TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました   作:不死浪シキ

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入部1

 腰まで伸ばした髪は流麗な濡羽色。スラリと長い手足に引き締まっていながらも女性的な柔らかさを備えた身体。手元の書類から視線を上げた先輩は、凛としたよく通る声で告げた。

 

「入部届を出せばすぐに入れるようなモノじゃないってことはキミはもちろん知ってるよね」

 

 私は首肯で返す。

 目の前の少女は三年生の先輩。異能部の部長を務める才色兼備の女性。名は神原ヒサギ。

 異能はなんの特異性もない単純な身体強化。パワー、タフネス、スピードの全てが最高ランクに高く、更には日々から鍛錬しているため武器を用いた戦闘はもちろん徒手空拳すらこなす怪物的戦力。作中では単身で最強の名を(ほしいまま)にする異能持ちだ。

 

 そんな彼女と応接用のソファで向かい合っているのは単に入部のためだ。

 

 異能部は怪異への対抗戦力として運用される特殊な部隊のため、入部も一筋縄では行かない。

 

「知っての通り異能部は学内での扱いこそ部活動となるが、その実態は政府によって管理された武装組織だ。活動上、怪異との戦闘は避けられないしその際にはどうしても危険がつきまとう」

 

 頷きをもって返す。

 言われたとおり異能部は危険だ。戦闘に駆り出される以上、ケガなどのリスクはつきものだ。だがしかし、その程度では私の決意は折れない。

 

「だからある程度の戦力がなくてはならない。これはキミ自身の身の安全を確保するためだけではなく、地域住民の方々の安心を守るためにも必要なものだ」

 

 ヒサギ先輩が立ち上がり歩き出す。ついてこいと言いたげな後ろ姿を追いかけ私も席を立つ。

 

 コツコツと踵を鳴らして歩く先輩がやってきたのは、中央都立高等学校の誇る特殊舗装体育館だ。

 中に入ると観客席には何人か座っている。見知った顔もいる。幼馴染み三人衆とか原作の登場人物である部員たちだ。

 

「来たまえ、靴はそのままでいい」

 

「…失礼…します」

 

「この体育館は同意書にサインした者に限り、内部での異能によるケガなどを無効化する特殊な結界が敷かれている。痛みまでは消せないが模擬戦にはもってこいの施設だ」

 

 提示された書類をさっと読み流す。体育館の使用における誓約書だった。自分の名前をサインすると奇妙な感覚が体を走り抜けた。

 

 この体育館はヒサギ先輩が言った通り中でのケガなどが無効化される。原理はよくわからないが、先程の誓約書が鍵なのだろう。

 

 ちなみにこの体育館はもっぱら模擬戦のために使われるのだが、原作では非常にハードなSMプレイのために利用されたことがあったりする。あんまりだ。

 

「さて説明するまでもなく理解してくれるだろうが、一応警告しておく。これから私はキミを試す。全霊をもって私にキミの力を見せてほしい。それが出来なくてはキミの入部を認めることはできない。やめておくなら今のうちだぞ」

 

「…やり…ます」

 

「そうか、では全力を尽くしてくれ」

 

 

 BGMが切り替わる。ほのぼのした日常のそれから、トレーニングモード用のものに変化した。先輩がどこかから取り出した簪を髪にさす。

 

「…いき…ます。『展開』…っ!」

 

「来たまえ。『展開』」

 

 意識領域を拡張。体内異能抑制器官を緊急停止。人類の獲得した超能力、すなわち異能を展開。

 

 衣装が変貌する。学生服が黒と紺で統一された装飾過多のワンピースに変わり、胸部、腰、各関節、こめかみを金属の防具が覆う。魔法少女と騎士のあいの子といった外見のコスチューム。これが私の戦闘形態。展開後の姿だ。

 

 亜空間に手を伸ばしその先にある音叉の形をした槍を引き出し構える。

 

 対してヒサギ先輩は白の小振袖に紺の袴という、落ち着いた様相のコスチュームである。

 

 異能部部員たち本来の『展開』ではもっとド派手な演出音とカットインとともに変身シーンが描写される。あと『GOLDEN DAWN!!!』とか『Coronal mass ejection!!!』とかキャラ固有のSEもあってめちゃくちゃかっこいい。特撮モノみたいなノリで派手っ派手の演出だ。

 

 今回それがないということは異能の出力を絞っているということだろう。要は手加減されているのだ。

 

 装飾が省かれた低出力の『展開』のまま、ヒサギ先輩は虚空より現れた薙刀を中段に構えこちらを見据えてきた。

 




主人公ちゃんはもとより異能の出力が低すぎるので演出入りません。ド派手演出は強者の特権。かなしいね。
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