俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第102話 To Raging

 トゥアール。

 その名には聞き覚えがあった。

 確かそれは俺とティアナが異世界に渡り、総二さんらツインテイルズと共にメフィストギルディたちと戦った時の事。

 あの時、情報交換の際に総二さんが話してくれたツインテイルズのブレーンにしてテイルギアの生みの親、さらに言えばツインテイルズ最強の一角テイルホワイトの変身者。

 その人の名前、それが確かトゥアールだったはず。

 それがまさか、俺たちの前に変身し助けに現れるだなんて……

 

「久しぶりですねレイジ」

 

「けッ、まさかこんな所でお前と出会うとはなぁ」

 

 忌々しく睨み合う両者。

 目と目の間には確かに火花が散っている。

 どことなくアナザーテイルレッドの目から余裕の二文字が消えているのが俺にはわかる。

 

「今更何のようだぁ? ええ!!」

 

「とぼけないでください!! この裏切者!!」

 

 距離をとるアナザーテイルレッドと追うテイルホワイト。

 テイルホワイトは荒々しくフォースリヴォンを触り、右腕に専用武器を生成し始めた。

 

「シャイニングアームド!!」

 

 そう叫んで現れたのは握り手がついた白銀の手甲。

 テイルホワイトは怒りの感情をぶつけるかの如く、その手甲を装備した鉄拳をアナザーテイルレッドに向かって叩き込んだ。

 

「ぐっ……!!」

 

 咄嗟にブレイザーブレイドを盾にするも俺たちとやっていた時とはまるで違う苦悶の表情を見せるアナザーテイルレッド。

 それほどまでに俺たちとは文字通り次元の違う威力なのだとわかる。

 

「たああああああっ!!」

 

 攻め手を緩める気などさらさらないテイルホワイトの鉄拳の嵐がアナザーテイルレッドを襲う。

 例えるならその様はまるで蛮族の攻撃。

 元々聞かされていた情報からなる聡明なイメージとはかけ離れた余りにも原始的且つ乱暴的な攻撃の仕方には俺は驚きを隠せない。

 

「あれがテイルホワイト……」

 

「そうよ。あれがママの全力。テイルホワイトの戦い方よ」

 

 そう語るティアナの目は先程とは打って変わって輝いていた。

 テイルホワイトのツインテールを見てその美しさやカッコよさに純粋に興奮する子供のような輝きだ。

 

「クソが……調子乗りやがって……!! だけどコイツならどうよ!!」

 

 反撃するべくブレイザーブレイドをアナザーテイルレッドが振りかぶる。

 いくら拳の連撃が強かろうとも剣が相手では分が悪い。

 テイルブルーム敗北の原因の一つを知っている俺はせめてもの助けとばかりにウインドセイバーを投げ渡そうとする。

 だが、それは全く持って要らぬ心配であったのだと直ぐにわからされる。

 

「ソードアームド!!」

 

 ツインテールを翻し軽やかに反転するテイルホワイト。

 その瞬間、白銀のツインテールの輪郭が発光。ツインテールの一部を取り換えるかのように赤いメッシュが差し込まれる。

 それだけじゃない。

 その変化と同時にシャイニングアームドの先端が左右にスライドし、赤い光刃が出現した。

 

「くッ!?」

 

「やああああああっ!!」

 

 ブレイザーブレイドの一太刀をシャイニングアームドから出現した光刃で受け止めたテイルホワイトはそのまま流れるような動きでアナザーテイルレッドに斬りかかった。

 その鋭い一閃はあのアナザーテイルレッドも対応しきる事は出来ず、その赤い装甲に傷をつける程だ。

 

「すげぇ……剣まで使えるのかよ……」

 

「それだけじゃないわ。シャイニングアームドには他にもスピアアームド、ガンアームド、サイズアームドといったモードもあるんだから」

 

 成程。つまりあのシャイニングアームドの手甲(アームド)ってのは武装(アームド)とかけているって訳か。

 あらゆる状況に対応できるマルチウェポンとそれを巧みに使い分けるテイルホワイトの実力の高さ。ツインテイルズ最強の一角は伊達じゃないという事がはっきりわかるぜ。

 にしてもティアナの奴、やけに詳しいなおい……

 

「お前もしかして記憶が……」

 

 ティアナの奴、まさかとは思うがテイルホワイトを見た事で失っていた記憶が蘇ったんじゃ……

 少なくともテイルホワイトに関する記憶は戻っていると見て間違いない。

 俺はその事を聞こうと思い声をかけようとするが、戦闘の余波で起きる爆発音がそれを容赦なくかき消していく。

 

「はぁ……はぁ……この野郎……!! 一度はツインテールを手放した分際で……!!」

 

「確かにそうですね。でも、あなたのようなツインテールを大切にしない人に言われる筋合いはありません」

 

「言ってくれるねぇ……!!」

 

 実力的にも精神的にも、この勝負どちらが優勢なのか一目瞭然。

 あのアナザーテイルレッドもテイルホワイト相手では打つ手がない。

 テイルホワイトの攻撃はアナザーテイルレッドを確実に追い込んでいる。

 よし、これなら勝てる。

 そう思ったのも束の間、アナザーテイルレッドの口元が邪悪に歪む。

 

「だが、確かにその通りだ。でも、だからこそこの場をきり抜けられるってもんだぜぇ?」

 

「一体、何を……?」

 

「へッ、こうすんだよ!!」

 

 そして次の瞬間、アナザーテイルレッドは俺たちがいる方向を向くや否やブレイザーブレイドを真っすぐこちらに投擲しやがった。

 狙いは気を取られている俺たちだ。

 

「しまった……!?」

 

 アナザーテイルレッドの余りにも唐突且つ卑劣な行動。

 いくら優勢とはいえ、一瞬たりとも隙を見せられない程の強敵であるという事も合わせてか、テイルホワイトは反応するのが一瞬だけとはいえ遅れてしまっていた。

 咄嗟に迎撃に回ろうとするテイルホワイト。

 このままでは間に合わない。

 だがしかし、コンマ数秒の差とは言え俺の反応が何とか間に合った。

 

「させるかよぉッ!!」

 

 ティアナの前に立ち、飛んでくるブレイザーブレイドを迎撃すべくウインドセイバーを構える。

 そして、俺はガキンと音を鳴らしながらブレイザーブレイドを叩き落した。

 

「危ねぇ……なんとか間に合ったぜ」

 

 ティアナを守り切る事が出来てホッと胸を撫で下ろす俺とテイルホワイト。

 ティアナを傷つけさせてテイルホワイトの動揺を誘うって算段は何とかぶっ壊してやる事に成功した。

 あとはアナザーテイルレッドをブッ倒すだけだ。

 そう思いアナザーテイルレッドがいた方向をそれぞれ振り向くが、そこにはどこにも奴の姿が見えない。

 

「和輝!! ママ!! 上!!」

 

 ティアナが空中を指さしたのでそれを追う。

 するとそこには上空を浮遊するアナザーテイルレッドの姿があった。

 

「じゃあなてめぇら。今日の狩り(ゲーム)はここまでにしておいてやるぜ。あばよぉ!!」

 

 そう言い残すや否や目に見えない程のスピードで空の彼方へとアナザーテイルレッドは飛んで行ってしまった。

 流石のテイルホワイトもここまで離れてしまっている相手を追撃する事など出来ない。

 俺たちはアナザーテイルレッドのその姿を見届けるしかできなかった。

 

「逃がしましたか……」

 

 アナザーテイルレッドが飛んでいった方向を忌々しく見つめるテイルホワイト。

 その姿から並々ならぬ因縁があるのだろうと俺は察し、折角助けてもらったと言うのに声をかけることが出来ない。

 だがそんな俺とは違い、ティアナの奴は安全が確保されたと認識すると同時にテイルホワイトに抱きついた。

 

「トゥアールママ!!」

 

「そ、総愛!?」

 

 突然の抱きつきに少し驚きながらもテイルホワイトは優しくティアナの事を抱きしめた。

 その様はまさに親と子の再会。

 あれ? でも、確かティアナのお袋って愛香さんだよな……

 何故、トゥアールさんの事をママって呼んでんだ?

 

「二人ともー!! 大丈夫ー!?」

 

「あ、華先生」

 

 聞きなれた声が遠くから聞こえて来たと思えばボロボロのテイルブルームが手を振りながらこちらに駆け寄って来た。

 そういや、今の今まで完全に忘れてたな。

 

「大丈夫だったかしら……って!? 誰ですかこの人!!」

 

 事の事情を知らぬテイルブルームこと華先生はテイルホワイトを見るなり、驚きの声を上げる。

 その反応を受けたからかテイルホワイトはハッと我に帰り俺たちの方へと首を向けた。

 

「すみません。すっかり挨拶を忘れていました。私は観束トゥアール。この子、観束総愛のもう一人の母です」

 

 成程成程、ティアナとはそういう関係だったのか……

 って……え?

 

「「もう一人の母ぁ!?」」

 

 

 

 

 トゥアールさんを一行に加えた俺たちは、色々話すにせよ場所がそのままなのはアレなので場所を変えるべく学校内へと帰って来た。

 当初、学校側からすれば部外者も部外者なトゥアールさんをどう説明して中に入れようかと迷った物だったのだが、トゥアールさんがシャープペン状の転送装置を取り出した事もあり、すんなりバレずに中に入ることが出来た。

 だけど、転送先が旧校舎の女子トイレの中ってのはどうなんだおい。

 

「ただいま戻りました……」

 

「お疲れ~、いや~中継映像が途切れた時はどうなったのかしらと思ったけど、大丈夫だったみたいね……って誰ぇ!?」

 

 新聞部部室に帰って来た俺たちを出迎えてくれた悠香さんは先程の華先生同様にトゥアールさんを見て驚きの声を上げた。

 まぁ当たり前か、悠香さんたちもトゥアールさんの事を知っている筈が無いからな。

 

「悠香……そんな事よりも手当……」

 

「そ、そうだったわ。ちょっと待っててね。今、救急箱持ってくるから!!」

 

 そう言って部室奥の棚を漁り始める悠香さん。

 俺たちの事を思っているようで悪いんだが、俺も華先生も見た目こそボロボロだがトゥアールさんに応急処置をしてもらった事もあってか体は全然大丈夫だ。

 数分後、戻って来た悠香さんの持つ救急箱で念には念よと一応の応急手当を受けながら俺たちはテーブルを囲い込むようにソファやら椅子やらに座り、話し合う準備を整えた。

 

「よし、じゃあ早速ですけど、あなたは一体誰なんですか? ティアちゃんとは一体どういう関係で?」

 

 司会進行役の悠香さんがまず最初にとトゥアールさんに向かってそう尋ねた。

 

「そうですね。ではまず自己紹介からさせてもらいます。私は観束トゥアール。あなた方が言うティアナこと観束総愛のもう一人の母です」

 

 ゆっくり丁寧にそう述べたトゥアールさん。

 とてもじゃないが先程まであんなに荒々しい戦い方をしていた人には見えない落ち着きっぷり。

 まさに大人のお姉さんとでも言うべき姿だ。

 見た目といいその佇まいといい、さぞかしよくモテるのだろうと確信する。

 

「え、え? もう一人の母ってどういう事ですか?」

 

 俺たちと同じ反応を見せる悠香さんを見てデジャヴを感じる。

 尤も、これに関しては俺も華先生もまだ説明されていないので、一体これがどういう事なのか全くわかっていないから早く説明して欲しいぜ。

 

「悠香、つまりアレだよ……。この人はティアナちゃんのお母さんと結ばれたって奴だよ……」

 

「あ~成程、つまり同性婚って奴ね。流石未来人ね」

 

「ブ~~~~~~~!!」

 

 吐血でもするのかとツッコミたくなる程に見事なリアクションをかますトゥアールさん。

 何というかさっきまで抱いていたイメージがまた壊れた気がする。

 

「わ、私と愛香さんがけけけけけ結婚!? ありえませんありえません!! そんな事地球が逆回転しようが起こりません!!」

 

「そう……なんだ、ショック……」

 

「ショック!? 私と愛香さんが結ばれない事がショック!? それはどういう意味ですか!? もしかしてあなたそっち系の人なんですか!?」

 

 トゥアールさん、あんた愛香さんと仲悪かったのか? 愛香さんとか総二さんとかからの話を聞いていた限りじゃとてもそうには思えなかったんだが……

 余りにも錯乱するトゥアールさんの姿を見て余程、愛香さんとはそういう関係に見られたくないのだとわかる。もしかしたら純粋な女同士の友情を恋愛感情だと思われたくないのかもしれないな。

 まぁ、それにしても色々と狼狽えすぎだぜ。

 

「私が、あああ愛香さんと!? いやいやいやいやいやありえません!! 絶対にありえません!!」

 

「あーっもう、わかったから!! 少しは落ち着きなさい!!」

 

 尚も取り乱し続けるトゥアールさんを見てティアナの拳が動いた。

 

「ぎゃふん!!」

 

 崩れ落ち沈黙するトゥアールさん。

 俺たちは一瞬何が起きたのか理解できなかったのだが、ティアナとトゥアールさんの体勢からしてティアナの奴がトゥアールさんにボディブローをかましたのだとわかる。

 

「ティアちゃん、あなた豪快ね~」

 

「まるでコント……」

 

「だだだだ大丈夫ですか!?」

 

 面白そうに笑う悠香さん&青葉さんとトゥアールさんの安否を心配する華先生のまるで違うそれぞれの反応を見て俺はどうツッコめばいいかわからない。

 なんだろうこの空間……

 すげーどっかで見た事あるぜ。

 

「兎に角、私と愛香さんは決してそういう関係ではありませんので……決して誤解のないように!!」

 

 いつの間にか復活していたトゥアールさんがみんなに対しそう念を押す。

 何つーかここまで来ると何かトラウマ的な体験しているのかもしれねぇな。

 

「はいはい、わーったよ」

 

「なんかさっきよりも扱いが雑になってません!?」

 

 そう言われると確かにそうかもしれねぇ。

 俺としては別に意識した訳じゃないんだが自然とそう口に出していたぜ。

 まぁでも、ティアナからの扱いとかを見るに別に問題ないようにも感じる。

 

「おほん、では話を戻します。実はと言うと私と総愛の血は繋がっていません。わかりやすく言ってしまえば私は育ての親とでも言うべきでしょうか。尤も、別に愛香さんが死んでいるとか育てるのを放棄したとかじゃなくて、愛香さんが忙しい時に代わりに面倒を見ていたというのが正しいですけどね」

 

「成程、だからもう一人の母って事なのね」

 

「でも苗字が一緒なのはどういう事なんですか?」

 

 華先生がトゥアールさんに向かってそう質問を飛ばす。

 俺もそれには気になっていたのでありがたい。

 

「それはですね。私が総愛のお父様である総二様の第二夫人だから……ごはぁッ!?」

 

「嘘をつかないの!!」

 

 またもティアナの鉄拳がトゥアールさんの腹に叩き込まれた。

 何つーかマジでコントだなこの感じ。

 

「面倒だから私が言うけど、何でもママは法律上は私たちの親戚という事になっているの」

 

「法律上は? ティアちゃん、それってつまり本当は違うって事かしら?」

 

「そこから先は私が話します。実は私、そもそも総二様や総愛の住んでいた世界とは別の異世界からやって来たんです」

 

 へ~トゥアールさんは異世界人だったのか。

 まぁ、どおりで普通の人とは違う感じがするわけだぜ。

 

「異世界人ね~これは取材のし甲斐がありそうじゃない」

 

 異世界というワードを聞いたせいか悠香さんの記者魂に火が付いたようだ。

 悠香さんの奴、いつの間にかペンとメモをスタンバイしていやがる。

 

「そもそも異世界というのはですね……」

 

 そこから始まるトゥアールさんの異世界とは何なのかという講義。

 何でも世界というものは平行して無数に存在しているらしく、扉一枚で仕切られているような近さで隣接しているらしい。

 本来は平行世界間の存在なんて知り得ないし、移動する事なんて出来やしないがトゥアールさんクラスの超天才やエレメリアンのような人知を超えた連中なら可能との事だ。

 だがそんなトゥアールさんたちでも突破することが困難な壁。

 それが平行次元の壁。

 平行次元というのは文字通り平行世界とは次元の違う概念。

 平行世界間同士では同じ存在は存在しないが平行次元ならばそれは存在する。

 言ってしまえば平行次元とはもしも、つまりifの世界との事。

 もしも俺が男ではなく女だったらなんて物は勿論、もしも俺たちの戦いが誰かの考えた物語として何処かで発表されているかもしれないと言ったある種のメタ的な物まで存在しているかもしれないとの事。

 

「私もここに来るまではそんな事ありえないとそう思っていました。ですが、こちらの次元につき元々いた私たちがいた世界の座標に行き、こちら側の総二様や私、及びレイジの存在しない世界を見た事でようやく理解することが出来ました」

 

 つまり、俺たちのいる世界及び平行世界からなる次元はレイジによる時間干渉がなかった場合であり、ティアナやここにいるトゥアールさんがいた次元はレイジによる干渉を受けた場合って訳か。

 レイジから説明を受けていたとは言え、いまいちわかっていなかった俺もトゥアールさんの説明を受けてようやく理解できた気がするぜ。

 

「成程ね~つまり青ちゃんの推理は大体あってたって事ね」

 

「みたいだね……」

 

「私としてはこちらの次元が所謂本来のあるべき正史であり、私たちのいた方が正史ではないというのはちょっともどかしいですけどね」

 

 トゥアールさんの感想はごもっともだ。

 もし俺も、今生きているのが本来あるべき歴史ではないなら困惑するのは必至だぜ。

 

「トゥアールさん、でもそれはどうかしら? もしかしたらこの次元も正史じゃないかもしれませんよ? 現に和くんとティアちゃんという本来ならば会うはずのない存在同士が出会っているんですから」

 

 え? 何……つまり俺たちの出会いは本来ならば無かった歴史って事?

 最早何をもって正史とするのかわからなくなってしまう。

 一先ずこの話題は頭がこんがらがるのでやめて欲しい。

 

「まぁ兎に角、トゥアールさんとティアちゃんが一体何者かはわかりました。では次にアナザーテイルレッドことレイジって何者なんです?」

 

 悠香さんの質問を聞いて俺もティアナもそう言えばレイジが何者かって言ってなかったなとハッとする。

 そういやさっきまでさも当然かのようにレイジって言ってたな俺ら。

 

「レイジは言わば私たちのいた次元とこちらの次元を区別するのに最も重要な人物、所謂特異点という奴です。先程、総愛に聞きましたがどうやらレイジは元々はこちらの次元の未来にいたらしく、時間移動をした結果、私たちがいた世界に派生したようです」

 

「つまり、レイジが来た事でティアちゃんが生まれる次元が出来たって事ね」

 

「あまり認めたくないですがそうなりますね」

 

 苦虫を嚙み潰したような表情を見せるトゥアールさんと暗い表情を見せるティアナを見るにレイジのおかげでもと居た次元が構成されたという事実が余程嫌なのだろう。

 まぁでも、無理はないか。

 俺も嫌いな奴がいたお陰で今いる世界が構成されているなんて言われたらいやだしな。

 

「そういやよ、素朴な疑問なんだが……トゥアールさん? あんたらのいた次元では未来から総二さんの娘が助けを求めにくるって出来事はあったのかよ?」

 

「いえ、そんな出来事はありませんでしたよ」

 

 キッパリと否定するトゥアールさん。

 となると俺たちが出会ったこちら側の総二さんが言っていた、双愛と共にキマイラギルディとかいう野郎を倒したって出来事はなかった訳か。

 これ以外も色々聞いてみたら相違点が続々と出てくるんだろうな。

 

「さて、私の話せる事は以上です。皆さん今までありがとうございました。では行きますよ総愛」

 

 話が一区切りしたと見るや否やトゥアールさんはティアナの腕を掴みながら立ち上がりそう言った。

 あれ? この流れってもしかして……

 

「トゥアールママ? 行くって一体何処に行くの?」

 

「何処って……そんなの決まっています。帰るんですよ。私たちが元居た世界及び次元に」

 

 え……それって……やっぱり……

 

「ティアナとお別れって事か……!?」

 

 

 

 

 夕焼けに染まる街。

 ここはつい数時間前、アナザーテイルレッドの襲撃を受けた影響で火の海と化す戦場となっていた場所であり、倒壊したビルや黒く燃え尽きた建物群がそれを物語る。

 現在はレスキュー隊や消防隊の活躍もあってか続々と被害にあった者達が救出されており、あんなにも燃え広がっていた火の手も無事鎮火され一先ずの平穏を感じる事が出来る。

 だがそんな街に再び暗い影が……

 

「けッ、折角綺麗に彩ってやったってのによぉ……」

 

 倒壊を免れた数少ないビルの中で最も高いビルの屋上。

 そこに佇む赤い影。

 彼女、いや彼の名はアナザーテイルレッド、レイジ・レオン=ザード。

 先程の騒動を起こした元凶である。

 

「ま、それにしても、まさかトゥアールの奴……次元の壁が突破してくるとはな」

 

 いくらトゥアールの超科学で平行世界間の壁は突破出来ても平行次元間の壁は突破できない。

 そう踏んで今までこちらの次元にて世界を渡り、総愛を探し続けてようやく見つけて手に入れるその寸前まで来たと言うのにこの始末。

 トゥアールの参戦さえなければ今頃目的は達し、オレは究極のツインテールを手に入れる事が出来ていた筈だと忌々しく虚空を見つめるアナザーテイルレッドはそう呟いた。

 

「幸いなのはトゥアール一人だけって所か……」

 

 唯一の嬉しい誤算は次元を超えて助けにやってきたのがトゥアール一人だと言う事だろう。

 もしこれが、総二や愛香、慧理那といった他のツインテイルズの面々も参戦されていたとしたら、良くて逃走成功、悪くて敗北からの未来永劫何も出来なくされるのは必至と言った所だろう。

 

「ま、あのトゥアールの事だ。恐らくつまらない責任感でも抱いたんだろうな……」

 

 トゥアールの性格を分析し、そう結論づけるアナザーテイルレッド。

 だが問題が解決したわけではない。

 アナザーテイルレッドからすればトゥアールの参戦はかなり厄介だと言える。

 その常人を凌駕する天才的な頭脳に加えて、フィジカル面でも全くもって引けとらないそのスペックは正にツインテイルズ最強の一角。

 今頃、総愛の仲間たちと色々策を練ったりしているに違いない。

 

「だがそれならそれでいいさ。こちらにも策があるってもんよ」

 

 アナザーテイルレッドは本家テイルレッドが決してしないような邪悪な笑みを浮かべる。

 一見すると粗暴な振る舞いが目立つアナザーテイルレッドではあるが、こう見えても彼は若い頃から類まれなる天才と称される頭脳の持ち主である。

 策の一つや二つ、用意していない筈が無いのだ。

 

「ま、それはそれとして……」

 

 鋭い目つきのまま振り向くアナザーテイルレッド。

 その視線の先には黒い異形が佇んでいた。

 

「何者だお前?」

 

「それはオレ様の台詞だと言っておこう。テイルレッドの偽物」

 

 黒い異形の正体、それはこの世界を侵略しているアルティデビルの現リーダー、ベリアルギルディだ。

 ベリアルギルディの出すオーラはエレメリアンなんぞ眼中にないとすら思っているアナザーテイルレッドですら思わず身構える程だ。

 

「偽物とは言ってくれるぜぇ。ま、半分正解みたいなもんだけどなぁ」

 

「フン、このオレ、ベリアルギルディを前にしてそんな態度をとれるか貴様……」

 

 睨み合いながら様子を伺う両者。

 ピリピリとした空気だけが流れていく。

 

「で? 要件はなんだい? ベリアルギルディさんよぉ」

 

「なぁに、我が組織の中で貴様の事が話題になってな。貴様が何者なのかを見に来たのだが……まさかこのレベルの贋作だったとはな」

 

「おーおー、随分と好き勝手言ってくれるじゃねぇか」

 

 挑発を受けてもなお余裕の笑みを崩さないアナザーテイルレッドを見て青筋を浮かべるベリアルギルディ。

 精神的な面ではアナザーテイルレッドの方が優勢と言える。

 

「何なら試してやってもいいんだぜ?」

 

 お返しとばかりに挑発するアナザーテイルレッドがブレイザーブレイドを突き付ける。

 対するベリアルギルディはそれに応えるかの如く強く拳を握りしめる。

 

「いいだろう、貴様のその鼻っ柱叩き折ってやるよ。覚悟は良いんだろうな?」

 

「いいねぇ、そうこなくっちゃ……!!」

 

 瞬間、消える二つの影。

 そして次の瞬間、凄まじい轟音が鳴り響く。

 アナザーテイルレッドとベリアルギルディの両者の攻撃がぶつかり合ったのだ。

 

「へぇ? 意外とやるじゃねぇか!! ええ!!」

 

「くッ、贋作風情が……調子に乗る……!!」

 

 先程の戦闘によるダメージをものともしないアナザーテイルレッドと苦し気な表情を見せるベリアルギルディ。

 この勝負、このままでは勝ち目がない。

 ベリアルギルディはそう判断するや否やアナザーテイルレッドから距離をとる。

 

「おいおい、逃げるのかぁ? まだまだ戦い(ゲーム)を楽しもうぜぇ?」

 

「なぁに、今日は飽くまで貴様がどんな奴かを見に来ただけだ。今後、オレ様の邪魔をするのなら容赦はしない」

 

「おーそれは怖いねぇ。だが、それはこっちの台詞でもあるんだぜ?」

 

「チっ、今に見ていろ……!!」

 

 舌打ちしつつそう捨て台詞を残したベリアルギルディは姿を消した。

 残ったアナザーテイルレッドは満足気な笑みを浮かべながら再び街の様子を見下ろす。

 

「さてと、それじゃ今日は休むとでもするかぁ。今日はもう疲れたぜ」

 

 何事も早くするのに越したことはない。

 だが、焦るのもまた厳禁。

 慎重なアナザーテイルレッドはそう判断した。

 

「待ってろよ総愛……!! お前に味わわせてやるぜぇ、最高のデスゲームをな……!!」

 

 闇に染まりつつある街の中、アナザーテイルレッドの声が響き渡った。

 一方、帰還したベリアルギルディは……

 

「テイルホワイトだと!?」

 

 丁度タイミングが悪く、テイルホワイトの登場を知り損ねていたベリアルギルディは基地の自室にて録画されていた戦いの様子の映像に目を見開く。

 ベリアルギルディにとって、テイルホワイトこそ最も憎むべき仇であった。




レイジの発言が時々厨二臭くなっているのはある人物の影響と言う裏設定があります。



キャラクター紹介22

 トゥアール
 性別:女
 年齢:自称37歳(本当は○○)
 誕生日:2月2日
 身長:162cm
 体重:52kg
 B95(自己申告)・W57・H87

 レイジによる介入を受けた場合の次元からやってきたトゥアール。
 幼女好きの変態ではあるが、その頭脳と戦闘力は本物。
 ティアナこと総愛のもう一人の母であり、愛香の最大の理解者。
 総二の事は今でも大好きな人物の一人。
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