TS転生したら現代異能バトルゲーのモブキャラになってました   作:不死浪シキ

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一年三人衆+αの活動記録1

 授業もホームルームもようやく終わって現在時刻5時前。副部長の予測によればそろそろ怪異の出現時間になる。

 周囲には警報が鳴らされており、住民の避難も人払い兼怪異逃亡阻害用結界の敷設も完了した。

 

 私は既に展開を終えている。紺のワンピースにプロテクターのついたような軽鎧。バトルドレスと言ったほうが誤解なく伝わるだろうか。

 

 対して隣に立つミナミはセーラー服のままだ。彼女ほどの異能の使い手なら、展開時の演出に攻撃判定が追加されるらしい。この間のヤヤカ死亡シーンになるはずだった完全な奇襲は例外みたいなものらしい。見てから展開は余裕で間に合うがそもそも見えなければ間に合わないとのことだ。

 

「ふーんシオンちゃんの格好やっぱりかわいいですね」

 

「…そう?」

 

「はいかっこよさと同居した可愛らしさを感じます…あ、コラあんまり離れると危ないので逃げないでください」

 

 ミナミはしげしげと私のコスチュームを観察している。素材の手触りを確認したいのか、ちょっと手に取ったりされた。褒められるのは素直に嬉しいが、流石に恥ずかしいのでやめてほしい。

 

「こっちの槍は…音叉ですか? 音が出たりするんですか?」

 

「…だせる…がんばれば…音楽も鳴らせる…」

 

「それはすごいですね。今度余裕のあるときに聞かせてください」

 

「…っ!…くる…かも」

 

「…そのようですね」

 

 エネミーが近辺にいるときの警戒BGMが変化。エンカウント音と共に眼前の空間がひび割れる。

 

 割れた空間から雪崩込むように現れるのは小鬼。緑の体表に尖った鼻と耳、極端な円背で姿勢は猫背になっている。体格に見合った小さめの棍棒とボロキレに見を包んだ怪異。通称ゴブリンがどんどんと姿を現す。

 

「…多い」

 

「そうですか? それほどでもないように思いますが…」

 

 一応ザコ中のザコであるゴブリンだが、そのぶん数が多い。60以上いるのではないだろうか。周辺に敷かれた逃亡阻害結界が十分な仕事をしているようで、私達を敵と見定め逃げ出す素振りが見えない。

 

 流石に相手が雑魚とはいえ欲望に煮え滾った大量の目で睨まれたら怯んでしまう。緊張に手汗が浮かんできた。ちょっと怖い。

 

 突然肩に手を置かれて驚く。振り向けばミナミの手だった。知らずしらずの内に強張っていた身体がほぐれていく。

 私の様子に微笑みを浮かべたミナミは、頭につけていた三日月形の髪留めをパチリと外し一歩前に出る。

 

「…大丈夫ですよ。安心してください」

 

「…うん」

 

「いい返事です。ではやってしまいましょう…『展開』!!!」

 

 三日月のヘアピンを握りしめて叫ぶ。

 

『LUNAR CATACLYSM!!!』

 

 周囲一帯から光が消失しその中央で淡く輝くミナミ。その輝きが断続的に増加し、その度に身体の随所にプロテクターが装着されていく。和洋折衷の鎧とも袴ともとれる左右非対称の防具。ティアラ、バングル、タッセルなど各部に見られる装飾は三日月。

 

 髪留めが姿を転じた大型の弓から、天に向けて放たれる嚆矢。

 

 彼女は銀の弓手にして月の狩人。

 

『In every heroic tale there is a hidden sacrifice.』

 

 鏑矢にて戦を告げる蹂躙者が次なる一矢を番え顕現した。

 

「…か…かっこいい…」

 

「えへへ、見惚れててはいけませんよ?」

 

 ヤバい。かっこよすぎか?

 原作通りの展開シーンではあるが、やはり迫力が違う。見ているか前世のオタクども。私はミナミちゃんの変身を最前席で体験したぞ。

 

 しかし惜しむらくは鳴り響いた英語は私にしか聞こえていない点だ。これほどのかっこいい変身シーンが世界中の人間と共有できないのは人類の損失だ。

 

 ミナミの展開時に巻き起こされた爆風は私にはなんの影響も起こさなかったが、敵であるゴブリンたちは風に煽られひっくり返っている。味方にダメージの行かない範囲攻撃も異能持ちの特権だ。フレンドリーファイアは絶対に起きないのだ。

 

「それでは手早く片付けましょう。もし視界外にゴブリンが逃げていれば方角を教えて下さい。見えさえすれば外しません」

 

「…いない…目の前ので…ぜんぶ」

 

「そうですか。わかりました」

 

 ゴブリン達が体勢を整える前にミナミは片をつける気だ。弓を天へと向け矢を引き絞る。

 

『LUNAR CATACLYSM!!!』

 

 SEと技名が鳴り響く。必殺技の構えだ。矢の先端に光が集っていく。

 

 そんなミナミのただ事ではない雰囲気に反応して、ゴブリンたちが色めき立つがもう遅い。

 

「…受けなさい。『ルナ・カタクリズム』!!!」

 

 大気を切り裂いて矢が空へと飛翔する。一条の光となった矢は、空のある一点で無数に枝分かれし大地に向けて降り注ぐ。

 分裂した矢達が雨の如く降りゴブリンは悲鳴を上げて逃げ惑う。

 矢の豪雨がそのピークに達したとき、大地に突き立った矢のすべてが光り輝き爆発した。

 

『LUNAR CATACLYSM!!!』

 

 再びのSEと技名。

 

「こんなものですね」

 

 終わっていた。蹂躙であった。

 本来ミナミの必殺技である『ルナ・カタクリズム』は、戦闘中に通常攻撃を命中させた際に上昇する『満月レベル』に応じて威力の向上するスロースタートな技だ。

 しかし今回は初回の攻撃が必殺技。つまり『満月レベル』は初期値。最低威力で放たれていたということだ。

 

 それでこの威力。圧倒的すぎる。昨日撃ち漏らしを懸念していたのが馬鹿らしくなる。

 

「…? どうしたんですか?」

 

「…その…つよいなって…」

 

「そうですかね。先輩達に比べればまだまだ未熟者ですが…」

 

「…ううん…つよいよ…かっこいい…」

 

「ふふ…そうですか、では素直に褒められておきます」

 

 BGMは戦闘終了後の経験値精算時のものに切り替わっていた。勝ったのだ。私何もしてないけど。

 

 きっとホムラとヤヤカも似たような強さなのだろう。一応二人の加勢に行こう。もう終わってるかもしれないが。

 

 そうして私とミナミはあとの二人の戦場へ向かった。

 

「では行きましょう。しっかりつかまっててください」

 

「…うん」

 

 スピードはともかくスタミナに不安のある私は、ミナミの背中におぶってもらって移動する羽目になった。流石に恥ずかった。




 主要登場人物は変身アイテムを身に着けています。これは異能の象徴が具象化したもので、つよつよな異能持ちならみんな持ってます。というか勝手に無から生えてきます。

 シオンちゃんはよわよわなので生えませんでした。かなしいね。
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