俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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97話からなるアナザーテイルレッド編も今回で終わりです。
と言っても話し自体はまだまだ続くので今後もよろしくお願いします。


第110話 これからもツインテール

「和輝!! あなたいつまで寝てるのよ!!」

 

 心地よく寝ていた俺の耳にやかましい声が聞こえてくる。

 流石に目が覚めた俺はうるせぇなと小さく愚痴りながら寝ぼけまなこでスマホの画面に映った時刻を確認。

 

「んだよ、ティアナ。まだ6時じゃねぇか」

 

「午後の6時でしょうが!!」

 

 そう、現在は時刻にして午後6時。

 もう太陽が沈み始め、夜がこようとするそんな時間に俺は起こされた。

 

「早く起きなさい!! もう、完全に遅刻じゃない!!」

 

「てかお前も寝坊したんじゃねぇか」

 

「うぅ……それは……」

 

 ったく、しょうがねぇな……

 若干、苛つきながらも俺は言う通りにすべく二人用ベットから体を起こし、だらしなく乱れていた服装(と言っても昨日から引き続きの制服だが)を整える。

 今更だが、ここはトゥアールさんの所有している移動艇、スタートゥアールmark2内の居住スペースにあるティアナの専用部屋。

 何故、ここにいるのかと言うと、俺はアナザーテイルレッドの戦いからティアナと共に帰還する際、家に帰らずに一度こちらに来てくださいとトゥアールさんに言われたからであり、さっきまで寝ていたのは、ここに着いたと同時に今まで張っていた緊張の糸がぷっつりと切れてしまい途轍もない眠気に襲われたからだ。

 

「もう、早く行かないと置いていくわよ」

 

「わーってるっつーの」

 

 整え終えた俺はティアナと共に部屋を後にする。

 向かうはトゥアールさんが待つコンソールルーム。

 何でもトゥアールさんは、俺たちが変身した新しいテイルバイオレットの姿や今後の事について色々と話したい事があるとの事だ。

 

「はぁ、なぁに言われんだよ全く……」

 

「新しくなったこのテイルブレス及び新しくなったテイルドライバーの事とか色々じゃない?」

 

 ティアナは自身の右腕にある赤紫のテイルブレスを見つめながらそう言った。

 俺もつられるように左腕にある青紫のテイルブレスへ視線を移す。

 これは今までティアナがつけてきたテイルブレスとは異なる物であり、変身解除と同時にそれぞれのテイルドライバーが変化した言わばテイルドライバーⅡの待機状態と言える物だ。

 一体、何がどうなっているのやら。

 奇跡を起こしておいてなんだが、正直言って訳がわからない。

 俺たちは少しばかり不安気になりながらも歩みを進める。

 

「ねぇ、和輝?」

 

「んだよ? どうした?」

 

「いや、その……私たち、折角一つになれたのにお別れなのよね……」

 

 向かっている際中、急にそんな事をティアナから言われた俺は思わず足を止めてしまう。

 そうだよな……。ティアナは元の世界に帰っちまうんだよな。

 元はと言えば本来、昨日の時点でティアナとはお別れしていた筈であり、俺たちが今こうやって共にいる事なんてなかった。

 今、こうやっているのもあの時にアナザーテイルレッドの襲撃に受け、そこから紆余曲折あったからであるのは紛れもない事実であり、いくら元の原因であるアナザーテイルレッドを倒したからと言ってティアナがこの世界にとどまり続ける必要はないに等しいと言ってもいい。

 ティアナにだって帰るべき場所とそれを待つ人々がいる。

 それを俺の我儘で奪ってはいけない。

 

「だな。まぁ、元気でいろよ」

 

 アナザーテイルレッドを倒した今、現在の状況は物語で言う所のハッピーエンドへ差し掛かる相棒との最後の別れシーンのような物だ。

 男たるものハッピーエンドだろうが涙は不要。別れだろうが関係ない。

 だからこそ俺はついぶっきらぼうにそう口にしてしまったんだ。

 立ち止まるティアナを抜き去り歩くそんな俺の背中にティアナの声が届く。

 

「何よその言い方……!! もうちょっとは悲しみなさいよ!!」

 

 ティアナのその言葉には怒りよりも悲しみが詰まっていた。

 俺もティアナも辛いのは同じだ。

 

「るっせぇ!! 悲しいに決まってんだろうが!!」

 

 爆発する感情。

 だが、最後まで涙は絶対に見せない。

 俺は辛い気持ちを押し殺しながら前を向く。

 

「いいか、俺はお前の事を忘れたりしないからな」

 

「そうね……。私も忘れない」

 

 そう誓い合った俺たちはコンソールルームへと急いだ。

 

 

 

 

 近未来チックな金属製の扉の先に広がっていたコンソールルームは想像通りのSF映画感満載の会議室と言った所だった。

 部屋の中央を占領するメカニカルな長いテーブルと言い、壁一面に広がる巨大液晶画面と言い、つくづくトゥアールさんは男のロマンって奴がわかるようだぜ。

 

「遅れてごめんなさい」

 

「すまん、遅くなったみてぇだな」

 

 部屋の中にはトゥアールさんをはじめ、悠香さんに青葉さん、華先生と匠と俺たちの関係者みんながこれまた近未来チックな椅子に座りながらテーブルを囲んでいた。

 

「お前ら何時まで寝てんだよ。もしかしてあれか? 昨夜はお楽しみでしたならぬ昼間はお楽しみでしたって奴か?」

 

「うるせぇな、なわけねぇだろ。俺たちは疲れてたんだ。そんな気力ねぇよ」

 

 ニヤニヤといじりやがった匠に一言。

 俺としては今朝の激戦はかなり体力使ったんだからな。

 当たり前だが、色々と疲れてそれどころじゃねぇ。

 

「ふ~ん、つまり疲れてなかったらヤってたって言うのね~」

 

「悠香、言い方……」

 

 ヤベッ、ついうっかりあんな言い方をしたばっかりに悠香さんに付け入る隙を与えてしまったぜ。

 ここぞとばかりにいじりだした悠香さんとそれを含み笑いを浮かべながら咎める青葉さんの二人。

 これはめんどくせぇ事この上ない。

 

「さも当然かのようにティアナちゃんの部屋に行ったときは遂に来たかと思ったのにな~」

 

 それを突かれるとこちらとしては痛い。

 俺も最近はティアナと一緒のベットで寝るのが当たり前になりかけていたぜ。

 初心を思い出せ、俺。

 

「あのな、俺たちは――」

 

「涼原君いけません!! あなたたちはまだ高校生!! つまりそれは不純異性交遊に該当し……」

 

「だぁーッ!! 先生は黙ってろ!!」

 

「そうですよ華さん。和輝君と総愛の関係は不純ではありません。私と総二様と同じ位の甘ーい純愛です」

 

「ややこしくなるからあんたは参戦すんじゃねぇ!!」

 

 堅物天然な華先生は兎も角、ちゃっかり総二さんとの仲を脚色しながら悪乗りし始めるトゥアールさん。

 大人組までこのしょうもない会話に参戦すると収拾がつかなくなるのでマジで勘弁だぜ。

 

「ちょっと和輝、みんなはさっきから何言ってるの?」

 

「お前はいい。座ってろ」

 

 頼む。これ以上、俺の苦労を増やさないでくれ。

 ここに来て僅か数秒、俺は今、滅茶苦茶後悔しているんだ。

 

「そうね~ティアちゃんにわかりやすく言うと、つまり和くんとティアちゃんの二人の身体が合体すると言ったらいいかしら?」

 

 なんだその例え。

 今時、小学生でももっとマシな例えするぞおい。

 あんた一応、ジャーナリストの卵だろ。

 

「何よ、それだったら今朝やったじゃない」

 

 純粋すぎるティアナがあっけらかんと放った爆弾発言。

 意味を知っている俺とトゥアールさんは兎も角、他の奴らはエクストリームチェインをまだ知らないが為にそれは「やった」ではなく、「ヤった」の意味になってしまう。

 故に悲劇ならぬ喜劇は起きてしまった。

 

「ええ!? 本当なの!?」

 

「おい和輝!! やっぱりてめぇ裏切ったな!!」

 

「マジか……」

 

「ちょっと!! ダメですからね!? 先生怒りますよ!!」

 

 ティアナが嘘をつくような性格ではないのが災いしたのか知らねぇが、みんなはティアナの言葉を文字通りの意味で捉えてしまった。

 派手に騒ぎながら何故か、ティアナではなく俺に詰め寄る悠香さんたち。

 やれ感想を聞かせて頂戴だの、やれ裏切りやがってだの、やれ高校生にはまだ早いだのと各々が好き放題言いやがる。

 最早これは俺が誤解だの何だの叫んでも聞く耳持たないだろう。

 何が起きているのかわからずに困惑するティアナとこの様子を見てニヤニヤ笑うトゥアールさん。

 俺は嫌な予感を感じ取りながらもトゥアールさんに助けを求める。

 

「トゥアールさん!! あんたも言ってくれ!! 誤解だってよぉ!!」

 

 するとトゥアールさんはまってましたとばかりにテーブルに備えられたディスプレイを操作し始める。

 

「皆さん、落ち着いてください」

 

「トゥアールさん……!!」

 

 トゥアールさんのその一言で皆が一斉に振り返った。

 ホッとしたのも束の間。

 トゥアールさんの目がニヤリと歪む。

 

「今から合体前に和輝さんが総愛に対して言った言葉を流します」

 

 希望が絶望に変わるとはまさにこの事。

 部屋の何処かに取り付けられているであろうスピーカーから俺の声が流れ出す。

 

『俺と一緒に……二人で……ツインテール結ぼうぜ』

 

 聞こえて来たのはアナザーテイルレッドとの戦いの際、変身を拒むティアナを勇気づけさせる為に言った一言。

 映像があればそれそれはカッコいい名シーンになる筈なのだが、言葉だけをこうやって切り取るとマジでヤる直前5秒前って感じで変な誤解を生みかねない。

 俺は余りの恥ずかしさからか思わず吐血せんとする。

 

「ぐあああああああああああああああああ!!??」

 

「ちょっと和輝!? 大丈夫!?」

 

「こ、殺せ……」

 

 あばよ現世、よろしくあの世。

 俺は今、無性に後悔している。トゥアールさん、あんたに裏切られた気分だ。

 

「ギャハハハハハ、やっぱり初々しさ溢れる童貞をいじるのは格別ですね~」

 

 トゥアールさん、いやトゥアール……!!

 てめぇこの野郎。なに笑ってんだよ。お前のせいで会議どころじゃねぇじゃねぇか。

 トゥアールさんの悪乗りも相まって最早本格的に収集つかなくなってきているのこのコンソールルーム内の茶番。

 事態を悪化させたトゥアールさんは高みの見物とばかりに笑っており、完全に悪役と言って差し支えないだろう。

 このままではトゥアールさんの勝ちで俺の一人負けとなるそんな中、遂に彼女が動き出す。

 

「ママ……!!」

 

「はい? 何ですか総愛…………ッ!?」

 

 瞬間、トゥアールさんの姿が見えなくなり、一瞬の内に白衣を着た女性らしき物が犬神家の一族かの如く床に突き刺さっているという奇怪なオブジェが現れた。

 

「ふざけるのもいい加減にして!!」

 

 ティアナの天誅が見事トゥアールさんに炸裂したのだった。

 

 

 

 

「こほん、では本題に入ります」

 

 何とか誤解を解き、落ち着いた俺たちは復活したトゥアールさんと共に予定していた会議を開始する。

 騒がしかった先程とは打って変わって真面目でシリアスな空気だぜ。

 

「先ずはこれを見てください」

 

 そう言ったトゥアールさんがディスプレイを操作する。

 するとテーブルの中央上の何もない空間に映像が投影される。

 遥か先の未来のテクノロジーに圧倒されつつも俺たちはその映像に目を向ける。

 そこに映っていたのは今朝の戦いの様子。何でも打ち上げておいた人工衛星に搭載された超高性能カメラで撮影した物との事。

 にしては映像がまるでテレビ番組かのように編集されている気がするが……

 まぁ、何はともあれそこにはテイルバイオレットの最強形態であるエクストリームチェインが鮮明に映っていた。

 

「これがテイルバイオレットエクストリームチェイン。二人が一体化して一つになったテイルバイオレット最強の姿です」

 

「へーこれがさっき言ってた奴なんだ。想像してた物よりがっしりしているわね」

 

「フルアーマー形態みたいでカッコいい……」

 

 青葉さんの言う通り、エクストリームチェインの姿は中々にカッコいい。

 ブレイブチェインやエモーショナルチェインのような部分的に追加装甲を纏った姿とはまた違うゴツイ重装甲形態。男のロマン全振りのフルアーマー状態は俺とティアナの互いを守りたいという強い気持ちが具現化した物だろう。

 さらに言えば、凄いのはここからだ。

 

「そしてこれがエクストリームチェインから変化した形態。エクストリームチェインバーストです」

 

 次に映し出されたのは先程の重装甲をパージした事で打って変わってスタイリッシュに変化したテイルバイオレット。名付けてエクストリームチェインバースト。

 アナザーテイルレッドフォーライザーチェインをも圧倒した真の最強形態だ。

 

「解析によるとこの形態は和輝君と総愛の二人の気持ちが完全に一致し、リミッターを解放したことで変化した姿とされています」

 

 トゥアールさんは語る。

 そのスペックは通常のエクストリームチェインの全ステータスを凌駕しており、計測できる属性力の量は俺とティアナの二人の属性力を足し算ではなく掛け算した物らしい。

 紫と銀に輝くツインテールと装甲が神秘さを強く感じさせるぜ。

 

「ねぇ? この時、涼原君と橘さんの二人の気持ちの内、どっちが優先されるの?」

 

 素朴な疑問を口にする華先生。

 俺もティアナもそう言われてみればと首をかしげる。

 通常のエクストリームチェインの時は互いの意識を入れ替えながら戦う事が可能だったのは覚えているのだが、バースト状態になった時はどうであったのだろうか?

 

「見ていた私から言わせてもらいますと、ずばり二人の意識が完全に溶け合った第三の人格が生まれていると言っていいでしょう」

 

「「「「「「第三の人格?」」」」」」

 

 トゥアールさんの言葉を聞いた皆が一斉にそう口にする。

 トゥアールさんは深く頷いた。

 

「言ってしまえば和輝君でもあり総愛でもある状態。二人の人格を統合したバースト状態だけの新しい人格です」

 

 それってつまり、俺であって俺じゃない。そしてティアナであってティアナじゃないっていう意味の分からねぇ状態って訳か?

 俺もティアナも当事者だと言うのに訳が分からず混乱しそうになる。

 その時体験した記憶は残っているのにその時何を考えて動いていたのかがまるでわからないのはある種のホラーだぜ。

 

「さて、大事なのはここからです。今話した通り、この形態における人格は完全に統合された状態であり、ハッキリ言ってかなり危険とも言えます」

 

「ママ? それはどういう事?」

 

 俺もティアナと同じ疑問を思い浮かべる。

 確かにホラーではあるが一体これの何が危険なのだろう?

 

「いいですか? 人格の統合と言うのは極めて危険な行為なんです。自分が一体誰で何者なのか、自己を確立する為のアイデンティティ、それが人格なんです。統合し、己が誰かわからなくなると言うのは即ちそれは元の人格を失う事を意味しています」

 

 トゥアールさんの警告。

 それはバースト状態の人格統合が解除されなかった時、俺とティアナのそれぞれの人格が無くなってしまう事を指している。

 事実上の死の危険性を聞かされた俺たちは思わず顔を見合わせた。

 

「幸いな事に今のお二人は特に後遺症のような物は存在していません。ですが、このバースト状態を今後繰り返し続けたらいずれ元に戻れなくなる危険性が生じる可能性があると言っていいでしょう」

 

 俺とティアナ、互いに息を吞む。

 今後の戦いでただ最強だからといって安易にバースト状態を繰り返し続ければ俺たちの命にかかわる。

 人格の統合による消滅は何かを愛すると言う属性力にも密接にかかわって来るのは容易に予想できるし、俺もティアナもいくら二人で一つだからと言ってマジで一つになって戻れなくなるのは流石にごめんだぜ。

 今後、俺もティアナもエクストリームチェインは兎も角、エクストリームチェインバーストに関しては慎重な運用が求められるって訳だ。

 

「ん? あれ? ちょっと待ってくれ。今、今後繰り返したらって言わなかったか?」

 

「そう言えば……。ママ!? それってどういう意味?」

 

 俺たちの見立てではアナザーテイルレッドを倒した今、ティアナとトゥアールさんがこの次元に居続ける理由がないと思っており、それはつまりティアナとトゥアールさんが元の次元に帰る事を意味する。

 なのに今後繰り返し続けたらだなんて、まるでこの世界から帰らない事を意味するその発言はどういう事なのかまるでわからない。

 

「あれ? お前ら聞いてなかったの?」

 

「てっきり知っているからとばかり思っていたわ」

 

 あん? どうやら俺とティアナ以外は何がどうなっているのか知っている様子であり俺たちだけが何のことかわかっていない様子。

 一体全体、どういう事だよおい。

 俺とティアナは二人揃ってトゥアールさんに問い詰める。

 するとトゥアールさんはあっけらかんと言い放つ。

 

「あれ? 言ってませんでしたっけ? 総愛含めて私たち帰るのを延期しますって」

 

 え、延期……?

 それってつまり俺たちはまだ別れないって事か?

 トゥアールさんの衝撃のカミングアウトに二人して顔を見合わせた俺たち。

 数秒の沈黙の末、俺たちは揃って驚きの言葉を口にする。

 

「「えええええええええええええええ!?」」

 

 

 

 

 会議は無事に終わり、今後の方針が決まった俺たちはそれぞれがそれぞれの家へと帰っていく。

 悠香さん、青葉さん、匠、華先生と皆が続々と帰っていくのを見送った後、俺もティアナと共に外へ出る。

 もう直ぐ11月という事もあってか外の気温は想像していたよりも遥かに冷たい。

 旧校舎屋上から見える夜景は昨日や今朝の激闘が嘘だったかのように綺麗だ。

 

「にしても、まさか帰るの延期とはな。俺らのあの感動シーンは何だったんだよ全く……」

 

「そ、そうね……」

 

 苦笑いを返すティアナ。

 俺もティアナも本当は滅茶苦茶嬉しいのだろうけど、余りにも拍子抜けしちまう展開にはどう喜んでいいのかわからない。

 まぁでも、嬉しいといえば嬉しい。

 

「ねぇ、そんな事より和輝? ちょっと話さない?」

 

 そそくさと屋上出口の扉へ向かおうとした矢先、ティアナがそう声をかけてきやがった。

 足を止め、振り返った俺はティアナを見つめる。

 

「あん? どしたよ急に」

 

「いや、なんかさ、何となく二人きりで話したくなったの」

 

 つまり理由なしってか。

 たっく、しょうがねぇな。

 やれやれといった表情を浮かべつつ、俺はティアナと共にベンチに座る。

 正直言うと俺も話したい事があったから好都合ではある。

 

「ねぇ? 私たち、本当になれたのよね」

 

 ティアナの言う「なれた」とは二人で一つのツインテールにと言う意味だ。

 土壇場で奇跡の融合し、二人でテイルバイオレットへと変身する。

 改めて見ても中々にすげぇ奇跡を起こしたもんだぜ。

 

「まぁな。でも、トゥアールさんが言ってた通り、バーストを多用しちゃ戻れなくなるらしいからそこは気を付けねぇとな」

 

「そうね。一緒になるのはいいけど、私が私でなくなるのはちょっと……ね」

 

「同感だ。俺はお前みたいな貧乳コンプレックスを患いたくないしな」

 

「ちょっと……!! それどういう意味よ……!!」

 

 ジト目で睨んでくるティアナを俺は鼻で笑う。

 それを見たティアナは、闘志に火が付いたのか、負けじと言い返し始める。

 

「私だって和輝みたいな不良にはなりたくないよーだ」

 

「んだと? 誰が不良だ!! 俺は不良じゃねぇ!!」

 

「よく言うわよ。私がいなかったら他校の荒くれ共と毎日ケンカ三昧してた癖に」

 

「るっせぇ……!! あれはだな。あいつらが俺のムカつく事をしていたからであってな……!!」

 

「それで警察に厄介になり続けたんでしょ。立派な不良じゃない」

 

「何だとぉ? お前だって貧乳呼ばわりした他校のバカ共を血祭りにあげかけた癖に!!」

 

 思い出すのは俺たちが付き合い始めてすぐの頃。

 街中を二人で歩いている時、俺が昔やりやっていた不良グループとバッタリ出くわした時、あのバカ共はティアナが俺の彼女だと知るや否やティアナのその貧相な胸を馬鹿にする発言をしやがった。

 その結果、ブチギレたティアナは一瞬の内にその不良グループを壊滅させた。

 俺はやり過ぎないように抑えるのに必死になっていたのを覚えている。

 

「しょうがないでしょ!! だってあいつら……!!」

 

「だからと言って病院送りにする馬鹿がいるか!!」

 

「誰がバカよ!! 元はと言えば和輝が!!」

 

「んだと? 俺のせいってかぁ?」

 

 言い争う俺たち二人。

 思えば俺たち、こんなにも本気で喧嘩しているのに別れようと思った事はないのはある意味不思議だ。

 普通ならもうとっくに別れててもおかしくないのにな。

 ま、でも、仲が良いから喧嘩するとはある意味良く言ったもんだぜ。

 

「もう、和輝のバカ!! もう知らない!!」

 

「るっせぇ、どーせ俺はバカだよ!!」

 

 ふん!! とそっぽをむく俺たち。

 だが数秒後には俺もティアナも恐る恐るではあるが互いの顔色を伺い始め、お互いが同じ表情で心配しているが故にそれを見てそれぞれプッと笑いだす。

 仲直りは無事完了した。

 

「ほんと、俺ら何やってんだか……」

 

「でも、そんな私たちだからここまでこれたのかもね」

 

「違ぇねぇ」

 

 ツインテールが好きであるという一点を除けば違い過ぎる俺たち。

 些細な事で直ぐに喧嘩する様は凹凸コンビにも程がある。

 でも、そんな俺たちがここまでやってこれたのは一重にお互いがツインテールを想い、そして互いを想っているからに他ならないのかもしれない。

 

「なぁ、ティアナ」

 

「何? 和輝?」

 

 暗い夜空を見上げながら俺は呟き、ティアナがそれを問う。

 俺は昨晩と今朝の事を思い出しながら語る。

 

「俺、わかったんだ。ただ守りたいっていう気持ちだけじゃ何も守れない。今回は奇跡が起きたから良かったけど、このままずっと奇跡に頼って、ただ闇雲に動いていてばかりじゃ駄目だってな」

 

 俺は左腕で輝くテイルブレスⅡを見つめる。

 トゥアールさん曰く、このテイルブレスⅡ及び新しくなったテイルドライバーⅡは俺たち二人の想いが重なったからこそ、元々強い想いがこもっていたティアナのテイルブレスに、アナザーテイルレッドが属性力を抜き取る為に使用していた黒いブレスに備わっていた他者に属性力を送る機能が合体、つまる所、俺たちの想いに反応し、新たな力が混ざった事で変化したのだという。

 テイルギアは人の想い、つまり心の力で動かす武器。総二さんや愛香さんたちツインテイルズのみんなも皆が同じような体験をして強化形態を目覚めさせたのならつまり、俺とティアナが互いを想い続けていた以上はこうなるのは必然だったのかもしれない。だが、それは奇跡と言って差し支えないのも事実。

 今後は奇跡に頼ってばかりのやり方じゃ何処かでガタが来る。

 

「だから俺、もっと強くなる。今後またアナザーテイルレッドの野郎が来たとしても負けないくらいにはな」

 

 先程の会議で最後にトゥアールさんが言った言葉。

 それはアナザーテイルレッドがまだ生きているという事。

 実際、俺たちも戦う気は在れど、命までは奪う気でいなかった事もあり、結果として生きて逃げおおせたのだろうが、奴の性格的に今後また襲い掛かってきてもなんらおかしくない。

 今度またきやがったら、次は容赦しない。

 

「意気込むのはいいけど、一人で背負い過ぎないようにしなさいよ。それに、テイルバイオレットはもうあなただけが一人で変身して戦うんじゃない。私も一緒に変身して戦うんだからね」

 

 いっけね。

 そうだったな。俺たちは二人で一つ。

 それだけは絶対に揺るがない。

 俺たちはツインテールなんだからな。

 

 

 

 

 アルティデビル基地の内部、ここはベリアルギルディの研究室。

 怪しげな機械で埋め尽くされたこの自室ではベリアルギルディが忌々しいと言わんばかりの表情である映像を見ていた。

 それはテイルバイオレットエクストリームチェインがアナザーテイルレッドを圧倒する様子を映した物。

 ベリアルギルディはアナザーテイルレッドを監視する事とテイルホワイトが本物であるかどうかを探る名目で秘密裏に戦いの様子を録画しており、これはその結果の副産物と言える。

 尤も、まさかテイルバイオレットがターゲットであるあの少女と合体して新しい姿になるとは思ってもみなかったのだが。

 

「この力……これは究極のツインテールとは違うまた別の力のようだな。中々に厄介と見える」

 

 傲慢且つ自信家であるベリアルギルディも流石のエクストリームチェインには動揺を隠しきれない。

 口では強がっているものの、このままでは歯が立たないのは明白だ。

 

「仕方ない。奴らを呼び寄せるしかないようだ……」

 

 ベリアルギルディの脳裏に浮かぶのはアルティデビルに所属しておきながらこの基地にいない者たち。

 かつてのリーダーであるバアルギルディがスカウトしたエレメリアンとは違う、ベリアルギルディが直々にスカウトした個性派集団。

 その名も……

 

七つの性癖(セブンス・シン)

 

 今、和輝とティアナの知らぬ所で、罪なる性癖を抱えた悪魔(エレメリアン)たちが集結しようとしていた。




というわけでアナザーテイルレッド自体はまだ生きてますがとりあえずアナザーテイルレッド編は終わりです。
色々とシリアス続きな展開ばっかりでしたので、次回以降のエピソードではふざけた敵を出して笑えるようにいきたいなと思っています。
後、トゥアールは今後もレギュラーとして活躍しますのでお楽しみに。
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