TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました   作:不死浪シキ

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嫉妬なんて犬の餌にもならないのでしないほうがいい

 夏休みが終わってしまった。なんだかあっという間だった気がする。

 

 始業式翌日の確認テストなるものにぼけーっとしながら解答していく。高1前期の範囲なんてたかが知れている。それに成績には反映されないのだから適当でいいや。

 

 それにしてもこの教室は暑いな。というかミナミの家が冷房効かせすぎていただけか。

 

「よし、まだ時間欲しいやつはいるかー? それなら自分のを上にして前のやつに渡してけー」

 

「お前アレ解けた? 大問3のやつ」

 

「あれムズかったよな」

 

「裏のやつも結構しんどかったけど」

 

「え、裏? そんなのあったっけ」

 

「お前…」

 

 担任の合図で最後のテストが回収されていく。裏面白紙回答事故を起こしたらしいやつもいた。成績に反映されなくて本当に良かったな。

 

 そして委員会などの役職決めや席替えが始まる。完全ランダム制の席替えによって私は中央最前列というとんでもない場所に連れてこられた。最悪だ。

 

 周りの人たちもよくわからない奴らばっかりだし、三人衆とはかなり離れた位置に来てしまった。

 

 見れば3人とも早速周りの人と談笑してる。こ、これがコミュ力というやつか。私はほとんど喋ったことない人とお喋りできるタイプじゃないので静かにしておこう。

 

 しかしこんな位置ではたむろするのにあんまり向いてないな。今までは最後尾窓際とかいうパーフェクト位置だっただけあり、この落差に耐えられそうにない。

 

「…あ…」

 

 急に喋った私に周りの男子が驚いている。いやすまん。悪かった。

 

 というのも急に聞こえていたBGMが変わったからだ。日常パートから出撃準備のやつへの唐突な変わり方。間違いない、怪異がでる。

 

 無断で席を立った私に担任の先生が注意をしようとしたところでなにか察したらしい。

 

「トイレか」

 

 トイレではない。

 

 ホムラ達も顔つきを変えて臨戦態勢だった。

 

「…中規模…たぶんグラウンド…もうすぐくる…」

 

「分かりました、先輩たちにも連絡しますね」

 

「私は怪異課に伝達を」

 

「というわけで先生、急用ができたんで俺たちはちょっと外に出ます。避難誘導の方はおねがいします」

 

 そうして校内には警報が鳴り響く。

 

 出現した怪異は浮遊する巨大な本みたいなやつだった。ホムラが出現と同時に必殺技で焼き払いワンパンチで終わってしまった。ちょっと不憫。

 

 やっぱりこの三人、原作での推奨レベル帯を大きく越えてそう。ラスボスの討伐はレベル40くらいが必要とされるが、多分すでに60は軽く超えてる。

 

 私? 私はたぶんレベル1ホムラより弱いよ。

 

 悲しいね。

 

 

◇◆◇

 

 

 昼休みになった。私は今一生懸命弁当を食べているところ。

 

 前期だと私の机の周囲は集まりやすかったから、三人衆が勝手に寄ってきてくれていたのだが、今期は最前列中央。流石にたむろするには適していない。

 

 それぞれ自分の席で周りの連中と駄弁りながら弁当を食べている。もちろん私にお喋りする胆力なんてないので黙々と処理していた。

 

 私とミナミの弁当は週替わりで交代しながら作ることになってる。今週は私でかなり雑に作った。朝ごはんに用意したものと昨晩の残りを詰めて、ごはんと冷凍のコロッケをいれただけ。

 

 ちらりと後ろを振り返る。ミナミは隣の席の男子やその他隣接した席の子とおしゃべりしながら弁当をつついている。

 

 ふーん。ずいぶん楽しそうですね。

 

 私を放っておいて。

 

 なんだか面白くない。

 

 黙々と弁当を処理する。量はミナミの半分くらいのはずなのに、減るペースは私のほうが遅いらしい。自分の小さな口が恨めしい。

 

 先に食べ終えたらしいミナミは自分の席でそのまま談笑を続けていた。なんだかイライラする。こっちは一人で寂しく弁当つついてるのに。

 

 自分でもなんでこんなに頭にきてるのかよくわからない。たぶんコミュ力のある人への嫉妬だ。私もそういう陽キャ属性に生まれたかった。

 

 やっとの思いで残りの白米をかきこみ、お茶で飲み込んだ。これで完食。席を立つ。

 

 ミナミは廊下側の後ろの席だ。ヤンキー座りしてソシャゲで遊んでる男子達や、椅子を向かい合わせにして喋っている女子たちの間を抜けてその席までたどり着く。

 

「し、シオンちゃん、なんか怒ってます?」

 

「…おこってない…」

 

 近づいてきた私の様子になにか感じ取ったらしいクラスメイトたちは、おしゃべりをやめて道を作ってくれた。無事に空いたミナミの席までつかつかと寄って、膝の上に座る。

 

「やっぱり怒ってますよね…?」

 

「…おこってない…」

 

 怒ってるんじゃなくて、これはコミュ障の僻みのたぐいです。そのコミュ力への嫉妬です。

 

 …私は何をやってるんだ?

 

「その、柊さんごめんなさい。ミナミを盗ろうってつもりじゃないの」

 

「…しらない…」

 

「なあ悪かった、そうだこの椅子使うか? すぐどくよ」

 

「…いらない…」

 

 周りのクラスメイトが口々によく分からない言い訳をしてくる。何を言ってるんだお前たちは。私はあくまでコミュ力に嫉妬してただけだし。そもそも私の行動は意味不明な八つ当たりだ。

 

 なんでこんなことしてるんだろ。自分で自分の行動の理由がよく分からない。

 

 少しミナミに持ち上げられて位置を調整される。家での生活で確定したベストポジションへ着地。定位置と化した膝の上でしっかりホールドされる。

 

 そうそう、これでいいんだよこれで。

 

「ごめんなさい、今度からは一緒にお昼食べましょうね」

 

「…でも…椅子たりない…」

 

「それは、ほら山口さんの椅子借りればいいんじゃないですか。ね?」

 

「おう別にいいぞ、どうせ教卓前でゲームするし」

 

 そう言ってるのは山口なんとかくん。早昼を食べて休み時間にソシャゲで盛り上がってる連中の一人だったらしい。これは好都合だ。明日からその椅子借りることにしよう。

 

 ぼっちで食べるご飯より複数人で食べたほうが美味しく感じるし、弁当の量とか適切かちゃんと確認したほうがいいからね。毎日この席まで行こう。

 

 なんだか不自然にイライラしてた気分が収まっていくのを感じる。なんであんなに無性に腹が立ってたのか不思議なくらいだ。

 

 私の中の拗らせた陰キャ根性が恐ろしい。

 

 陽キャに嫉妬したところで得るものなんかなにもないのにね。

 

 これからは気をつけよう。

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