俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
「アナザーテイルレッド……!!」
爆発と共に爆炎が上がり、何も知らない生徒たちが悲鳴を上げる。
そんな様子を見て高笑いを上げていやがったのは宿敵、アナザーテイルレッド。
俺とティアナとの最後の別れという大事なタイミングだっていうのに野郎は空気も読まずに襲撃してきやがった。
「クッソ、こんな大事な時に……!!」
「こんな大事な時……だからこそ、やってきたんじゃないの?」
アナザーテイルレッドの野郎はティアナの持つツインテール属性を狙っていやがるが故にティアナが元の世界に帰る前に事を起こすのは至極当然の事。
そう冷静に分析する悠香さん。
トゥアールさんも同じ考えのようで見通しが甘かったと後悔している素振りを見せている。
「でもだからって、またしても関係ない奴らを巻き込みやがって……!!」
「昨日、トゥアールさんが言ってたでしょ。それが相手の常套手段なんじゃないかって。事実、こうなった以上は和くんたちは見て見ぬふりなんて出来ない訳なんだし」
「くッ……!!」
ずる賢いというか卑怯というかなんて言うか……
昨日の件もそうだが、アナザーテイルレッドの野郎はエレメリアンどもと違って俺たちをおびき寄せる為ならどんな汚い手段だろうが平然とやってのけるクソ野郎だったぜ。
怒りが沸々と湧き上がって来る。
「私のせいなのかな……」
怒る俺とは対照的にティアナの奴は自らの我儘で帰還までの時間を延ばしてしまった事を悔いていた。
「違う!! ティアナのせいなんかじゃねぇ!! 悪いのは全部のアイツだ!!」
「そうよティアちゃん。あなたは何も悪くないわ」
「和輝……悠香さん……」
「涼原君と片霧さんの言う通りよ橘さん、過ぎた事を後悔したって何もいい事なんてない。そうでしょ?」
皆の励ましを受けてティアナの目に光が戻る。
それを見て安堵すると同時に、やっぱりアイツだけはこの手で絶対にブッ倒してやると心に誓う。
だがしかし、奴はテイルドライバーの作成者であり、テイルバイオレットの今までの戦闘データを知り尽くした言わばアンチテイルバイオレットとも言える存在であり、さらに言えばそれを除いた素の実力差も天と地ほど離れていやがるくらいには奴は強い。
俺がどんな戦い方をしようが悔しいが絶対に勝てないと言ってもいい。
冷静になればなるほど、実力差が嫌でも思い出させてくれる。
「ッ……」
「和輝……?」
奴への恐怖故か自然と足がすくんだその俺の様子を見て不安がるティアナ。
俺としては気持ちでは怒りでヒートアップしているつもりなのに体が上手く応えてくれないのがたまらなく悔しい。
「とりあえず私は先に行くわ。他の生徒や先生方も心配だから」
そう言うや否や、華先生は屋上の柵をヒョイと乗り越えて飛び出す。
そして空中にて華先生は緑の光を爆裂させてテイルブルームへと変身を遂げ、目にも止まらぬスピードで爆炎が上がった新校舎の方向へと駆けて行った。
「クッソ……ビビッていても仕方ねぇ……!! 考えるだけ無駄だぜ……!! 行くぞティアナ!!」
「え、ええ……!! 行きましょう和輝!!」
テイルブルームの後を追うべく、俺はティアナを連れて屋上出入口の扉まで駆けだそうとする。
がしかし、そんな俺たちをある人物が呼び止めた。
「待ちなさい総愛!! あなたたちは行ってはいけません!!」
俺たちを引き留めたその人物、それはトゥアールさんだった。
その声を聞いた事でティアナの足がピタリと止まり、それにつられるように俺の足も止まってしまう。
俺とティアナはゆっくりとトゥアールさんがいる方向へ振り向くと、そこには真剣そのものといった雰囲気のトゥアールさんが俺たちを見つめていた。
「ママ……何で止めるの……」
「そうだぜトゥアールさん。どうしてそんな事言うんだよ……!!」
俺たちが向かわなければアナザーテイルレッドの野郎が暴れ続けるだなんて誰でもわかるはずであり、ましてや俺たちよりも頭がいいトゥアールさんがそれをわかっていない筈が無い。
だからこそ俺とティアナは問いかける。
そしてそんな俺たちにトゥアールさんは静かに告げる。
「今ここであなたたちが向かう事、それ即ちレイジの思う壺だからです」
「思う壺って……」
「いいですか? 昨日、お話しした通り、レイジという男はこれといった策や作戦も何も練らずにただむやみやたらに暴れまわるような奴ではありません。あの男が慎重かつとても狡猾な性格をしている以上、あなたたちが戦いに出る事は絶対に避けるべきなんです」
「「ッ……!!」」
トゥアールさんの懸念点、それはレイジが何かしらの作戦があった上で行動を起こしており、俺たちを罠に嵌めようとしているのではないかという事だ。
俺もティアナも昨日の知った数々の真実の事もあってか、アナザーテイルレッドの野郎が何かしらの策を用意した上で暴れているのは何となくだが理解できる。
トゥアールさんは俺やティアナに万が一の事がないようにしているのか……
「あなたたちの気持ちはわかります。短い時間とは言え、共に過ごした思い出の学校や生徒たちを傷つけられ悔しくて怒りを抑えられない気持ちは……。でも、ここは我慢してください。幸い、スタートゥアールmark2の近くにいれば強力な認識攪乱機能のおかげで見つかる事は殆どありえないでしょう」
「でも、それじゃ……!! 他のみんなや先生が!!」
「大丈夫ですよ総愛。何も私はこのまま見捨てるつもりは毛頭ありません。昨日同様、レイジは私が撃退して見せます」
そう言い切ったトゥアールさんは右腕に嵌っている白いブレス、テイルブレスレボリューションを可視化させる。
俺はそれを見て最初はとてつもない安心感を覚えるのだが、その安心感は直ぐに不安な物へと変わる。
一瞬とは言え、テイルブレスレボリューションから火花が上がり、スパークが走っているのが見えたからだ。
「トゥアールさん……あんた……勝てるのかよ?」
トゥアールさんは嘗てツインテール属性を手放した影響でツインテールを結ぶことが出来ない筈なのにも関わらず、変身を可能にして見せている。だがそれは言ってしまえば正しく奇跡と言っても差し支えないレベルの事であり、限界ギリギリのヤバい状況であると言う事は否定できない事実なんだ。
いくら昨日は圧倒して見せたとは言え、コンディションで言えば最悪とも言えるそんな状態であのアナザーテイルレッドに勝てるとは思えない。
俺はそんな風に考えてしまった。
「大丈夫ですと言ったら噓になりますね。正直、昨日何とかなったのですら幸運だったと言わざる得ません」
「それじゃあママ……!! ママの身が……」
「大丈夫ですよ総愛。いくら勝算が低いと言っても、撃退する程度なら今の私でも出来る筈です。それに私は、あの最強の蛮族であるあなたのお母さんの暴力をあなたが生まれるずっと前から生身で受け続けた不死身のトゥアールちゃんなんですよ? いくら相手が強かろうとも私の身は大丈夫です。それに……」
「それに……?」
「私にはもう……アイツに奪われるようなツインテール属性はありません」
それを聞いた瞬間、トゥアールさんの顔に曇りが見えた。
もしかして、トゥアールさん。あんた……
「さて、長話が過ぎましたね。兎に角、あなたたち二人はここから離れないでください。いいですね?」
話を強引に切り上げたトゥアールさん。
そんなトゥアールさんは念を押すかのように俺たち二人にそう言うと、テイルブレスレボリューションを構える。
そして深呼吸をした後、決意に満ちた表情のまま叫ぶ。
「テイルオン!!」
その言葉に応えるかの如く、テイルブレスレボリューションが脈動し、次の瞬間、トゥアールさんの体全身をスパークが走る。
それを見た今この場にいる全員がまさかと思い、肝を冷やすが、それを払拭するかのように白い閃光に包まれてトゥアールさんのツインテールがふわりと舞う。
無事、テイルホワイトへの変身が完了したんだ。
「レイジ……!! 今、決着をつけます……!!」
そう呟いたテイルホワイトは華先生同様に屋上の柵を悠々と乗り越えて、アナザーテイルレッドがいるであろう方向へと駆けていく。
俺たちはそれを黙って見守った。
「ねぇ和輝? ママは……テイルホワイトは……勝てると思う?」
テイルホワイトが向かってから数十秒後、ティアナはポツリと俺にそう尋ねて来た。
「そうだな……。正直、限りなく勝算は低い。俺はそう思っている」
本人はああ言ってはいたが、誰がどう見てもかなり無理をして戦いの場へ向かっていったのなんて直ぐにわかる。
それほどにトゥアールさんが変身し戦うという事その物が無茶なんだ。
さらにもう一つ、アナザーテイルレッドの野郎がテイルホワイトへの対策を怠っているとは到底思えないという点もある。トゥアールさんは俺たちが戦いにいく事自体が罠にかかりにいくような物だと言って止めていたが、それはハッキリ言ってブーメランとしか言えない。アナザーテイルレッドの野郎はテイルホワイトが迎撃に現れようが、対抗する術を持っていやがるのは確実だ。
「私たち、やっぱり役に立たないのかな……?」
「かもしれねぇな……」
俺たちがもっと強ければ、トゥアールさんもあんな事を言わなかったのかもしれないと思うと悔しくて仕方ない。
今のままの俺たちじゃ助けに向かったとしても足手まといにしかならないのかもしれないのは事実なのだから。
でも……それでも……
「でもよ、俺は……やっぱり、見て見ぬふりは出来ない。誰かが辛い目にあっているっていうのに、自分だけが安全圏で無事を祈るだけだなんて絶対に嫌だ」
それも言ってしまえばこの件は俺たちのせいでもあるんだ。
余計にこのまま黙って見てる訳にはいかねぇ。
「ティアナ、お前はどうよ」
「私も……和輝と一緒。こんな所で隠れているなんて出来ない」
一瞬の沈黙の後、ティアナはそう答えてくれた。
俺はそれに対してだよなと一言だけ返してそのまま屋上の出入口までティアナを連れて駆け出そうとする。
そんな俺たちの様子を見て、今までずっと黙っていた悠香さんと青葉さんが待ったを掛ける。
「あなたたち!? 行くつもりだっていうの!?」
「行っちゃ駄目ってトゥアールさんが言ってた……」
事が事だからなのか、いつもなら直ぐに送り出しそうな二人も今回ばかりは止めにかかった。
「悪い事は言わないわ。今はトゥアールさんと華先生に任せましょう。何だか嫌な予感がするの」
理由はわからない。だけど何か良くない事が起こりそうな気がする。
悠香さんはそう言って俺たちを止めにかかる。
だけど俺たちはそんな事で止まらない。
「嫌な予感ですか……でも、それは俺たちも同じことだぜ」
「そうですよ悠香さん。このままじゃママや華先生の身に何が起こるかわからない」
そう俺たちが言っても悠香さんたちはまるで態度を変えなかった。
それほどに何か良からぬ事を感じ取っているのだろう。
だがしかし、態度を変えないのは俺たちも同じだぜ。
「それによ悠香さん。俺たちはもう決めたんだよ。な?」
うんと頷くティアナ。
足手まといが何だろうが、俺たちはやれるだけの事をする。
それにもしかしたら今回も今まで通り、何か奇跡的な事が起きてくれるかもしれないしな。
「んじゃそう言う事で。行くぜティアナ」
「うん、行きましょう和輝」
制止を振り切り、駆け出す俺たち。
「ちょっと二人とも……!!」
悠香さんの声は虚しく通り過ぎて行った。
◇
階段を駆け下りた俺たちは戦場となっているであろう新校舎方面へと大急ぎで疾走する。
目的地に近づく度に聞こえてくる激しい爆音と生徒たちの悲鳴。
生徒たちは皆、先生たちの指示の下、一目散に避難を開始している。
つい先ほどまでは文化祭の出し物の準備などで盛り上がっていたのであろうと思うと、その異常ともとれる光景はとても心にくるものがあった。
「クッソ……!!」
途中、何度か避難指示をする先生たちに止められかけるものの、俺たちはそれを振り切って戦場に辿り着く。
そこは校舎と校舎に囲まれた中庭。
所々火の手が上がっているが故に焦げ臭く、無残に破壊された出し物の残骸と思しき物があちこちに散乱してはいるものの、幸いな事に逃げ遅れた生徒たちはおろか突然の襲撃に巻き込まれ帰らぬ人となっている奴すらも一人もいない。
いるのは中庭の中央にて激しい攻防を繰り広げているテイルホワイトのアナザーテイルレッドの二人のみだ。
「なんて迫力だよ……!! あの野郎、まだあんな力を隠してやがったか……!!」
思わず声に出てしまう程の凄まじい迫力。
テイルホワイトとアナザーテイルレッドの激突は昨日の物よりもさらにレベルアップしたハイレベルな物と化している。
大地を抉り、空を駆け、互いの武器と武器がかち合う度に轟音と共に衝撃が巻き起こる。
とてもじゃないが俺たちとは次元が違う。
ありがたいのは二人ともが戦いに集中し過ぎている為に俺たちがここにやって来たことがまだ気づかれていないという所くらいだろう。
「今なら不意打ちで何とかなるかもしれねぇ。行くぜティアナ」
「ん? ちょっと待って和輝。あれを見て!! あれってもしかして……!!」
何かに気づいた様子のティアナが残骸の物陰へと指をさす。
するとそこにはボロボロになり横たわるテイルブルームの姿があった。
「「華先生!!」」
急いでその物陰の中へ隠れ駆け寄る俺たち。
俺たちが呼びかけて尚、華先生ことテイルブルームは気を失っているのか返事がない。
辛うじて変身こそ維持は出来ているのだが、身に纏っている装甲は何か鋭利な物に斬り刻まれたかのようにズタズタとなっており、露出している皮膚も同様に切り傷まみれとなっている。
「華先生がこんなになっちまうなんて……」
「何があったの……」
一体、何が原因でどうしてこうなったのか。
いくらテイルブルームがアナザーテイルレッドよりも劣るとは言え、ここまで一方的にやられるなんてことはまずないはずだ。
となるとやはり何かある。
アナザーテイルレッドが俺たちを倒す為の秘策のような何かが。
「ねぇ和輝、ママの動き、何か変じゃない?」
俺が考え込む中、物陰からひっそりと顔を出して様子を伺っているティアナが何かに気が付いた様子。
俺はそれにつられるように様子を伺い、ティアナの指摘にそうようにテイルホワイトの動きを直視する。
美しき白銀のツインテールを翻し、時に荒々しく、時に冷静にアナザーテイルレッドに攻撃を仕掛け続けるテイルホワイト。
その姿は昨日見たもの同様に思わず目が奪われそうになる物だったが、ティアナの言う通り、確かにどことなく昨日とは違う何か変な感じが漂っている。
余裕がないというか何というか。まるで何かに常に気を配りながら戦っているような気がしてならない。事実、本来なら一気に攻めればいいような場面に至ってもテイルホワイトは攻め切るような素振りを見せていない。
「やっぱり限界だって言うのかよ……」
「ママ……」
やはり本人が言っていたように戦う事自体がもう限界なのか、それともアナザーテイルレッドが何かを仕掛けているのか。
恐らくは後者だとは思うがこのまま見ているだけじゃ何も起きない。状況は悪化するばかりだ。ここは一か八かアナザーテイルレッドの野郎に不意打ちを叩きこむっきゃねぇ。
「行くぞティアナ。華先生は頼んだぜ」
「わかったわ。気を付けてね」
テイルドライバーを召喚するティアナ。
俺は物音一つ立てずに変身を完了させる。
そしてテイルバイオレットとなった俺は物陰から物陰へと移るかのようにようにアナザーテイルレッドに接近をしていく。
チャンスは一発。それにすべてを籠める。
◇
一方こちらは中庭にて相対するテイルホワイトとアナザーテイルレッドの二人の様子。
狂暴な笑みを浮かべ続けるアナザーテイルレッドとは違い、テイルホワイトの表情は曇り気味であり、あまり調子のいい状態ではないのは一目瞭然と言った所だろう。
「トゥアールさんよぉ、随分と苦しそうじゃねぇかぁ? オレはまだまだピンピンしてるぜぇ?」
「くッ……!!」
嘲笑うアナザーテイルレッドと苦しげながらも睨みつけるテイルホワイト。
次の瞬間、テイルホワイトは周囲から飛んでくる無数の殺気を察知する。
テイルホワイトは即座にその場から離脱。目に見えない斬撃の数々が先程までテイルホワイトが立っていた場所を斬り刻む。
(この見えない攻撃。やはりレイジはあの武装を使っているようですね)
アナザーテイルレッドの攻撃とは別に襲い掛かってくる見えない謎の攻撃。
テイルホワイトはそれに阻まれる形で苦戦を強いられているのだ。
科学者でもあるテイルホワイトはその攻撃の正体に気が付きつつあるものの、攻略方法を実践に移すには限界ギリギリの今の自分の状態では難しい物があるのもまた事実であると言う事も気が付いている。
せめて万全な状態でならと悔やまずにはいられない。
「おいおい、その程度でオレが見逃すとでも思ってんのかぁ? ええ!!」
今がチャンスとばかりにアナザーテイルレッドは攻撃を仕掛ける。
獣のように荒々しくそれでいて的確に、ブレイザーブレイドがテイルホワイトを斬り刻まんと振るわれる。
「ッ!! ソードアームド!!」
対するテイルホワイトはシャイニングアームドを変形させてソードアームドを作るとブレイザーブレイドを受け止めんとするがしかし、それを咎めるかの如く、先程の見えない斬撃が四方八方からテイルホワイトを狙って飛翔する。
瞬時にその攻撃を察知したテイルホワイトは即座に迎撃。
四方八方から襲い掛かる謎の斬撃を捌きつつ襲い掛かってくるアナザーテイルレッドの攻撃をも受け止めて続けて見せるという離れ業を敢行する。
だがそれは、今のテイルホワイトのギアで行うには余りにも無茶が過ぎた。
「耐えてください……!! 私のテイルギア……!!」
所々から激しい火花を起こしスパークが走るテイルホワイトの装甲。
限界ギリギリの状態ながらもスペック以上の動きをしているが故にテイルギア及び彼女のツインテールが悲鳴を上げているのだ。
「そらそらそらぁ!! 天下のテイルホワイト様も打つ手なしかぁ?」
「くッ……うううう……!!」
なおも続くアナザーテイルレッドの猛攻に苦戦を強いられ続けるテイルホワイト。
無理をした代償とばかりに体のあちこちが悲鳴を上げはじめる。
このままでは不味いとそう思った次の瞬間、アナザーテイルレッドはトドメささんと大きく振りかぶる。
一見、隙だらけのように見えるその行動だが、周囲から飛んでくる無数の見えない斬撃にもある程度の注意を割かねばならないが為に咎めることが出来ない。
「あばよぉ!! テイルホワイトぉ!!」
「ッ……!!」
「させるかぁぁぁッ!!!」
「何ッ!?」
テイルホワイトがやられると覚悟したその時、突如としてアナザーテイルレッドの背後へと紫の影が急接近。
反応が遅れたアナザーテイルレッドは防御出来る筈もなく、嵐のような凄まじいエネルギーを纏ったその影に全力で蹴り飛ばされ、中庭の大地を大きく抉りながら新校舎の壁に叩きつけられ轟音と共に煙を巻き起こす。
まさしくそれは必殺の一撃だった。
「大丈夫かよトゥアールさん!!」
アナザーテイルレッドを蹴り飛ばした者の正体。
それはテイルバイオレットであった。
絶望的な中で仲間である者が救援に駆け付けるという一見すると熱いシチュエーション。多くの者ならこの後の大逆転に繋がると考え浮かれる場面であろう。
だが、テイルホワイトの顔は全く持って浮かれておらず、寧ろその逆であった。
「あなた……どうして来たんですか!!」
傷つきながらも声を荒げるテイルホワイト。
これには助けに入ったテイルバイオレット及びそれを見守るティアナも困惑せずにはいられない。
「いや、その……」
「だってこのままじゃママが……」
「総愛……!! あなたまで……!!」
物陰から出てきて駆け寄って来るティアナを見てより一層、顔を青ざめるテイルホワイト。
このままでは不味い。
テイルホワイトがそう思ったその直後、煙立ち込める新校舎の瓦礫の山からアナザーテイルレッドが起き上がったのが見えた。
「おーおー、良くもやってくれるもんだぜぇ。オレとした事があの程度の不意打ちを喰らっちまうとはなぁ」
「野郎、俺たちの
直撃させた手ごたえとしては全身の骨と言う骨を殆ど粉々に砕いたという筈だと言うのにアナザーテイルレッドは全く持ってそれを感じさせていない。
戦慄するテイルバイオレット及びティアナ。
テイルホワイトは叫ぶ。
「二人とも早く逃げてください!!」
「逃がすかよぉッ!!」
直後、先程までテイルホワイトを苦しめたあの無数の見えない斬撃が今度は二人を狙い飛翔する。
熟練者ではない為にそれに反応できていない二人がそれを躱すか防御するなど不可能。
咄嗟にそう判断したテイルホワイトは二人の前に立つとその攻撃を受け止めて庇う壁となる。
結果、テイルホワイトに無数の斬撃が襲い掛かった。
「あああああああ……!!」
一瞬の内にズタズタに引き裂かれるテイルホワイトの白き装甲。
その斬撃の威力は装甲だけでなくテイルギアを使用する変身者を守るフォトンアブソーバーすらも容易く切り裂くレベルのものであり、皮膚を切り裂いた事によって流れるテイルホワイトの鮮血が辺り一面に飛び散った。
「トゥアールさん!!」
「ママ!!」
傷だらけになり倒れ伏すテイルホワイトを見て狼狽するテイルバイオレットとティアナの二人。
テイルギアを纏っていたおかげもあって辛うじて息があるテイルホワイトだが、このまま戦闘を続行できるかと聞かれれば限りなく不可能に近い。
そしてそれはアナザーテイルレッドにとって絶好のチャンスを意味していた。
「ハハハハハ、無様なもんだなトゥアール。ま、所詮は仮初のツインテール。このオレ、テイルレッド様に敵う訳がねぇよなぁ?」
高笑いを上げながら近づくアナザーテイルレッド。
テイルバイオレットは心の中では無理だとわかっていながらもティアナを守るべくウインドセイバーを構える。
「アナザーテイルレッド!! 今度は俺が相手だ!!」
「けッ、カッコつけんなよ坊主。大人しくしてな、てめぇじゃあこの
「
テイルバイオレットがそう口にすると同時にアナザーテイルレッドの周囲を赤い刃状のパーツが大小合計10基、浮遊し始める。
そう、これこそが先程までの見えない斬撃の正体。正式名称ブレイザーセイバー。
アナザーテイルレッドはこの10基の刃を視覚できない程の超スピードで操作し、テイルホワイト及びテイルブルームとの戦いで使用していたのだ。
「オールレンジ攻撃って奴か……!!」
「まぁそういうこった」
わかったらさっさとそこをどけと言わんばかりの圧力をかけるアナザーテイルレッドだが、テイルバイオレットは一歩も引かなかった。
絶対にティアナたちを見捨てて逃げるものかという意思を見せつける。
そんなテイルバイオレットに対して、アナザーテイルレッドは笑みを浮かべた後に腕を前に突き出す。
「行きな、セイバー!!」
射出された4基のセイバーは一瞬の内に見えなくなり、テイルバイオレットの周囲を高速で飛翔して取り囲む。
咄嗟に目をつぶり、全神経を集中させるテイルバイオレット。
これは今まで超スピードを駆使する相手との勝負で編み出した攻略法であった。
「そこだぁぁぁッ!!」
死角から高速で襲い掛かるセイバーをウインドセイバーを使い弾き返すテイルバイオレット。
だが次の瞬間、背中に強烈な痛みが走る。
「ッ……!?」
そう、襲い掛かってくるセイバーは一つではない。
一つを防御すればその時に生まれる隙を狙う形で残りのセイバーが一気に襲い掛かるのは当然のこと。
いくら超スピードに対応できる術を持っていようが、この攻撃はそう易々と対応しきれるような物ではないのだ。
「ぐっ……!! がぁっ……!!」
嘲笑うかのように乱舞するセイバーはテイルバイオレットを瞬く間に傷だらけの姿へと変える。
そして遂にテイルバイオレットは力尽きるかのように倒れ込んだ。
「和輝!!」
叫ぶティアナ。
対するアナザーテイルレッドは勝利を確信したかのように笑みを浮かべるとテイルバイオレットを襲っていた4基のセイバーを停止させる。
そして、ティアナのツインテール属性を奪うべくゆっくりゆっくりと近づいていく。
「さぁ、大人しくそのツインテール、俺に寄越せよ」
まさに絶体絶命のピンチ。
ティアナが諦めそうになるそんな中、立ち上がる者がいた。
「させ……るか……よぉ……」
「和輝……!!」
トドメとなる攻撃を刺されなかった事もあり、テイルバイオレットは何とか立ち上がることが出来たのだ。
テイルバイオレットは今もてる最後の力を全て使ってアナザーテイルレッドを討たんと拳を握りしめて突貫。
「うぉぉぉぉぉらぁぁぁぁ!!」
渾身の一発がアナザーテイルレッドの顔面を捉える。
――筈だった。
「いい加減鬱陶しいんだよ」
アナザーテイルレッドがそう口にした次の瞬間だった。
テイルバイオレットの纏う装甲が光の粒子となり消滅し、テイルバイオレットがテイルバイオレットである所以の青紫のツインテールが解けていく。
そして、光に包まれたかと思うとテイルバイオレットは元の和輝の姿へと戻っていた。
「変身が!?」
「嘘!! どうして!?」
突然、変身が解除された事に戸惑いを隠せない和輝とティアナ。
変身を維持される条件である二人の気持ちを合わせるという点は問題ない。
なら、どうして?
そんな二人にアナザーテイルレッドは静かに言い放つ。
「バカかてめぇら。言っただろうが、テイルドライバーはオレが作った物だってな。つまり、変身を強制解除させるなんてお茶の子さいさいって訳よ」
ある意味、当然と言えば当然。
今まではテイルバイオレットなど眼中になかったが故に使ってこなかったからであって緊急時用の備えはしているのがアナザーテイルレッドの性分である。
トゥアールとしてはその可能性も考慮した上で戦闘には参加するなと言っていたのだが、当の二人はそんな事にすらも気づかなかった。
「そ、そんな……」
「坊主、これでてめぇはただの無力なガキだ。大人しくそこで大事な彼女がツインテールを無くす所を見ているんだなぁ」
和輝にトドメを刺すことなく、本来のターゲットであるティアナを再度捉えたアナザーテイルレッドはブレイザーブレイドを大きく振りあげる。
ティアナは逃げようにも恐怖故か足がすくんで動かない。
「あばよぉ!! 究極のツインテールぅ!!!」
振り下ろされそうになるブレイザーブレイド。
もう誰も止めるすべは持っていない。
だけど和輝は諦めなかった。
「うああああああ!!!」
裂帛の叫びと共に全速力でダッシュした和輝は未だ動けないでいるティアナを勢いよく突き飛ばす。
無我夢中で何も考えていない。
ただ今はティアナを守りたい。
それだけ……たったそれだけであった。
(へッ、計画通りだ)
和輝がそういった行動を起こす事がまるでわかっていたかのように笑みをこぼすアナザーテイルレッドはブレイザーブレイドを振り下ろす勢いを緩めない。
そして無常にもブレイザーブレイドは生身の和輝の体を大きく斬り裂いた。
「があああああああああッ!!!!」
「和輝ぃぃぃ!!!」
テイルホワイトが流した物とは比べ物にならないおびただしい量の鮮血が辺り一面を赤く染める。
深々と切り裂かれた和輝の肉体がゆっくりと倒れ伏し冷たくなる。
それは涼原和輝という少年の死を意味していた。
――涼原和輝 死亡。
完……?