俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
「ティアナ? じゃねぇ!?」
死後の世界とはどこか違うような不思議な空間。
そこを彷徨う俺の目の前に突如として現れた人物の姿は胸の有無や髪色などの細かい点を除けば思わずティアナと間違ってしまうくらいそっくりであった。
俺は最初、ティアナもこちら側、つまり俺と同じように死んじまったのではと思ってしまったが、その少女の服装やティアナとの細かい差異及び、その少女の持つティアナとはまるで違った独特の雰囲気を感じ取った結果、その考えは間違っているという事に気が付いた。
じゃあ一体コイツは何者なのか?
それを問いただすべく俺は声を荒げる。
「んじゃあ、てめぇ一体何者だコラァ!!」
ったく、我ながらなんてガラの悪さだよ。
少し気が立っていたとはいえ、仮にも完全初対面と思しき人物にこの態度はちと不味いような気がしてならない。
実際、急に俺が声を荒げた事もあってか目の前のティアナそっくりの少女は少し困惑気味だ。
「嘘でしょ……。長年女神やってるけど、私こんな態度取られたの初めてなんだけど……」
そいつはどーも。
何故だろう。この少女がティアナではないと心ではわかっていても何故か悪態つくような喋り方や態度が出てしまう。
気に食わないとはまた違うどう説明していいかわからないこの感じ。
ティアナと付き合い始めて以降、めっきりでなくなった態度が顔を出す。
「てかちょっと待て、お前、今、自分の事を女神だとか何とかぬかしたよな?」
少女がボソッと呟いた言葉の中から随分と興味深い単語が出ていたのを思い出す。
長年女神をやっている。それ即ち、コイツは自分の事を女神だと言っていやがるに他ならない。
まぁ確かに、神秘的な服装といい、雰囲気といい、女神だと言うにはそこそこに説得力があるにはあるが、その顔と親しみ深い俺からすればティアナが変な事言っているような気がするが故に今一その言葉の信憑性を疑ってしまう。
「そう。私はツインテールの女神様ソーラ。この宇宙を創造した神様」
凄いでしょとも言いたげな態度を見るに女神を名乗る割には見た目相応の少女のようにしか見えない。
「へー。あっそすか」
「ちょっと!! 絶対に信じてないでしょ!! 私、本当の本当にこの世界や宇宙を作った女神様何だからね!?」
ガミガミ、ガミガミと随分と人間臭い神様だこと。
不思議な力はあるようだが、どうも神様っぽく見えないぜ。
「ほーん。それで? 一体、何の用なんだよ」
「だから何その反応!! 態度悪すぎない!?」
「あーはいはい、すまんすまん。別に悪気はねぇんだが、なんか昔のティアナを思い出して勝手にこういう態度になるんだわ。マジですまねぇな」
言っておくがマジで悪気はない。
考えるよりも先に体が勝手にそう発言するのはまごう事なき事実なんだ。
尤も、信じ切っていないのも事実ではある。
「折角、今の今まで助けてあげて来たのに……!!」
頬を膨れさせてわかりやすいふくれっ面を見せるソーラ。
対する俺はその言葉がどういう意味なのか疑問を浮かべる。
「ねぇ覚えてる? あなたとあの子が入れ替わった時の事」
「覚えてるも何も、忘れられるかってんだあんな体験。それがどうしたよ」
「あれやったの私なんだけど」
ええ!? マジでか!?
ソーラ曰く、あの時はブレイブチェインを使いこなせるようになってもらう為に俺とティアナの身体を入れ替えて二人の成長を促したとの事。
余りにも今更な衝撃の事実に驚きを隠せない。
「そもそも、ブレイブチェインやエモーショナルチェインを解禁した事や、異世界に渡る為の機能を起動させて上げたのも全部私なんだけどね。まぁ、向こうの次元の私がこっちの次元に送る際、この時代に着いちゃったのはちょっとした事故なんだけど」
え、なに? つまり今までご都合展開かよとツッコミたくなるような奇跡やどうしてティアナやレイジが次元を渡って俺たちの次元にやって来たんだよって疑問も全部、こいつが裏で手を引いていたからって言うのか!?
さらなる衝撃的な真実はにわかにも信じがたい物だった。
でも、裏で女神様が俺たちを助けようとしていたから、あの奇跡はあの絶妙なタイミングで起きていたと思うとある意味納得がいく。
「マジで女神なのかあんた?」
「だから最初から言っているでしょ。女神様だって」
マジかよ、コイツはたまげたぜ。
まさか女神様が俺の前に姿を現すとな。
しかも、今の今までティアナがテイルブレスに願って起こしていたと思っていた奇跡もこの女神様が根回ししてくれたからだったとは思ってもみなかったぜ。
「総二は喜ばせ上手だったけど、和輝は怒らせ上手だよね……」
「怒らせ上手で悪かったなぁ……ってどうして総二さんの名前知ってんだよ」
「キスした仲だもん。知ってて当然でしょ」
キスだぁ?
堂々とそう言い切ったソーラの目に曇りは無く、それが真実だと説明するのに理由は要らないと言ってもいい。
尊敬する総二さんとの謎の関係を知り、少し戸惑ってしまう。
てかそもそも、宇宙創造の女神なら全世界を救った総二さんの事を知ってても不思議ではねぇじゃん。
「なぁ聞くがあんた、総二さんとどんな関係なんだ?」
「どんな関係も何も、私は女神で総二はツインテールが世界一好きな男の子。それ以外でもそれ以上でもないと言っていいかしら」
口ではそう言っていはいるが、どう見てもソーラは総二さんに恋焦がれている。
宇宙創造のツインテールの女神をも惚れさせる総二さんの奴、本当に罪作りな男だぜと思わずにいられない。
あの人、一体何人の女性を惚れさせてきたんだよ全く……。
「まぁいいや。んで話を戻すけどよぉ、あんたは一体全体、どうして俺をこんな所に呼んで尚且つ俺の目の前に姿を現したんだ?」
「それは……」
少し俯き表情を曇らせたソーラであったが、意を決したのか顔を上げると俺にこう告げる。
「あなたがティアナと呼ぶ少女。あの子は今、ツインテールが原因で苦しんでいて、それを助けて上げれるのは和輝、あなたしかいないの。だからお願い。あの子を……かつての私そっくりなあの娘を……助けてあげて」
◇
まだ夜明けまで時間が少しかかる深夜。
ティアナはレイジとの約束の地に辿り着いた。
広場の中央にてティアナを発見したレイジは口元をニヤつかせる。
「よぉ、この姿で会うのも随分と久しぶりだよなぁ総愛」
「レイジ……」
ティアナの記憶に蘇るのは元の世界にて総二と仲良くツインテールについて語り合うレイジの姿。
まるでそれその物がただの幻だったのではないかとすら思える程に今のレイジとはまるで違う。
邪悪な獣その物。それがティアナの抱いた印象だった。
「フッ、随分としおらしくなっちまいやがって……。坊主がくたばったのがそんなに応えたか? ええ?」
「ッ!!」
わかりやすい挑発を受けたティアナは思わず拳を握りしめるが、それはたった一瞬の間のみであり、直ぐにその手を解いた。
本来ならこの男はティアナが真に憎むべき敵であり、今すぐにでも一発入れてやるのがある意味では正解とも言える行動ではあるのにも関わらず拳を解いた訳。
それはティアナの心が折れているからに他ならない。
和輝を失ったショックは余りにも大きすぎたのだ。
「けッ、面白くねぇな。もうちょっとは怒り狂ってくれる方が俺としては狩りがいがあっていいんだがなぁ。もうちょっといたぶって殺した方が良かったかぁ?」
俯くティアナの態度に失望したレイジはなおも挑発めいた発言をするが、やはりと言うべきかティアナは何も答えずただ黙りこくっている。
これ以上やってもキリがないとそう判断したレイジは舌打ちをすると同時に本題に入る。
「さて、お喋りは終わりだ。お前、ここに来たって事はオレの要求を呑むって事でいいんだよなぁ?」
レイジの言う要求とはたった一つ。
ティアナがその自身の持つツインテール属性を差し出す事。たったそれだけの事である。
だが、それはとても残酷な意味を表していた。
「……そう。だから早くして。お願いだから」
ようやくまともに口を開いたティアナ。
その表情は絶望に染まっていると表現しても過言ではなく、心の中ではもうどうになってもいいという諦めが溢れている。
それを見て感じ取ったレイジはより一層、口元を歪ませる。
「見てるか総二。てめぇの娘がこのオレに首を垂れていやがるぜ。うーん、実にいいねぇ最高だ!!」
レイジは総二の事を親友と評しているが、実の所、昔から総二に対して嫉妬めいた複雑な感情を抱いていた。
総二を超えたい。オレこそがテイルレッドとして究極の存在へと至りたい。
ただの欲求が嫉妬ともとれる感情に変化し、その想いが日に日に強くなっていると気づいたレイジは、ただ力尽くで奪うのではなく、このように相手側から差し出させるように仕向けたのである。
「待ってろ総二。ガキの次は愛香や慧理那、そして最後はてめぇだ。お前のツインテールを奪ってこそオレのツインテールは完成する」
この場にてレイジが新しく抱いた野望。
それは元の世界にてテイルレッドを除いたツインテイルズ全員のツインテール属性を奪った上で最後はテイルレッドをも下すという最悪のシナリオ。
傍から見れば無謀とも取れる発言ではあるが、ティアナの持つ強大なツインテール属性を得てさえしまえれば無謀とは決して言えない。
それほどにティアナの持つツインテール属性は強大なのだ。
「さぁ、それじゃとっとと済ませちまおうかい。ほれ」
そう言うや否やレイジは懐から黒い物体を取り出すとティアナ向かって投げ渡す。
受け取るティアナ。
それはテイルブレスに酷似した謎の機械だった。
「何これ……」
「そいつはオレが作った自らの手で自身の属性力を抜き取ることが出来る装置だ。お前には今からそれを使い、自分自身の手でツインテール属性を抜き取ってもらうぜ」
それは言わば、自殺用の拳銃とも取れるアイテム。
これを使えばツインテールを愛する気持ちを失い、二度とツインテールを結ぶことが出来なくなるのだ。
「言っておくが、拒否するのは勝手だぜ。だが、そうなったらこの町が、この世界が、一体どんな風になっちまってもオレは知らないぜ?」
「わかってる……」
もう二度と戻る事ない片道切符を手にしたティアナはレイジの言いつけを守るかのようにそのブレスを手に嵌めようとする。
全ては皆を守る為、和輝のような犠牲者を生まない為、そして何よりも、これ以上、自らのツインテール属性が原因で争いが起きないようにする為。
絶望に沈んだティアナがその装置を付けようとするその瞬間、広場に声が響く。
「いけません!! 総愛!! それだけは絶対にやめなさい!!」
その声の主、それはティアナのもう一人の母親トゥアールであった。
これには思わず、レイジの口元が不満気に歪む。
「トゥアール……!! 折角いい所だったっってのによぉ……!!」
「ママ……」
トゥアールはレイジとティアナを引きはがすかのように間に降り立つ。
そしてトゥアールはティアナと向かい合うや否やその手に握る黒い装置を取り上げた。
「いいですか総愛!! あなたがやろうとしている事はただツインテールを失うだけでは済みません!! 自らの手でツインテール属性を抜き取る事は死に直結するんですよ!!」
力強く語るトゥアール。
それは自らの体験からなる事実であった。
トゥアールは以前、過去に自らのツインテール属性を抜き取った代償を払うかの如く、命の危機に瀕した事があり、それはレイジの介入によって異なる歴史を辿った筈の別次元のトゥアールも同様であった。
かつての過ちを知っているトゥアールからしてみればレイジのやろうとしている事は許しがたい物なのだ。
「おいおいトゥアール。折角、もっといいタイミングでオレが話してやりたかったってのによぉ」
「黙りなさい!! あなたは……!! あなただけは……!!」
かつてない怒りに燃えるトゥアール。
今までトゥアールの心の片隅ではかつて共に戦った時の情がほんの少しは残っていたと言うのにそれはこの場にて完全に消え去った。
あるのは強い怒りのみだ。
テイルブレスレボリューションを構え変身しようとするトゥアール。
だがしかし、ティアナはそんなトゥアールの腕を掴んだ。
「やめてママ!! もういいの……!!」
「総愛!! あなた何を言っているんですか!!」
「だって……!! 私、これ以上!! 他の誰かが私のツインテールのせいで傷つく所なんて……見たくない!!」
「総愛……!?」
変身を制止させたのがまさかのティアナ自身である事に困惑を隠せないトゥアール。
それほどに今のティアナは絶望しているのだ。
絶望するティアナはさらなる言葉を口にする。
「それにね……私、死ぬのは怖くない。だってそうすれば和輝の下に行けるもん……」
「ッ!?」
ティアナが味わった絶望という闇の深さを目の当たりにしたトゥアールは思わず言葉を失った。
これ程に……これ程までにと後悔してもしきれない。
そんなやり取りを眺めるレイジは面白そうに笑いだす。
「ヒャッハッハッハッハ!! 最高じゃねぇか!! 自ら死を受け入れる娘とそれを止められない母親擬き。コイツは傑作だぜぇ」
「レイジ……!!」
笑い声を聞いた事で我に帰ったトゥアールは、一先ずレイジを倒すべく、ティアナの制止を振りほどきながらテイルブレスレボリューションを構え、光を解き放つ。
「テイルオン!!」
限界を示す一瞬のスパークと共に爆裂する白き光。
テイルホワイトへの変身は無事完了した。
だが、その白銀の如き輝きは直ぐに光を失い、鈍い錆色へと変化してしまった。
「どうやら、その力ももう限界みてぇだな。そんないつ解けてしまうかわからねぇツインテールで何をするってぇ?」
嘲笑うレイジもまたテイルブレスを構える。
「テイルオン!!」
爆裂する深紅の光。
アナザーテイルレッドとテイルホワイトが三度向かい合う。
だがしかし、状況は今までの中で最悪と言ってもいい。
「行くぜぇ? トゥアール!!!」
「今度こそ!! ここで決着をつけます!!」
互いの得物を構えて向かい合った二人は一瞬の静寂の後、激しい火花を散らし始めるのであった。
◇
「ティアナの奴、今そんな状態になっているのかよ……」
女神ソーラは語った。今現在、現世ではティアナの奴が争いが起きるのは自分のツインテール属性のせいだと思い詰めて苦しんでおり、アナザーテイルレッドの野郎がそんなティアナを狙い三度襲撃を開始したという事。
そしてソーラにそんなティアナを助けてあげて欲しいという物だった。
曰く、今の彼女を救えるのは俺しかいないとの事。
だが、それはもう不可能に近い。
「それは……俺もそうしたいのは山々だぜ……でもよ、俺はもうこの世にいない。そうだろ?」
「それはそうだけど」
悲しい事に俺の肉体はもう死んじまっている。
それ即ち今の俺じゃどうしようもない事を意味している。
女神様も頷いているのだから間違いない。
「そりゃあ神様パワー的な奴で復活させてくれるなら話は別だけどよ……」
いくら神様でも個人の理由で死者を蘇らせる真似などしていいのかという疑問がある。何処かの神話か何かでそれをした結果、収拾がつかなくなり冥界の門とやらが二度と開けなくなったとか言う話を聞いた事があるからな。
それにもし蘇ったとしても俺の肉体はアナザーテイルレッドにやられた傷が原因でもう碌に機能しないような気もするぜ。
妙な所を気にし、不安がる俺に対し、ソーラはあっけらかんと言い放つ。
「うん、だからそうしようと思っているんだけど」
え? マジですか?
これが噂に聞く転生とかそういう奴だとでも言うのか?
拍子抜けしそうになるくらいにはあっさり言い放ったソーラに俺は思わず耳を疑った。
「でも、俺の肉体、多分もう使い物にならないぜ? もしかして新しい肉体をくれるってのか?」
「いや、流石にそれは……できるけどやりません」
「お、おう。じゃあどうすんだよ」
「大丈夫。あなたの肉体はあなたの仲間達がちゃんと元通りに復元してくれているから。だから私はその肉体に魂を戻すだけ。それくらいなら簡単だしね」
お、おう。なんかすげぇ事を言ってのけた気がするがあえてツッコまないようにしよう。
俺としても復活できるのなら願ったり叶ったりだぜ。
「で、ここからが問題なの」
「問題?」
「うん、それはね……」
もったいぶるソーラ。
どんな難しい問題があるのかと思うと俺はゴクリと唾を飲む。
「和輝、あなたがもし現世に戻ったとしても、私にはもうあなたたちを助けてあげることが出来ないの……」
ほーん、つまり蘇った後は自力で何とかしろって事か。
生き返る為に何か代償があるとかそういう訳ではないようでホッとするも束の間、俺はある重大な事に気が付いた。
「っておい……!! それって……つまり、アナザーテイルレッドの野郎は自力でブッ倒せって事か!?」
バツが悪そうにソーラは首を縦に振る。
なんてこった。これは少しばかり話が変わる。
何故なら俺は現実世界にて奴に何度もコテンパンにされているし、なんなら変身アイテムであるテイルドライバーは奴の思うがまま。
つまり、俺がもし現世に蘇ったとしてもアナザーテイルレッドに勝てる保証は全くもってないと言う事になる。
女神様の起こす奇跡をあてにしていた俺からすればこの問題はかなり重い。
だけど……
「わかった。何とかしてやるよ。俺に任せておけってな」
「本当に!? 本当にいいの!? もうこれ以上、私は何も出来ないんだよ!? 無理難題を言っているんだよ!?」
余程、心配だったのかソーラは俺の反応に酷く驚きやがった。
「うっせぇな、自分で言っておいてなんだよ。わーってるって」
「じゃあどうして……」
「んなのアイツの事が好きだからに決まってんだろ。確かに俺はツインテール属性も中途半端であまり褒められるような態度や性格もしちゃあいねぇ。でも、それでも……俺はあいつの事が大好きなんだ。男が無茶をするのにそれ以上の理由がいるかっつーの」
ただ真っすぐ俺は自分の意思をソーラに伝えた。
それを聞いたソーラの表情に笑顔が戻り始める。
「総二とまるで違うけど、熱い所はそっくりだね」
「そうか? 俺なんて総二さんの足元にも及ばないぜ」
「うん、そうね。それは言えてる。女の子の扱いなんて特に」
いい雰囲気が台無しになった気がして思わずずっこける。
いやま、確かに俺は女子の扱い下手くそもいい所だけどよぉ。
まぁ何はともあれ、やる事は決まった。
待ってろよティアナ。今俺が助けにいってやるぜ。
「じゃあ現世へ送るね。ありがとう和輝」
そう言い終えたソーラが神の力を発揮しようとした時、俺は少し気になった事を思い出して制止する。
「てかちょい待ち、少し話を戻すが、さっきあんた、ティアナがかつての自分と同じって言ったよな? それはどういう意味だ?」
先程の発言から察するにつまり、ソーラもまた、ツインテールが原因で悲しい想いをしてきたのに違いない。
神様クラスでも悩む問題。
もしそれを吹っ切るきっかけがあるのならそれを聞いておいた方がティアナを救う上で役に立つ気がする。
「実はね、私もまた、かつてツインテールが原因で悲しい想いをしてきたの」
ソーラは語ってくれた。
この宇宙が生まれた神話とツインテールが原因で引きおこった数々の争い。
それを悲しみ続けたソーラを救ったのはやはりというか総二さんだと言う。
「だからね、私はもう誰もツインテールで悲しい想いをして欲しくない。それは別次元からやってきた子も同じ。その子が悲しむと言うのなら私は出来る限り救ってあげたい」
「そうか……」
だからわざわざ自分の創造した次元とは異なる別次元からやってきたティアナをも救おうとしたのか。
ソーラの想いを聞き、俺は体に力が宿るのを感じた。
「最後に一つ忠告するけど、彼女の持つツインテール属性は強大且つ危険。でも、忘れないで……ツインテールは誰かを救う事も出来るから」
勿論だぜ。誰が忘れる物か。
そう決意した瞬間、俺の意識は光の中に消えていった。
◇
ここは何処だろうか?
もう何度目かわからぬ疑問。
ソーラと別れた俺が目を覚ました場所は見覚えのない暗い部屋。
俺はその部屋の中にあるカプセルのような機械の中で横になっていたみたいらしい。
成程、つまりこのカプセルは俺の肉体を治療した上で保存する装置って訳か。通りで傷一つ付いてない綺麗な肉体を維持できている訳だぜ。恐らくトゥアールさんが用意してくれたのだろう。
ソーラが言っていた肉体はちゃんと復元されているの意味を知り一安心するそんな時、俺は体の震えが止まらない事に気が付いた。
「てか寒ッ!! なんじゃこりゃあ!!」
このカプセル、死体を腐らせないようにする為なのか、中はまるで冷凍庫かって言いたくなるくらいには冷気で充満していやがる。
余りの寒さ故に急速で意識を取り戻した俺は強引にカプセルをこじ開けて外へと飛び出した。
「危ねぇ危ねぇ、危うく凍死する所だったぜ」
折角、蘇らせてもらったのに関係ない所で凍死しちゃいましたなんて言い訳が付かねぇ。
結果、トゥアールさんには悪いがこのカプセルぶっ壊しちまったぜ。
「っていっけね、んな事よりも今はティアナだ!!」
カプセルから抜け出した俺は逸早くティアナの下へ向かう為に動き出す。
暗い部屋の中で出口らしき扉を見つけた俺が扉を開けんとしようとするそんな時、部屋の外から声が聞こえて来た。
「ねぇたっくん、音がしたって本当?」
「絶対にしたっすよ。間違いないっす」
「もしかして涼原君のお化けなんじゃ……」
「華先生、ビビり過ぎ……くっつかないで……」
この声、皆の声だよな? あれ? もしかしてこれって……
そう思った矢先、外から扉が開かれ俺は悠香さん、青葉さん、匠、華先生とご対面する。
「よっ!! 恨めしやってな」
「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!! 出たぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
青葉さんを除いた全員が仰天し大きな声を上げる。
俺としてはやっぱりこういう展開になるよなと苦笑いを浮かべてしまう。
まぁ、当たり前か。だってみんなには俺はもう死んだ扱いになっていたもんな。
「なんまんだーなんまんだー、成仏しておくれーい!!」
「ちょっと華先生!! 気絶しないでください!! いやー!! 来ないでー!!」
「ちょっと、みんなうるさい……」
パニックというレベルを遥かに超えた反応。
正直、ちょっとわるふざけが過ぎたかなと後悔をしつつも今はそれ所じゃないので手早く済ませよう。
「ったく、バーカ。俺は生きてるっつーの!!」
その証拠とばかりに匠の頭を軽くブッ叩く。
さっきまで騒がしかった匠や悠香さんもこの行動のした事でようやく平静を取り戻す。
「え……!? マジで……!?」
「嘘……!? 本当の本当に和くんなの?」
「だから言ってんでしょうが。俺は正真正銘、生きた涼原和輝ですってば」
その瞬間、二人は一斉に抱きついてきやがった。
女である悠香さんは兎も角、男の匠に抱きつかれるのは少し気持ち悪い。
いやまぁ、俺が生き返ったとわかって嬉しいのはよーくわかるぜ。でもよ、流石に二人同時に抱きつかれるのばっかりはちとキツイし苦しいってもんだ。
「ギブギブギブギブギブ!! 苦しいっつーの!!」
「馬鹿野郎!! 心配かけさせやがって!!!」
「わかった。わかったってば!!」
「死んじゃったとわかった時、あたしたちどうすればいいかって!!」
「二人とも、一旦落ち着け!! 今はそれどころじゃねぇんだ!! ティアナがピンチなんだ!!」
ティアナがピンチというそのワードを聞いた事で匠と悠香さんの二人はハッと我に帰り、俺はようやく解放された。
あー苦しかったぜ。死ぬかと思った……
息を整えつつ、俺は状況を整理する。
「とりあえず、俺は訳あって生き返ったんだ。詳しい事は後で話すからよぉ、今はティアナが先決だ。アイツは今どこに居る?」
「それは……」
俺が直ぐにでも向かおうとしているのを察したのか悠香さんは口ごもる。
まぁ当然と言えば当然。相手は一度、俺の命を奪った凶悪な野郎だしな。
だが、青葉さんは違った。青葉さんは恐らくトゥアールさんが用意したであろうレーダーらしき機械を取り出し俺に渡してくれた。
「場所はアナザーテイルレッドが最初に襲撃した場所……。今はトゥアールさんが戦っている……」
「青ちゃん!?」
「そうか……。サンキュー、恩に着るぜ」
何故教えたのと言いたげな悠香さんを尻目に俺は駆けだそうとする。
だが、そんな俺を引き留める奴がいた。
そう、匠だ。
「お前、また死ぬつもりかよ。奇跡か何だか知らねーが、折角、生き返ったんだろ? なのにまた死ぬつもりかよ!!」
「匠……」
「そうよ!! 悪い事は言わないから今度こそトゥアールさんに任せましょう!! これ以上、和くんが傷つく事なんてないのよ!!」
「悠香さん……」
二人とも、今までならこういう時、気持ちよく送り出してくれたって言うのに、今回ばかりは一度俺が死んでしまったのを見たせいか止めに来やがった。
気持ちはわかるけど、俺は行かなくちゃならねぇ。
その想いを伝えようとしたその時、そっと二人を引き上がす人がいた。
「片霧さん、川本君、行かせてあげましょう」
「「華先生!!」」
俺から二人を引きはがした人物。それはさっきまで気絶していた筈の華先生だった。
てっきり華先生には止められるとばかり思っていたのでこれは余りにも予想外と言わざるを得ない。もしかしたらツインテール戦士にしかわからない何かを感じ取ったのかもしれねぇな。
「涼原君、何か策があるんでしょ?」
「いや、んなもんあるわけねぇじゃん」
「え……!?」
固まる華先生。
何だろう、凄く気まずく感じるぜ。
俺はとりあえず華先生に頭を下げた。
「ま、まぁ、とりあえず、絶対に死んじゃ駄目よ。わかった?」
「勿論だぜ先生。俺はティアナも……ティアナのツインテールも……両方とも救ってやる!! 任せとけってなぁ!!」
絶対に死なない。
その決意を胸に俺は駆けだした。
「待ってろティアナ!! お前には俺がいる!!」
夜明けはもう直ぐだ。
そろそろアナザーテイルレッド編もクライマックスです。
長い間、シリアスしてすいません。
この長編が終わればまたちょくちょくギャグ展開を入れていきますので。