TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました   作:不死浪シキ

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お茶の間にいのーぶ!の活躍を

 ショッピングモールに出現するであろう怪異の対処について1年生で会議をしていたところ、とある団体からメールが届いた。内容は夕方の有名報道番組からのアポイントメントだった。

 

 この世界において異能持ちはかなり希少だ。2千人に1人程度しかいないとされている。しかもその出力はほとんどが私と同程度なのだ。このような異能持ちの中でも志願者は、特殊な訓練を経て国の怪異科に所属することができる。一般的には彼ら怪異科によって街の平和が守られることになるのだ。

 

 しかし異能部は違う。途方も無い異能の才をもつ人間が、高校生活を続けながら街を勝手に守護していた結果、なし崩し的に部活動として認定されてしまったのだ。その途方も無い才能の持ち主とは今の部長と副部長のことなのだが、まあそれはおいおい語ろう。

 

 要するに今の異能部は世間的に見るなら、ハチャメチャに強い異能持ちだらけで構成された特殊な部隊という扱いだ。私? 私は非戦闘員なので特段強くなくてもオッケーだ。

 

 まあそんな感じで世間様から見れば特殊で特別な異能部は、話題に事欠かないおもしろ部隊なのだ。たまに新聞やら雑誌などからインタビューを受けたり、テレビで放送されることもある。

 

 今回もその一環で取材させてほしいとのことだ。今年の1年生の実力を世間に知らしめ、近隣住民の安心を守るのが目的なのだとか。

 

「うーんそうですね。そのあたりまで下がっていただければ安全かと思います」

 

「やばいと思ったら連絡するんで、そしたら逃げてください」

 

 今は取材陣がどこまで立ち入っても大丈夫なのかラインを決めているところ。だだっ広い駐車場にコーンを設置していく。

 

 私としては落ち着かない。テレビに映るというのは前世含めて初めてだし、なんか展開してるときの格好はコスプレしてるみたいで恥ずかしい。とりあえずミナミの背中に隠れておこう。

 

「えっと柊さんでよろしかったですか。私アナウンサーの武田と申します。少しお話よろしいですか」

 

「シオンちゃん、ちょっとだけでいいから自己紹介お願いします」

 

「…はい…」

 

 いつまでも隠れてては駄目らしい。三人衆はまだ展開をしてないが、私はとっくに済ませている。万が一の索敵漏れに備えて異能の力を底上げしているのだ。

 

「ありがとうございます。ではお名前などお聞きしても?」

 

「…柊シオン…1年…音楽の異能もち…」

 

「音楽ですか。それはどんなものなんでしょう」

 

「…予兆…雰囲気を…音楽として聴く…こんなふうに…」

 

 今自分の耳に聞こえているBGMを音叉の槍を震わせて再現する。実際にはもっと多種多様な音が聞こえているのだが、流石にそこまでは再現できない。今最も大きいBGMだけ流している。

 

 アナウンサー含め取材陣は大いに盛り上がってる。うおおおおってしてる。異能だかっこいいヤッター!ってかんじだ。小学生か?

 

「えー失礼、取り乱してしまいました。では今聞こえているこの不穏な音楽が、あなたの異能の一端ということですね。なるほどこうやって予兆を捉えることで、サポートをしているということですか」

 

「…うん…でも…これだけじゃない…」

 

「と言いますと?」

 

 今度は報道番組のメインテーマを再現して流した。取材陣は異能すごいヤッター!してる。素直すぎる。小学生か?

 

 そんな感じでインタビューを受けているうちに、副部長先輩が予測した時間が迫ってきた。三人衆は出現予測場所に、取材陣と私達は少し離れた位置につく。

 

 今回私は戦わない。もとより非戦闘員というのもあるし、いざ取材陣の方に怪異が近寄ってきてしまった場合、その足止めを担う程度だ。

 

 私は相変わらず音叉の槍からBGMのたれ流し。音響の人はマイクを近づけて収音している。

 

 そしてBGMの転調。取材陣がそれに驚いているうちに、怪異の出現が始まった。

 

 パリパリとヒビ割れていく空間。その向こうから姿を見せる大量の怪異たち。今回出現するのは背中に鎧武者を乗せた馬、骸骨の歩兵などアンデッドっぽいエネミーたち。一体一体は弱いが途切れることなくやってくるのが厄介なところ。

 

「じゃあ始めるぞ」

 

「うん」

 

「了解です」

 

 バックルに手をかけるホムラ。ネックレスを掴むヤヤカ。髪留めに手を伸ばすミナミ。

 3人の声が唱和する。

 

「「「展開!!!」」」

 

『Coronal mass ejection!!!』

『GOLDEN DAWN!!!』

『LUNAR CATACLYSM!!!』

 

 もちろん展開のSEも垂れ流す。このめちゃめちゃかっこいい変身シーンをお茶の間に放送してくれ。

 

 爆豪、光、ド派手な変身音。それらが全て去ったあとに残される三人の異能持ち。

 

 炎の戦士、夜明けの魔法使い、月の狩人が顕現する。

 

『Light the flames and burn up all your enemies.』

『When the earth is full of prayers, the golden dawn will come.』

『In every heroic tale there is a hidden sacrifice.』

 

「よし、皆やるぞ!」

「いくわよ!!」

「任せてください!」

 

 取材陣が湧いた。変身かっこいいヤッター!私もそう思います。自分に聞こえている音を再現しようとコソコソ練習していた甲斐があった。

 

 戦闘の方も凄まじい速度で進行していく。

 ミナミが最低威力のまま必殺技『ルナ・カタクリズム』を連打し雑魚を一掃。防御に徹している騎兵はホムラとヤヤカが直接攻撃で撃破。

 

 MPを消費する特殊技を使うまでもなくどんどん怪異が溶けていく。圧倒的すぎる。

 

 ちなみに原作における必殺技は、キャラ固有のゲージやレベルを消費することで発動可能なだけでMP消費はない。ミナミの必殺技『ルナ・カタクリズム』は必殺技の中でも特殊な部類で、満月レベルを全消費して、消費したレベルに応じた威力になる。なので一応満月レベルを0消費することでも発動は可能だ。

 

 まあそのためあれは通常攻撃より威力が低かったりする。原作においては格下の雑魚狩りでレベル上げする際重宝した。いわゆるルナカタレベリングだ。

 

「ヤヤカ構えろ! そろそろお出ましだ!」

 

「おっけーまかせて!!!」

 

 バラバラに吹き飛ばされて散らばっていた骸骨たちが、ある一点に向けて急速に集まりだす。骨が乱雑に組み合わさってできていくのは、巨大な骸骨武者。このバトルのボスエネミーだ。

 

 興奮しっぱなしだった取材陣が更にテンションを上げている。気持ちはわかる。ボスの登場に対して既にヤヤカが必殺技のチャージに移行しているのが見えたからだ。

 

「よし一気に決めちゃうよ!」

 

『GOLDEN DAWN!!!」

 

 鳴り響くSE。ヤヤカの光の十字剣が解れ、光の帯がアスファルトに浸透し、巨大な陣が構成されていく。

 

「隙はこちらで作ります! ホムラ、合わせて!」

 

「まかせろ!」

 

 無防備なヤヤカを襲おうとしたボスに、炎の大剣と矢が吸い込まれ爆発。二人のコンビネーションによって、ボスはその巨体を大きく後退させた。

 

 莫大な光量を放ち始めた陣の真ん中でヤヤカが抜き放つのは、やはり普段使っている光の十字剣。しかしその規模が違う。

 

 悠に身長の十倍を超えるであろう刀身が示すのは、内に秘める熱量。『祈りレベル』に応じて威力が変動する必殺技。

 

 ミナミの矢がボスの足を爆破し、体勢を崩して降りてきた顎をホムラが大きく打ち上げる。ホムラの馬鹿力でそのまま宙を舞うボスに、ヤヤカが踏み込みとともに十字剣を解放した。

 

「いくぞ、必殺!『ゴールデン・ドーン』!!!」 

 

 振り下ろされた剣は、そのまま光の奔流となってボスを襲った。光は咄嗟に掲げられた盾に直撃すると、拮抗することなくそのまま巨大骸骨を焼き切る。

 

 空の彼方へと駆け抜けていく閃光。その先で強引に割り開かれる雲がその威力を物語る。その威力と比較すればあまりに些細な余波が、爆風を巻き起こし木々が揺れる。

 

『GOLDEN DAWN!!!』

 

「よーし一丁上がり!!!」

 

 元のサイズに戻った剣を肩に担ぎ、ヤヤカが晴れやかな笑顔を見せる。

 

 いつの間にか静まり返っていた、取材陣がどっと歓声を上げた。気持ちはわかる。

 

 私は後方でしたり顔をしておく。まあ私は三人衆の魅力なんて昔からお見通しでしたが?

 

 厄介古参勢仕草をしているうちに、その日の戦闘は終わってしまった。多分これ私いらなかったな?

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