたいと思いますよろしくお願いします』

『よろしくお願いします』

『いやぁまさかのアイデルン・リゲル選手が電撃参戦、そしてアマチュアのBクラスではありますが、今なお最強のハマサキ乗りと名高いサカキ選手が参戦と混迷を極めております富士4時間耐久、どう見ますか?』

『いやー、やっぱり世界王者のアイデルン選手、優勝候補筆頭と言いますか。皆さんそうですよね。でもね、私はサカキ選手に期待したいんですよ。よくね、戻ってきてくれたと』

『鈴香の悲劇、語るにはあまりにも長くなるので止めますが……』

 

 

『実況席!志茂田さん!由羅さん!こちらホンマピットです!電撃参戦したアイデルン・リゲル選手にお話伺います!』

 

『アイデルン選手!まずは今日の体調はいかがでしょう?』

『しっかりやってきたし、ホテルでよく休めました。ベストな状況だと思いますね』

 

『今日の路面などはいかがでしょうか?』

『オイリーでもなく、スリッピーでもなく、マシンもホンマのメカニック達が仕上げてくれました。とてもいい、乗り手がミスしなければ勝てるはずです』

『堂々の勝利宣言ですね!』

 

『今回、モンツァチャレンジをキャンセルされてまでこの4耐に参加することにした経緯はあるんですか?』

()()()()、それ以外に理由は無いよ』

『彼とは?』

『タイムアタックを見ていれば(わか)るさ。彼は必ず上位に来るよ。賭けてもいい』

 

 

『由羅さん!アイデルンがギラギラですよ!』

『これは狙ってますね!』

 

 

 


 

 

 

あの時よりもずっと鋭さを増したデザイン。新設計のシャシー。熟成されたサスペンションとダンパー。長くなったホイールベース。パワーアップしたエンジン。性能の良くなったタイヤ。

何もかもが違うのに、どこもかしこもしっくり来る。姿かたちが変わろうと、サクが手を入れたと一発で分かる。

 

───その名を継ぐZR-10X

 

黒く輝きを照り返すマシン。ワンポイントに入れられたサンライトイエローとエメラルドブルーの(ライン)。それは誰よりも見慣れた隣の少女の一張羅。

 

サクめ……。なんでわざわざアイツ(ウオッカ)の勝負服と同じカラーにしやがったんだ……。

ご丁寧にゼッケンナンバーは23番。2枠3番は日本ダービーでウオッカが勝った枠番だ。ゲン担ぎとしてはこの上ないものと言えるが……。なんだか面映ゆい。

 

「23号車!タイムアタックに入ってください!」

 

マーシャルにコールされるマシン。久しく忘れていた、この全身を包む緊張感。時間にして5分にも満たない自分を誇示するたった3周。

エンジンに火が入れられ、炸裂音のような初爆と腹の底を揺らすようなアイドリング(鼓動)

翼のない戦闘機、そのコックピットに跨った。

 

「よし!頼むぜサカキ!」

 

サクに親指を立てて返事をする。

 

「トレーナー!いや、()()()()()!」

 

前回のようにイヤーカバーを着けたウオッカが近寄ってきた。彼女は何を言う訳でもなく拳を差し出す。ウマ娘なんだからこんなエキゾーストは辛いだろうに、勝気な表情で笑っていた。送り出される方は久方ぶりだが……。

 

なるほど、炉心に火がくべられる。

 

グローブに包まれた手で軽く拳をぶつける。緊張に包まれていた身体は、不思議なほどに軽くなった。俺達が走り出す前の儀式(ルーティン)

 

『問題は、黒ジャケさんが一線を引いてしまっているんです。勝利というものに』

『その時、自分一人で走ってましたか?』

 

日本ダービーを勝利したあとディープスカイに問われた言葉だ。

彼女に心の内を見透かされて、俺は何も言い返すことが出来なかった。それは自分自身を孤独に貶める毒。走る時は1人だと、コースに出れば独りだと、そう思っていた。

 

──そうか、お前も一緒に走ってくれるか

 

「行ってこい!」

「あぁ、見ててくれ」

 

シグナルグリーン。

 

二回スロットルを吹かす。反応は上々。クラッチをゆっくりと繋いでいく。後ろから来たマシンをパスさせ、右端に寄って1コーナーを抜ける。

与えられた猶予は3周。他車と被ってタイムが出ませんでした、なんて笑えないにも程がある。

 

チームオーダーは『出し惜しみするな』

 

なら、全開で行かせてもらおう。

 

 

 

『Bグループゼッケン23番、チームvodka!サカキ選手がアタックに入ります!新たな相棒を引っ提げて!最強のハマサキ乗りはモデルチェンジしたZR-10Xをどう乗りこなす!?』

『いやぁ……よもやこの人の走りをまた見る事ができるとは思いませんでしたね……』

『サカキ選手が公式戦に登録されたのは……あの鈴香以来ありませんでした!ファンの方々は首を長くし過ぎて痛めてしまったのではないでしょうか!』

 

ホームストレートに黒い獣がエキゾーストを響かせる。

メインスタンドにみっちりと埋まった観客達に「平伏(ひれふ)せ」と、命ずるような激しい咆哮。

 

『いーい音だ!コントロールラインを通過!現在トップタイムはAクラスのホンマワークスチームGBR1000RRを操る矢板が記録した1:45.702!ポールを獲るにはこれ以上のタイムが必要になります!』

『Bクラスですからね。1:50程度ならかなり上に来られるはずですが……ちょーと厳しいんじゃないですか』

 

1本目、この周は少し大袈裟にマシンを振って限界域を確かめていく。プラクティスでは他のマシンもいることから、どうしても走行ラインを制限されてしまっていた。

体全体でタイヤが発するメッセージを感じ取り、ダンパーの跳ねを考慮してマシンとシンクロしていく────

 

『最終コーナー立ち上がってこれは早いぞ!?どうだ!?出るか!?1:46.215!?Bクラスですよ!?1周目でホンマを捉えにかかる!!』

『いやぁ、速すぎるよ!!マシンも相当仕上がってますし、Bクラスが1周目で出していいタイムじゃないですって!!』

 

(どよ)めくスタンドを背に黒い疾風が咆哮と共に駆け抜ける。ビリビリと耳に響くエキゾースト。自分達の何倍もの速度でカッ飛んで行くマシンたち。それを目にするウオッカは本能的に感じ取った。

 

───次じゃない。3周目、とんでもないものを目にすると。瞬きも忘れ、音すら聞こえなくなって、極集中状態になったウオッカはシンクロしていく。

……一緒に走ってるんだ!トレーナーと!

 

 

2本目、ズレを修正し完全にマシンとシンクロした。エンジンも暖まった。タイヤも食いつく。最高の状態だ。

 

次だ。次の周。全てを使って行く。

 

『さあ帰ってきた!2周目!上位10台Aクラスのメーカーワークスチームが占める中、ただ1台だけBクラスのマシンが風穴を開けた!!さぁタイムはどうだ!?1:45.715────ッ!!大変だ!!大変なことが起きた!!

『ちょっとちょっとぉ!』

 

ブレーキはできる限りの最小限、臓物をぶち撒けてしまいそうな減速Gにマシンが暴れようとする。

 

それを押さえつけて、マシンを倒す。膝が地面に擦れる、肘が地面に擦れる。

タイヤの際の際、もうこれ以上はデッドゾーンになる場所に指だけを引っ掛けたような限界コーナーリング!

 

──いける、コイツなら行ける!

 

『うわぁぁぁ!?肘まで行ってる!!?』

『あわわわヤバいヤバいヤバいってぇ!』

『振り返して!ヘアピン!!縁石で止まる!!』

『どこ吹っ飛んでもおかしくないですよ!』

 

「……頼む」

 

ターンイン、脱出ラインにマシンを乗せて目いっぱいコースを使う。上り坂の第3セクションはトラクションを掛けて小さく、インを抉るように!

 

眼前を吹っ飛んでいく紅白の縁石。眼前に広がる霊峰富士。さぁ最終コーナー脱出────ッ

 

「最終コーナー立ち上がってきた!どうなる!?タイムは!!?」

 

1:45.203

 

『出た─────ッ!並み居る強豪を蹴散らしてトップタイムはZR-10X───!!強かった!やはり最強のハマサキ乗りは強かった!!スーパーラップです!GBRからさらにコンマ5秒縮めてきました!』

『とんでもないことですよっおっほっほ!!もう笑うしかないです!』

 

 

 

 

「よおやった!」

「ふざけんなよてめー!ハードル爆上がりじゃねーか!!」

「すげーよ!オイ」

 

帰ってきた男を出迎えたのは、マシンを作り上げた仲間たちの手荒い歓迎だった。ヘルメット越しに頭をダシダシ叩かれ、揉みくちゃにされる。

 

それと対照的に顔を青くする男、このままいけばポールポジションスタートの三才山(みさやま)は緊張で捻れそうな胃を必死になだめていた。

 

「オレ、マジであの人と組んで走るんッスか……!?」

 

憧れていた、ハマサキ乗り。好きなメーカーのマシンを1番乗りこなした男。まだまだペーペーに毛も生えてないような自分が、足を引っ張らないだろうか……。

 

大チャンスだ。大チャンスなのに、手が震える。どうしようもなく不安──。上手くやらなきゃ……!

 

サーキットで焦りは禁物。冷静さを欠いた時、魔物は牙を剥く。

 

 

 

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