TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました   作:不死浪シキ

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えっちなことはいけないことだと思います

 夕方ご飯を食べ終えたあと、そのままホラー映画の鑑賞をした。最近映画ばっかり見てるな。

 

 現在は観終わったあと。私はミナミの膝の上で武者震いしていた。いやー思わず鳥肌が立つくらいに緊迫感ありましたね。

 

 すみません、背筋が凍って寒いのでもう少しこのままでいいですか? いや怖いわけでなくてですね。人肌の温もりが丁度いいというだけですね。ほんとに。

 

「シオンちゃん最近元気ないですよね?」

 

「…そんなことない…」

 

 お腹や頬をむにむにともみ続けるミナミがそんなことを言ってきた。私元気ないように見えるか? お腹揉まれてるあたりもしかして太ったのかな。いや全然そんなことないわ。我ながらびっくりするほど細い。

 

「その…なんだか肌のハリが良くないような気がします」

 

「…そう…?…いつもどおり…」

 

 あ、やべ。これは自覚があるやつだ。

 

 これ完全に寝不足ですね。

 

 いやだってさ、私たち同衾してるんだぞ。それってやばくないか。あのベッドも原作だと情事の戦場だったはず。そんなところでミナミと一緒に寝てるって、えっちじゃん。

 

 割と今まで普通に寝れてたのがおかしいんだ。この前いらんエロシーン思い出したせいで一緒に寝てるのが恥ずかしくて仕方ない。ミナミも私も抱き癖があるらしく、気付いたらコアラみたいにひっついてるのもだめだ。

 

 罪悪感と恥ずかしさと、こんなこと考えてるなんてバレたらヤバいっていう焦燥が混じってなかなか寝付けなくなってしまった。

 

 …しまった、いらないこと考えたせいでこの格好自体も恥ずかしい気がしてきた。後頭部にあたるやわい双丘の感触。おいおいおいまじでそういうの意識したら終わりだぞ。

 

「…あふっ…」

 

「それじゃあお風呂ですかね。シオンちゃんカラスの行水ですし…」

 

 おーいミナミさんその手やめてもらえませんか。そうそれヘソの周りをくるくる撫で回してる指のことです。無意識なのかもしれないけど、やられた方はたまったものじゃない。

 

 がっしりとホールドされていて止められないので、身動ぎして不快を主張する。不快というかくすぐったいってことだけど。

 

 それにしてもカラスの行水か。まあ私は長風呂が好きだけど、ミナミ宅で暮らすようになってからはちゃちゃっと出るようにしてる。

 

 だって私が浸かった湯船にミナミが入るんだぞ。さもなくば逆。それはなんだか悪いじゃん。汚いとか思われたらショックだし。

 

 私はミナミが浸かった湯船、全然平気だけど。でも逆もそうとは限らない。

 

 あとバカ正直に寝不足が肌荒れの原因ですーとか言えない。なんで寝付けないんですかとか聞かれたらゲームオーバーだ。詰む。

 

 そうやって下らない思考を巡らせていたらミナミが口を開いた。

 

「やっぱりお風呂ですかね。よし決めました」

 

「…なに…?」

 

「お風呂一緒に入りましょう」

 

 …今なんて?

 

◇◆◇

 

「…だめ…」

 

「でもシオンちゃんお肌荒れてますし、ちゃんとケアできてるのか気になるんですよ」

 

「…どうでも…いい…」

 

「それこそだめです。もう高校生なんですから自分の見た目はちゃんと意識しないと」

 

「…うぅ…」

 

 私こと鈴木ミナミとしてはこのままそれっぽいこと言っておけば、お風呂に入れるんじゃなかろうかという思惑があった。シオンちゃんは頑固そうに見えて意外と押しに弱いのだ。

 

 実のところ肌荒れの原因は察している。多分夜ふかしだ。

 

 最近シオンちゃんは夜の寝付きが悪い。抱き寄せると顔を赤くして逃げてしまうのだ。前はこんなことなかったのに。

 

 こうなったシオンちゃんはしばらく挙動不審になる。ちらちらこちらを伺ったかと思えば、明後日の方向に視線をやったり、頭を抱えて丸くなったりする。

 

 そういう反応が面白くてつい抱き寄せてしまう私にも、肌荒れの責任はあるかもしれない。

 

 自分で言うのは気が引けるけど、私は昔からモテるタイプだった。男達がどういう視線で私を見ているのかだって経験を通じて理解している。

 

 だからシオンちゃんが私に対してどういう目で見ているのかだって薄々気づいている。流石に確信とまでは行かないが、シオンちゃんは多分私を性的な意味で意識している。

 

 それを理解しておちょくっている私は、とんでもなく性格が悪いのだろう。こんな気分になるのは初めてだ。好きな人に悪戯したくなる小学生男子ってこんな感じだったのかな。

 

「…でも…だめ…」

 

 なんだかんだで脱衣所まで追い込んだシオンちゃんは、先程から同じ答えばかり返していた。

 

 だからちょっと傷ついたようなフリをして聞き返す。多分こうすればシオンちゃんの態度が軟化するからだ。かなり良心が痛むけど。

 

「なんでだめですか…?」

 

「………だって…はずかしい…」

 

「……それは、見られるのがですか?」

 

 思っていたより何倍も破壊力のある一言だった。だめって言っている割には服脱いで下着姿だし、誘っているのかもしれない。いやいやまさか。そんな。

 

 脱いだ服で胸元を隠して上目遣いをしているシオンちゃん相手に、澄ました顔で返答できた自分を褒めてあげたい。

 

 でもこれではっきりするかもしれない。そんなに見られるのが嫌なのなら手を引くべきだ。ことを性急に運ぼうとした私が悪いし、嫌がるのを無理やりというのはちょっとよくない。

 

 いやどうだろそれはそれでアリな気がしないでもないが。でもそういうのは同意があってこそ。シオンちゃんがどうしても嫌っていうのなら、やめたほうがいい。

 

 そう思っていた時期が(ミナミ)にもありました。

 

「…そうじゃなくて…」

 

「というと?」

 

「……見るのが恥ずかしい…ごめんなさい…」

 

 見られることではなくて見ることときた。それは、その、私をそういう目で見ているということでいいだろうか。というか大丈夫? シオンちゃん自分が言ってることちゃんと理解できてるかな。

 

 とりあえず私は気にしないから大丈夫でゴリ押しした。

 

 

◇◆◇

 

 

 何度見ても細いなと思う。頼りない肩幅に筋肉も脂肪も少ない手足。出るところが出てないけど引っ込むところは引っ込んでいて、全体的にスラリとした印象。どことなく猫みたいだ。

 

 いつもは真っ白な肌はすっかり上気していて桜色だ。

 

 ついさっきまで一緒に湯船に浸かっていたのだが、シオンちゃんは先に出てしまった。それに絶対にこっちを見ないようにしている。

 

 椅子に腰掛けたシオンちゃんは手探りでシャンプーのボトルを取ると、そのままガシガシと乱雑に洗い始めた。

 

「ちょっ、ちょっと待って下さい」

 

「…なに…?」

 

「えっと、いつもそんな感じなんですか?」

 

「…なにが…?」

 

 あ、あまりにも雑すぎる洗い方だった。普段からそんなシャンプーの仕方なのにあんなにサラサラだったのか。羨ましい。

 

 いやいやそうではなく。これはよろしくない。こんなやり方では髪が傷んでしまう。仮に傷みにくい髪質だったとしても直すに越したことはない。

 

「これはよくないです。これじゃあ髪が傷んじゃいます」

 

「…どうでも…ううん…どうしたらいいの…?」

 

 この子どうでもいいって言おうとしたな。先程の反省を踏まえてか途中で言い直したが、絶対身だしなみに気を使ってない。

 

 仕方ないので直接教えてあげよう。

 

「ちょっとそのままでいてくださいね」

 

「…え…?」

 

 湯船から上がってボトルを掴む。手のひらの上で少し泡立ててからシオンちゃんの頭に触れた。

 

 案の定シオンちゃんはあたふたと慌て始め、でもどうしたらいいのかわからなくなった様子で大人しくなった。耳まで真っ赤だ。

 

 頭皮を傷つけないようにやんわりと揉むように洗う。力は必要ない。指の腹で優しくやるだけでいい。

 

「かゆいところないですか?」

 

「…うん…」

 

 背筋をピンと伸ばして強張っていた体から力が抜けていく。どことなく心地よさそうだ。

 

 それにしても細い体だ。いつも触ってるから体格とかはバッチリ把握しているのだが、直接こうして見ていると心配になる。腰回りとか両手でつかめば、指がぐるりと一周してしまいそう。

 

 あばらもうっすら浮いているしもう少しご飯食べてもらえるようにしないといけないかも。シオンちゃんは少食すぎるしね。

 

「じゃあ流してきますよ」

 

「…うん…」

 

 泡を流して軽く水気をとる。

 トリートメントに手を伸ばしたところ、鏡越しにシオンちゃんが不思議そうな顔をしているのが見えた。

 

「…なにそれ…」

 

 まさかこの子トリートメント使ってなかったのか。

 

 同棲を始めたときに、シオンちゃんが自宅から持ってきたシャンプーがどう見ても男物だった時点でちゃんと叱っておくべきだった。

 

 いや正確には叱った上で私のを共通で使うことにしようということで落ち着いたはずだった。髪質が似てるし大丈夫だと思っての判断だったが、言葉足らずだったかも。

 

 結果使ってたのはシャンプーだけ。それでも普段からあの仕上がりだったのは生まれつきか。やっぱり羨ましい。

 

「これもちゃんと使ってください。これくらいを手にとって髪になじませるんです…そうそう、そんな感じで。5分くらいしたらお湯で流せば大丈夫です」

 

 シオンちゃんは素直に言うことを聞いてくれた。

 

 この子は気分が良くなったときはなんでも言うことを聞くようになる。具体的にはお菓子を食べてるときだったり、褒められたときだったり、頭を撫でられたりしたときだ。今回でそこにシャンプーをしてもらったときも追加されることになった。

 

 シオンちゃんがおたおたと髪にトリートメントを馴染ませているうちに、ボディソープとスポンジを用意。

 

「じゃあ洗いますよ」

 

「…だめだめだめ…!」

 

「うーん、それじゃあ背中だけにしときます」

 

「………それなら…」

 

 猛烈に抵抗されたのでこのへんで妥協。もとより体を洗うのはちょっとハードル高いかなと思ってたし、あんまり子ども扱いして嫌われるのもいやなので妥当な落とし所だ。

 

 案の定シオンちゃんは体の洗い方も雑だったので逐一注意したり、鏡越しに見られていることに気付いて茹でダコみたいに真っ赤になったりしたが、なんとかシオンちゃんの風呂の入り方は矯正できそうだ。

 

 あと私もシオンちゃんに背中を流してもらうことにした。

 

 おっかなびっくり触れてくるシオンちゃんが可愛かった。

 

 

◇◆◇

 

 

 根本的な問題として、シオンちゃんが夜寝付けなくなっているのがある。いくらお風呂の入り方を変えさせてもここが治らなければどうしようもない。

 

 布団をもう一つ用意すれば解決するのだが、ちょっと、それは、うーん最終手段ということで。寝不足が続くようなら可哀想だし、最悪そういう選択肢も取る必要があるかもしれない。

 

 でも一応秘策のようなものもあるのだ。

 

「…ここからそっちには…いかない…」

 

「なんですかそれは。落ちちゃいますよ?」

 

「…だめ…ミナミは…わかってない…」

 

 ベッド上でシオンちゃんが境界線を作っていた。なんでもここから先には進まないとのこと。明らかに私の領土が大きすぎるし、肩幅分くらいしか領土のないシオンちゃんはベッドから落ちてしまいそうだ。

 

 ぽつぽつとシオンちゃんが言うには、ベッドで抱き合って寝るのは不埒なのだとか。そういうのは好きな人以外にしてはだめで、これは不純異性交遊なのだという。

 

 なんだろう。たぶんお説教してるつもりなのだとは思う。でも不純異性交遊って…不純じゃないし異性じゃないでしょ。かなり混乱しているみたいだ。

 

 本人はひどく真剣な表情で言ってるぶん、かなりシュールだ。

 

「…わかった…?…えっちなことは…いけないこと…」

 

「はぁ」

 

「…よし…じゃあおやすみ…」

 

 言いたいことを言い終えたらしく、横になってしまった。しかもベッドの端まで行ってるし、それたぶん足はみ出してるよね。

 

 そんな状態で安眠なんてできるはずがない。ここは私のプランでどうにかしよう。

 

 シオンちゃんの主張する境界線は、あくまでそこからシオンちゃんが出ないだけで私から侵入することを拒むものじゃない。だからごく自然に手を伸ばして引き寄せる。

 

「…だめ…こら…!」

 

「こらってそれはこっちのセリフですよ。そんなところで寝れるはずないでしょう」

 

 ジタバタと暴れるのを抑えつけて抱き込む。それでも抵抗しようとしたので足で挟んだ。体格が違うし筋力でも差があるのでこうなってしまえばシオンちゃんに勝ち目なんてない。

 

 それを悟って抵抗を諦めたシオンちゃんの背中を、規則的にぽんぽんと叩く。

 

「ね? ほら大丈夫ですから」

 

「…むぅ…」

 

 自分で言っておいてアレだがなにが大丈夫なのだろう。それっぽいことを言ってみただけなのだが、シオンちゃんが力を抜いたのでよしとしよう。なんだか安心しているみたいだ。

 

 シオンちゃんはかなり抱かれるのが好きだ。特に抱き潰されるほどめいいっぱい力を入れてあげると安心する傾向がある。ホラー映画を鑑賞してるときに発見した。世紀の大発見だ。

 

 もっとも本人は認めたがらないだろう。でも体は正直な様子ですぐにすやすやと眠りについてしまった。

 

「寝ちゃいましたか」

 

「…んぅ…」

 

 今までは逃げ出すのを許容してたのがだめだった。恥ずかしがって逃げるのをちゃんと止めて、落ち着くまであやすことが必要だったのだ。

 

 そしてシオンちゃんは寝てしまえば可愛いもので、すりすりと頬を寄せてきた。まるで小動物みたいだ。普段のジトッとした目と無表情もいいが、こういった安心しきった子どもみたいな顔も可愛らしい。

 

 そういった二面性がこの子の魅力なのかもしれない。

 

 シオンちゃんの知らなかった一面を知ることのできる暮らしは、とても楽しい。退屈しないし、なにより日に日に懐いてきてくれることが嬉しくて仕方がない。

 

 でも同時に思うのだ。

 

「でも、このままじゃいけないですね」

 

 この中途半端な日々をいつまで続けるつもりなのだと。

 

 シオンちゃんは自分の価値を理解していない。かけがえのない人であるとわかっていない。

 

 いやもしかしたら分かっているかもしれないが、それに実感が伴っていない。

 

 だからこのままでは駄目だ。こんな悠長に行動で好意を示し続けたとしてもシオンちゃんには正しく伝わらない。

 

 言葉が必要だ。

 

 全ての退路を断ち、議論の余地なくシオンちゃんを追い詰める言葉がいる。私の好意を誤解なくうけとって、その上で判断してもらえるような言葉を紡ぐこと。私に必要なのはそれだ。

 

 実のところその言葉はもう決まっている。ただ伝える日が来るのを待っているだけ。そして告白を決行する日も、私の中では決まっていた。

 

「覚悟してください。必ず私に振り向かせますから」

 

「…うぅ…」

 

 柔らかなほほをつついた。狙われているなんてつゆもしらないだろう当人は、顔をしかめて身動ぎしていた。

 

 夜が更けていく。

 

 




終わりが見えてきたのもあり新作の方用意してたりします。TS百合ものです。またそれか。でも性癖なので仕方ないね。
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