俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

111 / 164
一応、新章突入です。


第111話 七つの性癖(セブンス・シン)

 アナザーテイルレッドとの激闘を制した日の夜。

 スタートゥアールmark2から出た私は和輝と共に夜道を歩き、目的地である和輝の家に辿り着いた。

 今日……というより当分の間、私は先日に引き続いて和輝の家に泊まることになっている。

 というのもトゥアールママったら、このままこの世界に滞在する以上は拠点となる場所を見つけ基地を作らねばなりませんとか何とか言ってスタートゥアールmark2に乗って何処かに行ってしまった。

 遅くても一週間以内には連絡するとは言っていたけどどうなのかな。

 

「てか良かったのか? おやっさんの方に顔出さなくてよ」

 

「今さっき連絡はしたわよ。でも正樹さんったらいい機会なんだから当分の間は和輝の家でお世話になりなさいって」

 

「ふーん、あ、そ。まぁ、お前がいいんなら良いけどよ」

 

 正直、私としては和輝と共にいられるのは願ったり叶ったりではある。

 だって、これから和輝を鍛えるのに何かと都合がいいしね。

 そんなこんなで家に辿り着いた和輝は玄関のドアを開ける。

 

「婆ちゃんただいまー」

 

 返事は来ない。

 けれど和輝曰くこれはいつものことらしい。

 私は一言お邪魔しますとだけ言いながら靴を脱ぎ家に上がる。

 

「おい婆ちゃん、飯―!!」

 

 廊下を抜けリビングに出た和輝の開口一番に放った言葉はそれだった。

 私はジト目で和輝を見つめる。

 

「うっさいね、それが一日家をあけた奴の言うセリフかい。黙って待ってなこのバカ孫が」

 

 台所から聞こえてきた声はお年寄り特有のしわがれた声。

 だけどそれは弱々しい物では決してなく、元気が有り余っていると表現できる程に活気に満ち溢れており、口調こそ乱暴だけど、怒っているようには聞こえない。

 和輝のおばあちゃんが台所にて割烹着姿のまま立っていた。

 

「あら、いらっしゃい。ティアナちゃん」

 

「こんにちは。おばあちゃん」

 

 和輝のおばあちゃんとはこう見えてそこそこの付き合いがある。

 忘れもしない。あれは確か、私がグレモリーギルディの罠にかかり和輝と喧嘩してしまった時の事。

 当時、まだ恋愛感情という物を理解できておらず困惑する私を優しく諭し、和輝を想うこの感情を恋だと教えてくれた通りすがりのおばあちゃん。

 さらに言えば、グラシャラボラスギルディの事件の時は和輝の為にどうすればいいのか悩む私にアドバイスをくれた事もある。

 私と和輝が共に一つのツインテールとなれた要因を作ってくれた功労者の一人、それこそが和輝のおばあちゃんだ。

 

「あれ? そう言えばあんた遠い実家に帰ったんじゃなかったっけ?」

 

 そうおばあちゃんに言われて私はギクッとなる。

 先日、最後の夜を和輝と共に過ごすべくこの家に訪れた時、私はおばあちゃんに対して遠い故郷に帰るのでもう和輝とは会えなくなってしまうと本当の事をぼかしながら言ってしまっている。

 

「いやー、その……」

 

 いけない。こういう時、咄嗟に嘘が出てこない。

 何というかつまらない嘘だとこのおばあちゃん相手だと見透かされてしまう気がしないでもないからだ。

 

「まぁ、いいさ。にしてもやっぱり、あんたいい髪型してるね。あたしの若い頃そっくりだよ」

 

 それってつまり、おばあちゃんも若い頃はツインテールをしていたって事かしら?

 まぁ確かに、その年齢を感じさねない見事な佇まいはさぞツインテールにしたら似合うのだろうなと思ってしまうくらいには凛としている。

 雰囲気で言えば私のいた世界での慧理那さん(大人)のようだ。

 正直、私としては今でも全然似合うと思うのでぜひツインテールにしてみて欲しい。

 

「なぁ、さっきから随分と親しいけど、どうしたんだ?」

 

 さっきまでリビングで寝転がっていたであろう和輝が気になったのか台所までやってきた。

 どうやら和輝は私とおばあちゃんの関係性が気になる様子。

 だけど、ここは敢えて言わないようにする。

 女同士の秘密って奴よ。

 

「んな事より和輝、あんたこんな可愛い子に放って何してるんだい。荷物を運ぶくらいしてやりな」

 

「へいへい、わーったよ」

 

 おばあちゃんにそう命令された和輝はめんどくさそうにしながらも私の持ってきた着替えなどが一式入った荷物ケースを自室まで運び始めた。

 私はここにきて、大事な事を言い忘れていたとハッとする。

 

「あの……そう言えば……」

 

「大丈夫、話は正樹の馬鹿から聞いてるよ。当分の間、この家をあんたの家だと思って好きにしておくれ」

 

 このおばあちゃん、私が当分の間この家でお世話になろうとしていた事すらも把握していたみたい。

 相変わらずなんて物わかりがいいんだろうと驚きながらも私は頭を下げる。

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「なぁに、そんなにかしこまらなくてもいいんだよ。あたしらはもう家族みたいなもんじゃないか。それに、あんたで良ければいつまでも一緒にいてもいいんだよ」

 

「おばあちゃん……!!」

 

 家族みたいなもの。

 そうおばあちゃんに言われて私は舞い上がる。

 家族として認めてくれるのがこの上なく嬉しかった。

 

「バカ!! まだ付き合ってるだけだっつーの!!」

 

 和輝の部屋がある方向から声が聞こえてくる。

 何というか、まるで反抗期の子共のようね。

 

「うっさいね和輝!! そんな照れ隠ししながら言う奴が何処にいるかい。ついこないだまでティアナちゃんが帰っちまう……とか何とか言ってあんなにうじうじしていた癖に」

 

「うるせぇ!! 普段ボケ老人の癖にそんな細かい事を一々覚えてんじゃねぇ!!」

 

「あたしゃまだボケちゃいないよ。むしろボケているのはあんたの方じゃないか、あたしがいなきゃ何もできないくせに」

 

「俺は婆ちゃんなんかいなくても大丈夫だっつーの!!」

 

「何言ってんだい。あんたみたいなバカな孫を放ってちゃ死ぬに死ねないんだよ!! あたしゃね、お前が嫌がるまで生き続けてやるって決めてんだ」

 

「上等だ!! なら俺も婆ちゃん以上に長生きしたらぁ!!」

 

 口汚く言い争う孫と祖母。

 私も和輝とはよく言い争うけどここまで汚らしくはないと思いたい。

 でもこうやって傍から見ると何だか少し恥ずかしいかな。

 これからは喧嘩もほどほどにしなくちゃいけないわね。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。誰もいない河川敷付近のグラウンドにて。

 

「こらー!! 和輝!! 逃げないで向かって来なさい!!」

 

「ざっけんな!! いくらトレーニングだからっていきなり生身で実践する奴がいるかってんだよ!! 加減しろバカタレ!!」

 

「ちゃんとしてるわよ!!」

 

「どこがだよ!! 地形が変わってんだろ!! そんなだからお前の胸は育たないんだよ!!」

 

「何ですってぇ!? 今日という今日は許さないんだから!!」

 

 私たちの他愛もない喧嘩はまだまだ続く……。

 

 

 

 

 学校もなく、エレメリアンの出現もない束の間の休息。

 と言っても、俺はティアナと何処かに遊びに行くわけでもなく、いつまたアナザーテイルレッドのような強敵が来てもいいようにティアナに鍛えてもらう形で日夜トレーニングに勤しみ続けた(口喧嘩こそすれど、幸いな事に怪我はしていない)。

 そして、そんなティアナとの共同生活が6日ほど経った今日。

 遂に今まで休校となっていた双神高等学校が再開する事になった。

 どうやらアナザーテイルレッド襲撃の際の事後処理及びある程度の復旧が完了したらしい。

 事後処理については知らねぇから何も言わないが、復旧ってそんなに早く終わるもんなのかとは少し疑問ではある。でも、技術力という物は日々進歩していてもおかしくないのであまりツッコまないようにするか。

 

「はぁ……、にしても久々の学校がこんなに憂鬱とはな……」

 

「うだうだ言わないの。ほら、シャキッと歩く」

 

「へいへい……」

 

 ティアナにそう言われた俺は嫌々ながらも歩を進めるが、足取りが重い事この上ない。

 せめてバイクさえあればな……。

 生憎、俺の愛車はアナザーテイルレッドとの戦いで二階級特進してしまったが為、悲しい事にこの願いは叶わない。

 高校生のお財布事情でそう易々とバイクを買える訳がないのだ。

 

「ちくしょー、帰ってきてくれよ俺の愛車ぁ~!!」

 

「自分から特攻させておいてよく言うわよ」

 

 これに対してはぐうの音も出ない。

 事実、俺はあの時、ティアナを助ける為に必死だった事もあってか、躊躇なくアナザーテイルレッド目掛けて愛車を特攻させてしまった。

 未練がないと言えば嘘になる。

 でも、あの行動が間違いだったかと聞かれれば、そうじゃねぇと言える自信は一応あるつもりだ。

 

「いい? どんな事があってもツインテールたる者、背筋伸ばしてシャキッとする。じゃないとツインテールが地面にたれて汚れてしまう。でしょ?」

 

「俺はツインテールしてないだろ……」

 

 ツインテールしている事を基準に頓珍漢な事を言わないで欲しい。

 今の俺は変身もしていない正真正銘の男なんだ。お前と一緒にしないでくれ。

 

「てか、そういやよ。トゥアールさんから何か連絡は来たのかよ」

 

 そう言えばトゥアールさんと一時的に別れたあの日以降、特にこれといった連絡が来ていない事を俺は思い出した。

 

「それがね、ママったら何の連絡もしてこないの。もう直ぐ一週間になるってうのに一体、何をしているんだか……」

 

 確か、この世界で活動する為の拠点を作るとか何とか言ってたんだっけか?

 詳しい事はわからねぇがそろそろ何か連絡があってもおかしくはないのに何もないのは変だな。

 

「ママの事だから変な事はしてないと思うけど……」

 

「そ、そうか……?」

 

 ティアナはそう言ってはいるが、失礼な事に俺はそう思わない。

 俺の印象では、あの人は何かあると直ぐにふざけだすって印象が強い。

 尤も、根が真面目なのはわかるので犯罪行為まではやらないとは思うがな。

 

「何にせよ、そろそろアルティデビルの奴らが何かしてきてもおかしくはない以上、俺たちもあまりうかうかしてなれねぇからな」

 

「それもそうね。いくらエクストリームチェインがあれども用心するのに越したことはないし……」

 

 強敵アナザーテイルレッドを退けたとは言え、アルティデビルは依然健在な事には変わりない。それに何となく、今後、途轍もない強敵たちが刺客として現れるような気がする……。

 言い表せぬ漠然とした不安。

 それが現実の物となろうとしているとは、この時の俺は知る由もなかった。

 

 

 

 

「では皆の者、行ってくるぞ。トォッ!!」

 

 昭和男児を想起させる野太い掛け声の下、アルティデビル基地の大ホールを飛び出すのは、黒緑のバッタのような出で立ちをしたエレメリアン。

 彼は今回の出撃権を勝ち得た戦士であり、トレードマークであるその赤いマフラーをたなびかせるその様はまさしく子供の頃誰もが憧れたヒーロー。

 名をムルムルギルディ。

 彼は乗手属性(ライダー)を愛する孤高の存在。

 唯一の友は愛車であるグリュープス号ただ一つ。でかでかと貼られ塗装されたテイルレッドのステッカーが印象的なオフロードタイプの痛バイである。

 ムルムルギルディは、今まで出てきたエレメリアンの例に漏れず、究極のツインテールにも匹敵する強大なツインテール属性を持つ者、即ちティアナの身柄及びこの世界の属性力を根こそぎ奪取するのが目的だ。

 ムルムルギルディはグリュープス号に跨ると意気揚々と駆けて行った。

 

「待っていろ!! 今、このムルムルギルディがぶちのめしてやる!!」

 

 ムルムルギルディはエレメリアンである。

 彼の所属するアルティデビルは世界侵略を企む悪の秘密結社である。

 ムルムルギルディは人間の属性力を奪う為にテイルバイオレットと戦うのだ。

 

 

 

 

 

 さて、そんなお約束のナレーションが聞こえたような気がしてから数分後。

 アルティデビル基地の大ホールではもう何度目かわからぬ激震が巻き起こっていた。

 

「――以上だ。文句があるならこのオレ様に言ってみろ」

 

「大いに異議ありだぜ!! ベリアルギルディ!!」

 

 そうだそうだとあちこちの席でエレメリアンたちが声を上げる。

 今回の発端はムルムルギルディが出て行くと同時に入れ替わる形でやってきたベリアルギルディの宣告だ。

 なんと彼はこの基地に居る全エレメリアンに向かって今回以降の出撃を禁ずると言ったのだ。

 

「ふざけるな!! どういう了見でそうなったのだ!!」

「我らが出なければあの少女を手に入れる事など!!」

「夢のまた夢であるぞ!!」

 

 喚き散らすエレメリアンたち。

 そんなエレメリアンたちに向かってベリアルギルディは冷徹に告げる。

 

「フッ、テイルバイオレットに怖気づいてしまうような凡才共が何を言う」

 

 普段、この基地で待機しているエレメリアンたちは何もテイルバイオレットを恐れているから出撃していないのではない。

 彼らは仲間割れをせぬようにかつてのリーダーであるバアルギルディが決めたルールに律儀に従っていたまでの事であり、寧ろ大半のエレメリアンがテイルバイオレットを打ち倒して目的の少女を手に入れるのは自分自身だと確信していた程だ。

 そんなプライド高い彼らからしてみれば、この発言は暴動を起こしてくれと言っているような物なのだ。

 

「何だと!! もう一度言ってみろ!!」

「相変わらず癇に障る野郎だ!!」

「今日と言う今日は許さぬ!!」

 

 席から立ち上がり飛び掛かるエレメリアンたち。

 それを見たベリアルギルディは慌てる素振りを一切見せずにスッと手をかざして衝撃波を発生させる。

 飛び掛かるエレメリアンたちはしゃらくさいとばかりにその衝撃を突破せんとする。

 がしかし、その衝撃の威力は何十人がかりでも防ぎきれず、飛び掛かった全員が吹き飛ばされるという結果に終わってしまった。

 

「この程度の攻撃すらも破れぬ凡才共が。貴様らではこの天才ベリアルギルディ様はおろか、強化されたテイルバイオレットさえも指一本触れられぬのだよ」

 

 強化されたテイルバイオレットだと?

 どういう事だとばかりにざわめく大ホール内。

 何故ならここにいるエレメリアンたちはベリアルギルディを除いてエクストリームチェインの事を知らないのである。

 

「おっと、そう言えば言ってなかったな。先日、テイルバイオレットは我らが狙うあの少女との融合変身を果たし、新たな姿を手に入れるに至ったという事を」

 

 ベリアルギルディがそう言うや否や、指をパチンと鳴らす。

 すると大ホール内に存在する巨大スクリーンの映像が切り替わる。

 映し出されるのはテイルバイオレットエクストリームチェインVSアナザーテイルレッド。

 その度肝を抜く圧倒的な実力者同士の戦闘はエレメリアンたちに衝撃を与えた。

 

「なんだ!? あの見事なツインテールは……!!」

「これが究極のツインテール……!?」

「いや、違う……!! これは究極とは違う別の力!!」

「なんて強さと美しさだ……。見ているだけだと言うのにこれ程とは……」

「がしかし、何故テイルバイオレットは一人で喧嘩しているのだ?」

 

 エレメリアンは属性力を糧とする精神生命体。

 彼らは自身の愛する属性と同時に大なり小なりツインテールへの愛を持つ者が大半だ。

 そんな彼らからすればエクストリームチェインの輝きは眩しすぎる。

 多くの者達が圧倒され魅了される。

 だが、衝撃はまだ終わらない。

 

「テイルバイオレットが……!!」

「脱いだだと!?」

「違う……!! 装甲をパージしたんだ!!」

 

 映し出されるのはバースト状態へと至ったエクストリームチェインの真の姿。

 誰もがこれで終わりだろうと思っていた中に見せられる二段変身の衝撃及び、バースト状態の輝きはもう言葉では表せない。

 中には、嘗てテイルレッドがアルティメギル首領を打ち倒した時に変身したあの金色の姿を幻視する者までいる程だ。

 

「以上がテイルバイオレットの新しき姿だ。見て通り、奴は紛い物とは言え、テイルレッドを倒す程の力を手に入れている。果たして今の貴様らに奴を倒してあの少女を奪う事は出来るかな?」

 

 エレメリアンたちの中にはテイルバイオレットを倒せなくとも目的である少女の奪取、つまりティアナを誘拐さえできれば問題ないと思っていた者もいる。

 だが、今見せつけられたように、その戦法は肝心のティアナがテイルバイオレットと融合する術を得てしまった以上は使えない。

 これからはテイルバイオレットを倒し融合変身を解除させた上でティアナを捕らえなければならないのだ。

 これには今まで大口を叩いていた殆どが黙りこくってしまう。

 

「じゃが、このままでは我らの目的が達成できぬような気がするのじゃが……」

 

 今まで黙っていたアガレスギルディが恐る恐る声を出す。

 そうだそうだと声に出さず頷く一同。

 ベリアルギルディはそれを見て口を開く。

 

「なぁに安心しろ。オレ様には策があるのだ」

 

「「「策だと!?」」」

 

 あんな姿に到達した今、一体どんな策があると言うのか?

 皆が注目する中、ベリアルギルディはある言葉を口にする。

 

「精鋭部隊七つの性癖(セブンス・シン)を招集した」

 

「「「七つの性癖(セブンス・シン)? だと?」」」

 

 聞きなれぬ言葉に皆が一斉に首を傾げる。

 当然だ。何故ならそんな集団は元々この基地にはおらず、そんな集団があるという事すらも元々のリーダー格であったバアルギルディ含めて誰も知りはしなかったのだから。

 

七つの性癖(セブンス・シン)。それはこのオレ様が認めたエリート中のエリートであり、彼らはそれぞれが嫉妬、傲慢、怠惰、憤怒、強欲、色欲、暴食を司る7組のエレメリアンからなる集団。貴様らのような凡才とは違うオレ様と同じ稀代の天才たちと言えよう」

 

 あの尊大なベリアルギルディが認めるエリート。

 つまりそれは、ただのエレメリアンとは一線を画す者たちと考えた方がいい。

 どれ程恐ろしい奴らなんだ……とゴクリ唾を飲み込んでは戦慄する一同。

 

「今後貴様らは七つの性癖(セブンス・シン)が到着次第、彼らの命令を聞いて行動してもらう。異論はあるまいな?」

 

 黙りこくる一同。

 それに一人満足したベリアルギルディは悠然と大ホールから出て行くのだった。

 

 

 

 

 ざわざわと騒ぐ生徒たちで埋め尽くされた体育館。

 クラスごとに分かれて並ぶ生徒たちを指導するのは堀井を始めとした教員たち。

 本来の予定である一限目の授業及び数日後に控えた文化祭の準備は見ての通り、臨時の全校集会となっている。

 当然、理由は先日のアナザーテイルレッド襲撃事件などに関する事だろう。

 俺からすれば早く終わって欲しくて仕方ない。

 ふわぁと気だるげな欠伸が口から漏れる。

 

「皆さん、おはようございます」

 

 眩しすぎる禿げ頭がトレードマークの老齢の男性が登壇し挨拶を行う。

 アイツこそこの学校の校長先生。つまり教員たちのトップだ。

 俺は欠伸交じりにその言葉を聞き流す。

 

「さて、皆さん。知っての通り、先日、我が校はテイルレッドと名乗る危険人物に襲われました――」

 

 そこから始まるのはお約束とも言える長話。

 やれテイルレッドがどうとか、やれテイルブルームのおかげでどうとか。   

 正直、どれもこれもがニュースで流れているような事を復唱しているに過ぎない。違うのはちょくちょく挟む校長自身の個人的な感想くらいであり、退屈と言わざるえない。

 全く、どうしてこうも年寄りの話は長いのかねぇ。

 年上の話はためになるとは聞くが、俺からしてみれば疑問でしかない。ハッキリ言って時間の無駄だろ。

 

「時は神なりとはよく言ったもんだぜ」

 

「それを言うなら時は金なりよ。というか黙って聞きなさい」

 

 俺の後ろで並ぶティアナがそう小突いてくる。

 少しイラっとしたのでちょいと言い返したい気分ではあるが、今騒げば堀井の奴含めた教員共になにされるかわからねぇ以上は黙っておこう。

 

「さて、ここで皆さんは不思議に思いませんでしたか? どうしてこうも復旧が早かったのかについて」

 

 そんなこんなしている中、校長がふとそう口にした。

 そこをツッコむとは思っても見なかった事もあり、俺は珍しく校長の話に耳を傾ける。

 

「実はですね、とある人の協力のおかげでここまで早く復旧することが出来たのです」

 

 とある人物だぁ? 一体誰だよ、そいつ。

 皆が首を傾げる中、校長は話を進める。

 どうやらその人は途轍もない技術力を持っているらしく、学校の復旧どころか学校全体の簡易的なリフォームまで請け負ったらしい。

 通りで心なしか校舎全体が綺麗になっているなとは思ったぜ。

 にしても一体全体誰なんだ。ただもんじゃねぇのは確かだが……

 

「さらになんと、その人は今後、我が校の教員として君たちと共に学んでいく事となりました」

 

 詰まる所、学校を復旧させる事を条件に教員として雇わせたって事か。

 途端に何か、きな臭い雰囲気が感じられる。

 

「ねぇ和輝、もしかしてその人って……」

 

「ああ、もしかしなくてもコイツはエレメリアンの可能性があるぜ」

 

 アルティデビルの狙いがアナザーテイルレッド同様にティアナである事は織り込み済み。

 となると奴らがティアナを直接狙うような作戦を立ててくるのはある意味では当然の事と言ってもいい。

 復旧すると偽って学校を支配下に置き、それでいて俺たちに近づく為に教員のふりをした刺客を送り込んでくるとは……

 アルティデビルめ。なんて姑息な作戦を立てやがる。

 

「では先生、皆さんにご挨拶を」

 

 警戒心を強める俺とティアナ。

 一体、どんな奴がやって来るのかと身構える中、遂にその人物が姿を現す。

 

「「あ、あれって……」」

 

 思わずハモッてしまう俺たち。

 何故ならその人物は煌めく銀髪をなびかせる白衣を纏った人物。黙っていれば美人と言わざる得ない抜群のスタイルが特徴の女性は俺たちがよく知る人物。

 そう、その人物とは……

 

「皆さん、初めまして。今日からこの学校の教員となる観束トゥアールと申します」

 

「ま、ママぁ!?」

 

 ティアナの叫びが木霊した。




七つの性癖は今回のエピソードではまだ戦いません。あくまで今回の敵はムルムルギルディです。
なんかサブタイ詐欺みたいですみません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。