TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました   作:不死浪シキ

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お目覚め

 目が覚めたら眼前に胸があった。しかも私のではない。

 

「あ、起きましたか? おはようございます」

 

 ミナミだ。しかも抱きしめられてるだけじゃなくて、自分から抱きついてる。

 

 え、なにこれ。なんでこんなことになってるんだ?

 

 必死に昨日の記憶を掘り返すと出てくるあれやこれやの出来事。海辺に現れた怪異の退治中に、匂いだけで酩酊デバフを食らって、それで。

 

「思い出しちゃいました…? こわかったですよね」

 

 そうだ思い出した。あわや苗床endだった。思い出すだけで怖気がする。

 

 あんなもので色々とロストするのなんて受け入れられない。そもそも苗床endだと殺されることなく、一生触手に犯され続けるという最悪のバッドエンドだ。

 

 ミナミたちに助けてもらえなければ、自分がそうなっていた。

 

 だけど、そんなことより重要な問題が―――

 

「大丈夫。大丈夫ですよ。もう心配ありません」

 

 密着していたからだろう。身震いしたのがミナミに伝わってしまったらしい。背中に回されていた腕に力が込められる。引き寄せられて頭をぽんぽんされたら、わけもわからないけどなんだか安心できる気がした。

 

 あれ、なんで私はミナミのベッドにいるんだっけ?

 

 

◇◆◇

 

 

「…ありがと…もう大丈夫…」

 

「そうですか。私はこのまま続けててもいいですが」

 

「…それは…恥ずかしい…」

 

 どうにかミナミの手から抜け出してベッドから出る。子どもみたいに扱われたら流石に恥ずかしい。精神年齢は前世のぶんもあるし高いので。

 

 記憶を整理してみれば、昨日怪異を退治したあと、ミナミの家で保護されていたんだと思いだした。酔っている間のことは覚えているタイプなのだ。

 

 服をひん剥かれて丸洗いされたのは、まあこの際考えないでおこう。自分の尊厳がちょっと危うくなってしまう。

 

 今はすっぽんぽんの裸の上からミナミの寝間着を着せられてるみたい。私の下着や服は展開中のダメージのフィードバックを受けて、粘液でどろどろになってたらしい。現在洗濯中だ。

 

 くっ、こんなことなら水着のまま展開するべきだった。

 

「ご飯どうします? ついでなので一緒に用意しますよ」

 

「…いいの…?」

 

「ええもちろん。とは言っても簡単なものしかできませんが」

 

 折角なのでお言葉に甘えることにした。お腹空いてたし。

 

◇◆◇

 

 簡単なものしかできないというミナミの言は、普通に嘘だった。あれ、普通簡単なものっていったらトーストとコーヒーとかそんな感じのはずだよな。

 

 わざわざ高校生が朝から出汁とって味噌汁作るとは思わなかった。

 

「…シオンちゃんは、昨日のこと覚えているんですよね」

 

「…うん…」

 

 ミナミから昨日のことを聞かれた。もちろん覚えている。

 

「その、危なかったですよね」

 

「…うん…」

 

 そうだ昨日のは非常に危険な状態だった。あんなのが結末になったら死んでも化けて出そうだ。

 

「シオンちゃんは何されそうになったのか分かってますよね。ごめんね、怖い思いさせました」

 

 怖い思い?

 ああいや、確かに怖い思いはした。

 

 でもなんだか、認識に相違があるような気がする。

 

「私達がもっと気を使っていればあんなことにはならなかったのに」

 

 やっぱりなにかずれている。

 

 ミナミは私の身を案じているのか?

 

 ああそれなら納得だ。

 

 認識を擦り合わせなくてはならなさそうだ。

 

「…それは…ちょっと違う…」

 

「なにがですか?」

 

「…私が怖かったのは…異能部の活動停止…」

 

 私が一生苗床になるのは、正直()()()()()()

 私が怖いと思ったのはその後。

 犠牲者を出した異能部がその責任を問われて解体されるというエンディングだ。

 

 すべてのバッドエンドで共通するのが、この異能部の解体だ。街を守るのは国の怪異科に代わり、主要登場人物たちも思い思いの進路を選ぶようになる。

 

 そうすると卒業前の襲撃イベントまでストーリーがスキップされ、異能部なき中央都は阿鼻叫喚の地獄絵図になってしまう。

 

 私が恐れたのは、そのエンディングだ。

 

「え、いや、ですがあのままだとシオンちゃん」

 

「…私は…苗床として弱い…大丈夫…」

 

 怪異に苗床にされた母体は、その異能の出力によって産まれる怪異のレベルが増減する。

 

 私ごときが苗床になったとして、別に犠牲なんて出ないだろう。

 

 それ自体はミナミが心配するようなことではない。

 

「わ、私はそんな話をしているんじゃないですよ。シオンちゃんが危ない目にあったから心配なんです。異能部じゃなくて、シオンちゃんを心配してるんです」

 

「…なんで…?」

 

「なんでって、私たち友達でしょう? 仲間を心配しない人がいますか」

 

 友達?

 私とミナミが?

 

 昔そんなようなこと期待した覚えもある。

 

 でも、やっぱりだめだな。

 

「…友達…じゃない…」

 

「―――え?」

 

 こんな薄汚れた身で、幼馴染み三人衆の友達?

 きっぱり無理だ。

 

 ミナミは優しい人だから、こんな人間相手にも手を差し伸べてしまうのだろう。

 

 でも私はどこまでいっても異物でしかない。

 

 私ではミナミたちに釣り合わない。

 

 とても友達なんて、無理だ。

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