TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました 作:不死浪シキ
例のショッピングモールでの撮影がオンエアされたのは、それから2週間してからだった。本来ならもう少し早く放送する予定だったとのことだが、なにやら加工に時間がかかってしまったらしい。
家にテレビはないのでミナミの家で録画を見ることにした。どうせならみんなで見ようということで、三人衆+私のいつものメンツで集合。ネタバレ回避のためにまだ誰も見てないらしい。
いざ録画を見るとやっぱりこれコスプレ感強くないですか? 私は恥ずかしい。三人衆は顔がいいのでこういうコスチューム着てても違和感ないが、私だけコスチュームに着られてる感が半端ない。
画面下部では「♯いのーぶ」をつけて呟こうキャンペーンの文字列が流れている。これはSNSのつぶやいたーでのキャンペーンかな。私はやってないからよくわからないけど。
「ホムラが敬語使ってるのみるの新鮮だよね!なんか笑っちゃう」
「失礼な。そういうヤヤカこそ普段敬語なんか使わないくせに、猫被ってるだろこれ」
幼馴染三人衆のインタビューはあまり流されなかった。以前の放送で三人は一度自己紹介しているのだ。その時のVTRが冒頭で流された以上、わざわざ似たような話を繰り返す必要もないというわけか。
でもそのせいで私のVTRの尺が長くなってないか? えっ、私周りから見たらこんなにもじもじしてるのか。全然自覚なかった。
「番組のメインテーマを演奏してもらった」なるテロップがデカデカと表示される。スタジオも盛り上がってる様子だ。わざわざ動画投稿サイトからこの曲を探して、練習しただけの甲斐があるというもの。
ついで映像は戦闘時のものに切り替わる。私が流してたSEは加工されたらしく、めちゃめちゃ音質が良くなってるし派手になってる。よくやった。お茶の間にいのーぶの活躍をお届けできている。
「シオンにはこんなふうに聞こえてるのか?」
「…うん…」
「なんというか、その、アレだなゲームみたいだ」
その通りゲームの音です。
そのままVTRでは三人衆がバカスカ怪異をしばき倒しているシーンに移る。とても目では追えませんなんてアナウンサーが熱狂してる。スタジオも大興奮だ。
そして最後にヤヤカの必殺技。
『GOLDEN DAWN!!!』なる金色のテロップが表示される。フォントもカメラワークもスローによる演出も完璧だ。本職を忘れたらしいスタジオのスタッフ達がうおおおおおって騒いでいる。気持ちはわかる。
「おーなんか私めっちゃかっこよくない!?」
「シオンちゃんにはこんなふうに聞こえてたんですね」
録画の内容を見終えて一息つく。ミナミの家は大きな屋敷だ。両親は国外にいるらしく一人暮らしだ。エロゲーの世界だし仕方ないね。原作だと寝室がエッのシーンで使われていた。
「これだけ凝った編集してりゃオンエアも遅くなるよな」
「そうですね。つぶやいたーでも編集についてトレンドになってますよ」
「へー私つぶやいたーやってないしよくわからないけど、これは話題にもなるわね」
ミナミがスマホでつぶやいたーの画面を表示している。あ、アイコンがデフォルメされた三日月なんだ。ちょっとかわいい。
「ふーんなにこれ。変身シーンまとめてみた?」
「VTRの映像をトリミングしたものですね。これをアップしたのはかなり有名な人ですから、かなり拡散されてるみたいです」
「これって著作権とか大丈夫なのか?」
「どうなんでしょう…?特に不都合もないですし気にしなくてもいいような」
多分アウトでしょ。
まあいいや特段困るものでもないし、変身シーンは色んな人に見てもらいたい。かっこいいので。
「こっちのはなに?」
「あーそれはシオンちゃんの方ですね。初めてメディア露出したので話題になってるみたいです」
「そうなんだ。ちょっと見せてくれよ」
「…やめたほうがいいと思います。読んで不快になるものも多いですし」
えっなにそれ。全然仕事してないことを怒られてる感じだろうか。
もとより非戦闘員なので許してください。
「どちらかというと…そうですね、世の中ロリコンが多いんだなって感じです」
「…?」
よくわからん。
ロリコンってのはまあロリに欲情するタイプのアレだろう。しかし私は華の高校生だ。ロリではない。
つまりどういうことだ?
ちらっと画面を覗くと「高1ってマジ?中1の間違いでは???」って文面が見えた。なんか実力不足をバカにされてるっぽい。確かに私が中坊にも劣る戦力外っていうのは否めないが、これはちょっと不愉快だ。
「まああんまりこういうのは見ないほうがいいですよ」
「そういうものか」
そういうものらしい。精神衛生上、誹謗中傷なんてものは見ないにこしたことはないな。
◇◆◇
ついこのあいだ中間テストがあったような気がするが、実際にはそれなりの月日が流れた。ミナミの好きな人調査は全然進んでないし、ヤヤカとホムラをくっつけよう作戦も上手く行かない。
やきもきしつつも何もできないまま期末試験が近づいてきてしまった。このままじゃ1年の前期が終わってしまう。かといって今から介入できることも少ない。手詰まりだ。
これは夏休み以降に発生するイベントの方で暗躍したほうが良さそう。とりあえずは夏休み中に出現するであろう怪異について、副部長星見カイト先輩に聞きに行くとしよう。
異能部はかなり特殊な部活なので3年生の引退も相当遅い。というか3年生は、卒業後そのまま国の怪異科に就職することが決まっている。それに伴っていくらかの授業が免除されるぶん、異能部OBとしてどんどん動くようになる。
とはいえ副部長はまだ現役。早速出現予測をしてもらう。
「そうだな。この8月8日の怪異だが、これはどうやらビーチに現れるようだ。場所を厳密には絞り込めないから、1年だけでなく2年にも出てもらうか」
お、きたきた。ビーチに現れる怪異。これは原作での水着イベントの一環だったはず。
ヒロインたちと水辺できゃっきゃしている中現れるタコっぽい怪異。原作はエロゲーなので当然触手によってヒロインが拘束されてしまう。ちなみに女性ユニットの中から好きなキャラを選んで捕まえてもらうことができるし、バトルフェイズで敗北するとそのまま触手プレイが始まる。
各キャラ毎にスチルがあるがバッドエンド扱いだ。まあ怪異自体はデバフが厄介なだけで対して強くない。わざと負けようとしない限り勝ってしまうので、前世ではちょっと苦労した覚えがある。
「…まかせて…ください…」
「済まないな。3年は万が一に備えてこの街を離れられない。後輩たちにばかり任せることになるが、よろしく頼む」
正直スケベ触手怪異の方はどうでもいいや。弱いしホムラたちが倒してくれるだろう。
問題はこの水着イベントでホムラとヤヤカの距離を縮めること。あの朴念仁に恋愛を意識させるにはどうすればいいか、今のうちから考えておかなくてはいけないな。