俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第106話 観束総愛

 ツインテール。

 それを大雑把言えば、左右二つに結わえた髪型の事。

 いつ頃からか女の子向けの髪型として流行し発展したその髪型は、起源として宇宙創造の際に女神様が結んだ髪型が元になっているとも語られるまさに原初とも言える髪型であり、この世に数多存在する属性力の要素の中でも最強に位置する神秘的且つ美しい、そして可愛らしい髪形ならぬ神形。

 

 私はそんなツインテールが大好きだ。

 その大好きの気持ちはこの世に生まれたその時からだったと言えるくらい筋金入りであり、お母さんたちが言うには生まれた当初の大泣きしていた赤ん坊の私がツインテールを見ただけで泣くのをやめて笑顔になったというくらい。

 その他のエピソードを語るなら小中学生時代は四六時中、ツインテールをどうすればもっと可愛く結べるかとか、ツインテールをどうすればもっとみんなも熱意を持ってくれるのかとか、はたまた古代ツインテール史や現代ツインテール学といったあまりメジャーではない学問をどうすれば義務教育に加えることが出来るのかとか、ツインテールにまつわる事だけを必死になって考えていた。そしてその熱意故に誰一人とも同じ程に熱意の持った共感者を得る事が出来ず少し孤立してしまった事があったという困った物もある。

 まぁでも、それはかつての先人たちも通った道なんだと納得していたけどね。

 そんな私を見たお母さん曰く、どうしてそんなにもお父さんに似てしまったのかしらとの事であり、これはある種の一つの自慢とも言える程。何故なら私のお父さんはツインテールで世界を救った英雄であるテイルレッドであり、憧れを超越した感情を持つ私たちツインテール好きの者にとってはテイルレッドは神様のような存在って訳。実の父親をこう表現するのはおかしいかもしれないけど、私はそれほどに父を尊敬し父のようなツインテールを結びたいと常日頃から願っていた。

 とまぁ、長々語った大好きなツインテールは、私を私たらしめる最も大切な要素であり、私がこの世で最も情熱を注いできた物と言っても過言ではない。

 ツインテールは私の命その物であり、ツインテールを愛する事こそが私がこの世に生まれて来た全てとも言えた程に重要な一部分だ。

 

 だけど、そんな大好きなツインテールを手放さないといけない日が来てしまった。

 

 きっと、昔の私ならどんな理由があったとしてもツインテールを手放すなんてしなかっただろうとは思う。

 例えどんな理不尽な選択を迫られようとも、その闇を払うべく不可能を可能とすべく戦い、ツインテールは勿論、みんなの大好きという気持ち、そしてそのついでに世界の平和やみんなの笑顔をも一緒に守る。その確固たる信念と決意を私はお父さんやお母さんから受け継いでいたから。

 だけど、私はかつての記憶を失った状態でこの世界に来て、様々な経験や出会いをしていった事で知ってしまった。

 ツインテールを愛すという事と同じように異性の誰かを愛し愛されるという人間として最も大切な恋と言う感情。色々な人と触れ合い、共に喜び、共に泣き、共に笑うという大切な仲間たちとの大切な思い出。

 

 そしてもう一つ……私は……

 

 大切な者を失う辛さを知ってしまった。

 愛する者が目の前で命を散らしたという、ツインテールをもがれると同じくらい残酷な現実。

 さらに言えばそれらが間接的にとはいえ私のせいで起きてしまった。

 私がもっと強ければ……私がこうなる事を予測していれば……私があの時、しっかりと止めていれば……私がそもそもツインテールを好きでなければ……

 何度何度やってもこの後悔という海からは抜け出すことが出来ない。

 そんな事ない私のせいじゃないと心の中で必死に抗っても私は私を許すことが出来ない。辛さと悲しさと後悔だけがより重く強くのしかかって私を底に沈めようとしてくる。

 

 だから私はもう諦める事にした。

 諦めて私は全てを受け入れる。

 つまりこれは罪滅ぼしであり私自身の罰だ。

 自らの大好きのせいで多くの人々の大好きを危険に晒し、あまつさえこの世で初めて出来た想い人の命を奪うきっかけを作ってしまった私は、ツインテールを手放すという死にも匹敵する罰を受けないといけない。

 だから私は執行人(レイジ)のいる約束の場所に向かって歩き続ける。

 ツインテールを失った果てに何が待っていようとも……

 

 

 でも……やっぱり……

 

 

 和輝……

 

 

 私……本当は……

 

 

◇ 

 

 

 スタートゥアールmark2内はテイルギアをメンテナンスする作業ルーム、殆ど誰かさん専用と化していたであろうトレーニングルーム、作戦会議などにも使用可能なコンソールルーム、そして負傷者の治療に使われるメディカルルームと、元々トゥアール個人専用として作られた先代のスタートゥアールと違ってツインテイルズの移動基地としての役割を持ったうえで建造されたスタートゥアールmark2には先代のスタートゥアール以上に多くの部屋が存在している。

 その中でも居住スペースと呼ばれるいくつもの個人用ルームが並ぶエリアは基本的には長期的な異世界旅行をする際などに使用される場所であり、総二と愛香の夫婦二人専用の部屋や持ち主であるトゥアール専用の部屋は勿論、慧理那、イースナ、唯乃と言った他のツインテイルズのメンバーの専用部屋及び、万が一定員が増えてもいいようにいくつものゲストルームが存在している。

 

 現在、夜の3時前後。

 もう夜も更けてしばらく経つそんな時刻なのにも関わらず、スタートゥアールmark2内のゲストルームのとある一部屋は煌々とした明かりが点いていた。

 その部屋のベットで横になっているのは、先の戦いで先陣を切ったものの、和輝たちが到着したころには既にボロボロの状態となりダウンしていたテイルブルームこと山村華。彼女の負ったダメージは見た目以上の物であり、最早生きていたのが不思議なくらいと称される程の物。

 その為、華は自宅に帰る事も出来ずにスタートゥアールmark2内で療養を余儀なくされているのだ。

 

「華先生、怪我の方は大丈夫ですか?」

 

 部屋の扉が開くと同時に悠香が顔を出す。

 あら? と思った華は体を起こしそのまま悠香に声をかける。

 

「片霧さん? あなたこんな時間なのにどうしたの?」

 

「いやま、その……あたしたち帰るに帰れないというか……」

 

「あたしたち? つまり神外さんと川本君もいるのって事なの!?」

 

「は、はい」

 

 再び言うが現在は深夜3時前後。

 本来、学生は皆が自宅に帰り、明日の登校に備えて睡眠をとっているのが普通である。

 だがしかし、悠香、青葉、匠の三人は家に帰らずにスタートゥアールmark2内に残っているとの事だ。

 これは教師として華はきつく言ってやらねばならないかもしれない。

 

「一応、言っておきますけどたっくんはちゃんと親にちゃんと連絡を入れてますからね。まぁ、あたしと青ちゃんは親が基本的にいないのでノーカンってことで……」

 

「あなたねぇ……」

 

「いいじゃないですか。どうせ今日の襲撃のせいで明日以降の学校は当分の間休校になっちゃったんですし」

 

 悠香の言う通り、当分の間は校舎の復旧やその他もろもろの処理のせいもあり、双神高等学校は休校となっている。 

 その為、悠香たちはこんな夜遅くだと言うのに未だにスタートゥアールmark2内に滞在しているのだ。

 理由や言い訳になっているかは兎も角、事情を知った以上、華はこれ以上追及するつもりはなかった。

 

「そう……なのね。わかったわ。とりあえずはありがとう片霧さん。私の方はもう大丈夫……と言いたいところだけど体はまだ満足に動きそうにないのが悔しいわね」

 

「先生の事だから直ぐにでも鍛えなそうとトレーニングでも励んでいるのかと思って少し心配したんですからね」

 

 笑いあう二人。

 とても穏やかな雰囲気を感じさせるがその空気はどことなくぎこちない。

 それも全て、仲間である和輝の死とティアナの失踪の二つが大きく関わっているのは明白であった。

 

「ほんと……私がもっと強ければよかったのにね……」

 

「そんな自分を余り攻めないでください。堀井先生言ってましたよ。テイルブルームがいたおかげでスムーズに避難誘導を行うことが出来たって。ほら」

 

 悠香はスマホを取り出すと、今日の事件が速報として掲載されているニュースサイトを提示する。

 そこには荒れに荒れた事件現場とその場に居合わせた何人か生徒及び教員へのインタビューが掲載されている。

 その中にはテイルブルームを絶賛する堀井のインタビューもあった。

 事実、テイルブルームが即座に駆け付け、逃げ遅れた生徒たちの盾になりながらアナザーテイルレッドと戦った事もあり、生徒側の死傷者は和輝という例外を除いて誰もいなかったのである。

 

「ありがとう片霧さん。でもやっぱり辛いわね……」

 

「そ、それは……そうですね……」

 

 ニュースサイトの記事に書かれた『幸いにも死者は0』という言葉が胸を抉る。

 和輝の死ぬ瞬間は、ティアナとアナザーテイルレッドの二人しか見ておらず、戦闘終了して誰かが戻って来るよりも早くにトゥアールが回収した事もあってか、誰も和輝の死体を見ていないのである。

 勿論、真実を知っている及び知らされた悠香や華は言葉で表しようのない複雑な気持ちになっているのである。

 そんな気まずい空気が流れる中、再び部屋の扉が開いた。

 

「あの~? もしかして取り込み中だったりします?」

 

 顔を出したのはこの移動艇の主、トゥアール。

 気まずい空気を察せられた事に焦った悠香と華の二人は慌てて愛想笑いを返す。

 

「いやいや、別に大丈夫ですよ。ね、片霧さん」

 

「は、はい先生。別にあたしたち何も……ってそれよりもどうしたんですか? トゥアールさん?」

 

 即座に気持ちを切り替えた悠香がトゥアールに尋ね返した。

 

「いえ、別に特にこれといった要件じゃないんですけど、先程、向こうのお二人が眠ってしまっていたので、ゲストルームの方に運ぶついでに様子を伺ったまでです」

 

「へー……って!? わざわざ運んでくれたんですか!?」

 

「ええ、まぁ……」

 

 トゥアールの言葉を聞いた悠香と華はそれぞれ部活動の上司とその顧問として深々とありがとうございましたとばかりに頭を下げる。

 トゥアールはそれを見て慌てて頭を上げてくださいと言う訳でもなく、自然に頭を上げてくれるのを待った。

 そして、二人が同時に頭を上げきった後、トゥアールは部屋の中の椅子に腰かけた。

 

「いえ、寧ろ礼を言うのは私の方ですよ。あの子と……総愛と仲良くしてくれてありがとうございます」

 

 なんと今度はトゥアールの方が礼を言う為に頭を下げたのだ。

 この予想外の行動には悠香も華も慌てずにはいられない。

 

「いえいえ、そんな!! 別にあたしも青ちゃんもたっくんも寧ろティアちゃんには色々助けられる事ばっかりで……!! ねぇ? 先生?」

 

「そ、そうですよ。私なんて橘さんがいてくれたおかげで立ち直れたものですし、寧ろ感謝しないといけないのは私の方ですよ!!」

 

 再び、深々と頭を下げる二人。

 それを見たトゥアールは口元をわずかにではあるが緩ませる。

 

「ほんと、総愛はいい友達と先生を持ったみたいですね。総愛が飛ばされたのがこの世界、この次元で良かった……」

 

 まるで初めての友達を喜ぶ母の姿をトゥアールの今の姿から想像した悠香はふとトゥアールに問いかける。

 

「あの~失礼な事を聞くかもしれませんけど、もしかしてティアちゃん……いや、総愛ちゃんって元の世界では友達が……」

 

「……はい。お察しの通り、あの子には友達と呼べる存在がいませんでした」

 

 観念したかのようにそう語るトゥアール。

 悠香はそれを見てやはりかと頷いた。

 

「皆さんもご存知の通り、あの子は幼い頃からツインテールに対する愛情がとても深く、それこそ若き日の総二様に負けぬ程のものでした」

 

 トゥアールは語る。

 幼き頃からツインテールが好きすぎるが故に親友と呼べる程の深い仲で結ばれた友も出来ず、総二にとっての愛香のような何があってもついてきてくれる幼馴染の異性もティアナは得ることが出来なかったという事。

 

「それに私たちがいた世界では私たちツインテイルズは勿論、その中でも世界的に大人気なのがテイルレッドであり、それこそが総愛のお父様である総二様なんです」

 

「なるほど、つまり、親が余りにも有名人過ぎて誰もが遠慮してしまった。との事なんですね?」

 

「そうですね……」

 

 このトゥアールが住んでいた次元における総二は、娘を幼き頃からチヤホヤさせるとツインテールに悪いので自分たちの娘だと公表すべきではないと言ったレイジの誘導もあってか、自分たちの娘であると大々的に公表したという訳ではなかった。

 だが、いつまでも完全に隠しきれるかと言えばそれは限りなくNOに近く、それを理解していたが故、ティアナがある程度物心ついてからそれらを余り世間は騒がないようにとお願いした後に公表したのである。

 しかし、それはある意味では裏目に出てしまった。

 ツインテイルズの活躍を知るティアナの親世代の人たちは皆が自分自身の子共に、英雄であるテイルレッドの娘である総愛(ティアナ)に余り迷惑をかけぬよう、遠慮して付き合うようにと、悪意ではなく善意で指示したのである。

 その結果、総愛(ティアナ)は恋人はおろか親友とも呼べるような心通わせる仲の良い存在に出会えなかったのである。

 

「元の世界に居た頃の総愛はツインテールに没頭し、全てにおいてツインテールを優先するというある意味、非情に危険な状態になっていました。それもこれもレイジの思惑通りだと思うと悔しくてたまりません」

 

「友達も出来ずに一人でツインテールだけに愛を注ぐ……ですか……」

 

 言ってしまえば元の世界に居た頃のティアナは仲間を得る事が出来なかった総二と言っても過言ではない。

 ツインテールだけに没頭するという、その危険性が何を生むのかを華は自らの経験もあってか察してしまう。

 

「だから私はこの世界で総愛を見て驚きました。あのツインテールにしか興味を示さなかったあの子が、こんなにも多くの仲間を得て、それだけじゃなく同年代の男子の事をあんなにも想うようになるなんて……。まるで昔の私自身を見ているような気がしてくる程には……」

 

 同年代の男子。それが和輝を意味している事は悠香は即座に理解する。

 一方で鈍感な華はそれが和輝だと言う事に少し時間がかかったのは秘密である。

 

「なのに私はあの子の大切な想い人を守れなかった。無理やりにでも、それこそ嫌われてもいいくらいの覚悟で二人を止めていればこんな結果には……。私、親代わり失格ですよね。総二様と愛香さんにどう顔向けしていいか……」

 

 どういった経緯があり、親代わりとなってしまったのかなど悠香は知る由もない。

 だけど、悠香にはわかる事があった。

 

「あたし的には、そんな事ないと思いますよ。そりゃあまぁ、今のティアちゃんからすれば和くんが亡くなってショックなんて物じゃないし、死を受け入れられない位の状態になってしまったわけですけど、それって現実逃避って側面も勿論ありますけど、それ以上にトゥアールさんの事を信頼していたからってのもあると思うんです。しかも、ティアちゃんは最後までトゥアールさんの事を責めませんでしたしね」

 

 親と子の条件は血が繋がっている事だけではない。

 子が親の事を信頼しているかどうかも大切なのだと悠香は語った。

 

「それに、止められなかった責任はあたしたちにもあります。でも今は後悔していても何も変わらない。辛いし、悲しいけど、いつまでもうじうじしていたら、それこそ和くんが命をかけてまで守ったティアちゃんがアイツの魔の手にかかってしまいますし、それだけは絶対に阻止するべきだと思います」

 

 トゥアールが語ったティアナの過去。

 それを聞いた事で経た悠香の結論がまさしくこれであった。

 力強い悠香の言葉を聞き、トゥアールの表情に光が戻って来る。

 

「何度も何度も本当にありがとうございます。皆さんには本当に感謝してもしきれません」

 

「いえいえこちらこそ……ってそれよりも今はティアちゃんが何処に行ったのかを探さないといけないんじゃ……」

 

「いえ、それには及びません。念のためと打ち上げておいた人工衛星の『ようじょ(妹)』がリアルタイムで総愛の行方を捉えていますので」

 

 いつの間にそんな物を。というかその名前は一体……

 ティアナがこの場にいたらきっと殴り倒されているのだろうなと悠香と華は頭の中で想像する。

 ある意味ではとても微笑ましい母娘の形ではないと二人は笑みをこぼす。

 

「さて、今の場所は……っ!?」

 

「どうしたんです?」

 

 白衣のポケットからにゅるんと取り出した機械でティアナを位置を調べていたトゥアールの表情が突如として焦った物に変わり、その変化に気が付いた華が何があったのかを尋ねる。

 するとトゥアールはその手に持った機械についているレーダー画面と思しき部分を見せてくれた。

 

「これを見てください。ここに映っているのが総愛の反応です」

 

「あれ? じゃあこっちの大きな反応は一体……?」

 

 レーダー画面に映っているのは二つの大きな反応。

 一つがティアナだとするのならもう一つの反応は一体?

 そう思った華が口に出すとトゥアールは鬼気迫る表情で答えた。

 

「恐らく、レイジの物です……!!」

 

 絶体絶命の危機はすぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 

 深夜。人の気配が微塵もしないこの場所。

 ここはアナザーテイルレッドが初めてこの世界で和輝たちの前に姿を現したオフィスビル前の広場。

 つい数日前に激戦の舞台として荒らされに荒らされたこの場所も今じゃもうすっかりそういった痕跡を無くしてきれいさっぱり元の景色に戻っている。

 そんな広場の中央、ある男が火のついたタバコを口にしながら何かを待っている素振りを見せる。

 そう、その男こそアナザーテイルレッドの変身者レイジ・レオン=ザード。

 テイルバイオレット及び本家テイルレッドたちツインテイルズの活躍したこの平行世界間とは違った歴史を辿った事により生まれた所謂、平行次元からの来訪者であり、目的はティアナの持つ究極のツインテール属性。

 レイジは先程呼び出したティアナが来るのを今か今かと待っているのだ。

 

「ふー……。さて、坊主が死んだ今、総愛、てめぇはそれでもツインテールを愛し続けるってのかぁ?」

 

 タバコをふかし終え一息ついた様子のレイジがポツリを呟く。

 その表情は邪悪と表現するほかない。

 クククと笑っていたレイジはふと我に帰るようなそぶりを見せた。

 

「にしても、オレも随分と歪んじまったもんだぜ。昔の俺が今のオレをみたら一体、どう思うか……」

 

 思い返すのはまだ若かりし頃の自分。

 歴史介入によってツインテイルズの一員に加わり共にアルティメギルと戦っていた頃のある意味では最も輝いていた頃とも言えるレイジの姿だ。

 

「総二、俺たち楽しかったよなぁ。あのくだらない毎日がさ」

 

 死ぬ間際で過去を懐かしむ老人のように物思いにふけるレイジ。

 その眼はとても先程までの邪悪で卑劣な彼の物とは思えぬほどだ。

 だが、それも瞬きするよりも一瞬の出来事にしか過ぎない。

 レイジの目つきは再び邪悪に歪む。

 

「ま、だがそれはそれ。これはこれってな。オレはあくまでオレのやりたいようにやる。欲望に……属性力に忠実に……それは今も昔も変わらねぇオレのポリシーであり、オレの生きる意味。戦いの中、闘争の中でこそオレはツインテールを愛し愛することが出来るってもんだ」

 

 レイジは己のやりたいと思った事を我慢せずに行うという事に関しては幼き頃から終始一貫してきた。欲しい物があれば手に入れ、やりたいことがあれば必ず行う。

 かつて総二たちと共にアルティメギルと戦ったのもそうだ、あくまでそれはツインテイルズの一員となって共に戦ってみたいという欲求に従ったまでの事。その行動には一筋たりとも正義の心は備わっていない。

 そうした行動を続けた結果がこれだ。

 いつの間にか他者が持つツインテール属性をも奪い、それを手中に収めて自らの愛するツインテール属性を高める事を快感として覚えてしまい、その原始的な欲求にのみ従う獣。それがレイジという男である。

 

「さて、そろそろだ。今回、女神様はどちらに微笑むかねぇ……?」

 

 ティアナの接近を感じ取ったレイジは何度目かわからぬ邪悪な笑みを浮かべる。

 夜はまだ、深い。

 

 

 

 

 ここは……何処だろう?

 例えるならここは空の彼方に浮かぶ大宇宙。昔、おやっさんに連れていてもらったプラネタリウムを想起させるような不思議な感じであり、違う点を挙げるなら無限にも思える広さの中で音や光が一つも聞こえず見えず、ただ真っ暗な闇がひたすら続いている暗黒空間って事だけとも言える。まぁでも、案外これこそが本当の宇宙空間とも捉えられる妙なリアリティを感じるがな。

 

 そんな何処とも知らない空間の中に俺は立っていた。いや、正確に言えば浮かんでいると言った方が正しいかもしれない。

 足場もないのに下に落ちていくわけではないのはやはり浮いているとしか言えない。

 

「てか俺、一体どうなったんだ?」

 

 そもそも俺は何故こんな所に一人でいるんだ?

 服装を見る限り、さっきまで学校にいたって事は何となくわかるが、逆に言えばそれくらいしかわからねぇとも言えるぜ。

 何となくだけど早く行かなくちゃならないって事だけはわかる。

 俺はその何となくに従う形でただゆらゆらと、あてもなくこの空間を彷徨い始める。

 

 でも一体どこに? 何故、俺は行かなくちゃならねぇんだ?

 ふと感じた疑問が頭の中で巡り始める。

 俺には帰るべき場所、帰りを待つ彼女がいる……

 その名は……

 

「……総愛(ティアナ)!!」

 

 そうだ……!! 思い出した!!

 俺は確か、アナザーテイルレッドの野郎に苦戦するテイルホワイトを助ける為にティアナと共に向かい、禁じられていると言うのにそれを無視して戦った。

 そしてその結果……

 俺は……

 

「ティアナを庇い、命を落とした……」

 

 思い出すのは深々と体を切り裂かれた際に生じた痛み。

 テイルギアによる保護もなく生身で受けたそのダメージは到底ただの人間が耐えれる筈もなかった。

 結果、俺はあの時、死んだ。

 

「俺、死んだのか」

 

 自分自身がもし死んでしまったとわかった時、その人はどうするだろう?

 一般的に想像できる内容で言えば発狂してそのまま暴れ狂うと言った所か。

 だけど、俺は意外にも冷静だった。

 そりゃあ後悔がないか言えば嘘になるが、何つーかああ死んじまったんだなっていう一種の諦めのような、それこそ悟りのような境地に達してしまっている感じがする。

 死ぬってこういう感じなのか……

 

「てことはよぉ。ここは天国? それとも地獄か?」

 

 正直、死にざまこそ誰かを庇うというある種の善行ではあるし、テイルバイオレットとしてみなを守る為に戦ってきてはいたが、俺はそれ以上に色々と悪行も重ねて来たとは思う。

 だからこそ俺は死んだら天国に行くのか……はたまた地獄に行くのか……

 無宗教の俺もここに関しては少し気になる点だ。

 でも、ここは見た所、どちらでもなさそうではある。

 

「死ぬ間際にみる夢って訳でもないよな……」

 

 なら一体、ここは何処で俺はどうなるんだ?

 そんな疑問を浮かべたまま彷徨い続けるそんな時、俺の目の前で急に無数の光が現れ、その光が人の形を取るかのように集まり始める。

 星々がまるで一つの惑星を作るかのようなその幻想的な様をただ見つめ続ける事、数秒。

 一瞬の内に人の形、それもツインテールをした少女の姿となったそれは俺の良く知っている人物にそっくりであった。




和輝が出会った謎の少女は一体……?
次回、『ツインテールの女神』にテイルオン!!(ネタバレ次回予告)
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