俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
凄く今さらですが、感想や評価をくれると嬉しいです。
「ハッハッハ!! 終わりかぁ? テイルホワイト!!」
「くぅ……!!」
響く轟音。飛び散る瓦礫。
繰り広げられるはアナザーテイルレッドとテイルホワイトの因縁の戦い。この世界に辿り着いて以降、何度もぶつかり合った二人の実力はほぼ互角と言ってもいい。
だが、今回ばかりはアナザーテイルレッドの一方的な蹂躙と化していた。
「おらよっと!!」
アナザーテイルレッドはブレイザーブレイドを乱暴に叩きつけんとし、テイルホワイトはそれを受け止めんと即座にツインテールを換装し、シャイニングアームドをソードアームドへと変形し迎え撃つ。
かち合い火花を散らす二つの刃。
だがそれは長くは持たなかった。
「ッ!?」
限界を示すかの如く、ソードアームドの刃に亀裂が走り、その亀裂はみるみるうちに大きく広がっていく。
そして遂に……
「そらぁっ!!」
「そんな!?」
バリンとガラスが砕けるかのような音が鳴ったと思うと、次の瞬間には刃が粉々に砕け散り、おおよそ剣とは呼べなくなった武器がテイルホワイトの手に握られていた。
ある程度、予測していたとは言え、ここまで一方的に折られるとは思っても見なかったテイルホワイトの動揺は大きな隙を生み、それを見逃すアナザーテイルレッドではない。
アナザーテイルレッドはガラ空きとなったテイルホワイトの脇腹目掛けて鋭い回し蹴りを叩きこむ。
「っがはっ……!!」
変身者の身を守る防護膜であるフォトンアブソーバーをもいともたやすく貫通したその威力は手負いのテイルホワイトにとって致命的な一撃とも言える。
苦悶の声と共に血反吐が飛び散り、テイルホワイトは思わず膝をつく。
「それぁっ!!」
膝をついたからといってアナザーテイルレッドの攻撃は終わらない。
アナザーテイルレッドは崩れ落ちたテイルホワイトの身体を蹴り飛ばしたのだ。
「がぁっ……!!」
「ママ!!」
倒れ伏すテイルホワイトに駆け寄るティアナ。
それに気がついたテイルホワイトは体を起こしながら強気な笑顔を向ける。
「だ、大丈夫です……だから総愛……あなたは……」
息も絶え絶えとテイルホワイトが全然大丈夫ではないのはその錆色に染まった姿を見ればよくわかる。
無理もない。
何故なら今のテイルホワイトは弱体化形態であるウィークチェイン。精神的に弱っている時や何らかの不調で全力が出せない時になってしまう形態であり、それはツインテールを緩く結んでしまったが故にいつ解けてもおかしくない極めて低出力な形態なのだ。
「どっせいッ!!」
「ッ!!」
間髪入れずに攻撃を再開するアナザーテイルレッドの気配を感じ取ったテイルホワイトは優しくティアナを突き飛ばすとその方向とは逆の方向へと大きくステップを踏む。
ブレイザーブレイドの一撃が先程まで立っていた地面を深く抉った。
「ママ!!」
「だ、大丈夫です!! トゥアールママはこんな所で負けません!!」
そう声を大にするテイルホワイトだが、ティアナはそれがただの強がりだと知っている。
ティアナの不安をよそにアナザーテイルレッドはテイルホワイトに向かって声をかける。
「おいおいトゥアール。まさかもう終わりじゃねぇよな?」
「はぁ……はぁ……当たり前です……!!」
「そうこなくっちゃなぁ!! 狩りがいがねぇ!!」
始まる第二ラウンド。
テイルホワイトはまず、戦場をティアナ出来る限り遠ざけんとすべく自ら距離をとり、アナザーテイルレッドはそれを追う。
暗い街中を素早く移動しつつ、ある程度に距離を稼いだ事を確認したテイルホワイトは今度は黄色のレイヤーをツインテールに換装し、シャイニングアームドをガンアームドへと変形させる。
そして、その銃口をアナザーテイルレッドへ向ける。
「はぁッ!!」
裂帛の叫びと共に放たれる無数の光弾。
その勢いはまるで弱体化しているのを感じさせない程であり、まるで生きているかのようにアナザーテイルレッド目掛けて自在に飛び回り、それぞれが別の方向から狙う。
これを喰らえばいくらアナザーテイルレッドといえど無事ではすまない。
そう思っての攻撃だったのだが……
「なんだなんだぁ? 鬼ごっこの次はコレかぁ? 面白くねぇなぁ……」
アナザーテイルレッドは飛んでくる光弾を見てもまるで焦りもせずにゆっくりと浮き上がる。
そして、全身のブースターをフル稼働させるとテイルホワイト目掛けて一気に飛翔する。
それは自分から光弾の雨の中に飛び込むというまさかの行動。
避けるか防御するかの二択だと踏んでいたテイルホワイトもこのまさかの行動には驚きを隠せない。
「なっ!! 真正面から!!」
言っておくが、いくらウィークチェインとは言え、テイルホワイトのテイルギアは他のテイルギアを優に超える出力があると言っても過言ではなく、弱体化したとは言えその攻撃を真正面から大量に受け止めれば無事ではない。
先程、ソードアームドが折られたのはあくまで力と力をぶつけ合ったからであり、今回のように四方八方から飛んでくる光弾を防御せずに受け止めて無事でいるなど不可能なのだ。
なのにアナザーテイルレッドは全く持って臆することなくその弾幕へと突っ込んでいく。
その姿勢に防御などと言う生ぬるい行動は存在していない。
最短距離を一気に詰めてブッ叩くという極めて脳筋思考なやり方だ。
「バカな!! いくらあなたでも、こればかりは!!」
「おおっと、そうは問屋がおろさねぇってな!!」
ニヤリと笑うアナザーテイルレッド。
その宣言通り、飛翔するアナザーテイルレッドは飛び交う光弾の群れを体をわずかに逸らすだけで一発一発を紙一重で躱していった。
高速で飛びながら意思を持ち追いかける光弾を避ける姿はまるで映画やアニメに出てくる高速戦闘機その物。
困難である筈の空中での姿勢制御と高速飛行を同時にやってのけるその様には驚愕するしかない。
「これがオレのツインテールがなせる技ぁ!! 惚れ惚れするだろぉ? お前も!!」
アナザーテイルレッドがここまでの動きを出来るようになったのは、偏に飛行しながらどうツインテールを映えるように出来るかを研究したかに他ならない。
ツインテールを空中機動制御にまで活用し、それでいて形を完璧に崩さないで維持するのはそう易々と出来るような事ではないのだ。
「くっ!!」
このままでは不味いと判断したテイルホワイトはガンアームドのトリガーを引き、さらなる弾幕を形成する。
こればかりは体を僅かに逸らす程度では回避できない。
それほどに密度の濃い弾幕。これならただ真っすぐ突っ込むだけのアナザーテイルレッドはひとたまりもないだろう。
だが、アナザーテイルレッドはなおも不敵な笑みを浮かべ続け、そして――
「甘すぎるぜぇ!!!」
なんとアナザーテイルレッドはスピードを全く落とさずに体を大きく回転する所謂バレルロールと呼ばれる飛行方法でその弾幕の僅かと言える隙間をかいくぐってみせた。
一本の細い穴をくぐるかのようなその正確すぎる動きは思わず感嘆してしまう程であり、テイルホワイトには二度目となる驚愕が襲う。
弾幕をかいくぐったアナザーテイルレッドはそのスピードを全く落とさずに一気にテイルホワイトへ急接近し、すれ違いざまにブレイザーブレイドで脚を掬い上げるかのように切り上げる。
「しまった……!!」
せめて万全の状態ならば対応できたのにとそう悔やんでももう遅い。
宙に浮かされたテイルホワイトへアナザーテイルレッドは攻撃を加速させる。
「ヒャッハー! そらそらそらぁッ!!」
鈍器を振るうかのように叩きつけられるブレイザーブレイド。
横薙ぎ掬い上げと力を籠めた一撃の数々がテイルホワイトの体を傷つける。
空中に浮かされたが故に姿勢制御もままならない状態のテイルホワイトでは打つ手がなくただ悲鳴を上げるしか出来ない。
「コイツで終わり!!」
フィニッシュとばかりにアナザーテイルレッドはブレイザーブレイドを思いっきり縦に叩きつける。
地面に叩き落されたテイルホワイトは街中に巨大なクレーターを作り上げた。
◇
「へっ、全盛期を過ぎ、手負い且つ弱体化した今の状態じゃこの程度が限界か……他愛ねぇな」
クレーターの中心で沈黙するテイルホワイトを見てそう吐き捨てるアナザーテイルレッド。
そんな中、音を聞いて追いかけて来たティアナがその惨状を見て言葉を失った。
「嘘……ママも……」
ティアナにとっての最後の希望であるテイルホワイトの敗北。
それを絶望と言わず何と言う。
膝から崩れ落ちたティアナを目にしたアナザーテイルレッドはニヤリと笑うとクレーター中央で横たわるテイルホワイトのツインテールを掴み持ち上げてクレーターから飛び出すととティアナの傍へと投げ捨てる。
「見たか総愛? これがお前を守ろうとした奴の末路だ。お前がいるから皆不幸になっていく。そうだろ?」
「私がいるから……」
絶望に暮れるティアナ。
そんなティアナに追い打ちをかけるべくアナザーテイルレッドは言葉をかける。
「それにな、トゥアールも本当はお前なんかいなけりゃいいって思ってるぜ」
「え……」
「なぁに、お前も知ってるだろ? 元々、トゥアールは総二の奴を愛していた。なんせ初恋の相手且つ、命を救ってくれた恩人だからなぁ。好きになるのも納得だぜ。なのにその総二を奪ったのはお前の母である愛香ときたんだぜ」
本来の歴史とは違うティアナが生まれた未来。
ティアナはそのもう一つの弊害を察してしまう。
「ここまで言えばわかるだろ? つまり、トゥアールがお前を守るのは大好きだった総二に嫌われたくないからであり、本当はお前の事なんかこれっぽちも愛していない。寧ろ、お前なんかが生まれた結果、本来の歴史通りにならなかったが故にお前が憎いって心の中では思っているはずだぜ」
さらなる絶望がティアナを襲う。
もう嫌だ。もう何も考えたくない。このまま早く楽になりたい。
そう思うティアナの目の前には先程、トゥアールに取り上げられた筈のテイルブレスに酷似した黒の装置が置かれていた。
言うまでもなくこれは全てアナザーテイルレッドの仕業であり、それに気が付きながらもティアナはその装置を手に取った。
「さぁ、早くてめぇのツインテールをオレに寄越しな。そうすりゃ全てが終わるってもんだ」
全てが終わる。
それは文字通り、ティアナの全てが終わる事を意味している。
自らを構成する属性力を自らの手で手放す先に待つのは死による終焉しかない。
それを知りながらニタニタと笑い今か今かと待つアナザーテイルレッド。
だが、それに待ったをかける者がいた。
「させません……。そんな事は……絶対にさせません……!!」
膝をつきよろめきながらも立ち上がったのは他でもないテイルホワイトであった。
ティアナの目に涙が浮かび、アナザーテイルレッドの顔がつまらなさそうに歪む。
「ママ……!!」
「チっ、まだ生きてやがったか……!!」
「当たり前です……!! 娘を前にして死ぬ親が何処に居るんですか……」
それは愛する娘を守りたいと言うただ一つの意思。
絶対に折れてはいけない一つの心その物。
だからこそ、アナザーテイルレッドは面白くない。
「何が娘だぁ? 血のつながってない癖に何を寝ぼけた事言ってんだよ!! 所詮てめぇは愛香に負けた負け犬の一人だろうが!!」
先程アナザーテイルレッドが語ったが、確かにこのトゥアールは恋に破れた歴史を辿っている。
幾ら総二の娘の一人である
だがそんな事はトゥアール自身が一番よく知っている。
「はい……。確かに私は総二様と結ばれていない言わば負け犬。負けヒロインです。でも、総二様や愛香さん、それに慧理那さんやイースナたちみんなは……一人だった私にとってかけがえのない家族同然です!! それに……総愛は……」
トゥアールの脳裏にはあの日の事が蘇る。
愛香が総二に告白されたと聞き、その返事を他ならぬ愛香自身が保留にしてしまったと知った時の事だ。
トゥアールは失恋のショックと悔しさを胸にしまいながらも涙一つ流さずに愛香の下へ行き、その事について声を荒げた。
どうしてこんな時にそんな事をするんですか!! 私に情けをかけるつもりですか!!
いつもは反論し直ぐに手を出す愛香もこの時ばかりは後ろめたさからなのか何もしてこなかった。
そんな愛香に腹を立てたトゥアールはガラにもなく、愛香の頬を打ったのだ。
打たれた事でカッとなる愛香に対し変身しての喧嘩を提案するトゥアール。
そして始まるツインテイルズ内における最大の喧嘩。勝利した方が相手の言うことを聞くその争いは三日三晩、誰にも知らさせずに秘密に行われ、それは今までのどんな戦いよりもある意味では熱い物であり、今でもトゥアールは鮮明にその時を覚えている。
結果はあえて言わないでおこう。
だがしかし、これが最後の一押しとなり、愛香が総二のプロポーズを受けるに至ったのは事実。総二と愛香が結ばれ、ティアナが生まれるようになったのは他でもないトゥアールのおかげであったと言えるのだ。
そして何よりも総愛は……
「私が名前を与えた!! 私はあの娘にとっての親も同然なんです!!」
「!?」
ティアナ、本来の名前である総愛。
それは愛香たっての希望でトゥアールが名付けた物だった。
総二の総と愛香の愛を組み合わせた文字通り、二人の特徴を受け継ぐ娘の名前である総愛。正史における総二の娘である双愛とは字こそ違えど読みが同じのそれは正に奇跡と言って他ならない。
総愛はある意味ではしっかりとトゥアールの娘でもあるのだ。
「いいですか総愛。あなたはどんなことがあっても必ず私が守ってみせます。この気持ちはあなたが誰から生まれたかなんてそんなの関係ありません。私はあなたがこの世に生まれてきて良かったから守るんです」
「ママ……!!」
抱きつくティアナとそれを優しく抱きしめるテイルホワイト。
嘘でも何でもない本当の母娘の形がそこにはある。
思惑が外れたアナザーテイルレッドはこの次元に来て初めて顔を悔しさで歪ませる。
「そうかいそうかい……!! だったら守って見せろよぉ!!」
もはや手を抜く必要なし。
そう判断したアナザーテイルレッドは自身の周りに
これは不味いとそう判断したテイルホワイトはティアナを守るべく自らが盾となる。
「斬り刻め!! セイバー!!」
飛び交う無数の刃。
もう既に一度は破った技だが、今回は前回よりも状況で見れば悪化している。
手負い且つ弱体化形態であるウィークチェインなのはそうだが、それよりも今回はティアナを狙う刃をも迎撃しなければならないと言うのが厄介だ。
いくらツインテイルズ最強格の実力者いえど、無防備な者を守りながら戦うのは余程の実力差が無ければ不可能に近い。ましてや相手は素の実力から互角レベルの相手であるアナザーテイルレッドだ。
瞬く間にテイルホワイトは追い詰められていく。
「くッ……!!」
「ヒャッハッハッハッハ!!! 威勢だけのようだな!! トゥアール!! 守りたいのならしっかり守れよ!! ええ?」
襲い来るアナザーテイルレッドと同時に来るセイバーを捌きつつ、ティアナを狙う別のセイバーをも迎撃しなければならないその戦闘。
防戦一方ながらもそれを完遂しているのは偏に母の愛がなせる技。
とうに限界を超えて動くテイルホワイトだが、限界は遂にやってきてしまう。
「あばよ総愛!!」
「なっ!?」
「なーんてな!!
ブレイザーセイバー10基全てがテイルホワイトではなくティアナを狙うという行動。
それはティアナをターゲットとした攻撃と思われたが、それはあくまでテイルホワイト自身を狙った囮であった。
わかっていても引っかからないといけない罠に飛び込んだテイルホワイトへアナザーテイルレッド渾身の一撃が炸裂。禍々しく変形したブレイザーブレイドがテイルホワイトを吹き飛ばした。
「ぁぁぁッ!!」
「ママ!!」
見るも無残とも言える程にボロボロになったテイルホワイト。
それを見て叫ぶティアナだが、今は他人の心配をしている場合ではない。
アナザーテイルレッドは勝利を確信して刃を振りあげる。
「総愛、今更だが俺がどうしてテイルドライバーに使用者とお前の心を合わせないといけないシステムを残したか知っているか? それはな、いざという時にそいつを殺してお前さんの心をへし折る為だよぉ!!」
その最悪のカミングアウトと共にその刃が振り下ろされた時、ティアナのツインテール属性はアナザーテイルレッドの物となる。
これまでいくつもの世界を渡り、多くのツインテール戦士を散らせてきたその一撃を躱す手立てはなく、頼みの綱のテイルホワイトはダウンしている。
「誰か……助けて……!!」
ティアナの悲痛な叫び。
もはや万事休すか……と思われたその時、暗い街中に大きな音が鳴り響いた。
「ん、何だぁこの音? バイクかぁ?」
道路交通法をガン無視しているであろうスピードとそれに伴う凄まじい轟音。
それがどんどんこちらに近づいてくる。
そして次の瞬間、その人物はやって来た。
「待たせたな!!! ティアナ!!!」
◇
「か、和輝……!!」
ティアナの歓喜と驚愕に満ちた声が聞こえてくる。
俺はその声に応える為に疾走する。
「な、何だとぉ!? 何故てめぇが!?」
予想だにしていなかったのか、俺の登場を見て驚くアナザーテイルレッドの野郎。
当たり前だ。
なんせ、奴から見れば俺は既に死んだ人間なのだからな。
俺はそんなアナザーテイルレッドの野郎目掛けてアクセル全開。
おやっさんから受け継いで以降、今に至るまで共に走り抜いた愛車に別れを言いつつ、俺はバイクを飛び降りてそのままミサイルかの如くアナザーテイルレッドの野郎へぶつけてみせる。
「チっ!! 猪口才な真似を!!」
意表を突くことが出来た事もあり、バイクは無事に命中こそしたが、そんな程度では奴を倒すことなど出来なかった。
寧ろ逆に弾き飛ばされた事でバイク本体が大爆散してしまった。
「やっぱし、倒せないよな……」
さぁて、カッコよく登場したはいいが、この後はどうっすかなぁ……
正直、何の策もありゃしない。言ってしまえば俺がここにやって来た事は勇敢と言うより最早無謀と言っても差し支えない。
気合などといった根性論だけで悪を倒せたら世話ねぇしな。
ま、だからと言って何もしないのは俺の趣味じゃねぇってな。
「和輝……!! あなた本当に和輝なの……!?」
駆け寄って来たティアナがそう尋ねてくる。
何だか数分前も悠香さんたち相手に似たような事をした気もするので、俺は敢えて今回はカッコつけてみせる事にしよう。
「あたぼうよ。俺は正真正銘、生きた涼原和輝様だ。地獄の底からよm――」
「うっ……わああああああああ……」
「だぁーッ!! いい所なんだから泣くんじゃねぇ!!」
今までで最大とも言える量の涙を流すティアナ。
嬉しさとか色々あるのはわかるけど、折角の雰囲気って奴が台無しだぜ。
折角、カッコよく決めてやろうと思ったのによ。
「バカバカバカバカバカバカ……!! 何よ!! 生きているのならもっと早くに言いなさいよ!!」
「しゃーねぇだろうが……!! 俺だってさっき蘇ったんだからよ」
「五月蠅い五月蠅い!! 私がどんな想いして……どんな想いしてツインテールを手放そうとしてかも知らない癖に!!」
「知るか、んなもん!! てか何、ツインテール手放そうとしてんじゃボケぇ!!」
「そんなの私の勝手でしょ!!」
「勝手じゃねぇ!! んなことしたら俺が嫌だ!!」
「何よそれ!! 私の方が嫌よ!!」
「じゃあ、いいだろ別に!!」
「良くないわよ!!」
さっきまでの雰囲気を木っ端微塵にするかのように展開される痴話喧嘩。
周囲の状況をまるで気にしていないそれはある意味では俺たちらしいとも言える。
何だか、この素直になりきれないこの気持ち……
すげぇ生きてるって感じがするぜ。
「どんなトリックがあったのか知らねぇが、登場して早々、夫婦漫才とは随分と舐めた真似してくれるじゃねぇか……!!」
「「誰が夫婦だ(よ)!!」」
二人同時に綺麗にハモったその言葉を受けて思わず、目を丸くするアナザーテイルレッドの野郎は、ここまで作られてきたシリアスな空気がぶち壊されるとはまるで思って見なかったようであり、奴の思惑をぶっ潰せたみたいですげぇ気持ちがいい。
俺は一先ずティアナとの喧嘩をやめ、ティアナに黙ってくれと頼みこんだ後、アナザーテイルレッドの野郎と向きなおる。
「てめぇは女神様が助けてくれたって言ったら信じるかよ」
「女神様だと? ……ッ!? まさかこの次元のソーラが手を貸したって訳か……!!」
どうやらアナザーテイルレッドの野郎は女神ソーラの事を知っているようだ。
まぁ、ティアナたちがいた元の次元にもソーラはいるみたいだし当然と言えば当然か。
「成程、全てが繋がった……!! あの時、総愛を逃がす為に別次元へと送るゲートを開いたのも全てお前の仕業だったって訳か!! ソーラ!!」
フッフッフ、アーッハッハッハッハと実に悪役らしく笑うアナザーテイルレッド。
俺には何のことかさっぱりわからねぇが、アイツからすれば長年の疑問が解決して気持ちがいいのだろうな。
そんな事を考える俺に対し、ひとしきり笑い終えたアナザーテイルレッドはブレイザーブレイドの切っ先を向けた。
「まぁいい、どうあがこうがこのオレの勝利は揺るがない。何故なら坊主!! てめぇは変身なんぞ出来やしないただのガキだ。それに頼みのソーラも坊主を蘇らせるのが精一杯で、それ以上の奇跡を起こすことは出来やしない。そうだろ?」
クッソ、図星か……
かくなる上はハッタリでもきかせて撤退に追い込もうかとでも思ったがそれは無理そうだ。
さて、どうする?
このままじゃあの世に逆戻りだぜ。
「生き返ったのならもう一度殺してやる!! そうすれば何もかもが終わりだぁ!!」
「クッソ……!!」
やはり俺では駄目なのか。
信じて送り出してくれたソーラに謝りをいれそうになるそんな時、アナザーテイルレッドを止める者が復活する。
「させませんと……言ったはずです!!」
「トゥアールさん!!」
「ママ!!」
見るだけで痛々しい有様となったテイルホワイトがもう限界である筈の力を振り絞り、アナザーテイルレッドを食い止め引き離す。
驚く俺たちに向かってテイルホワイトはこう告げる。
「何とか食い止めます!! その間に奇跡を起こしてください!!」
奇跡を起こすという具体例も何もないふわっとした表現。
理知的で理論派なトゥアールさんとは思えぬ発言ではあるが、その発言には確かな説得力がある。
そうだ……!! やるしかねぇ……!! やってやらぁ!!
「行くぞティアナ!! 変身だ!!」
奇跡って言うのならやっぱこれしかねぇだろ。
俺は無茶を承知で言って見せるが、当のティアナの顔つきは暗い。
「変身って……そんなの無理よ!! テイルドライバーはもう動かないし、私のテイルブレスも……!! それに奇跡なんて起きないのはさっき和輝も証明したはず……!!」
「うるせぇ!! 奇跡ってのはな!! 起こせない事を起こすから奇跡って言うんだろうが!! 諦めて何が起こせるんだよ!!」
「でも……奇跡なんて……」
クッソ……
俺の知っているいつものティアナならこんな時、意外とのってくれるものなのだが、今回ばかりは相手が相手であるのに加えて、一度奇跡もなにも起こせずに辛い想いをしたというのが原因になっているのだろう。
しゃーねぇ、こうなったら俺の想いをぶつけたらぁ!!
「ティアナ……奇跡なんて起きないって言うけどよ、最大の奇跡なんてもう起きてんだろうが」
「え?」
「だってよ、俺たちって元々は生まれた世界どころか次元すら違う。言ってしまえば違う時を生きる接点何てまるでないんだぜ。なのに俺たちはこうやってめぐり逢い、ツインテールっていう一つの大好きの為に共に戦ってきた。それってよ、すげぇ奇跡じゃねぇか」
ティアナがこの次元にやってきて俺と出会い、共にエレメリアンだとかいう変態怪人共と戦う。
言ってしまえば、そうなる確率なんて何憶分の一とかそのレベルですらない。
それは言わば、ツインテールという髪型がこの世に生まれて皆に親しまれるようになる奇跡その物。
俺たちはそもそも、出会いからして奇跡的な物だったんだ。
「でも、私……私がツインテールを好きでいるとみんなが不幸に……」
「んなこと俺が知るかよ。少なくとも、俺は不幸でも何でもない。寧ろ幸せだ」
こんなにも可愛い彼女が大好きなツインテールをしてくれてるんだからなと小声で付け足しておく。
こればかりは恥ずかしくて声を大にすることが出来ない。
「兎に角だ!! 俺はお前のツインテールが好きだ!! 大好きだ!! それはこれまでも……これからも……何も変わらねぇ!!」
だから……だからよぉ……
「俺と一緒に……二人で……ツインテール結ぼうぜ」
それの返事に言葉などいらない。
ティアナは今までずっと腕につけてきたテイルブレスを俺に差し出した。
「結ぼう……今度は私も……本当の意味で一緒に……」
「当たり前だぜ!!」
その瞬間、奇跡は起きた。
ティアナの持っていた紫のテイルブレスともう一つ持っていた黒いブレス。
その二つが混ざり合い、テイルドライバーとも違う新しいベルトが神々しい紫の輝きと共に出現。
そのベルトは一つから二つになると、俺たち二人の腰に装着される。
「行くぞティアナ!!」
「ええ!! 行くわよ和輝!!」
スイッチを押す場所だけが反対の統一されたデザイン。
俺のは青紫でティアナのは赤紫のラインが特徴だ。
俺たちは二人同時に息の合った構えを見せる。
「チィッ!! させるかぁ!!」
その様子を見ていたのか今まで食い止められてきたアナザーテイルレッドが咄嗟の妨害にかかる。
だがしかし、テイルホワイトがそれを許さない。
「行かせません!!」
シャイニングアームドを叩きこむテイルホワイト。
アナザーテイルレッドはビクともしないが、その役割は確かに果たしている。
「この負け犬がぁ……!! 邪魔ばかりしやがって!!」
「言いましたよね。させませんと」
勝てないが食い止める事は出来る。
テイルホワイトは自らの想いを解き放つ。
「今、あの娘は私の出来なかった事を成し遂げようとしている。生まれた時間も生まれた世界も違う想い人と出会い、結ばれるという事を……!! それを……仮にも母を名乗る私が守れなくてどうするんですか!!」
再びテイルホワイト渾身の一発が炸裂。
アナザーテイルレッドは邪魔だとばかりに振り払うが時すでに遅し。
俺たちの準備は完了した。
「「デュアル!! テイルオン!!」」
紫の旋風が巻き起こり、俺とティアナの二人の身体が一つに混ざり合って一つの新たなる少女の姿へと変身を遂げる。
それは究極とも違う俺たちだけの二重変身。
名づけて極限のツインテール。
今、テイルバイオレット最強の姿が顕現する!!
108話にして遂に最強形態登場。
と言っても活躍は次回に持ち越しです。すいません。