TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました   作:不死浪シキ

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一年三人衆+αの活動記録2

「まだ始まってなかったみたいですね」

 

「…うん…」

 

「いくら副部長の予測が正確でも5分くらいの誤差は出てしまいますからね」

 

 建物の上をぴょんぴょん飛び越していくミナミの脚にかかれば、移動はあっという間だった。まだ二人の戦場からは少し離れているがどうやら怪異は現れていなかったらしい。

 

 二人は落ち着いた様子で雑談しているみたいだ。

 

「…あ…くるかも」

 

 パリパリと空間がひび割れ、中から巨大な鬼が姿を見せる。緑の体表のゴブリンとは打って変わってこちらは赤鬼。日本昔話などに出てきそうな黄色と黒のボロを履いた体長5メートルはあろうかという巨体だ。

 

 鬼がのっそりと姿を表している間に私達はホムラたちと合流できた。

 

「お、そっちはもう終わったんだな」

 

「はい…シオンちゃんが撃ち漏らしの有無を把握してくれるのが大きかったです」

 

「おーそれはいいね! よくできましたヤヤカさんが褒めてあげます!」

 

「ヤヤカ、前をちゃんと見ておけ。もう始めるぞ」

 

 ふざけている場合ではない。もう赤鬼はやる気満々といった様子だ。ホムラは私とミナミを下げさせる。当初の予定通り二人でやるということだろう。

 

 巨大な棍棒を肩に担ぎ上げて咆哮した。鼓膜が破れそう。地面が音圧でビリビリと震える。

 

「…ふぅん、あんまり大した事なさそうね」

 

「油断はするな。慢心なく対処するんだ」

 

「そうね。じゃあ私から始めるわ」

 

 ヤヤカはそう言うと首から下げたネックレスに手をかけて、一歩前に踏み込んだ。

 

「いくよ!『展開』!!!」

 

 十字架のネックレスを引き千切り叫んだ。

 

『GOLDEN DAWN!!!』

 

 ヤヤカを中心として大地に光の魔法陣が刻み込まれていく。陣の外周縁部から立ち昇った光の柱が枝分かれし、ヤヤカの踵から頭まで絡みついていく。光が編まれ、層をなし、万物の侵攻を押し留めるバトルドレスを形成する。

 

 白亜のごとき戦闘用フォームに刻まれる紋様は天使の翼。頭には虹の王冠。手に取るは光の十字剣。

 

 彼女は光の魔法使いにして剣士。

 

『When the earth is full of prayers, the golden dawn will come.』

 

 大地を祈りで満たす夜明けの権化が今顕現した。

 

 最高だ。かっこよすぎる。

 本来の原作では彼女の変身シーンはなかったのだ。展開を行うことなく彼女は奇襲で死んでいた。

 

 それがこうして見ることができた。

 

 公式サイトで光魔法の使い手なのに戦士として紹介されていた理由がわかった。ヤヤカは光魔法で剣を象っているのだ。魔法使いなのに戦士とはこれいかにという長年の謎が解けた。

 

 最高。感無量だ。

 

 赤鬼はヤヤカの放った光に目が眩んだようでたたらを踏んでいる。気持ちはわかる。こんなの見たら目も眩むわ。

 

「じゃあ俺もだな」

 

 ホムラが腕をまくりながら一歩踏み込んでいく。

 

「いくぞ!!!『展開』!!!」

 

 ホムラは右腕のバングルを逆の手で引き抜くようにして叫ぶ。

 

『Coronal mass ejection!!!』

 

 ホムラを中心にして熱波が戦場を駆け抜ける。中央にて座す彼は自身が放つ炎の光でシルエットと化した。

 

 総身を炎に転じたホムラの体に巻き付くようにして構成されていく赤い軽鎧。融解した大地へと手を突き刺し引き抜くは刀身が炎の大剣。

 

 彼は炎の戦士にして嵐の如き剣闘士。

 

『Light the flames and burn up all your enemies.』

 

 自身を燃ゆる太陽と定義した戦士が、炎となりて顕現した。

 

 こっちも最高だ。やっぱり主人公といえば炎属性。原作は多分に特撮モノへのリスペクトを含んでいただけあって、変身シーンには滅茶苦茶な熱量を注いで作成していた。

 

 目の前のホムラは原作以上の迫力で展開をしてくれた。もうこれを見れただけで今まで生きてきた意味があるように思える。

 

 今なら死んでも悔いはないかもしれない。嘘言った。必殺技も見てから死にたい。別に死にたいわけではないが。

 

「よし…じゃあ――」

 

「――やっちゃおうか!」

 

 二人は全くの同時に駆け出した。

 速い。とてもではないが目で追えない。

 

 瞬く間に戦場を駆け抜ける金と赤の軌跡が、鬼を四方八方から打ちのめしていく。

 

 SEで判別する限りはなんのスキルも使用していない通常攻撃だ。それでもこうまで凄まじいのか。

 

 しかし赤鬼も雑魚とは一線を画する怪異だ。これほどの連撃を受けても倒れることなく反撃している。途方も無いタフネス。この耐久力は原作でボスとして扱われていただけのことはある。

 

「結構しぶといね」

 

「たしかにな」

 

 上から叩きつけられた棍棒を、二人が息を合わせて剣で弾き返した。なんだそのコンビネーションは。お二人は付き合ってるのですか?

 

 渾身の反撃を弾かれた赤鬼は体勢を大きく崩している。その隙を逃すほど我らが主人公ホムラは甘くない。

 

「ここで決める!」

 

『Coronal mass ejection!!!』

 

 鳴り響くSEと技名。彼らの切り札の名は展開時に既に開示されている。

 

 ホムラの剣から炎が消え刀身が黒く染まっていく。内部に膨大な熱量が集中していく。

 

 赤鬼がどうにか体勢を整え正面を見据えたとき、既にホムラの必殺チャージは阻止不可能な状態まで進行していた。それを理解した赤鬼はイチかバチかの賭けにでる。

 すなわち突撃だ。

 頭上に掲げられた棍棒が豪速で振り下ろされる。

 しかし、もう遅い。

 

 黒く染まった剣が輝きを取り戻す。水平に構えられた剣の切り上げと共に解放される、圧倒的熱量と質量。

 

「いくぞ『コロナルマスイジェクション』!!!」

 

 音はなかった。ただただ光に埋め尽くされていく世界。その中で鬼のシルエットがヤスリにかけられたように削り取られていき、ついに消える。

 

『Coronal mass ejection!!!』

 

 遅れての爆音、爆風。そしてSEと技名。

 コロナルマスイジェクション。一定時間のチャージと引き換えに単体高倍率のダメージを叩き出す必殺技。

 

 ホムラが作品を通して愛用した、初期必殺技であり最強の必殺技でもある。

 

「こんなもんだな」

 

「…私もパなしたかったんだけどなー」

 

 ヤヤカがなにやら活躍できなかったことについて文句を言ってるみたいだが、私はそれどころではない。

 いやーかっこよすぎる。こんなの情緒がめちゃくちゃになってしまう。

 

「…シオンちゃんは必殺技とかって好きなんですか?」

 

「…うん!」

 

「おーすごい今まで見たことないくらい目がキラキラしてる!」

 

「…ヤヤカのも…みたい…!」

 

「いいよ! じゃあ早速パなしちゃうか!」

 

「やめろヤヤカ。ここにはなにもマトはないんだぞ。周りに被害が出る」

 

「うえーそれもそうか…ごめんねシオンちゃん。また機会があったらお披露目するよ」

 

「…みたい…そのときは…おねがい!」

 

 ヤヤカのもぜひ見たかった。

 だけどこれ以上望むのは罰が当たりそうだ。

 3人の展開と2人の必殺技を生で見れたのだ。今夜はもう興奮で寝られるか怪しい。

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