TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました   作:不死浪シキ

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自爆しかありますまい

「流石はミナミだな、大活躍だったじゃないか」

 

「そ、そうですか……? えへへ」

 

「えーちょっと私はー?」

 

「はいはいヤヤカもすごいすごい」

 

 夕暮れ近づく歩道を歩く賑やか三人衆。

 

 一番体格のいい赤髪の少年が我らが主人公ホムラくん。趣味で体を鍛えているだけあって見事な細マッチョだ。長年、半袖の夏服から覗く腕が筋肉質でえっちすぎるという指摘があったのも納得だ。

 

 そんなホムラくんに褒められて照れているのはミナミちゃん。物腰の柔らかい黒髪の美少女。性格は内気なところがあるが胸部の立派なものは主張が激しい。誘蛾灯めいてオタクどもを寄せ付ける胸とふともも。ご立派がすぎる。

 

 最後に私の推し、ヤヤカちゃん。流れるようなプラチナブロンドと見事なナイスバディ。いかにもロシアなどの外国人ですという外見だが、日本人だ。エロゲーの世界なので外観は多様性に溢れてる。

 

 そんな三人が仲睦まじそうに歩いている。

 

 私の記憶が正しければ、今日この三人は異能部として怪異と戦った帰りであり、そしてその途中に奇襲を受けヤヤカちゃんが死ぬ。

 

 そんな日である。

 

 当然ヤヤカ推しとしてそんな未来は認められない。

 

 事前に襲撃ポイントに先回りした私は、バス停のベンチに腰掛けて妨害の準備をしていた。

 

 私の行動が原因でヤヤカちゃん死亡イベントの奇襲ポイントは多少変動したりするかもしれないので、できるだけ目立たないようにしている。

 

「あっシオンちゃん! やっほー!」

 

 目立たないようにしていたはずだったんだけど。

 

 近くまで来た陽キャの鑑みたいな陽キャことヤヤカちゃんに普通に挨拶されてしまった。

 

「や…やっほ……?」

 

 我ながら声ちっさ。どもって陰キャみたいになってしまった。陰キャではあるが。

 

「やあこんにちは。えっと……」

 

「柊シオンさん、ですよね?」

 

 はい柊シオンさんです。ホムラくんには名前覚えられていなかったみたいだ。同じクラスだけどまあ息を潜めて学生生活送ってたから、名前知られてなくてもしかたない。

 

「こんなところで会うなんて奇遇だね! なにか用事でもあったの?」

 

 まさかヤヤカさんあなたが死ぬから来ましたなんて言えない。というかそろそろ襲撃がある頃合いだから、全霊で警戒してて会話するだけの余裕がない。

 

「……ヤボ用…やらなきゃいけないこと…ある」

 

「やらなきゃいけないこと?」

 

 ────ッ! 

 

 

 

 来る。不穏だったBGMが転調した。更に必殺ワザチャージ完了時のSEが聞こえた。ザコ怪異の使う遠距離攻撃の必殺技の合図だ。

 

 異能を展開している状況であればともかく、無防備な生身で受ければ死は免れない一撃が飛来してくる。

 

「……『展開』!!」

 

「わっ急にどうしたの!?」

 

「ッ! ヤヤカ危ない!」

 

 意識領域を拡張。体内異能抑制器官を緊急停止。人類の獲得した超能力、すなわち異能を展開。

 

 途端に衣装が変貌する。学生服が黒と紺で統一された装飾過多のワンピースに変わり、胸部、腰、各関節、こめかみを金属の防具が覆う。これが異能持ちが自身の異能の制限を取っ払い、戦闘に特化した状態に移行する『展開』。

 

 亜空間より召喚した音叉の形をした槍を構え、飛来する遠距離攻撃を迎え撃つ! 

 

 彼方から飛んできたエネルギー弾と穂先が激突し、火花を散らして拮抗した。

 

 ……ゲーム上はザコ怪異だったはずだが、やっぱりモブの私には荷が重い。奇襲には対応できたがこのままではエネルギー弾を抑えきれず吹っ飛びそうだ。

 

 真っ先に状況に反応したホムラくんが、『展開』を開始したが少し遅い。もはや猶予はない。エネルギー弾の圧力に屈してもう膝が折れそうだ。

 

 こうなったら仕方ない。自爆しかありますまい! 

 

 展開していた異能、衣装、槍を指向性を持たせて暴発させればどうにかしてエネルギー弾だけは弾けそうだ。奇襲を仕掛けてきたザコ怪異は展開を完了させたホムラくんに任せれば大丈夫だろう。

 

「……ホムラ…くん…あとはおねがい」

 

「シオンさんなにを!?」

 

 はいドーン! 

 

 もう限界なので自爆します。多少は怪我すると思うけど命には代えられない。

 

 あとは頼んだ! 

 

 アディオス! 

 

 衣装、槍の縫合が解け前方に向けて爆風を放つ。その爆風と反動をもろに受けた私は吹き飛ばされて、そして意識はそこで途切れた。

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