TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました   作:不死浪シキ

13 / 36
当たるも八卦

「おーシオンちゃんも結構いい点だね」

 

「…うん…」

 

「ホムラも平均点以上とれてるみたいだし」

 

「…うん…」

 

「私もミナミもバッチリだったよ」

 

「…うん…」

 

 中央都立高校では試験で上位100人の点数と名前が張り出される。掲示板の前は人でごった返していたのでヤヤカに見てもらった。とてもじゃないが私では人垣で掲示板が見えない。

 

 多分ヤヤカは学年1位だろう。彼女はアホっぽい雰囲気がないでもないが実際のところ本物の天才だ。授業聞いてれば理解するし別に聞いてなくてもなんとかしてしまう。なんだそれは羨ましいな。

 

 その点ミナミは秀才タイプ。努力家な彼女はコツコツ勉強して無事高得点を叩き出していた。

 

 それにしてもミナミに好きな人がいるとは。一体誰なんだ。頭の中がそれでいっぱいであんまり周りのことを考えている余裕がない。

 

 

「そろそろ部活も始まるし気をつけてかないとね――聞いてるかなシオンちゃん?」

 

「…うん…」

 

「おーいもしもし」

 

「…うん…」

 

「もしかして上の空ですかー?」

 

「…うん…」

 

 原作でミナミに浮ついた話は出てこない。正ヒロインとしてホムラといい関係になることはあるのだが、それ以外の男とくっつくことはない。寝取られ展開で脳が破壊されることもなかったのだ。

 

 しかし好きな人がいると本人が言ってた。誰なのか気になって仕方ない。

 

「…ヤヤカ…」

 

「はいはいヤヤカさんですよ!ようやくこっち見てくれたね」

 

「…ミナミの好きな人ってだれ…?」

 

「うぇい!?」

 

 ヤヤカなら知っているかもしれないと思って聞いてみたが、どうやら知らなさそうだ。多分ミナミに好きな人がいるということ自体初耳だったのだろう。驚きのあまり素っ頓狂な声上げている。

 

「…いるんだって…好きな人…」

 

「あーうんまあいても不思議じゃないんじゃないかなー? 私は知らないけど」

 

「…だれ…その馬の骨…」

 

「う、馬の骨って…」

 

 ウチのミナミをおいそれとよくわからん野郎に任せられるはずがない。多分ホムラもヤヤカも同じ意見だろう。他人の恋路を邪魔するつもりはないが悪い男に騙されてないか目を光らせておく必要がある。

 

「シオンちゃんは気になるの? ミナミの好きな人」

 

「…うん…」

 

「それはなんで?」

 

「…なんでって…」

 

 なんでだろう。言われてみればそれもそうだ。私とミナミの関係は言ってしまえばクラスメイトで同じ部の部員。

 ただ私が原作知識なんてものがあるから勝手に思い入れしてるけれど、あくまで私達は他人同士だ。

 

「…なんでだろ…よく…わかんない…」

 

「ふーんそっか。ミナミのこと大切に思ってるんだね」

 

「…たいせつ…?」

 

「違うの?」

 

 違わない。

 でもそう確信できるのはなぜ?

 やっぱり原作ヒロインでお気に入りのキャラだからだろうか。きっとそれが一番の理由。でもそれだけじゃないような。

 

「…よく…わかんない…」

 

「そっか。じゃあ分かろうとすればいいんじゃないかな?」

 

「…?」

 

「知りたいんでしょミナミの好きな人のこと。それならシオンちゃんなりに知ろうとすればいいんじゃない?」

 

 それもそうか。いったん自分の中の感情は置いといて、とりあえずミナミの好きな人調査でもしよう。ヤヤカルートの開拓はこの際保留だ。

 ミナミが悪い男に捕まってないか調べてみる必要がある。

 

 とりあえずはミナミが交流を持ったことがありそうな男子生徒にそれとなく聞き込みでもしよう。

 

 

◇◆◇

 

 まず同じクラスの生徒は除外だ。理由は簡単。ミナミは幼馴染+私以外に対しては同じ態度で接してるから。

 めちゃめちゃガードが堅いなこの子。下心がありそうな男子達だが普通に玉砕してる。南無南無。

 

 私の知らないところで他のクラスの男子と交流があったりするのかもしれないが、それならいつもつるんでいるヤヤカが知らないはずもない。こちらの線もなさそうだ。

 

 となればあとは異能部の部員だ。その中でミナミと関わりのあった男子部員となれば何人かに候補は絞れる。

 

「この星の輝きが示すのは8日後の危機だな。これまでのデータを参考にすれば恐らくはゴブリンや――なにか思考が逸れてないか?」

 

「…だいじょうぶ…」

 

 候補の一人目は副部長だ。

 メガネがトレードマークな短髪の美形。いつも眉間にシワを寄せた不機嫌そうな顔をしているがその実情に厚い漢だ。背も高く細身で異能がなければモデルとして生きていけそうだ。

 星読みの異能と頭脳で怪異の出現を予測する異能部の参謀。原作では主人公へのアドバイスやスケジュールの進行などを担当していた頭脳キャラ。

 それが彼。異能部副部長、星見カイト先輩だ。

 

 私は週に一回程度先輩の怪異出現予測に付き合っている。今日もその一環で部室を訪れたわけだ。

 

「問題なのはこの日だな。出現場所までは突き止めたんだが、そもそも実際に現れるのかが怪しい。国の怪異科の方でも同様の予測が出たようで警報の等級をどうするか悩みどころだ」

 

「…なるほど…ショッピングモール…」

 

 先輩の示す地点は巨大ショッピングモール「ヨモグイ」だ。こんなお客さんがたくさん訪れる場所に怪異が出たら大変だ。かといっていざ警報を出して怪異が出現しませんでしたとなれば経済的損失も計り知れない。

 

 先輩達が頭を抱えるのもよくわかる。

 まあここは任せてほしい。

 今こそシオンさんの異能の魅せどころだ。

 

「シオン、頼めるか?」

 

「…五日前…万全を期すなら三日…」

 

「そうかでは三日前に偵察を頼む」

 

 あらかじめそのショッピングモールを訪れBGMを聞けばいい。その中に不穏な音が混じっていれば間違いなく現れる。集中しないと判別はできないが、逆に言えば集中さえすればその場に怪異が出るか予測可能だ。

 

「君の異能は範囲や期間には乏しいがそのあたりさえフォローできれば非常に強力だ。シオンが来てくれたおかげでこれまで不鮮明だった出現予測の精度が上がったよ」

 

「…よかった…です…」

 

 やはり褒められるのは気分がいい。

 しかしこうして会話している限りだとミナミとの関係性なんか全然わからないな。そもそも先輩は堅ブツだしだれそれと付き合うなんてことしなさそう。

 それに副部長のところに行くということをミナミに伝えても特段変わった様子はなかった。もしも副部長先輩が好きな人なのだとしたらちょっとくらい反応が変わってもおかしくない気がするのだが。

 

「それでシオン君。なにか悩み事でもあるのか?」

 

「…わかり…ます…?」

 

「そうだな。なにか頭から離れない考え事があるように見える」

 

 そんなに態度に出てただろうか。これは反省しないと。

 

「気休めに過ぎないが占っておこうか」

 

「…いえ…わるいです…」

 

「気にするな」

 

 そう言うと先輩はメガネを押し上げ私の目と手をそれぞれ凝視した。湧き上がる巨大な力の気配。先輩の異能が働いているのだ。

 BGMも星々の巡りを意識したであろう神秘的なものに変わった。

 

「ふむそうだな。あまり変わった様子は見られない。ただ強いてあげるなら――」

 

「…あげるなら…?」

 

「――恋愛運が変化している。なんだこれは女難の相のようにも見えるが…?すまないうまくいかなかったようだ」

 

「…いえ…ありがと…ございます…」

 

 私は肉体的には女なのに女難とはこれいかに。まあなにか失敗したんだろう。

 先輩のは占いなのでファンブルすることだってある。しょうがない。それより心配して占いしてくれただけでも嬉しい。気持ちだけで十分というやつだ。

 

 先輩との会話ではあまり収穫がなかったが、今日のところはよしとしておこう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。