TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました 作:不死浪シキ
ボウリングをしようということになった。映画の半券を持っていくと1ゲーム無料なのだとか。今生ではやったことないので久しぶりだ。
ホムラ達を尾行するのもこの辺までにしたほうがいいとのこと。まだ追いかけるつもりだったのだが、結構真面目なトーンで窘められてしまった。
もし見つかったら雰囲気壊してしまうし、なにより不誠実だからやめたほうがいいとのこと。今度会ったときに実は尾行していたことを伝えて一緒に謝ろうと言われてしまった。
おっしゃる通りだった。その言葉自体はミナミが自戒を兼ねて言ってたみたいで責められてる感じではなかった。でもその方が悪いことしてしまったって感じで悲しい。
結構ガチな感じで凹んでいた私にミナミが提案したのが、さっきのボウリングだったというわけ。
ちなみにボウリングが終わったらそのままカラオケだ。私の絶対音感を見せてやろう。
「シオンちゃん、多分それは無理ですよ」
「………たしかに…」
ミナミが選んでいたボウリングの玉と同じやつを持ち上げようとして固まった。なんだこれ重すぎる。よく見たら16ポンドと書いてある。そりゃ重いわ。
ミナミが軽々と持ち上げてるから全然気にしてなかった。よく持てるなこんなの。流石は異能持ち。
異能持ちはスポーツの公式大会へ参加できないとかいう制約があるのも納得だ。怪物じみた身体能力の人間が参加したらゲームバランスがおかしくなってしまう。
え、私? まあ私も異能持ちだけど出力が弱いし、方向性も足の速さとか感覚の鋭さに割り振られてるから大したことない。筋力は見た目相応だ。
結局選んだのは7ポンドのやつ。これでも重いが、これ以上軽いのとなればもうお子様用のしかなかった。生来の女の子なら何も思わなかったりするのかもしれないが、男のプライドにかけて子ども用は選べない。
そしてえっちらおっちら玉を運んでレーンについたとき、予想外の顔ぶれに出会ってしまった。
「ん、あれ、ミナミとシオンじゃん。どうしてここに?」
「あホントだ。しかも隣のレーンだね!」
なんか見慣れた二人がいた。そうか二人もたまたまボウリングに来てしまったのか。
これは気まずい。
三人は私にはよくわからないアイコンタクトを交わしていた。なにか幼馴染同士で通じるものがあるのかもしれない。
でもそんなことよりデートの雰囲気ぶち壊してしまったことを謝らないと。
「……その…ごめんなさい…」
「え、なにが?」
「……二人が…一緒に遊んでるんじゃないかなって…」
「えっと、どういうことだ?」
「あ、誘われなかったから寂しかった感じ?」
「…その…ちがくて…」
上手く口が回らない。助け舟を求めてミナミを見上げる。
よく自分から話しましたと言わんばかりに頭をぽんぽんと撫でられる。
そして優しく微笑んで私の言いたかったことを代弁してくれた。
「私達、実は二人が何してるのか知りたくてちょっと後を着けてたんです。フードコートのあたりですね。二人には不誠実なことをしてしまいました。だから謝りたいです」
「あーなるほどそういうことか。別に気にしなくていいぞ。予定伝えてなかったオレも悪いし、映画のことも断っちまったしな」
「私こそゴメンねー。シオンちゃんハブにしたわけじゃないの」
なんか私がはぶられて拗ねてるみたいな捉えられ方してないか? いや、確かに映画を二人に断られたことが寂しくなかったとは言わないが、そんな構ってもらえないと死ぬウサギのように思われていたのなら心外だ。
これでもボッチ生活には慣れている。例え三人にハブられたとて普通に………いや、どうだろ。流石に三人に見捨てられたら泣くかもしれない。今生で泣いた覚えはないため初めての涙になりそう。
「シオンちゃんどうしました?」
「…なんでもない…」
考えていることを読み取られたのかミナミが心配そうな顔。なんだお前はエスパーか?
よくよく自己分析してみたら私は三人衆にかなり絆されているっぽい。特にミナミには。胃袋掴まれてるし。
三人には絶対に嫌われないようにしないと。自分の精神衛生上重要だ。
そしてホムラとヤヤカがボールを持って戻ってきた。ふたりともミナミと同じ16ポンド。
ボールを置くところに重厚なカラーリングの玉が3つ、そして蛍光色の私の玉がぽつんと置かれている。なんだこれ場違いすぎる。
案の定ヤヤカはプロ顔負けのフォームで毎回ストライクを取ってくし、他の二人も負けず劣らずの見事なスコアを叩き出していく。
私? 私は手先の器用さにだけは自信があるので、完璧なコースに毎度いれているのだが、速さと重さが全然足りない。驚異のスプリット率でスコアが伸び悩んだ。
そうして合計3ゲームやったのだが、右手がくたくただ。もう全然力が入らない。ホムラ達は5ゲームやるつもりらしいのでお先に失礼させてもらう形になった。
◇◆◇
「上手いですねー」
「…ふふん…」
上手いというのは私のカラオケの話だ。
私は滑舌が悪いし感情を込めて歌うというのも苦手だが、機械的に音程を合わせるのは完璧と言ってもいい。ボーカロイドの曲なんかはむしろそういう歌い方がマッチするのもあるので、そういう曲を選んでいる。
褒められるのは嬉しいことだ。それもミナミが相手ともなれば特に。思わずドヤ顔にもなる。
対してミナミの歌い方もめちゃくちゃ上手い。ゲームだと声優さんがイメージソング歌ってたし、なんとなく上手そうな気がしてたが実際に聞いてみると惚れ惚れする。
力を入れてラブソングを歌っているのを聞いていると思わずこちらが恥ずかしくなるくらい情熱的な感じだ。なんか選曲も意外だし。
「シオンちゃんそのダンスなんですか? 楽しそうだからいいですけど」
「…変…?」
「変ではないですけど、いきなり真顔のまま踊りだしたのでびっくりしました」
歌いながらダンスした結果見事に息が上がった。思いの外疲れる。もうやらない。
アイドルってすごいんだなって思った。
「どうせならデュエットしませんか?」
「…いいよ…」
「じゃあこの曲で。男性パートは私がやります」
ミナミはまたラブソングをいれていた。意外とロマンチストなのかな。
私ののっぺりした歌い方と対照的で、ミナミはやっぱり情熱的。こぶしとかビブラートの回数がぐんぐん増えていく。私はゼロが並んでいた。
「ふふ、録音しちゃいました。消したほうがいいですかね?」
「…べつにいいよ…好きにして…」
「ではお言葉に甘えて」
スマートフォンをちらちらこちらに向けたりしていたのは録画のためだったか。写真とかに残るのは好きじゃないけど、ミナミならいいか。
そうやって私達はカラオケでしばらく時間を潰して、夜も外食で済ませてから帰った。
幼馴染み三人衆そろって遊ぶのもいいけど、こうしてミナミとふたりきりなのも新鮮で楽しいね。
またいきたい。
アイコンタクトの内容は
ホムラ「アドバイスどおりにしたおかげでデートはうまくいってます(自分だけがミナミに恋愛相談してると思っている)」
ヤヤカ「アドバイスどおりにしたおかげでデートはうまくいってます(自分だけがミナミに恋愛相談してると思っている)」
ミナミ「ふたりとも順調そうですね(早くくっつけ)」