TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました 作:不死浪シキ
つい一週間前、恋のキューピッドになるとの決意を立てた。立てたのだが、具体的に何をすればいいのだろうか。
原作の設定が生きていれば、高校への怪異強襲イベントや水着回、体育祭に文化祭と様々なイベントがこれから起こることになるとは思う。その中でホムラは様々な女の子と関わりフラグを立てていくのだ。
しかしそれはあくまで原作の話。ヤヤカが今の時点で生存しているルートは存在しないし、そもそも私自身本来の設定と乖離したイレギュラーだ。本当に自分の知識通りにイベントが起きるとは限らない。
まあ原作の知識を活かして立ち回るのであれば、学園内で起きる事件をそれとなくホムラに耳打ちして、窮地に陥った女の子たちを助けてもらうのが一番だろう。しかし放っておくと委員長や副部長とのフラグを立ててしまいそうで危険だ。どうにかしてヤヤカとの好感度をあげれるイベントに誘導していきたいのだが…
異能の力で聞こえてくる日常パートのBGMをイヤホンで遮断して授業を聞き流す。高校側には事前に申請してあるので、校舎内でイヤホンを使っていても怒られない。
おっと授業が終わった。出された課題の範囲をメモしておかないと。
「おっす、シオンちゃん! 体の調子はどう?」
「…へいき」
「ヤヤカさんそんな大きい声出さないほうがいいよ。ごめんねシオンちゃんびっくりさせちゃったね」
授業が終わった途端ヤヤカとミナミが声をかけてきた。ホムラは教師に頼まれて課題の冊子を職員室へ運びに行ったようだ。
正直めちゃくちゃびっくりした。ヤヤカの声が大きいのだ。
驚かせたお詫びとばかりにミナミからキャラメルをもらってしまった。前世は甘いものはあんまりだったが、この身体はむしろ甘いものが好物になっていたのでありがたく頂戴する。
ドクターから授業に出席していいとの許可を得てからかれこれ3日だが、その間幼馴染み三人衆は授業が終わるたびに私の席近くにたむろするようになった。
他愛もない雑談や授業でメモを忘れた場所の穴埋め、昼食などを共にするようになったのだが、私だけ場違い感が強い。
なにしゃべったらいいのかわからなくて、いつも聞かれたことだけ答えてそれ以外は無言になってしまう。コミュ障か?
せっかく輪の中に入れてもらってるのに、キューピッド的立ち回りができていないのはさすがにもったいない。なにかこちらからアクションを起こしていかなくては。
「…ふたりに…聞きたいこと…ある」
「ウチらに聞きたいこと? いいよいいよ何でも聞いて!」
何でも聞いていいのか。じゃあ早速踏み込んだこと聞かせてもらおう。
「…ホムラくんのこと…どう思ってる?」
「ホムラのこと、ですか?」
「あー、ン? なるほどなるほどヤヤカさんわかっちゃいました! シオンちゃんってばホムラのこと気になるのね?」
「…それは…ない」
「本当にぃ?」
「…ほんと」
「絶対にぃ?」
「…ぜったい」
真顔で否定した。たしかに私の質問のしかたが悪かった。
ミナミは唐突に始まった恋バナの予感に顔を赤くしてる。はわわって感じだ。流石はヒロイン。かわいい。
「ふーん、そうなんだ。 アイツ結構優良物件だけどね?」
「ゆ、優良物件ってあはは…」
「まあアイツをどう思ってるのかっていうと、アレだね。腐れ縁って感じ。つるんでバカやってたまに怒られて、一緒にいて楽しいって思えるようなヤツだよ」
…?
それって好きってことでは?
脈アリじゃん。放っておいても勝手にひっつくんじゃなかろうか。
待て待て落ち着け。前世では判定ガバガバカプ厨と呼ばれた私の好き判定は信用ならない。
「うーん、私もいっしょにいて楽しいっていうところは同じです。ホムラはお人好しなところあるからちゃんと見張っておかないと、平気で無茶するし放っておけない人って感じ」
しまった、こっちも脈アリだ。
でもまあミナミはオカン気質なところあるし、ヤヤカルートの障害にはならなさそうな気がしないでもない。二人がくっついたときに子どもの巣立ちを見るような目をしそうだ。
「お、みんなただいま。やっとお手伝い終わったよ」
「おー無事にシオンちゃんに振られたホムラじゃん、南無南無」
「あはは、南無南無」
「え? 何の話???」
困惑した様子のホムラ。そのいかにも困ったと言いたげに垂れた眉が面白くて、思わずクスリと笑ってしまった。