TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました 作:不死浪シキ
「いのーぶ!」というゲームがある。
「怪異」なる怪物が跋扈する現代日本によく似た世界で、主人公たる烈火ホムラくんが仲間とともにバトルを繰り広げる異能バトルゲーだ。
あらすじとしては大体こんなだった気がする。
19世紀後半に出現しだした怪異は、その勢力を徐々に増し人類の生存圏は減少の一途を辿っていた。そんな中で怪異に立ち向かった人々がいる。
それこそが「異能持ち」。生まれつき魔法や超能力などを持つ新人類の誕生により、怪異は撃退され人類は安息を手に入れたのだった。
そして20XX年現在、烈火ホムラくんは中央都立高等学校に進学し、なんやかんや勧誘された異能部のメンバーと日夜部活動に励んでいるのだ。
といった塩梅だ。
簡単な話、このゲームは超能力者の主人公烈火ホムラくんが高校で超能力者だらけの部活動「異能部」に所属し、怪異をバンバン倒しつつハーレムを形成するものだ。ちなみにR18のエロゲーだ。
私はCG全回収した。大満足。
あと推しについても少し語らいたい。自分の好きなものを語りだしたら止まらない早口オタクなので。
私の推しは主人公の幼馴染み二人の内の一人、須藤ヤヤカちゃんだ。パッケージの左半分はこの娘のドアップであり、発売前からキャラ紹介文とともに愛されてきた少女だ。
公式サイトの紹介曰く運動神経バツグン、勉強もできるパーフェクトで天真爛漫な女の子。幼い頃から烈火ホムラ、鈴木ミナミとはご近所さんで3人でいつもつるんできた。生まれつきの異能持ちで、光魔法を駆使した戦士の資質を保有している。高校に進学し異能部に所属した彼女は、ホムラ達とともに様々な怪異と戦っていくが――?
とのことだ。
そして最序盤で死ぬ。
そう死んでしまうのだ。
この子はなんとストーリーを通して故人ヒロインとしての役割を担っている。
異能部に所属して初めての戦闘を経たあと、帰り道に奇襲を受け即死する。しかもホムラくんとミナミちゃんの目の前で。
その光景は二人にとってのトラウマになり、「異能部」存続の危機にもつながるストーリー上重要なシーンである。
だがそんなことどうでもいい。
発売前から推してた子が序盤で死んだのだ。しかもどのルートでもこの子は生存することはない。あまつさえグランドエンド――1度本編でトゥルーエンドをクリアしないと派生しないルートのエンディング――では、墓参りに来たホムラの独白とともに幼い頃の回想編が差し込まれる。
無邪気に遊んでいた主人公たち幼馴染みトリオの回想と、ストーリーでは死んだ帰ることのないヒロインという事実が化学反応を起こして、多くのプレイヤーが死んだ。私も死んだ。つらい。
当初はパッケージ詐欺だと炎上するなどひどい有様だった。公式サイトでもデカデカとメインヒロイン名乗ってる女の子が、ほとんど活躍の機会もないまま死んだのだ。あまりにもひどい。
これはこれでストーリー的には美しかったし、泣けるエロゲーではあったけど。オタクは推しが死んだら辛い生き物なのだ。辛い。
まあそれはさておきだ。
先程からなぜこんなにもエロゲの内容と推しについて語っているかというと、どうやら私はこの「いのーぶ!」の世界に転生しているようだということを理解したからだ。
まるで電波みたいなことを言ってるなと引かれても仕方ない。私だって前世でゲームの世界に生まれ変わりました!なんて言ってる人間がいたら異常者扱いするだろう。
だがこれは本当だ。
この世界には怪異がいる。異能もある。なんなら私自身異能持ちだ。しかもモブの女の子になってる。私の前世は普通に男だったんだが…
前世の記憶を掘り起こしてみれば、私の体はストーリー上で「物静かな女の子」という名前のモブだ。立ち絵はない。
いわゆる卒業ルートのエンディングで表示されるイラスト内に映り込んでたことがあるので、見覚え自体はある女の子の体。
発育は悪く身長も胸も尻もない。手足はスラリとしてるがそもそも身長がないので微妙だ。少女というよりは少年体型って感じ。
顔立ちは非常に整っている。整っているのだが、いかんせんエロゲーの世界だ。登場人物全員美男美女だし、前世でのゲーム知識内では立ち絵のなかったただのモブも全員きれいな顔だ。
あとはジト目と無表情が目立つ。頑張って目を開けて表情を変えようとはしてるのだがあんまり上手く行かない。無愛想に見えてしまう。
最後に付け加えるなら異能もある。転生チートかなにかだと思うが、本来この「物静かな女の子」は異能持ちではなかった。しかし今の私には場の雰囲気や人の行動を音楽として聞く異能を持っている。
簡単な話
まあそんなこんなでいのーぶ!の世界に転生していた私としては、一つ目標がある。
これすなわちヒロイン須藤ヤヤカの生存。そしてまだ見ぬヤヤカルートを見届けること。
もうすぐ訪れるであろうヤヤカちゃん死亡シーンをどうにかして妨害することにある。