私の、僕の愛を   作:野良詩人

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オリジナル初投稿になります。どうぞ、温かな目で見守ってください。


幼子の記憶

 

 

 

『──レイ君。私ね、遠く行っちゃうの』

『そうなんだ……。寂しくなっちゃうなぁ』

 

 夕日が二人が居る病室を赤く照らす。泣きそうになりながら、私に別れを告げる女の子に私はそう返した。女の子は、私に抱き着いて離れたくないと駄々を捏ねるが、幼い私にはどうすることもできはしない。

 

『アキちゃん、泣かないでよ。私も泣きたくなっちゃうよ』

『だってぇ、レイ君と離れるのイヤなのぉ。折角お友だちになれたのに、離れたくないよぉ』

 

 そう言って泣き付く女の子の頭を撫でた。出来るだけ優しく、不快にならないように頭を撫でる。

 

『アキちゃん、またいつか会えるよ。大丈夫だよ』

『イヤだよぉ。レイ君と離れたくないよぉ』

 

 その時だったはずだ。私は、目の前で泣く、彼女に一つの約束をした覚えがある。かなりとんでもない約束をした覚えがある。

 

『アキちゃん。今はサヨナラしないと、アキちゃんが大変なんだよ。少し我慢しよ?』

『レイ君とサヨナラなんてしたくないのに……』

『……アキちゃん。今の私はまだ子供だから、出来ないけどさ。大人になったら出来ることが増えるでしょ? そうしたら、私がアキちゃんに会いに行くから。アキちゃんは、待っててよ。私が迎えに来るまでの少しの間、私を待っててよ』

『長いよぉ。そんなに待てないよぉ』

 

 そう言って、私から離れようとしない彼女に私は約束した。それは、今でも覚えている。その約束は果たされるのか未だにわからないけど、その約束は私と遠くへ行ってしまう彼女とを繋ぐ糸になりうる約束。

 

『アキちゃんを私が幸せにするよ』

『ふぇ?』

『アキちゃんは、笑ってた方が可愛いから、私がアキちゃんが笑えるようにしてあげるよ。今はまだ出来ないけどさ。いつか、またアキちゃんと会えたら、大きくなった私がアキちゃんのことを幸せにするから、今はサヨナラしよ?』

『……本当?』

『本当だよ』

『……約束、してくれる?』

『うん』

『……レイ君、約束だからね。ちゃんと、僕を迎えに来てね』

 

 その時、私の唇は彼女に奪われた。本人曰く、約束のチューらしい。

 

 それから、私と彼女は別れた。彼女は自分の持病の療養の為に遠くの病院へ移送することになり、私は元々いた病院で療養した。

 

 そんな出来事から八年。私は、高校二年生になる。彼女は、私と同年なので彼女も今年で高校二年生だろう。正直、会えるなら会いに行きたいが、何処で何をして居るのか知るすべがない私は会いに行くこともできない。

 

「はぁ。私は、いつになったら会いに行けるんだろうね……」

 

 溜息しか出てこない。結局自分から約束しといて、その約束を果たせそうにない。

 

 しかし、そんな文句を言う暇はない。一週間後には新学期が始まる。新学期の準備をしなくてはいけないのだ。

 

「……元気かな。アキちゃん」

 

 ふと思い出す彼女のこと。いつか会えるなら会いたいものだ。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「秋葉ちゃん。今日も撮影ありがとうね」

「はい。……でも、これから控えてくださいね……」

「ああ、想い人の所に行くんだよね? カァー、青いねぇ」

 

 腰まである長い銀髪に、綺麗な顔立ちをした水着美少女に、男性はそう言って笑う。

 

「はい。……ちょっと、待ってられなくなっちゃって……。ごめんなさい。忙しいときに、我が儘言っちゃって」

「いいんだよ。秋葉ちゃんの本業は学生だろう? 青春を楽しむためならいくらでも休みなよ。仕事のスケジュールとかも調整できるようにしておくから」

「あ、ありがとうございます」

「いいって、いいって。グラビア撮影の方は溜め撮りしてるし、雑誌撮影は緊急以外ならあまりいれないようにしてるからね。それに、秋葉ちゃんがグラビア撮影を一時休止したい理由もわかるしね」

 

 秋葉は、話し相手の男性、プロデューサーに礼を言って着替えに行った。

 

「秋葉ちゃん。ちゃんと青春しなよ? 僕らはそれを出来る範囲で応援するから」

 

 プロデューサーの男がそう言うと、隣に立っていた女性はウンウンと頷く。

 

 秋葉はタクシーに乗って、帰っていった。引越しの準備があるのだ。秋葉はとある場所へ引越し、学校を転入することになっている。

 

「はい、もしもし。秋葉です」

『もしもし、秋葉ちゃん? 久しぶりね』

 

 秋葉がポケットからスマホを取り出して電話に出ると、懐かしい声が聞こえた。

 

「は、はい。おばさん。お久しぶりです」

『ははは。久しぶりね。四年ぶりかしら』

「そうですね……おじさんとは、前に話をしたんですけど……本当に良いんですか? 私が行っちゃっても……」

『良いのよ。私達もあまり家に帰れてないから、寂しくはなくなるんじゃないかしら? まぁ、秋葉ちゃんがうちの家にいてくれるのは、ありがたいことよ。うちの息子、よろしくね?』

「っ! は、はい………あ、あの……末長くよろしくお願いしたいと言いますか、なんと言いますか……」

 

 しどろもどろになる秋葉に、電話先の女性は笑う。

 

『秋葉ちゃん見たいな女の子に好かれるなんてねぇ。うちの息子も立派なものさ。高校に行きながら作家になった日には大丈夫か心配になったけど、秋葉ちゃんと一緒なら大丈夫そうだよ。こちらこそ、末長くお願いしたいわ。まぁ、無理なら悩殺しちゃいなさい。そろそろ切るわね。住所は送った場所だから、あって顔を会わせるといいわよ』

「はい!」

 

 秋葉の返事に、電話先の女性は笑い、通話を切る。

 

 秋葉は、スマホを抱きながら嬉しそうに目を閉じる。

 

「やっとで、……やっとで会えるんだ。レイ君と、やっとで…………」

 

 秋葉の目尻に涙が溜まってくるが、その涙を秋葉は拭き取る。明日には会えるようになるのだ。明日には………。

 

 秋葉は自分の荷物をまとめる。部屋の契約期間は今週中だ。要らないものはすべて売り、必要な物はキャリーバッグに積め、洋服下着類はダンボールに詰めた。部屋自体は、いつでも出ていけるように綺麗な状態だ。

 

 敷布団を敷き、毛布にくるまって目を閉じる。今でも鮮明に覚えている大好きな彼の声や暖かさ。そして、彼との約束。自分を幸せにすると言った彼に会いたい。

 

「うぅ、楽しみすぎて寝れないよぉ。レイ君、僕のこと、覚えてくれてるといいなぁ」

 

 秋葉の意識は段々と沈んでいき、眠りについた。

 

 

 ────そして翌日。

 

 秋葉は、女性に教えられた住所に向かい、そこにある一軒家のインターフォンを押す。

 

 そして、その一軒家の扉が開くと、懐かしく、見覚えがある男性がいた。

 

 男性にしては少し長めの白髪に赤と金の眼。肌の色事態が存在えしないように、白く、体が全体的に色素が薄いことが見てとれる。細身で、バネのようにしなやかに動くであろう体をした青年。

 

 昔とあまり変わらない、切れ長の眼が秋葉を見て、驚くように声を漏らす。秋葉は、恥ずかしそうに、「エヘヘ」と笑う。

 

「待てなくなっちゃって、僕から来ちゃった」

「……秋葉、なの?」

「うん、僕だよ。レイ君」

 

 秋葉が会いたくてしょうがなかった想い人。綾辻零無は驚いていた。

 

「ま、まぁ、立ち話もなんだから中に入りなよ」

「う、うん。お邪魔、するね?」

 

 そう言って、秋葉と零無は八年ぶりに再開を果たした。

 

 

 

 






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