金蹴り。内容はただそれだけ。

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金蹴りひまつぶし

【登場人物】

 

拙者たち……主人公にしてモブ達。複数人いる。皆デブ。不細工。年齢三十台前半。

 

エルビナーク……すこぶるつきの美女。上司。蛯色の長髪。蛯瞳。凛々しい。年齢三十八歳。

 

 

 

  #

 

 夢族。それは人間どもの住まう地上とは異なる世界、この【夢界】にて暮らす生物をさす。

 つまりは拙者たちのことだ。

 夢族とは野蛮だ。人間と同等の脳を持つというのにその凶暴性を押さえられず常に感情的。拙者たちの行動原理に理性というべきものはなかった。

 この度もそうだ。

 拙者たちは上司たるエルビナーク殿の急遽承った召集命令に対して急ぎ参上し何をなされるのかとビクビクとして並列していた。

   

「おそい!」

 

 ピシャリ

 

 ぶひひぃ!? 

 ピシャリと鞭が地面を甲高く鳴らした。

 これはただの鞭ではない。

 彼女の前腕細胞部に格納される出し入れ可能、伸縮自在なる生体鞭。彼女特有の自前武器である。

 拙者たちは恐れおののいた。

   

「召集命令を出したのは5分も前だぞ。上司たるこの私を待たせるとは一体どういう了見なのか聞かせてもらおうか? ええ?」

 

 召集命令。それは上司たるエルビナーク殿が部下に対してのみ送信することが可能な電波信号。拙者たちはいつもこの蛯毛の上司殿の信号を聞いてあとこちと動き回る。

 ちなみにこの度は休日出勤。

 自宅拠点から現場まで最低でも10分はかかるであろう距離である。

 ……頑張ったほうではなかろうか?

 

 

「ぶ、ぶひひぃ。申し訳ないでござる」

「ぶひぃ。お許しをでござるぅ」

「で、でも拙者たち皆今日は休日であるからでしてぇ」

「急な呼び出しだとどうしても時間はかかってしまうでござるよエルビナーク殿ぉ」

 

 拙者たち各々は謝罪と言い訳をした。愚昧なる拙者たちはとにかくブヒブヒと鳴いてはエルビナーク殿のご機嫌を伺うことしかできない。

 あの鞭で叩かれるのは誰もがごめんであったからだ。

 蛯瞳の上司殿はすこぶるつきの美女だ。美しい白蛇のごとくの地肌と柔質な胸部皮質。美女に免疫があまりない哀れな拙者たちにとってそれは見ていて心が落ち着かない。

 特にその皮膚装甲(人間でいう服や衣装にあたる)は乳腺突起や排泄構などプライベート部位をギリギリで覆っているようなとても際どいものでありつまるところ露出が激しい。

 童貞たる拙者たちは内心大層ドキドキした。

 それは蛯瞳の上司殿も同じようだ。こめかみにビキビキと青筋を浮かべる。

 謝罪と言い訳。しかしそれらは我らが上司殿には大層お気に召さなかったらしい。ツカツカとヒールの高い足底皮甲を鳴らしては拙者たちに近寄るとなんと寸分の躊躇いもなく【拙者】の種巣を蹴りあげたのだった。

 

「……え、エルビナーク殿?」

 

 などと言を投げるもそれに意味など完全になかった。

 キーンッ

 ごぼぅおああッ!? 

 見事にそれは命中しキーンッと鳴りあげた。まさしく強靭な蹴りあげだった。  

 我が種巣はパキリと完全に砕き割れ子孫たる血脈が途絶えた瞬間であった。

 どしゃりと内股になってその場に倒れ伏し白目を剥いてはあばばと泡を吹く。

 ドシャッ

 あばばびははばびばば。

 他の同僚たちはゾッとした。同じく雄の象徴を隠す。

 

「ひ、ひぃ!?」

「な、なんてむごい……」

 

 みなガクガクと震えた。

 我が種巣は彼女と同じく皮膚装甲に守られているもののエルビナーク殿の蹴力に意味はなさなかった。

 破裂した我が御玉からは拙者たち夢族特有の緑色の血液が流出しその凄惨さを物語った。

 

「……ゴミが」

 

 冷たい蛯瞳が拙者を見下ろし足底皮甲のヒールで頭をドガッと踏みつける。

 他の同僚がどよめく。

 

「喚くなッ、豚どもッ」

「「「は……はッ!!」」」

 

 拙者と同じ末路を辿りたくないのか他のみなは一様にキリッと背筋を伸ばして敬礼する。

 

「いいか? 断っておくが私はただ、今後使うことは到底ないであろうこやつの粗末なゴミを潰しただけに過ぎない」

 

「つまりは何も貴様らが驚くようなことは起きていないのだ」

 

「そのような些事に驚く暇があるなら私のために無駄のない行動を行え。それが貴様ら豚どもに課された義務であるはずだ、そうだろう?」

 

「わかればこの私に無駄な時間は使わせないように意識しろ」

 

「わかったかッ」

 

 などなどと、ツカツカと往来して拙者らを睨み付けては上記内容を説き聞かせた。その眼光は凄まじく反論の余地は微塵も許されない。

 なんたる暴論か。

 しかしこの蛯髪の上司殿はこの持論に絶対なる正義を見いだしておりそれを信じて疑わない。加えて上司殿は美女である。

 美女は正義だ。

 故に部下かつ童貞たる拙者たちになす術はない。

 故に非業を逃れた同僚たちのすべきことは一つ。

 

「「「はっ!!」」」

「「「我らがエルビナーク様の御随意のままに!!」」」 

 

 

 揃う敬礼。エルビナーク殿はフンと鼻を鳴らした。

 拙者は悶絶した。

 

 

 

  

 

 

 

 

 


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