【完結】シンボリルドルフを轢け逃げられますようにと、彼女は願った   作:ムーンフォックス

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いつしか一年という月日が流れてしまいました。
この小説を覚えている方も少ないと思われます。
次で恐らく最終話となるので、それまで付き合っていただけるとありがたいです。


ジャパンカップ

 空を飛ぶ鳥を見たことがあるだろうか。雄大な羽根を広げ、天空を自由に羽ばたく鳥を見たことがあるだろうか。

 不思議なことに鳥は生まれながらにして自分が飛べることを知っている。それは母が飛ぶ姿を見ているからだ。未熟な子供は自身と同じ姿の者から学び、その才能は育まれていくのだ。

 

「ゴールドアンドアイボリーさん、何故ジャパンカップへの参加を表明したのですか?」

「──未熟な子供だった私はある日、恐ろしいものを見ました」

「……その恐ろしいものとは?」

「それは、私と同じウマ娘でした。頭部から生えた耳、背面から伸びる尻尾。姿形(すがたかたち)はまるで同じ、でも彼女は、私に比べ決定的な違いがあった」

 

 日本の空港の一角に人集りが出来ていた。

 マスメディアが焚くフラッシュの中心で、ゴールドアンドアイボリーはそのウマ娘のことを雄弁に語る。

 

「そいつは、時速390キロで走っていた」

 

 マスメディアがどよめき立つ。そんなことは有り得ないからだ。その言葉の真意を問いただそうと各地で手が挙がる。

 だが、ゴールドアンドアイボリーはそれら一切のざわめきを片手で制した。

 

「かの日、私は彼女の前で宣誓しました。『必ず貴方を倒すウマ娘になる』と。その約束を果たしに、私は今、この地へ立っているのです」

 

 多くのマスメディアがそのウマ娘について思索を巡らせた。イギリスの名のあるウマ娘だろうか。或いは、一瞬だがシンボリルドルフのことかと思う者もいた。

 だが誰も、その正体に気づけずにいた。

 それは、そんな彼女が所属しているチームでも同じように──

 

「……ゴールドアンドアイボリー、ねぇ」

「知り合いなのか? エクスプレス?」

「……昔、少しだけ」

「ほう、ならばお前は彼女の言うウマ娘について、ある程度の見当がついているのではないか?」

「さぁ、皆目見当もつかないね。でもきっと、私に似た可愛い奴さ」

 

 療養中のキングダムエクスプレスが静かに微笑んだ。

 


 

「アードルフ、調子はどうかな?」

「だいぶ良いね。それより、天皇賞春優勝おめでとう。ルドルフ」

 

 壁にかけられた時計が4時を指した。少し前まであった筈の雪はすっかり溶けきっている。

 春の終わり頃の病室には、包帯に脚を吊るされたキングダムエクスプレスと、その傍らに座るシンボリルドルフがいる。

 

「これで五冠。シンザンに並んだな」

「ああ。だがこの程度で終わろうとは思わない。ジャパンカップ、そして有馬記念に勝ち……私は初の、七冠ウマ娘となってみせる」

 

 気持ちを改め、ルドルフは目の前のエクスプレスを睨んだ。

 

「だから、手加減などはしない。全身全霊を以て潰させてもらう」

 

 ルドルフから発せられる圧倒的な闘気、目の前に立ち塞がる者に容赦はしない、そう言外に告げられている。

 

「ははは……病人だっていうのに容赦なしかい……」

 

 苦笑いを浮かべるが、その表情は飄々とした姿を保ったままだった。薄く微笑み、改めて目の前の彼女を見つめる。

 

「でもそっちが七冠を全力で目指すなら、私は全力で止めて見せる」

 

 そう、負けたままではいられない。か細い糸を伝うため、シンボリルドルフを超えしものとなり未だ見ぬ母と再会を果たすため、エクスプレスは走らなければならない。

 真剣な面差しが彼女の何かを刺激したのか、今度はルドルフが笑った。

 

「ああ、君とまた走れる日を楽しみにしてるよ。エクスプレス」

 

 それだけ言い、ルドルフは部屋を出ていく。ピシャリと閉じられたドアの音の後、決意が確固となる音がした。

 

「絶対に、勝つ」

 

 

 

 


 

 

 

 

 有馬記念の冬から桜の花が芽吹き始め、とうとうそんな春さえも終わりかける頃の日。グラウンドを駆けるハイリボルケッタの目に、見慣れた、しかし見慣れない顔が見えた。

 

「……そうか、退院したのか」

 

 汗だくの額を拭い、その者へと歩を進めていく。未だ足のギプスは外れず、未だ松葉杖を抱えてはいるが、キングダムエクスプレスの姿がそこにあった。

 

「久しぶりに嗅ぐトレセン学園の匂いはどうだ?」

「……懐かしい。だけど、それより今は走りたい」

 

 自身の足を眺める。オークスの後に折れ、有馬で再び折れた足。今はまだ走ることなど夢のまた夢。

 だけれども

 

「何よりルドルフを──倒したい」

 

 その闘志まで潰えたことにはならない。その瞳がどこまでも喰らいつくと物語っている。

 

「……ならば努力あるのみだな」

 

 もはや心配はいらない。走る意味を見いだせなかったあの頃の彼女はここにはいない。

 

「ハイリ、轢けると思う?皇帝を」

「できるさ。きっと」

 

 ハイリは自信げに答えた。

 

 


 

 

 皇帝とは何を以てして皇帝と成すのだろうか?

 皇帝と王は、果たして何が違うのか。何ゆえ私は皇帝なのか。

 

 皐月を破り、ダービーを制し、菊花を走り抜けた。

 有馬を討ち、天皇賞春を潰し、宝塚の栄光を手にした。

 『皇帝』は誰が呼ぶわけでもなく、しかし自然にそう言われるようになった。

 

 当然、諦めの悪い者は跡を絶たない、ジャパンカップでは足をすくわれ、一着を得ることは叶わなかった。

 だから有馬記念では引導を渡した。例え敗れたとしても、ただで引き下がっては皇帝ではない。

 敗けたのが悔しくて、だから強くなってその雪辱を果たす。

 

 お前もそうなのか? キングダムエクスプレス。

 私に敗け続けるのが悔しいから、もっと強くなるのか?

 このままでは、本当の母親に会えないから更に早くなるのか?

 

 ……それがなんにせよ、その想いに私が応えてやれることは少ない。

 皇帝とは皆を導く存在、目指す景色はあの時から何一つ変わらず、そして曇りは無い。

 

 あらゆるウマ娘が幸福に過ごすこと出来る世界。

 それはもう、エクスプレスが悲しまくても良い世界。その願いを実現するためならば───

 

「例え妹から憎まれようとも、その役目を果たしてみせる」

 

 そう、何も変わらない。エクスプレスはその強さを増す。

 だが力をつけたとはいえ、蛙は蛙なのだ。竜の髭を取ることなんて不可能だし、井戸から逃げることさえできない。

 時間が経ち、やがては絶対の青空の大きさを知ることだろう。まるで私のように

 だが、天空にいくら手を伸ばしても雲を掴むことはできない。

 

 皇帝ナポレオン。かつては英雄と民から讃えられ、しかし最後には殺戮者として絶海の孤島へと島流しにされた者。

 

 大空を知る蛙の生涯は狭き井戸の中で終わる。

 三千世界を知った皇帝は狭き孤島の中にて生涯を終える。

 

 私は違う。

 私は、違う。

 


 

 

「"ヒール"って知ってるか?」

 

 ジャパンカップまで残すところ1日となった折、鼻腔を衝くコーヒーの香りがした休憩時間の合間に、暁は口を開いた。

 

「ヒール……回復(ヒール)……悪役(ヒール)?」

 

 エクスプレスが思いつく限りの言葉を並べる。最後の言葉に暁がため息を吐いた。

 

「そう、悪役(ヒール)だよ」

「それが、何か?」

「シンボリルドルフが勝ったGⅠレースの数は知ってるか?」

「皐月賞、日本ダービー、菊花賞、有馬記念、天皇賞春、今のところはこの五つでは?」

 

 ルドルフのことを常々思っているエクスプレスにとってそれは愚問に等しい。反射的に言葉が出た。

 

「そうだ。もし明日のジャパンカップに勝てば、六冠ウマ娘だ。しかも! 初めての、だ!」

 

 これまでのウマ娘に六冠を成し遂げたウマ娘はいない。かのシンザンさえも、五冠ウマ娘でその生涯を終えている。

 偉大なる快挙の手前、シンボリルドルフの進む道の先にある覇道を汚さんと、目の前に一人の悪役が立ち塞がる。

 

「オマエだよ、立ち塞がる悪(キングダムエクスプレス)

 

 答は返ってこない。静謐が辺りを包んだ。

 

「……六冠ウマ娘、か」

「新聞記者たちも気づき始めてる、お前がシンボリルドルフの領域に届き始めてることに」

 

 サッとウェブニュースを暁が見せる、今朝の記事のようだ。

 

【ジャパンカップ】シンボリルドルフ六冠迫る、立ち塞がる"超特急の影"

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11/2(土) 5:54 配信

               

 

 

 

 

オークス勝利時のキングダムエクスプレス(提供)

 

 今月末に迫るジャパンカップに不安の影が残る。キングダムエクスプレスである。

 

 キングダムエクスプレスはデビュー戦当初よりシンボリルドルフを轢くと度々発言。

 皐月賞では敗北しオークス戦の後に骨折、友人であるハイリボルケッタが菊花賞にシンボリルドルフに挑むがこれにも敗北、復帰戦である有馬記念ではシンボリルドルフと再び激突するがこれにも敗北、これまた再び骨折を起こし一年間の治療となった。

 そんなキングダムエクスプレスであるが、彼女は皐月賞での大敗から骨折が回復してから間もない有馬記念でシンボリルドルフを抜き去るという偉大な成果を残している。

 

 シンボリルドルフはキングダムエクスプレスに関して「彼女が無事に復帰し、私を轢いてくれることを楽しみにしている」とコメント。

 今年度ジャパンカップ勝利で初の六冠を達成するシンボリルドルフであるが、その栄光には翳りが差している。

 

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「……流言飛語もここまで来りゃあなんとやら、んでトレーナー、私に棄権でもしてほしいのかい?」

「ぶち抜いてやれよ、皇帝轢くためにそんな名前してんだろ?」

「当然!」

 

 キングダムエクスプレスは嬉々としてそう答えた。

 

 


 

 

 ──イギリスのことを思いだす。イギリスにいた、日本のウマ娘のことを。

 

 閑静が、歓声に掻き消される。

 

 ──自分のことを皇帝を轢くウマ娘と言うウマ娘がかつてイギリスにいたことを、思いだす。

 

 ふと、思いだす。

 

「貴方はここにいたわね。アードルフ」

 

 緑豊かな芝のレース。ジャパンカップの熱に浮かされたその日。かつては幼かったウマ娘は友と十年来の再開を果たした。

 

「……あの時以来かしら? アードルフ、それとも今は、『キングダムエクスプレス』?」

「あア、随分とまあ久しぶりじゃないか? 『ゴールドアンドアイボリー』」

 

 東京の芝に、二人のウマ娘が向かい合っていた。『ゴールドアンドアイボリー』と『キングダムエクスプレス』が。

 

「あら? 覚えていてくれてたの?」

「恩を売ってくれた奴らは全員覚えてるさ──悪いな、せっかく高いご飯にふかふかのベッドに寝かせてもらったりと至れり尽くせりさせてもらったのに」

 

 皮肉げにエクスプレスがアイボリーを捉える。

 

「その恩を、こうして仇で返すようになっちまって」

「そんな豪勢なお返しは望んでないわ──お礼は、私の勝利で結構よ」

 

 アイボリーも負けじと精いっぱいの皮肉を返す。エクスプレスが快活に笑った。

 

「おや? 知り合いだったのかね?」

 

 割り込むようにシンボリルドルフが現れた。

 

「ああ、昔に少しな……」

「そうか……ゴールドアンドアイボリー、私はシンボリルドルフだ。今日は良い試合になるよう励むよ」

 

 手を差し伸べられる。アイボリーが掴む。

 

「あらあら、これはこれは丁寧に、どこぞの新幹線とは礼儀が違うわね」

「へーへー、言ってろ言ってろ」

 

『まもなく出走です!』

 

 アナウンスの声に皆が顔を上げる。浮かべる気持ちは三者三様。しかし行き着く先は変わらない──私こそが最強という自負の証明。

 

「それじゃあ、二人共。良き試合になるよう」

「ああ…そんじゃま、私もここいらで…」

「待って、エクスプレス」

「ん?」

 

 ゲートに向かうエクスプレスをアイボリーが止めた、瞳がその真剣さを語っている。

 

「私…あなたに伝えたかったの…貴方のおかげで、私は変われた」

「はぁ、そりゃどう致しまして…?」

「私は、貴方のおかげで強くなれたの!」

「──あぁん?」

 

 その一言が、エクスプレスを刺激した。強くなれという使命を持つ彼女の前に強くなれたと豪語する者が現れる。

 寵辱。

 

「……覚えてるかアイボリー? ジャイアントキリングの例え話」

「ええ、私のモットーよ」

「だいぶ知らねぇうちに……()()()()()()()

 

 アイボリーとエクスプレスの距離が再び近くなる。両者の身長はアイボリーが多少上であろうか。

 

「あらそう?それが?」

「……いや、なんでも?」

 

 振り向き、エクスプレスが去っていく。目の前には二枚の巨大な壁がある。

 皇帝と、黄金。だがそれがどうした。

 

「ジャイアントキリング──」

 

 そう、やることは何も変わらない、壁とは超えるためにある。

 

 ジャパンカップが、始まる。

 


 

『世界中のウマ娘が栄光を求め、ジャパンカップの府中に集う!

 日本勢は対抗できるのか!?

 

 一番人気はこの娘、シンボリルドルフ 海外のウマ娘にも変わらぬ走りを見せつけてくれるのでしょうか』

 

 ルドルフがつま先で地面を叩く。

 

『二番人気はゴールドアンドアイボリー。海外からの刺客は皇帝を打ち倒せるのか!?』

 

 アイボリーは悠然と立ち、レースが始まるのを待っている。

 

『皇帝を轢くと豪語するのはこのウマ娘キングダムエクスプレス! 破れた友ハイリボルケッタの思いを胸にいざ立ち向かわん!』

 

 私がすう、と息を吸い上げた。

 

『全ウマ娘体勢が整いました、レースが始まります!』

 

 そしてここにいる全員が、構えた。

 

 眼前のゲートがファンファーレのような轟音で開く。

 

 真っ先に走り出したのは私だった、ここまでは上々、逃げも先行も私にはついて来れない。私の轢き逃げ戦法で前を走らせるのは一度だけ、その一度はこんなところでは無い。

 

 第一コーナーを巡る。第二コーナーを回る。第三コーナーを曲がる。

 

 

 もう、限界だ。

 

 私の足が止まる、休息の時が来た。あのデタラメな走りでは最後まで走りきれない。

 だから、こうする。

 

 そう、クラウチングスタートの構えだ。

 

 眼の前をウマ娘が通ってく、それが誰か知っている。シンボリルドルフだ。そうだろう──

 

「──え、」

 

 違う

 眼の前を過ぎたウマ娘はシンボリルドルフでは無い──

 

『やはり上がってきましたゴールドアンドアイボリー! 海外からの刺客がジャパンカップに王手をかけに詰め寄ってきた!』

 

 そこでようやく、ルドルフが私を追い越した。

 


 

 シンボリルドルフとてゴールドアンドアイボリーを見くびっていたワケでは無い。研究に研究を重ね対策にさらなる対策を講じるのは彼女の得意のすることであり、それがシンボリルドルフの強さであった。

 

 なんてことはない。

 

 ゴールドアンドアイボリーはその研究よりも速く、その対策など無意味であった。それだけの話なのだ。

 

 走る中シンボリルドルフは考える。アイボリーのあの走りにはどこかに見覚えがある。

 再考し、つい先程から見ている物だったことに気づく。

 それは自分の走り

 あれは、領域(ゾーン)か。

 

(残り距離はいくつある? 400メートル位だろうか?)

 

 勝てる方法を模索する。無理だ。

 何かしらある筈だと思索に耽る。不可能だ。

 一つの結論に達する。できるわけがない。

 

(わからない)

 

 それだけが、解った。

 

 前年のジャパンカップでもシンボリルドルフは敗北を喫した、あの黒髪のウマ娘──カツラギエースに。

 

(解らねば)

 

 わからないままではダメだ、このままではアイボリーがジャパンカップに勝つ。

 皇帝たるシンボリルドルフにもはや負けは許されない。

 皇帝のルドルフが、敗けることなど有り得ない、あってはならない。

 だがこのままでは──

 

「負け───」

「何やってんだよルドルフゥゥウウウッッッッ!」

 

 耳をつんざいたのは一つの喊声。

 アイボリーとルドルフが振り向く。

 修理を終えた超特急が、迫りくる──!

 

「アードルフ……」

「アンタが抜かないなら私が轢いてやる!」

 

 エクスプレスがルドルフに迫る。

 それだけは嫌だ。エクスプレスには勝ちたい──

 ──勝ちたい?

 

(──ああ、そうか)

 

 ルドルフとは皇帝である。

 

(皇帝の尊厳やジャパンカップの名誉などと言うものが)

 

 だがルドルフとはシンボリルドルフであり。

 

(今、眼の前の奴に勝ちたい。なんて言う気持ちよりも)

 

 シンボリルドルフとはどこまで行っても、シンボリアードルフの姉なのだ。

 

(勝る道理(ワケ)が──無いのだッッ!!)

 

 そう、わからなくていい。皇帝としての尊厳を守る方法など知らなくて良い。

 今はただ

 

 勝ちたい。

 

 

 ルドルフが、エクスプレスが、加速しアイボリーに追いつく──!!

 

「んなばッ!?」

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっ!!!!!」」

 

 アイボリーは気づいた。

 

 あの二人の領域に、自分の居場所など無いことに。

 

 

『ゴールドアンドアイボリーここで抜かされた! 先頭を駆けるのはまたもやこの二人 シンボリルドルフとキングダムエクスプレス! 並走とすら呼べる接戦を繰り広げゴールに向かってる! 勝てるのか皇帝!? 轢くのか超特急!? どっちが勝つんだああああ!?』

 

 ゴールが、切られた。

 

『ハナ差でシンボリルドルフの勝利だああああっ!! またもや勝者はシンボリルドルフ! シンボリルドルフがジャパンカップを制しました! 勝ったのはシンボリルドルフ!』

 

「ふ、また勝ってしまったな」

「クソっ!つぎこそは……!」

 

 悔しがるエクスプレスに近づくウマ娘が一人。ゴールドアンドアイボリーである。

 

「おめでとう、二人共」

「アイボリー……君は強かったよ、できることならまた共に走ろう」

 

 ルドルフが再び握手を求める、アイボリーが応じた、レース場が沸き立つ。

 

「それと、アードルフ」

「今はキングダムエクスプレスだっつーの」

「貴方に一つ伝えたいことがあるの……後で話せないかしら?」

「?」

 

 ゴールドアンドアイボリーが去っていく。その様子をエクスプレスは不思議な目で見つめるのだった。

 


 

「で、話って?」

 

 舞台は変わりとあるカフェの中、アイボリーとエクスプレスは向かい合って座っていた。

 アイボリーが一つの写真を取り出す。

 

「……これは?」

「貴方が出ていた皐月賞、その観戦席の画像よ。貴方のこと、調べさせてもらったわ。お母さんのこともね」

「……趣味が悪いな」

「ごめんなさい。それで私にも何か出来ないかなってお母さんのことを調べてみたのよ」

 

 次にテーブルに人の顔が載ったプリントが出される。その顔には見覚えがあった。

 

「これってもしかして……」

「ええ、貴方のお母さんよ」

「私でも調べられなかった顔をどうやって……」

「ほら、私金持ちだから。それでねアードルフ……この写真のここ、見て」

 

 最初に出された画像の一点が指差される。エクスプレスは驚愕した。

 

「……母さん!?」

「ええ、偶然なのか意図してかは知らないけど貴方のお母さんは間違いなく、あの日の皐月賞にいた オークスとかにはいなかったけど……」

 

 アイボリーの目が鋭くエクスプレスを見つめる。

 

「それで、母さんは今どこに!?」

「そこまではわからなかった、でも……どうやらまた、観に来るらしいわ」

「観に来るって……まさか!」

「ええ、そうよ」

 

 ふうと、アイボリーが息をつく。

 

「次の有馬記念、貴方のお母さんが観に来るわ」

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