TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました   作:不死浪シキ

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チョロい人間にはゴリ押しが有効です

 前世の記憶を断片的に思い出したのは、たしか5歳の頃だった。

 

 そして、そのときには私の家庭はすでに手遅れになった後だった。

 

 5歳の誕生日前に、両親とショッピングモールへ行っていたときのことだった。誕生日プレゼントはどんなのがいいかなっておもちゃコーナーを見ていたはず。

 

 そこに唐突に出現したのが怪異。ザコといっていいレベルの弱い怪異だったが、当時一般人である私たちにとっては避けられない死と同義だった。

 

 すぐに通報したもののただの人間である私たち一家に逃げるすべはなかった。

 

 結果私を庇った父は死に、母は心に深い傷を負った。

 

 誕生日は入院中に迎え、祝ってくれる人は誰一人いなかった。

 

 

 それからは母と二人で暮らしていた。

 精神を病んだ母は、まず国の怪異課を糾弾した。

 

 しかし怪異課は十分すぎるほどの警戒を行っており、その上で発生したイレギュラーな事故であったことが証明されてしまう。

 

 それでも怪異課へ当たり散らす母を、祖父母はついに見限ってしまった。頼れる家族との縁を失って、ようやく母は怪異課への糾弾が見当違いであると悟ったが、なんにせよ手遅れだった。

 

 そんな母が次に糾弾したのが、私だった。私を庇った結果として父が死んだのでそれは正当といっていい怒りだった。

 

 お前さえいなければ。お前なんかがいたから。

 

 全くもってそのとおりだった。

 

 全ての暴力は正当な復讐だった。

 

 しばらくして母は私をいないものとして扱うようになった。今で言うネグレクトというやつだろう。私は断片的に蘇る前世の記憶を駆使して、なんとか一人でも生活ができるようになったため、そこまで苦ではなかった。

 

 母はどこかで男を引っ掛けたらしく、あまり家に帰らなくなっていた。

 

 中学2年の頃だっただろうか。母の虐待が露見し、私は児童相談所によって一時保護されることになった。自宅への退所後、母はほとんど家にいることがなくなり、いつしか荷物をまとめてどこかへ行ってしまった。

 

 行き先も連絡先もしらない。

 

 このアパートは母と暮らしていた生活の残骸だ。

 

 

◇◆◇

 

 

 前世の記憶についてははぐらかしながら、私は昔の話をした。なんだか出来事だけを箇条書きにしたら悲劇的に見えるけど、主観としてはそうでもない。

 

 前世の記憶があったぶん冷静でいられたし、怪我や空腹への対処はずいぶん楽ができた。

 

 それに母の怒りは正当なものだ。私というこの世界の異物のために、愛するものが死んだのだ。殺されなかっただけでも十二分に恩情ある対応だったといえる。

 

 だから気にしなくてもいいのに。

 

 やっぱり3人は優しすぎるんだ。

 

 3人ともゲーム内のメインキャラクターなだけあって、人情に溢れた魅力的な人なんだ。

 

 わざわざ私のためなんかに泣かなくてもいいのに。

 

「…辛かった、ですよね」

 

「…そんなに…」

 

 ミナミに抱き締められていた。そんなに力を入れられるとちょっと苦しい。

 

 肩越しに聞こえる涙声がミナミの心情を物語っている。泣いているのだ。私の昔話なんて聞いて、泣いてくれている。

 

 …たしかに全く辛くなんてなかったというと嘘になる。

 

 でも仕方ないことだった。あの環境は自分の犯した罪への当然の仕打ちだったから。

 

 父を死なせ、母の心を死なせた。

 

 拭い去ることのできない私の罪。

 

 それを思えばなんと優しい罰だろう。

 

「…それに…希望もあった…」

 

 そう、希望も確かにあったのだ。

 

 今でも鮮明に思い出せる。

 小6の時のことだ。街路のモニターにニュースが映っていた。その内容とは、今の幼馴染み三人衆のちょっとした活躍。子どもながら怪異を撃退し、学校のみんなを守ったのだという。

 

「…昔…三人のニュースを見た…」

 

「私たちの、ですか」

 

「…すごいと…思った…世界には…きれいなものもあるって知った…」

 

 前世の記憶が、その三人を主人公たちだと見抜いていた。

 世界には美しいものがある。そしてそれは案外身近なところにいて、誰も助けなければ儚く砕けてしまうと知っていた。

 

 私の目標はその時決まった。

 

 ヤヤカを待ち受ける死の運命を、必ずや打倒する。

 世界の異物なら、異物らしくズルをして三人を助ける。

 

 それだけを目標に勉強をして高校を受験したし、異能も頑張って鍛えたし、奨学金も申請した。

 

 それで私の罪が雪がれるなんてこと決してないけれど、美しいと思った人たちを守るのは、きっと素晴らしいことのはずだから。

 

「…今までがんばれたのは…みんなを知ったから…」

 

 ヤヤカの死を回避するために、私はあらゆる努力をしてきた。果たしてそれは成った。

 

 あとはヤヤカとホムラの恋路をただただ応援するのみ。

 私は報われている。

 薄汚れた身で、望外の願いを叶えている。

 

 私は間違いなく幸福な人間なのだ。

 

 だから、そんなふうに。

 

「…泣かないで…」

 

「…無理です。シオンちゃんはいつから泣かなくなったんですか?」

 

 たしか前世の記憶を思い出してからは泣いてない。精神的には大人と言っていいから、みっともなく泣いたりはしない。

 

 だから最後に泣いたのは5歳の誕生日前だったろうか。

 

「…5歳になる前は…泣いてたと思う…」

 

「それなら私が代わりに泣かなきゃ駄目です。こんなの泣かなきゃだめですよ…」

 

「…ふぎゅ…」

 

 背中に回されていた手に一層の力が込められる。ちょっと苦しいあまりに密着しているから心臓の拍動すら聞こえてくる。

 

「ねぇシオンちゃん。私たちと友達になってください」

 

「…むり…私じゃむり…」

 

 私は異物だ。ここにいるべき人間ではない。

 

 だから、対等な関係ではいられない。

 

 友達なんて無理な話だ。

 

「…つりあわない…」

 

「釣り合わないってなんですか! 私が、私たちがシオンちゃんに友達になってほしいんです」

 

「…でも…」

 

 釣り合わない。私と三人では価値が違い過ぎる。

 

「私たちの願いを、シオンちゃんは聞けませんか」

 

「…それは…」

 

「私のワガママを聞いてくれませんか?」

 

 言い方がずるい。

 こんなにお世話になっている人からの頼みを聞けないのかという脅しと何ら変わらない。

 

「どうしてもイヤだって言うのなら、いいよって言ってくれるまで何でもします。私は何しでかすかわかりませんよ?」

 

 うわ、これはもう完全に脅しだ。

 ミナミメンヘラルートの気配がほんのり漂ってきてる。

 

 これはちょっとマズイかも。

 

「…イヤなわけじゃ…ない…」

 

「じゃあ決定です。今から私達はお友達。ホムラもヤヤカもそれでいいですよね」

 

 あ、コラ。二人ともなに頷いてるんだ。私は嫌ではないって言っただけで、いいなんて言ってないぞ。

 

 まったくもう。人ひとり死なせておいてのうのうと生きてる人間と友達なんて、普通なりたくないでしょ。やっぱり三人ともとんでもないお人好しだ。

 

「私達はもうお友達です。復唱してください。今すぐ」

 

「…でも…」

 

「でもじゃありません!」

 

「…わたしたちは…トモダチです…」

 

 それにそんなに強引に押されちゃ引くしかない。今後やっぱやめましょうとか言われたらそのときに友達解消すればいいだろう。

 

 ちょっと悲しい話ではあるが、まあその時は仕方ない。普通に分不相応だからね。

 

 そうやって半ばゴリ押し気味に幼馴染み三人衆+異物はお友達になった。

 

 私はやめたほうがいいと思うんだけどなー。

 





同居させたいのでどこかしらで家(アパート)燃やします。サイコレズと毎日同衾してください。
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