私の、僕の愛を 作:野良詩人
インターフォンが押されて誰かが来たと思えば、高校に入ってから悠斗が見せてくるグラビア誌の被写体が玄関前に、キャリーバッグを持って立っていた。
しかし、そのグラビア誌の被写体、グラビアアイドルは個人的にすごく見覚えがある人物だ。日本人には珍しい天然の銀髪に、それと非対称な金色の眼。可愛いよりクールで大人びた印象を与える顔立ち。
そんなグラビアアイドルの名前は霧雨秋葉。私が八年前に再会を約束した友人。だが、八年前も前に別れて正直顔は靄かかってでしか思い出せず。正直、彼女が私の知る霧雨秋葉である確信が持てない。だが、それも一言で確信が持てた。
彼女は、恥ずかしそうに、「エヘヘ」と笑う。
「待てなくなっちゃって、僕から来ちゃった」
「……秋葉、なのか?」
「うん、僕だよ。レイ君」
霧雨秋葉は、私の知る霧雨秋葉のようだった。そもそも私をレイ君と呼ぶのはアキちゃん……秋葉だけだ。私の親は、レイナか、レイのどっちらかだ。私をレイ君とは呼ばない。
「ま、まぁ、立ち話もなんだから中に入りなよ」
「う、うん。お邪魔、するね?」
取り合えず秋葉を家の中に招き入れる。母さんや父さんは、基本海外にいるから家にはいない。家に居るのは、一匹の黒猫と私だけだ。
秋葉を家にあげてリビングにあるテーブルに座らせ、お茶を出す。そう言えば、もう時間的にはお昼頃だな……
「ちょっと待っててくれ」
「へ? あっ、はい」
一応秋葉にも食べるか聞いておいた方がいいかな?
「お腹すかないかい? よければ何かしら作るけど」
「い、いいよ。レイ君に悪いし……僕、あまりお腹すいてないから」
秋葉はそう言うが、お腹がなった。ベタだが、どうやら本当にあることではあるようだ。
「……体は正直みたいだけど、どうする?」
「…………………た、食べます」
「素直でよろしい。じゃあ、十分ぐらい待っててよ」
秋葉の顔が真っ赤だ。恥ずかしかったのかな? あまり気にしなければいいと思うけど、グラビアアイドルやってたら気になっちゃうモノなのかな? スタイル維持は大切だろうし。
ひとまず、すぐに作れる玉子炒飯を作って茶碗に盛り、あまった炒飯を大皿に盛り、二つの茶碗と一緒に置く。
「出来たよ。大皿に盛られてるやつから自分でよそって食べてね」
「う、うん」
秋葉は恐る恐る食べ、私はそれを見守る。正直、口に合わない。不味いの報告は受け付けている。食べれるといいなー、誰も料理を振る舞ったことないからあまり自信はないけど。
秋葉が炒飯を口にいれて咀嚼すると、一瞬体を震わせる。不味かったのかな? そう思ったが、炒飯を美味しそうにガツガツ食べ始めた。秋葉、どれだけお腹すいてたんだ? 思ったよりも食べるな。私も、秋葉に全部食べられる前に食べるか。
私も炒飯を食べ始めるが、少し秋葉の方を見る。美味しそうに食べてくれて何よりだ。私も炒飯を食べてみたが、思ったよりも上手く出来ていた。
残ることを想定して炒飯を作ったはずが、秋葉がきれいに平らげた。
「ご、ごちそうさま」
「美味しかったか?」
「うん!」
秋葉が笑いながら答える。表情から嘘は見えない。
「気に入ってくれたようで何よりだよ」
「う、うん。そうなんだけど……」
秋葉が言いづらそうに口ごもるが、なにかを決意したようで、立ち上がる。
「ま、まだお腹すいてるの! だから、その……」
「わかった。じゃあ、追加で何か作るから待っててよ」
「い、いいよ。なんか、レイ君に悪いし……」
「気にしないでよ。約束、私が迎えにいけなかったから、これぐらいはさせてくれ」
私はもう一度台所に立って冷蔵庫を漁って、追加で三品作る。秋葉はそれも美味しそうに食べて満足してくれた。秋葉は私が思うよりも大食いだった。
◇
「レイ君。本題なんだけど……僕をここに居候させてください!」
「別にいいよ」
「へ?」
僕は、レイ君に本題を切り出した。僕は今日、レイ君の家に居候するために来たのだ。説得は時間かかると思ってたし、レイ君も男の子だから僕の水着で妥協してもらえないかと思ったけど……意外とあっさり受け入れられた。
「いいの?」
「? 別にいいよ。母さんと父さんから連絡来てたから。秋葉ちゃんをウチに居候させるからってさ」
「いいの? 本当にいいの? 僕、女の子だからどうのこうのとかないの? ルールの取り決めとかも無いの?」
「ああ、そこはあるけど。男女がどうのこうのとかは今はなし。考えないものとする。まあ、ルールについては家事を手伝うのと、自分の良識、常識的に動くならいいよ」
へ? そんなんでいいの? 家事を手伝うのは居候の身としては当たり前だし、何か僕を縛るようなルールとかつけなくていいのかなぁ。
「僕を縛るようなルールとか作らなくていいの?」
「作る必要があるの? それに、私も秋葉も、自分の良識、常識に従う。それは、最低限のマナーさえ守ってくれるなら私はなにも縛らないよ」
「じゃあ、僕がレイ君を襲ったり。レイ君が僕を襲ったりしてもいいってこと?」
「なにその例え……まあ、秋葉の中にある良識を犯さない、そしてそれが常識の範囲内であるなら良いけど……」
あっ、一応その辺りは考えてくれてるわけか。なら、襲うのはダメでも、了承している状態でなら良いと?
「お、お互いの了承があるなら、その……エッチなこととかも……」
「いっこうに構わないけど?」
「そ、そうなんだ……」
エッチなこととかもやる分にはなにも言う気はないと……。じゃあ、おばさんが行ったみたいに、レイ君を悩殺したりするのも別にやる分には構わないと……。
「れ、レイ君。そ、その……レイ君と一緒に寝たりするのは……」
「……私のその日の寝る時間によりけりじゃないかな。まあ、お昼寝とかの添い寝ぐらいだったらやってあげるけど」
「じゃ、じゃあ、僕がレイ君に添い寝するのは……」
「今のところ必要ないかな」
レイ君、寛容なのか何なのかもう分からないよ。僕をよほど信用してるのか、何なのかはわからないけど、僕を自由に動かしてくれるのは素直に嬉しい。
「レイ君。僕は、何処の部屋で寝泊まりすればいいのかな?」
「んー、私の部屋に寝なよ。母さん達の部屋は使わないように言われてるし、私の部屋を使いなよ」
「いいの! あっ、で、でも着替えとかは……」
「その辺はどちらかが部屋から出ていくなり、仕切りを設置するなりしたら見えないでしょ? それでも恥ずかしいなら脱衣所で着替えれば良いわけだし」
その辺は色々考えてるんだね。自分に覗かない自身があるのか、覗かれないと僕を信用してるのか。まあ、僕は覗かないけどね! 嘘です、レイ君の着替え覗きたい。
「でも、僕らも思春期の男女な訳だし、どっちかが発情してどちらかを襲わない可能性はゼロじゃないんだよ?」
「それを考えるなら、何で私の家に居候しに来たのさ。やもうえない事情は特にないし、強いてあげるなら私に会いに来た。でしょう? 会うだけでいいなら、この辺に引っ越してこればよかったんだよ。発情するしないは、生理現象の問題だからどうしようもないし、どう対策してもどちらかが傷を負う。なら、私はあえてそこを、自分にある良識と常識に任せることにしたんだよ」
言いたいことは、わからなくもないけどそれって、要はその人本人の匙加減ってこと?
「それって、それらの行動の責任は自分でとれってことだよね?」
「そうだよ」
レイ君はそう言って、お茶を飲む。落ち着いて見えるけど、僕のこと女の子として意識できないのかなぁ。それはそれで不満と言うか、なんと言うか……
「複雑だよぉ」
「……あえて聞くけど何が?」
「僕の心境。喜べばいいのか、悲しめばいいのか……」
「…………安心できないと思うけど、一応ね。言っておくよ。私は秋葉のことは女の子だと思ってるから、その辺は気を付けてほしいかな」
よし、悩殺が効く。でも、恥ずかしいからやりたくないなぁ。うう、グラビアよりは恥ずかしくないと思ってたのに……
「秋葉、まだなにか話したいこととかある? 無いなら、少し遊ばない?」
レイ君がそう言って、リビングのテレビ前に設置されたゲーム機を指差す。僕は、仕事が忙しくて持ってはいても、まだ遊べてないゲーム機だ。
「うん! 遊ぶ!」
「じゃあ、やろうか。二人で遊べるやつ」
それから僕はレイ君とゲームをして遊んだ。問題なんて、結局あとで考えておけばいい。変に心配したって意味がないんだからね。