俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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多忙とモチベーションの低下により、3週間近く休んでいました。
次回以降は出来る限り早くに投稿できるように頑張りますのでよろしくお願いします。


第100話 全ての真実 前編

 学校から飛び出した俺と華先生はそれぞれテイルバイオレットとテイルブルームへ変身し、変身によって強化された脚力を活かし建物の屋上を飛び移り現場へと向かう。

 以前までならバイクに乗りティアナも同行していたのだが、アルティデビル及びアナザーテイルレッドの狙いがティアナの持つツインテール属性だとわかった以上、連れていく事が危険なので部室に残ってもらっている。

 結果、こういった出撃方法になっているってわけだ。

 

「ねぇバイオレット? 橘さんを連れてこなくて本当に良かったの?」

 

 現場へと向かう際中、華先生が唐突にそんな事を聞いてきやがった。

 

「何だよ、先生は自分の生徒を危険に晒したいのかよ」

 

「いや、そうじゃなくて……その、アナザーテイルレッドと戦うにあたって今のバイオレットのままで大丈夫なのかなと……」

 

「う……」

 

 実の所、俺も少し……というよりかなり不安ではある。

 何故ならテイルバイオレットはティアナの想いによって強さが決定すると言っても過言ではないからだ。ティアナの属性力を使った完全開放(ブレイクレリーズ)にブレイブとエモーショナルの追加装甲(テイルアーマー)、元々の属性力が変身の基準値を満たしていない俺にとってそれらは戦う為にはほぼ必須とも言える。つまりそれら全てが一部ないし完全に使えない状態なのはそれは即ち、ゲームで言う所の縛りプレイをしているも同義。さらに言えば今回の相手は前回、手負いの状態だったとはいえ俺を一方的に打ち負かした強敵であるアナザーテイルレッド。考えれば考える程に不安は増していきそれに伴い体の自由が利かなくなる。

 現にいつもより体が重く感じており、まるで体のあちこちにおもりをのせているかのような感覚だ。

 今のままじゃこうして華先生についていくのだけでも必死な程だ。

 でも……

 

「それでも……俺はティアナの身の安全の方が大事だ」

 

 アイツのツインテールだけは絶対に奪われてたまるものか。

 それと比べればこんな不安なんぞ屁の河童だぜ。

 

「それによ、今回は何も一人で戦う訳じゃねぇ。華先生、あんたがいる。そうだろう?」

 

「そうだけど……」

 

 それとこれとは話が違うとでも言いたげな華先生だが、俺からすれば一人じゃないのはとても心強く安心感を与えてくれるので今回も何とかなるような予感しかしない。

 (アナザーテイルレッド)がどれだけ強くて俺がどれだけ弱体化してようとも、二人がかりで挑めば勝機はある筈だ。

 俺はそれにかけるしかない。

 

「頼りにしてるぜ先生」

 

「……わかったわ。でも決して無理はしない。いいわね?」

 

 しょうがないわねとばかりに微笑んだ華先生はそう俺に尋ねてくる。

 勿論、俺の返答はYESだ。首を縦に振る。

 ティアナが待っている以上、俺だって無事に帰ってやる。

 決して無理せず皆と自分自身のツインテール属性を守り切るつもりだ。

 その決意をくみ取った華先生は現場へと急ぐべくスピードをさらに上げるのだった。

 

 

 

 

 立ち込める黒煙、燃え上がる炎、そして逃げ惑う人々。

 俺たちが辿り着いた現場であるビル街はまさに悲惨の一言。

 このまま放っておいたら焼け野原にでもなってしまうんじゃないかと錯覚するほどの大惨事が引き起こされており、俺とテイルブルームは言葉を失った。

 

「酷い……」

 

「あの野郎……!!」

 

 属性力を奪う為なら手段を選ばないと称するアルティデビルのエレメリアン共もこれまで何度も暴れてきたし、その結果としてこのような大惨事を引き起こした事は一度や二度ではないが、奴らはあくまでも属性力を奪うのが最優先である以上、故意にこのような惨状を引き起こしたことは暴走を除けば一度もなかった。

 だけど、今回は違う。今回の首謀者であるアナザーテイルレッドの野郎は故意にこの大惨事を引き起こしやがったに違いないからだ。

 目的は恐らく、俺たち二人とターゲットであるティアナを誘い出す為だろう。

 その為だけに無関係な人たちを巻き込むなんざ絶対に許さねぇ……!!

 アナザーテイルレッドへの怒りを燃え上がらせる俺とテイルブルームは、辺り一面を見渡してアナザーテイルレッドが何処にいるかを探す。

 

「いたわ!! あそこ!!」

 

 街の上空を指さすテイルブルーム。

 そこには街の惨状を見渡すかの如く、空で佇むアナザーテイルレッドの姿があった。

 

「先生は援護を!! 俺は奴を叩き落とす!!」

 

「ちょ、ちょっと待って!!」

 

 そう言うや否や、俺はフォースリヴォンを叩いてウインドセイバーを握りしめてアナザーテイルレッド目掛けて一気に跳躍。

 空中で佇むアナザーテイルレッドを斬り落とすべく俺は返事も聞かずに飛び出した。

 

「このクソ野郎がぁぁぁッ!!!」

 

「ッ!? 来やがったか!!」

 

 俺の接近に気づいた様子のアナザーテイルレッド。

 野郎はフォースリヴォンを叩き、ブレイザーブレイドを精製し俺の攻撃を迎え撃ってくる。

 空中にて赤の刃(ブレイザーブレイド)青紫の刃(ウインドセイバー)がガキンとぶつかりあい火花を散らす。

 

「遅かったじゃねぇか!! 待ちくたびれたぜ坊主!!」

 

 ぶつかり合う中、話しかけてくるアナザーテイルレッド。

 俺は何一つ街の惨状を気にしていないかのようなその素振りにより怒りを募らせる。

 

「んだと、このクソ野郎!! てめぇのせいでどれだけの無関係な人が被害に遭ったと思ってやがる!!」

 

「おいおい、炎は嫌いかぁ? ええ? ちなオレは大好きだぜぇ!!」

 

「ふざけんな!! このクソ野郎が……!!」

 

 アナザーテイルレッドの野郎は俺の怒りに対して全く持って意に介しておらず、寧ろ俺の反応を見て楽しんでいやがるかのようだ。

 それを見た事でより一層ウインドセイバーを握る手に力が入る。

 ――がしかし、

 

「けッ、興味なしかい。じゃあ教えてやるよ!! 何故ならなぁ!! 炎はオレのツインテールをより一層!! 赤く染めてくれるからなんだよぉ!!」

 

「ッ!?」

 

 急激に増す力。

 それを感じ取った時にはもう時すでに遅し。

 ティアナがいない事でいつもよりも力を発揮できない俺ではその急激な力の上昇に対応することがまるで出来ず、撃ち落とすつもりが逆に押し返されてしまいそのまま撃ち落とされてしまう。

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

 ドカンと凄い音を立てながら俺はアスファルトの地面に激突した。

 俺を中心に形成されたクレーターがその威力を物語っている。

 

「バイオレット!!」

 

 駆け寄って来るテイルブルーム。

 俺は何とか起き上がり空を見上げる。

 すると上空よりアナザーテイルレッドが高笑いを上げながらゆっくりと降りて来た。

 

「はっはっはっは!! 最高だな坊主!!」

 

「クソッたれが……」

 

 強い……

 悔しいがやはりアナザーテイルレッドの実力は俺の実力を遥かに上回っている。ティアナが傍にいて強化形態が使えれば互角に戦えるかもしれないが、今はその選択肢は危険すぎて使えない。

 なら……

 

「いくぜ先生!!」

 

「ええ!!」

 

 二人がかりで攻めて足りない実力差を補えばいい。

 シンプルにして強力な戦法。

 ウインドセイバーを握りしめ突撃する俺とグランアローを構えるテイルブルーム。

 先程は俺が先走ってしまったが故に失敗してしまったコンビネーションアタックだが今回は違う。

 迎撃に向かおうとするアナザーテイルレッドをテイルブルームの放つ矢が的確にその動きを縛っている。

 これならやれる。

 俺は援護射撃によって出来た隙を的確につく形でウインドセイバーを振り下ろす。

 

「くッ、オレ一人相手に二人がかりかい……。随分と卑怯な事で……!!」

 

「てめぇみてぇなクソ野郎には言われたくねぇよ!!」

 

「ハッ、そいつは仰る通りだ!!」

 

「んだと……!!」

 

 何とか俺渾身の一撃をブレイザーブレイドで受け止めたアナザーテイルレッド。

 テイルブルームの精密な射撃をかいくぐりながら何とか俺に反応できたのは流石の一言ではあるが、やはり先程よりかはパワーを出せていない。

 これはやはりテイルブルームの援護射撃を避けるのにもリソースを割いた事が原因だろう。

 これはいけると確かな手ごたえを感じる俺ではあったが、それ以上になぜこの野郎はこうも余裕そうな雰囲気を出しているのか。

 俺にはそれが不安でしかない。

 

「にしてもよ坊主、総愛の奴がいないみたいだが……アイツはどうしたんだ?」

 

 離脱し、距離をとるアナザーテイルレッドにすかさず華先生が矢を放つ。

 雨のように降り注ぐその矢を回避するそんな中、アナザーテイルレッドの野郎が突然、友達に話しかけるようなフランクさでそう問いかけてきやがった。

 俺としてはこんな状況下でよくそんな事を言えるなと思ってしまうが、ここはハッキリと告げてやることにする。

 

「お前みたいなクソ野郎にティアナを会わせるわけねぇだろうが!!」

 

「ほう、つまり……このオレを本来の半分以下のパワーで倒せると……そう思っていやがるわけかい」

 

「ッ!?」

 

 当の本人は何気なく呟いた風にも聞こえるその発言だったが、俺は衝撃を隠せない。

 何故ならこの俺テイルバイオレットの弱点であるティアナがある程度近くにいないと全力が出せないという事がバレているからだ。

 

「どうしてそれを……!? どうしててめぇなんかが知ってやがる!!」

 

「さぁて? どうしてかなぁ? わかるかぁ坊主!!」

 

 なおも続く矢の雨をかいくぐりながら俺の事を煽るアナザーテイルレッドは矢の回避の合間を縫って俺に肉薄、ブレイザーブレイドを力任せに叩きつけてくる。

 俺はその攻撃をなんとかウインドセイバーを盾に受け止める。

 そんな中、俺はある事に気が付いた。

 

「そういやてめぇ……!! どうして俺の事を坊主って……!!」

 

 アナザーテイルレッドは俺の事を坊主と呼ぶ。それはつまり、この俺テイルバイオレットの正体が女ではなく男だと言う事実を知っているからに他ならない。

 一見、ただの女の子が武装して戦っているようにしか見えない俺の今の姿の正体をどうして知っているのか……

 思い返してみればこの野郎は初めて遭遇した先日のあの時から俺の事を坊主だと呼び続けていやがった。

 何故だ? どうしてだ? どうして俺の正体までも知っていやがるんだ?

 

「答えろ!! お前は一体なんなんだ!!」

 

「オレかい? オレはテイルレッドさ!!」

 

「まだふざけた事を!! この偽物野郎が!!」

 

 答えは無くまたもぶつかり合う二つの刃。

 鍔迫り合い中で激しい火花が散る。

 本来のパワーを出し切れていない今の俺じゃ必死に踏ん張るだけで精一杯。

 頼みの綱はテイルブルームからの援護射撃だけだ。

 だがしかし、俺たちが鍔迫り合いを始めて以降、援護射撃が全然飛んでこない。

 これはまさか……

 

「くッ……!! この野郎……!!」

 

 何故、テイルブルームからの援護射撃が飛んでこなくなったのか。

 その答えはたった一つ、アナザーテイルレッドの野郎がこの俺を盾にするかのように立ち回り、射線を切っているからだ。

 

「はっはー!! そんなもんか!? ええ!!」

 

 畳みかけるかのようにブレイザーブレイドでガンガンと俺のウインドセイバー目掛けて何度も何度も乱暴に叩きつけるアナザーテイルレッド。

 激しく、それでいて計算され尽くされたその動きは、テイルブルームからの援護射撃の射線を常に切り続けているが故に俺はただただ防御するしか出来ない。

 とてもじゃないが戦闘の素人には真似できないその動き。

 やはりコイツは只者じゃない。

 

「考え事かい? お腹がガラ空きだぜぇ!!」

 

「しまった……!?」

 

「おらよ!!!」

 

「ぐはッ!?」

 

 不意に放たれた蹴りが鋭く俺の腹に突き刺さる。

 吐瀉物を吐き出したくなるそんな凄まじい衝撃を受けながら俺はテイルブルームがいる方向へと吹き飛ばされる。

 そして――

 

「そらぁッ!!!」

 

「ッ!?」

 

 そのままの勢いを生かし、一瞬の内に間合いを詰めたアナザーテイルレッドが今度はテイルブルームに襲い掛かる。

 振り下ろされるブレイザーブレイド。

 テイルブルームは持ち前の超反応を駆使してそれを回避、反撃の掌底をアナザーテイルレッドの横腹に目掛けて叩き込まんとする。

 がしかし、アナザーテイルレッドは素早く空中に離脱してそれを回避。

 そしてそのまま急降下しながら踵落としを繰り出し、テイルブルームは腕をクロスしてその攻撃を受け止めた。

 

「ほぉう……!! 坊主とは違って嬢ちゃんは中々やるじゃねぇか!!」

 

「くッ……!!」

 

 一見すると互角に渡り合っているように見える両者。

 だけど二人の表情に明確な差が存在している。

 アナザーテイルレッドは戦いを楽しむという余裕を感じさせる笑顔であるのに対して、テイルブルームは全く持って余裕を感じさえない程の苦悶に満ちた顔だ。

 このまま続ければいずれ押し切られるのは明白。

 何とかしてテイルブルームのカバーに回らなければならねぇ。

 だけど、二人の戦闘は全く持って介入する余地が存在しておらず、俺はただみているしかできない。

 そして遂に――

 

「あらよっと!!」

 

「きゃぁッ!?」

 

 一瞬の隙を突く形で振り下ろされるブレイザーブレイドがテイルブルームに直撃。

 今までどんな相手であろうとも崩す事が出来なかったテイルブルームの鉄壁のガードが破られてしまった。

 たまらず悲鳴を上げ体勢を崩すテイルブルーム。

 そのチャンスを逃さないアナザーテイルレッドは怒涛の攻撃を展開し始める。

 

「どうしたどうした!! もう終わりかぁ!?」

 

「くぅ……!!」

 

 繰り広げられるのは余りにも一方的な展開。本来はツインテールを守る為に生み出された筈のブレイザーブレイドがテイルブルームのツインテールを刈り取らんと乱暴に振るわれ、テイルブルームを痛めつけていく。

 頼みの綱であるテイルブルームが一方的にやられているその凄惨な光景をみた俺は回復しきっていない体を無理やり動かし突進する。

 

「やめろぉぉぉ!!」

 

「ああん?」

 

「おらぁッ!!!」

 

 アナザーテイルレッドの不意を突く形ではなった渾身の右ストレート。

 がしかし、アナザーテイルレッドはテイルブルームを突き飛ばし即座に体勢を整えると、そのまま俺の拳をいとも簡単に受け止めやがった。

 余りにも鮮やかなその一連の流れに俺は戸惑いを隠せない。

 

「へっ、いいか坊主? パンチってのは……こうするんだよ!!」

 

「ぐあぁぁぁ!!」

 

 アナザーテイルレッドの拳が俺の頬にクリーンヒット。

 意識が飛びそうになる程の圧倒的な威力を前に俺は吹き飛ばされる。

 

「おまけだ!! コイツは返すぜ!!」

 

「きゃぁぁぁ!!!」

 

 ダメ押しとばかりにアナザーテイルレッドはボロボロになり倒れこむテイルブルームの(ツインテール)を無理やり掴んでそのまま力任せに俺が吹き飛んだ方向へと投げつけてくる。

 状況的に受け止める事が出来る筈が無い俺はそのままテイルブルームとぶつかり合いながら瓦礫の山に叩きつけられた。

 

「はっはっはっはっは!!! 楽しいねぇ!! やっぱ戦いはこうでなくっちゃ!!」

 

 辺り一面にアナザーテイルレッドの邪悪な高笑いが鳴り響いた。

 

 

 

 

『うあああああ!!!』

 

『きゃああああ!!!』

 

 新聞部部室にて響き渡るテイルバイオレットとテイルブルームの悲鳴。

 出撃を止められ部室に待機している私の耳にはテイルブレスを通じてそれらが聞こえてくる。

 

「和輝……華先生……」

 

 私は手を合わせて必死に二人が勝つことを祈っている。

 だけど、どう聞いても現状の戦況は芳しくない。テイルバイオレットもテイルブルームもアナザーテイルレッドにまるで歯が立たずにやられているのは悲鳴を聞けば嫌でもわかる。

 

「やっぱり、駄目なの……」

 

 普段なら私自身のツインテールへの想いを和輝に送り、それが和輝の力となるのだけど、ここまで距離が離れている以上やはりその力は全く持って働いていないのがわかる。

 出撃前の和輝がお前の力が無くとも華先生含めて二人いれば大丈夫だとか何とか言っていたのが嘘みたいな感じ。

 やっぱり、私がいなきゃ……

 

「大丈夫よティアちゃん。今は二人を信じて待ちましょう」

 

「悠香さん……」

 

 沈む私の肩を叩き励ましてくれた悠香さん。

 だけど、心なしか悠香さんの表情がいつもとは違って険しく見える。

 悠香さんはバカじゃない。このままでは二人が負けてしまう事がわかっている様子だ。

 

『現場から中継です!! 見てください!! 今、テイルバイオレットとテイルブルームがテイルレッドと戦っています!!』

 

 突如、テレビのレポーターと思しき声が青葉さんのいる机の方から聞こえてきた。

 急いで青葉さんの下へ駆け寄る私と悠香さん。

 そこにはパソコンの画面に現在の戦闘の中継映像がでかでかと映し出されていた。

 

「青ちゃんこれって……」

 

「うん……。やっと、見つけたの……」

 

「でかしたわ!! これで二人の様子がわかるってものよ!!」

 

 映像は綺麗とは言い難いし、安全も考慮してなのか戦場からはかなり離れているけど、それでも二人の戦闘の様子が詳しく知れるのはありがたい。

 私たちは皆、その中継映像に釘付けになる。

 映像の中ではテイルバイオレットとテイルブルームが必死になってアナザーテイルレッドに食らいついているのがわかる。

 だけど、アナザーテイルレッドは強い。

 二人のコンビネーションをものともせずに圧倒している。

 やっぱり、このままじゃ……

 

「……」

 

「ティアちゃん? あなたまさか……」

 

 そう悠香さんが呟いた直後、私は居ても立っても居られなくなり、部室から飛び出そうとする。

 そんな私の腕を悠香さんが掴んだ。

 

「ティアちゃん。 あなた、本気なの?」

 

 真っすぐ私の目を見て静かにそう尋ねてくる悠香さん。

 

「はい。やっぱり私、行きます」

 

 やっぱり、私だけ安全な場所で待っているだなんて出来ない。和輝が痛み苦しんでいるのならその気持ちを分かち合い、共に戦いたい。共にあの紛い物(アナザーテイルレッド)を倒したい。

 その想いから私は首を縦に振った。

 

「そう……なら行きなさい」

 

 掴んだ腕を放す悠香さん。

 その表情は諦めでも落胆でもなく、とても爽やかな物だった。

 

「はい!!」

 

 元気よく返事をした私は部室を飛び出し、現場へと向かう。

 待っててね和輝。今、私が向かうから……

 

 

 

 

「おいおい、もう終わりかぁ? だらしねぇ奴らだぜ」

 

 荒れに荒れた街の中で力尽き倒れた俺たちを見下すアナザーテイルレッド。

 変身こそ維持できているものの、もう体は一ミリも動いてくれやしない。悔しいが完敗だ。俺たちはアナザーテイルレッドに勝つことが出来なかった。

 

「さぁて、どうしたものかねぇ。本当なら総愛の奴からツインテール属性を奪って終わり。なのに肝心の総愛がいないんじゃ話にならねぇじゃねぇかよ」

 

 アナザーテイルレッドの野郎がブツブツ一人で呟いている。

 どうやら総愛(ティアナ)がいなくて想定していた計画に狂いが生じている様子だ。

 それを察した俺は心の中で小さくガッツポーズ。

 ざまぁみやがれこの偽物野郎。俺がどうなろうともティアナは絶対にてめぇなんかには触れさせねぇ。

 

「ま、いいか。いないのなら探すまでだ。んじゃあその前にと……」

 

 何かを決めた様子のアナザーテイルレッドが倒れ伏した俺たちの下に近づいてくる。

 そして次の瞬間、アナザーテイルレッドは俺の(ツインテール)を掴み無理矢理立たせるかのように持ち上げてこう告げる。

 

「てめぇらのツインテール属性、いただかせて貰うぜ?」

 

「ッ……!?」

 

 ツインテールを愛する者にとっての事実上の死刑宣告に近いその言葉。

 敵わなかった時点でこうなるんじゃないかとは薄々感じてはいたし覚悟もしていたのだが、いざ言われてしまうとなると「嫌だ」とか「怖い」だとかの感情が溢れ出てくる。

 今まで何度もエレメリアン相手にピンチに陥り、奪われそうになったことは多かったのだが、今回ばかりは今までのそれらと比べてどんな奇跡が起きても助かりそうにないのがそれをより助長させているんだ。

 

「恨むなら総愛の奴の恨みなぁ? 本当なら坊主や嬢ちゃんは見逃してもやっても良かったんだぜぇ?」

 

 ケラケラと笑いながらアナザーテイルレッドはそう告げる。

 だけど、俺はティアナを恨まない。

 寧ろ恨むのは俺の不甲斐なさについてだ。

 俺がもっと強ければこんな奴に負ける事はなかったんだからな。

 

「けッ、反応なしかい。じゃあさっさと奪おうとするかねぇ!!」

 

 そう言うや否や、アナザーテイルレッドは俺を地面に投げ捨て、左手をかざす。すると本来ならば属性力変換機構(エレメリーション)が装着されている筈の部分にあるそれらとはまるで違う怪しげな機械が動き出した。

 あれが他者から属性力を奪う為の機械なのか……

 エレメリアンの使う銀の輪っかとも違うテクノロジーを見つめる俺の体にその機械から放たれる光が降り注ぐ。

 このまま属性力を奪われツインテールを見ても何も感じない無気力な人間になってしまう。

 そう思ったその時だった。

 

「待ちなさい!!! 私はここよ!!!」

 

 荒れ果てた戦場に木霊する聞きなれた少女の声。

 それを聞いたアナザーテイルレッドは機械を止めて声がした方向を振り向く。

 俺もそれにつられるように首を動かした。

 そこにいたのは――

 

「ティ、ティアナ!!!」

 

 思わず俺は叫んでしまった。

 何故ならそこには本来いる筈のないティアナが立っていたからだ。

 ティアナが狙われているのがわかっているので焦る俺と逆にターゲットを見つけた喜びから嬉しそうに舌なめずりをするアナザーテイルレッド。

 次の瞬間、アナザーテイルレッドは動いた。

 

「ようやく見つけた!! 頂くぜぇ!! お前のツインテールぅ!!!」

 

 凄まじい速度で加速し、ティアナを襲おうとするアナザーテイルレッド。

 ティアナは逃げる素振りを一切見せずにアナザーテイルレッドを睨んでいる。

 このままではティアナが危ない。何とかして奴を止めなければ。

 そう思った直後、俺の体は自然に動き出した。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「ッ!?」

 

 先程まで受けていたダメージが嘘のように思える程のスピードを見せた俺は、ティアナに接近しようとしていたアナザーテイルレッドを力一杯蹴り飛ばす。

 流石のアナザーテイルレッドもこの予想外過ぎる妨害には対処できなかったようであり、倒壊したビルへと叩き込まれた。

 俺はそれを確認した後、ティアナの下へ駆け寄った。

 

「ありがとう和輝」

 

 駆けよった俺に対し、笑顔で感謝を述べるティアナ。

 対する俺はそんなティアナに物申す。

 

「馬鹿ッ!! どうして来たんだよ!! お前、自分が狙われているってわかってんだろ!? なのにどうしてだよ!!」

 

 もし今さっき俺の体が動かなかったら……

 もしティアナのツインテール属性が奪われティアナの表情から笑顔が消えてしまったら……

 そう思うと怖くて怖くて仕方ない。

 故に俺は声を荒げた。

 するとティアナはそんな俺に近づき優しく抱きしめた。

 

「お、おいティアナ……」

 

「馬鹿……。馬鹿なのは和輝の方よ。私がいなくて力が出ない癖に無茶ばっかりして……」

 

「それは……」

 

 そう言われると何も言い返せない。

 確かに俺はティアナとティアナのツインテール属性を失うのが怖くて無茶ばっかりしていた。

 その結果、大事な約束の一つである無事に帰って来るという物が達成できなくなるところだった。

 

「ねぇ和輝? 私たちは二人で一つのツインテールでしょ? だから私にも戦わせてよ。私だけ仲間外れだなんてそんなの二人で一つとは言えないわ」

 

「ティアナ……」

 

 ティアナの言葉を聞いてハッとする。

 そうだ……俺たちは二人で一つ。どちらかが欠けてしまえばどんな敵にも勝てやしない。

 俺たちは二人合わせてこそのテイルバイオレットなんだ。

 

「ごめんティアナ。俺間違ってた。俺、お前を失いたくないばっかりに……」

 

「いいのよ。それよりも先ずはあの偽物を倒しましょう」

 

「そうだな!! いくぜティアナ!! ブレイブチェインだ!!」

 

「ええ!!」

 

 ティアナのテイルブレスから溢れ出る赤い光が勇気の赤い炎となって俺を包み込み、追加装甲テイルアーマーを形成。

 瞬く間に俺はブレイブチェインへと強化変身を遂げた。

 

「くっそ……やってくれるぜ……。ッ!? その姿は!?」

 

 ビルの中から飛び出してきたアナザーテイルレッドを待ち構えるはテイルバイオレットブレイブチェイン。

 前回の戦いでは変身妨害されたが故に出来なかったが、今回は無事変身出来たが故に相まみえる事が出来たぜ。

 

「いくぜ偽物!! これがてめぇを倒す勇気の炎だ!!」

 

「けッ、ブレイブチェインになれたからといって調子に乗ってんじゃねぇ!!」

 

 互いの全力をぶつけ合うかの如く、俺たちは再度、激突するのであった。




元々想定していた話が長くなりすぎたが故に今回は前編という形です。
次回こそはあのキャラを出せるように頑張ります。
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