俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第11話 学園のティアナ

汗属性(スウェット)に栄光あれぇぇーー!!」

 

 もの凄く間抜けな断末魔と共に炎が人の姿のような形をしたエレメリアンがストームスライサーによって爆散していった。

 初めてバアルギルディと戦った日以降、アルティデビルの活動が随分と活発だ。少なくとも二日に一回のペースで戦闘を行っている。

 今回を含めてもこれでで10体目だ。いくらなんでも多い。こういうものは一週間に一度のペースで出現するものじゃないのかよ……まぁ、アニメや特撮のみすぎと言われればそれまでだが。

 

「お疲れ様、和輝」

 

「お疲れ~~い」

 

 ティアナと匠は戦いを終えた俺を迎えてくれた。回収した属性玉を渡し、俺たちは帰路に立つ。

 マルコシアスギルディの一件以来、匠もバイトがない日は積極的に俺たちの戦いについてくるようになった。

 居ると騒がしいけど個人的に元気は沸くのでそれなりにありがたい。本人は賑やかしではなくティアナの護衛らしいけど……

 

「やっぱし、かっけぇなぁ。テイルバイオレットの正体がお前じゃなかったら付き合いたいレベルだぜ」

 

 この様だ。とてもじゃないが護衛にきている奴が言う台詞ではないことは確かだ。

 

「てかお前にはヒカリちゃんがいるだろうが、気持ち悪い上に二股上等かよ」

 

「二股というな二股と。こういうのはハ―レムっていうんだよ、ハーレム。俺はいつの日か可愛い女の子8人位のハーレムの中心になりたいんだ。それが俺の夢だ」

 

 ハーレムねぇ? 俺が言えた話ではないがこんなこと言ってるから彼女がいつまで経っても作れないのだろう。

 女の子2、3人のハーレムですら厳しいというのに女の子8人か……土台無理な話だ。

 

 「希望としては健気な幼馴染、上品なお嬢様、ヒカリちゃんのようなトップアイドル、エロい科学者、熱血漢な俺っ子、双子のお姫様、後は華先生みたいな年上で巨乳な先生。これできまりだ」

 

 随分と具体的な希望だな、おい。そんなハーレムあるわけないだろ。それがもし実現しているのならハーレムの中心にいる男の顔を見てやりたい。

 てか華先生を狙うとか命知らずなのか? 山村華ファンクラブの恐ろしさは中々のものだと専らの評判だぞ。

 

「ん、ちょっと待て!! 幼馴染って俺になるだろうが!!」

 

「あ」

 

 上機嫌だった匠は口を開けたまま硬直し、汗が額から滝かと思うくらいの勢いで流れおちていた。もの凄く焦っているのが見てわかる。

 

「しまったぁぁぁぁーーーー!!!!」

 

「うるさいわ!!」

 

「かつどんっ!!」

 

 渾身の叫び(ツッコミ)とともに放たれた俺の拳が頬にクリーンヒットし、意味不明な呻き声と共に匠は宙を舞った。

 マルコシアスギルディの一件以来、俺たちはより深い絆を結んだ。だからこれも許してくれるだろ。

 

「……和輝、いい感じにまとめようとしてるだろ……」

 

 匠はそう言い残して気を失った。合唱。

 まぁ、加減したんだし、許してくれよ。

 今まで静かだったティアナは匠が黙ると同時に話しかけてくる。

 

「それにしても今回も中々厄介だったわね」

 

「匠がか?」

 

「エレメリアンよ、エレメリアン!!」

 

 ティアナの奴、急に話を変えるもんだから匠のことかと思ってしまっただろうが。まぁ、振り返ってみれば今回のエレメリアンも汗、汗うるさい変態エレメリアンだったな。

 全身を燃やして周囲を熱くさせる能力が厄介この上なかったけど……

 エレメリアンにも二つのタイプが存在している。一つはアンドラスギルディやマルコシアスギルディのような自らの属性を優先せずに襲い掛かってくる典型的な悪の怪物のようなタイプ、もう一つは今回のような自らの属性に忠実で変態であることを隠そうとしない本来想像するような悪の怪物と全く違うタイプ。

 戦ってみた感想としては前者の方が直接的な戦闘力に優れ、後者は特殊能力が厄介な者が多い、そんな印象だ。

 マルコシアスギルディ以降は後者ばかりが現れている。ティアナは後者のほうがエレメリアンらしいとは言っていたし、12年前現れたアルティメギルのエレメリアンもそうらしいがどうも腑に落ちない。

 

「今日も何ともなかったけどさ、俺たちこんなのでいいのかね?」

 

 マルコシアスギルディの初戦以降、バアルギルディの姿は見ていない。

 それが唯一の不安点であり、不満点でもあった。

 

「いいんじゃねぇの。考え過ぎず、ふんわかいこうぜ」

 

 何時の間にか匠は復活していたらしく会話に参加していた。

 頬が赤く腫れてはいない所をみるに回復力が高くなっているような気がする。

 

「ハーレム属性とかいるのかなぁ」

 

 匠、まだその話を引っ張るのかよもう飽きたぞ、ハーレム。

 

「あるわよ、ハーレム属性。ほら」

 

 そう言うとティアナはテイルブレスから属性玉を取り出して渡してきた。

 受け取ってみると固有名詞が頭の中に流れ込んでくる。

 

多愛属性(ハーレム)

  

 意外や意外、ハーレムなんてものにも存在しているのか。属性力とは相変わらず奥が深いな。

 

「ハーレムなんて属性を持つエレメリアンはきっとチャラいに決まってる。絶対だ」

 

 匠は自信満々に言っているがそんなに安直なものなのかね? 俺にはそうは思えない。

 

「ついたわ、じゃあね」

 

 そうこう言っている内に俺たちはアラームクロックの前についていた。

 時刻は午後8時前、アラームクロックはとっくに営業時間を終えている。

 

「じゃあね~ティアナちゃん~」

 

「じゃあな」

 

 匠は手を振って別れの挨拶を繰り出す。俺もすかさず後を追う。

 

 

 

 

 俺たちは誰一人として気づいていなかった。

 ここ最近、エレメリアンとの戦闘を近くで見ていた影に……

 

 

 

 

 アルティデビル基地の大ホール。

 相変わらず大ホール内は荒々しく下品な声が支配していた。

 

「アミ―ギルディがやられたらしいぞ」

 

「所詮、アミ―ギルディなどではテイルバイオレットを倒すなど」

 

「夢のまた夢!!」

 

 ここ最近、エレメリアンたちの活動は活発其の物だ。ほとんど毎日一体ずつ出撃しては倒されている。

 この状況、エレメリアン側からすれば悲しんだり、悔しがったりするのが普通。この現状を嬉しむことなど本来ありえないことなどだが、現在のアルティデビルの実質的なリーダー格、バアルギルディは上機嫌であった。

 その様子が気になったアガレスギルディはバアルギルディに声をかけた。

 

「随分と嬉しそうですな、バアルギルディ殿」

 

「アガレスギルディ、君か。驚かせないでくれたまえ」

 

 不意打ちにも近い形ではあったがバアルギルディの機嫌は崩れていない、依然上機嫌だ。

 

「教えてくれぬか? 何故、バアルギルディ殿、あなたはそんなに嬉しそうなのじゃ?」

 

「私が嬉しそうな理由か? なぁに簡単なことさ。あれを見たまえ」

 

 アガレスギルディの質問に対して気前よく答えるバアルギルディは大ホールの一角を指さした。

 アガレスギルディは指さした方向を凝視する。

 そこで繰り広げられたのは次の出撃は自分だと言い張る低次元な言い争い。

 

「次は俺だ。何故なら俺にはテイルバイオレットを討てる自信がある!!」

 

「いや、ここは拙者が。テイルバイオレットに浴衣の素晴らしさを教えなければ」

 

「泣きぼくろが僕を呼んでいるんだ!! 僕に行かせてくれ!!」

 

「それなら、俺っちだって多くの三つ編みに呼ばれているぜ」

 

 エレメリアンは属性力の化身だ。強くなればなるほど我が強くなり、同じエレメリアン同士で衝突してしまう。

 必ず、一人で出撃させるのは仲間割れをケアするためだ。

 アルティデビルのエレメリアンはアルティメギルのエレメリアンと比べても攻撃的で我の強い者が多いので対策は必須であった。

 さて話を戻そう。

 さきほどの状況を見てもアガレスギルディは全く理解できなかった。再び、目線をバアルギルディに向ける。

 

「どういうことなのじゃ?」

 

「なんだ、見てわからないのか? 今の彼らの心に慢心や油断といったものは存在していない。そのことが私は嬉しいのだ」

 

 アガレスギルディはなるほどと手をポンと叩く。

 確かに以前は人間を見下していた連中は多かったが、あの中にはその時の連中もいる。その姿からは慢心や油断は感じなかった。

 度重なる連敗が自らの慢心をへし折ったのだろう。

 

(まあ、テイルバイオレットが力をつけてきているのが嬉しいのもあるのだがな……)

  

 バアルギルディは心の中で呟いた。

  

 

 

 

「おはよーさん!!」

 

「はいはい、おはよう」

 

 次の日の朝、教室の自分の席に着く成、匠の喧しいおはようが飛んできた。朝ということもあり、テンションが低い俺は淡泊に返す。

 俺は朝が苦手だ。別に夜遅くまで起きているとかではない、昨日だって11時には寝床に着いた。ただただ苦手なのだ。

 

「ふぁぁ~」

 

 大きな欠伸が出てきた。

 寝言が聞かれてしまうのは嫌だが寝れるのならもう一度寝たい。今日はいつにも増して睡魔が俺を襲ってくる。きっとエレメリアンとの連戦が体に応えているのだろう。そうに違いない。

 睡魔と戦っている俺に匠はニヤニヤしながら話かけてくる。

 

「未だにお眠な和輝に朗報だぜ、今日このクラスに転入生が来るらしいぜ!! しかも女子って話だ」

 

 匠の奴、妙に上機嫌だと思ったらそういうことか。

 悪いが今はそれどころじゃない、ホームルームが始まるまでのこの僅かな時間を大事な睡眠に費やさければならない。

 こんな4月も終わろうとしているのに転入生など珍しいが、全くといっていいほどに興味が沸かない。

 

「悪いが匠、眠たいんだ寝かせ――」

 

「噂ではその転入生、ツインテールらしいぜ」

 

 マジで?

 匠の放った一言は俺の意識を覚醒させるには十分すぎた。

 眠る為に頭を埋めようとしていた俺の体はバッと飛び起きた。

 

「やっぱし、食いつくんだな。流石、ツインテール馬鹿」

 

「うるせぇ、そろそろ起きたくなったんだよ」

 

 こう口が言っても体は正直だ。体が勝手にワクワクしているのがわかる。

 ツインテールか……。ティアナ以外のツインテールをした女の子を最近あまり見ていない。

 昨日戦ったエレメリアンなどマルコシアスギルディ以降のエレメリアンはツインテール属性以外の属性も狙っているようなので余計ツインテールを見る機会が減っている。

 ニュースでテイルバイオレットの影響でツインテールをし始めた人が増えていると聞いた時は心の中でガッツポーズをするくらいには喜んだのに実際にツインテールをしている人はほとんどみなくてガッカリした覚えがある。

 

「和輝、お前そんなにツインテールが好きなら変身すればいいんじゃねぇの? それくらいティアナちゃんも許可してくれるだろ」

 

 ツインテールが見たいのなら変身した自分のツインテールを見ればいい。匠の提案は最もだが俺からしたらそれは違う。

 

「俺は女子の髪型としてのツインテールが好きなだけで、ツインテールその物が好きなんじゃないんだよ。だから幾らテイルバイオレットのツインテールが素晴らしくても俺が変身している以上、それにそこまで惹かれないの」

 

 というかこの世にツインテールその物が好きな男なんているのか? 

 マルコシアスギルディは俺よりも強いツインテール属性を持つ男は存在すると言ってはいたが、流石にツインテールなら何でも愛せる男なんていないだろ。

 

「おはよう~みんな~」

 

 そうこうしてると担任が教室に入ってきて、匠も自分の席に戻っていく。担任のしわがれた声が教室内を木霊しホームルームが始まる。

 出席確認の点呼が終わり、遂にお待ちかねの転入生の紹介だ。

 

「今日はこのクラスに転入生が来ている。仲良くしてやってくれよ」

 

 ゆっくりとドアが開けられると噂の転入生が赤紫のツインテールをなびかせて入ってきた。

 その容姿に教室中がざわついた。

 って、ん? 赤紫のツインテール、まさか転入生って……

 

『橘ティアナ』

 

 黒板に書かれた文字を見て俺と匠は凍り付く。

 

「橘ティアナです。これから皆さんよろしくお願いします。」

 

 

 

「「お前かぁぁぁーーーーーーー!!」」

 

 ワンテンポ遅れる形にはなったが俺と匠は息ぴったりなツッコミを放っていた。

 

 

 

 

 ティアナの容姿は胸回りが残念なことを除けば完璧に近い。美少女と言っても差し支えない。

 容姿だけではない。ティアナは記憶喪失の癖に学力も高く、高難度の問題もスラスラと答えていった。本人曰く入る為の試験も満点で突破したとも言っていた。

 それでありながらティアナは身体能力も優れていた。体育の時間にソフトボールで大活躍したらしい。

 容姿端麗、文武両道。こんな奇跡の転入生を放っておく生徒などいない。

 ティアナは多くの生徒たちからの部活動勧誘を受けた。転入生お約束の質問攻めイベントも合わさって、ティアナは今日一日中引っ張りだこであった。

 そして放課後、俺とティアナと匠の三人は今はほとんど使われていない旧校舎の屋上に避難していた。

 

「やっと解放されたわね……」

 

「全くだ……」

 

「右に同じ……」

 

 それぞれ疲れ果ててぐったりしていた。

 ちなみに俺と匠も多くの男子生徒から質問攻めにあっていた。

 質問攻めをしてきた男子生徒曰く何故、お前たちのような奴らがティアナと知り合っていて尚且つ仲が良いんだとのことらしい。

 

「やっぱり、バットをへし折ったのはやり過ぎたわね……」

 

 ティアナがボソッと呟く。

 ティアナの奴、ソフトボールの時に力加減を間違えてバットを一本へし折ったらしい……

 見た目に反して力が強いのは知っていたがこれでは完全にゴリラじゃねぇか。差し詰めツインテールゴリラってところか。

 

「なぁ、和輝? 俺ら何か悪いことしたっけ?」

 

 匠には相当応えたらしい。

 今日がバイトがない日で安心する。あの状態ではまともな接客なんて絶対にできないだろう。

 

「てかどうして転入してきたんだよ、アラームクロックはどうした? 手伝うことが住まわせてくれる条件じゃなかったのかよ?」

 

 一息つき余裕ができたことで頭に浮かんだ疑問を消化するべくティアナに尋ねる。

 

「正樹さんが行きなさいって言ったのよ」

 

 ティアナはあっけらかんと答えた。

 おやっさん、いいのかよ……、人手不足じゃなかったのか……

 

「今後どうするんだよ、昼間にエレメリアンが出てきた場合に俺ら二人とも学校抜け出す訳にはいかないだろ?」

 

 ここ最近で昼間に出現した場合は俺一人がコッソリ学校を抜け出していたが、二人では話が変わる。簡単に抜け出せないのは明白だ。

 

「まぁ、なんとかするわよ」

 

 余りにも曖昧過ぎる解答に思わずズッコケそうになる。

 時々感じるがティアナの奴、結構抜けた部分があると思う。

 

 

 

「ねぇ! 君!!」

 

 突如として聞こえてきた声の方向に俺たち三人とも振り向いた。

 屋上の入り口の前、立っていたのはポニーテールをなびかせる凛とした佇まいの女性。

 ネクタイの色からして、上級生だろう。

 

「悪いけど、私は部活動する気はないの」

 

 ティアナは何も聞かずに初っ端から拒否した。

 ここまで何回も見た展開だ。ティアナの奴、扱いが手馴れてやがる。

 本来ならこのまま黙って帰る筈の上級生はティアナの言葉を無視し、俺のことを見つめてきた。

 

「ごめんね、用があるのは君じゃないの、私が話しているのは君よ、2年2組の涼原和輝君」

 

 今日の経験上、これもティアナに対してだと思っていたがどうやら違ったようだ。

 俺や匠に話しかけてくるのは男子生徒ばかりだったので完全に予想外だった。

 

「俺に用ってなんすか?」

 

 なんだろう、この人……堂々としていてそれでいてどこか飄々としている不思議な雰囲気だ。嫌な予感がする。

 上級生は静かに衝撃的な言葉を発した。

 

「単刀直入に言うわ、あなたテイルバイオレットでしょ」

 

 俺たち三人とも言葉を失った。                                            




 謎の新キャラ登場。彼女は一体何者なのか……
 どうでもいいかもしれないですけど、YouTubeにて配信されている仮面ライダーアギトが最終回を迎えましたね。アギトは私の最も好きな仮面ライダー作品です。ティアナの記憶喪失設定はそこからとりました。
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