TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました   作:不死浪シキ

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立ち退き

 

 家が燃えた。

 いや燃えたと言ってもボヤ騒ぎ程度のものだった。大事になる前に消火はされ、実害もほとんど出ることはなかった。しかしながら、その原因と言っても過言ではない私はオーナーに立ち退きを迫られてしまった。

 

 このままでは高校一年にしてホームレス。流石にそれはヤバい。

 

 どうしてこんなことになってしまったのか、順を追って話そう。

 

 

◇◆◇

 

 

 自宅でシャワーを浴びていたときのことだった。

 

 もう真夏で暑いのだが、私は長風呂が好きなので湯船でゆったりしていた。家族が家にいるわけでもないし、一人で風呂を専有しても誰にも怒られない。

 

 湯船もそこまで大きいものではないが私は小柄なので相対的に大きく感じる。前世で浸かってた風呂よりもなんだか贅沢に感じて気分もいい。

 

 そんな時だ。なんとなくいつも聞こえているBGMに不穏なものを感じた私は、急いで風呂から上がり屋外の駐車場に向かうことにした。

 

 現場についてみればどうにも不穏なBGMは大きくなるばかり。なにか怪異が出る予兆を感じる。これはまずいと思って怪異課に通報と異能部に連絡をした。

 

 すぐさま近辺には警報が鳴らされアパートの住民も慌てて避難した。

 

 私はささっと展開を済ませて怪異課の人と通話。本来なら私は非戦闘員なので、原則避難することが求められるが、事態が逼迫していたので現場待機。

 

『異能部の柊シオンさんですね。こちらは怪異課の者です。現在現場に急行していますが間に合わないかもしれません。その時は――』

 

「…できる限りのことは…します…」

 

『そうですか、ありがとうございます。危険を感じたら直ぐに避難してくださいね』

 

 BGMは更に騒々しさを増していく。だがなんとなく弱そうな怪異の気配がする。

 星見カイト先輩の占いにも怪異課の予測にも引っかからなかったということは、出現を隠蔽できるほど高位の怪異か、それとも弱すぎて探知が難しいかのどちらかだ。今回のそれは後者みたい。

 

 パリパリと眼前の空間がひび割れて、中から姿を現したのは背中が燃えている狼。

 

 カテゴリーとしてはザコ中のザコ。群れることが前提の怪異なはずだが、今回は単体で出てきた。

 

『――出現しましたね。こちらでも確認しました。300秒以内に現着します』

 

「…それまで時間稼ぎ…?」

 

 まあやってやれないことはない。というかこれなら一人でもどうとでもできる。

 

 多分このザコは私の異能の力に引き寄せられてこの場に出現したのだろう。異能持ちはその場にいるだけで怪異の出現を誘引する効果があるのだ。

 

 ちはみに異能持ちがいない地域だと、ほぼランダムに出現するようになってしまい対処が困難になる。全国に怪異課から異能持ちが派遣されているのは、怪異の出現を予測しやすくするためでもあるのだ。

 

 そして強い異能持ちほど強い怪異を寄せ付ける。逆に言えばザコの私に寄せ付けられた目の前の怪異は、必然的にザコだ。

 

「…たおせるよ…私でも…」

 

『わかりました。ではくれぐれもお気をつけください』

 

 そうして私は目の前のザコ怪異と戦闘を開始した。

 

 

◇◆◇ 

 

 結論から言えばその戦いは泥仕合だった。燃える狼の攻撃は私にかすりもしないが、私の攻撃は狼にまるで効かなかった。私の攻撃力(Atk)が怪異の防御力(Def)を下回っているようで、槍が全然突き立たなかった。多分ゲーム的には最低保障の1ダメージが量産されてただろう。

 

 そうこうしているうちに怪異課の方々が到着。あっという間に殲滅してしまった。

 

 しかしその際に不手際があったようで、狼の背の炎がゴミ置き場に燃え移り、あわや火事という事態になったのだ。

 

 これに対してオーナーが激怒。異能持ちは怪異を寄せ付けやすいということを知っていたらしく、私は立ち退きを求められてしまったのだ。

 

 こればっかりは仕方ない。体質みたいなものだから治しようがないのだ。

 

 私に寄せ付けられて出現する怪異はザコばかりだから大丈夫と説明しても、現に火事一歩手前の事態になったのは事実。こんな危険人物を置いておけないと追い出されてしまった。

 

 まあ全国的に似たような事例は多いらしい。異能持ちが一人暮らしをしているケースが多いのも、似たような理由からだし。

 

「…っていうわけ…月末には家をでなくちゃいけない…」

 

「それは、災難だったな…」

 

 一応怪異課の方々の根回しにより、格安のアパートの目処が立っている。しかし高校から遠く通学が大変になってしまいそう。

 

 今住んでいる家もあんまりいい思い出がないし、出ていくのはやぶさかではないが不便が増えるのはいただけない。

 ホムラたちとも遊ぶのが難しくなってしまう。そう3人に伝えたら難しい顔をしだした。

 

 やがてミナミが口を開いた。

 

「…それならウチに来ますか?」

 

「…どういうこと…?」

 

「シェアハウスってやつです。部屋は空いてますし、光熱費とかは折半でいけばなんとかなるんじゃないですか?」

 

 だめでしょ。不純異性交遊だ。

 肉体的には異性ではないが、私も心は男の子。狼だ。

 えっちなことをすると異能の出力が上がるというエロゲ特有の要素があるため、異能持ちの異性との交遊は咎められないどころか世間的には推奨されているのだが、まあそれはそれ。

 

 原作ではミナミルートを開拓したホムラがミナミと同棲するようになるため、ミナミ宅は人ひとり迎える余裕があるというのは知っていたが、それでも迷惑をかけるのは忍びない。

 

 シェアハウスは却下で。

 

「…だめ…めいわくかける…」

 

「かからないですよ。私の家、一人だと広すぎますし寂しいんですよ」

 

「…でも」

 

「そうだ。それなら家の家事とかも手伝ってくれませんか? 掃除とか大変で困ってたんです」

 

 ミナミがグイグイくる。

 申し出はありがたいけど、うーん、流石にそこまで迷惑かけるのは良くないし。

 

「じゃあお試しです。ちょっとだけでいいんで家に来ませんか? それで肌に合わなかったらなしってことで」

 

 うーん。ミナミもなかなか諦めてくれないな。

 それならそのお試しとやらに乗ってみようかな。

 

 ちょっとだけお泊りして、やっぱり合いませんでしたごめんなさいして出ていくのだ。幸い怪異課の方から紹介してもらったアパートの契約までは時間があるし、ちょっとだけならいいかも。

 

 多分ミナミは人と一緒に暮らすっていうことを甘く見ている。

 

 そのへんをちゃんと理解してもらうためにも、お試しは丁度いいかも。

 

「ね、お願いです。家来てください。ほんのちょっとでいいですから。必ず満足させますから」

 

「…ちょっとだけなら…」

 

「やった! ありがとうございます!」

 

 ミナミが露骨に上機嫌になった。というかありがとうございますってなんだ。家を追い出されて困ってたのは私なので、お礼を言うのは私だろう。

 

 ホムラもヤヤカもなんだかちょっと苦笑いしている。

 

 そうと決まれば荷物をまとめて出ていかないと。

 

 




なにもしてないのに家燃えちゃった!(家は燃えていない)
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