俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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111話の内容に以前書いた話の描写と矛盾する箇所(ティアナと和輝のおばあちゃんの関係について)が多く存在していたので、111話の内容を少し修正しています。
と言っても、今回の話の本筋には全く以て影響はないので気にしなくても大丈夫です。
今後、もし以前の描写と明確に矛盾している場面がございましたら指摘して頂けると助かります。


第113話 脅威のスーパーマシン

 転送用ロッカーを抜けた先に広がっていたのは、緑豊かな草原が一望できるハイウェイだった。

 景色から察するに、ここは俺たちバイク乗りにとってはある意味穴場となっているハイウェイだろう。ここは都市部からはある程度離れてこそいるが、そこまで遠くない上に気持ちよく走りやすい。

 俺も何度か今は亡き愛車と共に走った記憶がある程だ。

 

「ねぇ? エレメリアンはどこかしら?」

 

 華先生がそう口にした通り、エレメリアンの姿は見当たらない。

 見かけるのは道を颯爽と走り抜ける車とバイクが一つ二つ程度。

 彼らから見れば俺たちはヒッチハイカーか何かだろう。

 

「二人とも気を付けて。反応はそう遠くないわ」

 

 手にしたエレメリアン探知用レーダーで確認したティアナがそう口にする。

 俺と華先生はより一層警戒しながら辺りを見渡す。

 果たしてエレメリアンの野郎は何処からやってきやがるのか……

 

 

 

「オイ見ろよお前らー!!」

「あんな所にヒッチハイカーがいるぜ!! それも一人は美少女、一人は美人の女だー!!」

「丁度いい、行こうぜ行こうぜ!!」

「ヒャッハー! 久しぶりの上玉だぁ!!」

「ガキの男はどうする?」

「んなもん、てきとーボコってトイレにでも捨てておけばいいっしょ」

「ギャハハ、それ採用ーー!!」

 

 俺たちがエレメリアン探しに集中していたその時、遠くからパラリラパラリラと時代錯誤が聞こえて来たので俺たちは一斉に振り返る。

 ハイウェイを爆走し、こちらへ向かって来ているのは珍妙な服装で統一されたバイク乗りの男集団。彼らは見るからに頭の悪そうな顔つきと恰好であり、不良漫画にでてくるテンプレ暴走族そっくりそのままと言っていい。

 現代日本ではあまりにも浮きまくっているその暴走族の姿に呆気に取られていた俺たちは瞬く間にそいつらに囲まれてしまった。

 違法な改造を施された奇々怪々なバイクと乗り手がズラリだ。

 

「なーなー、こんな人気のない所で何してんだーい? 良ければ俺たちと一緒に遊ぼうぜー?」

 

 ゲスな笑みを浮かべて話しかけてくるリーゼントが特徴の男。

 それに対応するは大人であり教師でもある華先生だ。

 

「何ですかあなたたちは。こんな昼間からこんな所で何しているんですか」

 

「ひゅー、随分とかっこいいねーちゃんじゃん。おいみんなー!! このねーちゃんは俺の物ねー!! 手ぇ出すなよー!!」

 

「ちょっとやめなさい!! それ以上触ったら容赦しませんよ!!」

 

「おー、いいねいいねぇ」

 

 何だコイツら?

 あまりにも低能且つ低俗すぎるその物言いに苛立ちを隠せない。

 だが、それと同時に如何にもと言ったその見た目と話し方から俺は、こいつらがエレメリアンの擬態ではないかと疑ってかかる。

 

「おい、ティアナ。こいつらエレメリアンか?」

 

 警戒しながらも俺はティアナにこっそり耳打ちし、エレメリアンかどうかを確かめる。

 ちらりとレーダーをみるティアナ。

 

「ううん、それっぽいけど違うわ。ただの暴走族ね」

 

「成程な、つまり……こんな絶滅危惧種みたいな奴らがまだこの世に残っていたって訳か」

 

 てっきり、こんな20世紀感溢れる暴走族はもういなくなっていたと思っていたが、どうやらまだ絶滅していなかったらしい。

 同じバイク乗りとしては色々と複雑な気分だ。

 

「おい小僧、今なーに話したんだぁ? ああん?」

 

 華先生にちょっかいをかける男とは別の男が俺に向かってガンを飛ばしてきやがった。

 

「別に……。ただ、てめぇらの恰好が古臭すぎて笑っちまっていた所だぜ」

 

「何だとぉ?」

 

 見た目に違わず、挑発を素直に受け取った男は指をパキパキ鳴らしながら俺の方へと近づいてくる。

 俺はティアナを下がらせ前に立つ。

 

「おい小僧、もう一度言ってみろ」

 

「おいおい、聞こえなかったのか? だったらその耳クソでも詰まってそうな、クッソ汚ねぇ耳をかっぽじってよーく聞きやがれ。いいか? てめぇらの恰好がクソダセェって言ったんだよ」

 

「舐めやがって!! このクソガキが!!」

 

 怒りに燃えた男は、その拳を乱暴に振るう。

 だが、そんな形だけのパンチでビビる俺じゃない。

 俺はいとも簡単にそのパンチを受け止める。

 そして、お返しとばかりに一発、キツイのを顔面にお見舞いしてやった。

 

「「「や、野郎!!!」」」

 

 悲鳴すら上げれずに崩れ落ちる男とそれを見て声を上げる周りの奴ら。

 華先生にちょっかいをかけていたリーゼントが特徴の男が真っ先に俺に向かって走り出そうとする。

 がしかし、華先生はそれを許さない。

 

「ハァッ!!」

 

「うぐぅ!!」

 

 華先生の肘がリーゼント男の脇腹にクリーンヒット。

 リーゼント男は断末魔と共に地面にうずくまり沈黙した。

 

「こ、こいつら!!」

「舐めた真似しやがって!!」

「おい野郎共!! やっちまえ!!」

 

 仲間二人をやられた事もあり、暴走族の男たちは落とし前をつけんと続々とバイクから降り始める。

 こうなったらもう誰も止めれない。喧嘩の始まりだ。

 俺と華先生はそれぞれ臨戦態勢に入る。

 

「ちょっと二人とも、エレメリアンの事忘れてない?」

 

 元々の目的を忘れている俺と華先生を咎めるティアナ。

 ティアナからすればこんな些細な喧嘩などどうでもいいみたいだ。

 

「しゃーねぇだろ、向こうがやる気なんだからよ」

 

「だからってあなたねぇ……。いい和輝? 今もどこかでエレメリアンにツインテールが奪われているかもしれないのよ?」

 

「それはそうだけどよぉ……」

 

 ティアナの言い分はご尤もだが、だからと言ってこのアホ共が俺たちの事を見逃してくれるようには思えない。

 

「おい小僧!! その貧乳がどうなってもいいのか!!」

 

 俺たちの会話を遮るかのように男の一人がティアナへとナイフを向けてそう言い放つ。

 俺はその男の貧乳発言に嫌な予感を感じ取るが時すでに遅し。

 ティアナのツインテールが烈火の如く揺らめき始める。

 

「なんですって……!? 誰が貧乳だってぇ!?」

 

「ひ、ひぃ!! お、鬼だぁ!!」

 

 怒り狂うティアナを見て、ビビッて後退る男たち。

 あちゃ~、ありゃ完全にキレてるぜ。数秒前の発言は発言は何処へやらだ。

 はてさて、どうしたんもんかねぇ? このままじゃ塵も残んねぇかもしれねぇ……

 そう思ったその時。

 

 

「まてぇーーーーーーいッ!!!!」

 

 

 聞こえて来たのは昭和男児特有の男臭さ溢れる野太い声。

 俺たち、そして俺たちを取り囲む暴走族一同はその声がした方向へ首を向ける。

 すると、地平線の彼方から爆音上げてこちらに向かってくるバイクの影が見えた。

 

「あれは……」

 

 爆音を上げながら爆走する影。

 音からしてあれは恐らく車ではなく、バイクだ。

 それもかなりの改造が施されたモンスターバイクと推察できる。

 一体、どんなマシンに乗っているんだよと俺は興味本位で注目したのだが、こちらに近づくにつれそのバイク……いや、それに乗る乗り手が異形の姿をしている事に気が付いた。

 あれは間違いない、エレメリアンだ!!

 

「お前ら!! 逃げろ!!」

 

「「ッ!?」」

 

 エレメリアンがまさかバイクに乗ってやって来るとは思ってもみなかったのか、ティアナも華先生もその爆走し接近する影に一瞬面食らう。

 エレメリアンが乗ったバイクは猛スピードのまま、俺たちを取り囲む暴走族のバイクを弾き飛ばすと、そのまま目の前を通り過ぎ、少し離れた辺りで華麗なスライドブレーキを決めやがった。

 ブレーキ音がハイウェイに木霊する。

 

「な、なんだてめぇは!?」

 

 暴走族の一人が言った。

 それに対してエレメリアンはこう言い放つ。

 

「貴様らッ!! 同じライダーでありながら女子供相手に集団で虐めるなど……」

 

 そのエレメリアンは黒緑のバッタを思わせる姿をしていた。

 赤いマフラーをたなびかせるその姿はまるで、幼少期の男なら誰もが憧れたあのヒーローの原点。

 異形ながらその姿は何処かカッコよさのような物を感じさせる。

 

「それがどうしたってぇ? このコスプレ野郎!!」

 

 暴走族の男たちは相手がエレメリアンだとは気づいていない。

 ただのコスプレイヤーだと勘違いしているようだ。

 

「恥を知れ!! いいか? 貴様らのような屑どもは……例え世界が許そうとも、この俺ムルムルギルディとこのグリュープス号に描かれたテイルレッドたんが決して許しはしない!! 覚悟しろッ!!」

 

 そう言い放ったエレメリアンことムルムルギルディはその自慢であるグリュープス号とやらにでかでかと描かれたテイルレッドのステッカーを見せつけてくる。

 さっきまではエレメリアン自体に意識がいっていた事もあり、まるで気が付かなかったが、ムルムルギルディの乗っているバイクは何処に出しても恥ずかしいオタク感溢れる痛バイだった。

 その異形感溢れる見た目とは余りにもアンバランスなテイルレッドの愛に溢れるバイクの醜態に俺とティアナと華先生は思わずズッコケる。

 

「んだとぉ? テイルレッドたんだぁ?」

「何のアニメか知らんが、オタク風情が調子に乗りやがって!!」

「野郎共!! 先ずはあの勘違いオタク野郎をやっちまいな!!」

 

 バイクに積まれていたであろう釘の刺さった金属バットなどの凶器片手に男たちはムルムルギルディへ向かっていく。

 だが、どれだけの数でかかろうとも、相手がエレメリアンである以上、属性力を操る術を持たない人間では太刀打ちできるはずなどない。

 

「いいだろう!! ならばまず、貴様らからぶちのめしてやるッ!!」

 

 そう宣言したムルムルギルディはグリュープス号のアクセルを全開にするとウィリー走行で向かってくる男たちへ突っ込んでいく。

 ウィリー走行は前輪を地面から浮かせて後輪のみで走るという非常にバランスの悪い走行だ。

 それを知っている暴走族の男たちは、最初こそバイクで突っ込んできた事にビビりながらもこれならば簡単に転倒させて袋叩きにできると笑みを浮かべている。

 だが、男たちは知らなかった。

 相手が人を超越せし異形の精神生命体、エレメリアンである事を。

 

「うわぁぁぁ!!!」

「ぎゃああああ!!!」

「おかあちゃぁぁぁぁぁん!!!」

 

 猛スピードで突っ込んでくるエレメリアンの猛攻はただの人間で止めれるはずなどない。

 一人、また一人と暴走族の男たちはムルムルギルディ操るグリュープス号に轢かれて吹き飛ばされていく。

 

「野郎!! こうなったら俺たちもバイクだ!!」

 

「そうだ!! 俺たちの愛車が負けるわけがねぇ!!」

 

 そう意気込み続々と乗り込み始める暴走族の男たち。

 恐らくだが、彼らのバイクはとてもじゃないが車検に通るようなちゃちな改造をしてはいないだろう。

 見た目と音からして、総重量は一般的な同じ排気量のバイクの約2、3倍。

 そんじょそこらのバイクでは歯が立たないのが普通だ。

 だけど、相手が悪い。

 

「そんな程度のバイクとテクニックで我が愛車、グリュープス号は負けんッ!!!」

 

 ムルムルギルディの宣言通り、暴走族の男たちが操るバイクはすれ違ったりぶつかっていくと同時にスクラップ同然の有様へと変化していく。

 時には、倒れたバイクの残骸をジャンプ台代わりにして宙を舞うムルムルギルディとグリュープス号。

 バイクを手足のように動かす様はまさに一流のトライアルショー。

 ハイウェイは吹き飛ぶ暴走族の男たちとその中で華麗に走るムルムルギルディのオンステージと化していた。

 

「ったく……おいティアナ!! 行くぞ!! 変身だ!!」

 

 我に帰った俺はティアナに向かってそう問いかける。

 さっきまでは喧嘩する直前であった彼らではあるが、見捨てない訳にはいかないぜ。

 いくらアイツらがどうしようもないクズ野郎たちだとしてもだ。

 

「そうね、行くわよ和輝!! 華先生!!」

 

 頷く俺と華先生。

 俺とティアナはテイルブレスⅡをテイルドライバーⅡに変化させて装着、華先生はテイルペンダントを握りしめる。

 

「「デュアルテイルオン!!」」

 

「テイル……オン!!」

 

 叫び声と共にそれぞれの身体が光に包まれる。

 そして、その内の赤紫と青紫、二色の光は旋風となり混ざり合う。

 究極のツインテールとは違う俺たちだけの極限進化。

 俺とティアナ、二対の魂が融合せし超戦士、テイルバイオレットエクストリームチェインと華先生の変身するテイルブルームが参上した。

 

「しゃあッ!! 行くぜ!!」

 

(ええ、行きましょう!!)

 

 心の中で頷き合う俺とティアナ。

 目的は一つ、暴れるムルムルギルディの野郎をブッ倒す事だ。

 

「バイオレット!! 動けない人の避難は私に任せて頂戴!!」

 

「ああ、頼んだぜ先生!!」

 

 負傷者を救助する役目を買って出てくれたテイルブルームに礼を言いつつ、俺はムルムルギルディを止めるべく駆け出して行った。

 

 

 

 

 一方その頃。

 新聞部部室にて和輝たちを送り出したトゥアールたちは戦闘をナビゲートする為に学校地下に建設した秘密基地へと到着していた。

 

「お待たせしました。皆さん、ここがメインルームです」

 

 学校の各所に設置された秘密の出入り口を抜け、そこにあるエレベーターで降りた先にある空間、それがこの秘密基地である。

 数多くのハイテク設備で埋め尽くされたそこは正に男のロマンの結晶。

 匠と青葉は目を輝かせる。

 

「おおーっ!! すげーっ!!」

 

「わかってても興奮する……」

 

「ちょっとちょっと!! 二人とも、そんな事よりもう色々始まっちゃっているわよ!!」

 

 はしゃぐ二人を咎める悠香。

 事実、メインルームのモニターには今現在のライブ映像が映し出されている。

 相手はバッタ型のエレメリアン、ムルムルギルディであり、バイクを巧みに操って暴走族らしき男たちを蹂躙している。

 

「どうやら、相手は乗手属性(ライダー)の属性力を持ったエレメリアンのようですね」

 

 ムルムルギルディの言動を見て即座に敵の正体を看破するトゥアール。

 その表情は先程までのふざけた物ではなく、いつになく真剣な物だ。

 

「トゥアール先生、あのエレメリアンって強いのかしら?」

 

「いえ、属性力を反応からしてそこまで大した奴じゃありません。あの程度の相手なら今の総愛たちの敵ではない筈です」

 

 トゥアールの表情を見て少しばかり不安になり尋ねた悠香だったが、トゥアールからの答えは些か拍子抜けする物だった。

 事実、トゥアールが表示した敵エレメリアンの属性力の大きさを数値化したデータではそこまでの脅威を感じさせない。

 だが、トゥアールの顔は余り晴れやかな物ではない。

 

「ですが、恐らくこのままではあのエレメリアンを倒すことは出来ないでしょう。あのエレメリアンが乗っているあのバイク、あれをどうにかしなければ逃げられるのは必至、あるいは最悪の場合、負けてしまう可能性もあります」

 

 コンソールを操作するトゥアールが画面の表示したのはムルムルギルディが操るバイク、グリュープス号。

 見た目こそ何の変哲もないただの痛バイであるが、トゥアールはその超次元の性能を見抜いていたのだ。

 それを知り、再度不安がる悠香。

 だがトゥアールは決して慌ててなどいない。

 

「大丈夫です。こんなこともあろうかとちゃんと秘密兵器を用意していますから」

 

「「「秘密兵器……?」」」

 

 秘密兵器と聞いて悠香以外の二人も話しに食いついてきた。

 トゥアールはその反応に対して待ってましたとばかりにドヤ顔でコンソールを操作する。

 するとメインルーム奥にあるハッチが開き、その中からとある人物が何やら大きな機械を運び出してきた。

 

「トゥアールちゃん、どうやらコイツの出番みたいだな。なぁに最終調整はバッチリだ。いつでも行けるぜ」

 

「「「あ、あなた(あんた)は……!!」」」

 

 その人物を見て驚く悠香たち。

 その人物は和輝たちがよく知るあの人物であった。

 

 

 

 

「待ちやがれ!! このクソ野郎!!」

 

「何ッ!! 出たなテイルバイオレットッ!!」

 

 俺が現れた事を察知したムルムルギルディはバイクを停止させるとその野太い声でそう言い放つ。その言い方といい声色といい、どことなく往年の特撮ヒーローを思わせてくれる。

 これじゃ俺たちの方が悪役みてぇじゃねぇか。

 俺はそれに不満を持ちながらもハイウェイ上でムルムルギルディと対峙する。

 

「あ、あんたは……テイルバイオレット……!! まさか、俺たちを助けてくれるのか……?」

 

 ムルムルギルディとグリュープス号に弾き飛ばされボロボロになっている暴走族の男たちの一人が俺に声をかけてきた。

 その声は先程までのイキったそれとは違い、随分と弱々しい。

 俺はそんな男たちにサムズアップを返す。

 

「お、恩に切る……!!」

 

「さ、早く安全な所に」

 

 ボロボロで動けない奴らをテイルブルームが背中に背負ったりしながら救助していく。

 俺はムルムルギルディの野郎が邪魔しないように睨みつける。

 

「貴様ら……!! この俺の邪魔をするつもりかッ!! この者たちは我が誇り高きバイク乗りの魂を汚す者たちだぞッ!! このような者達がいるせいでいつまで経ってもバイク乗りは野蛮だと蔑まれ、ライダーに憧れる女子が増えんのだぞッ!!」

 

「あーあーうっせぇよ。いくらコイツらが社会のゴミで俺たちに喧嘩売って来たどうしようもないカス野郎でノミ虫以下のクソだろうが……だからって殺していい理由にはならねぇだろうが。てか結局は下心満載かよ」

 

(ちょっと和輝、流石に言い過ぎ言い過ぎ)

 

 ムルムルギルディの野郎、最初は正義感が暴走したような奴かと思ったが、どうやらコイツも他のエレメリアン同様の本心らしい。

 バイクに憧れる女子が男に比べて少ないのは事実だが、それをダシにして気に入らない奴らの命を奪ったりしてはそれこそ本末転倒だ。

 この野郎だけは同じバイク乗りである俺の心が許さねぇ。

 

「やはり甘いなッ!! テイルバイオレットッ!! いいか!! ひとえに今時の女の子のバイク離れは貴様らのその甘さが引き起こしたに他ならないッ!! お前たちのような生温い優しさが屑どもを増長させたせいだッ!!」

 

「はぁ? 何言ってんだ?」

 

「問答無用だッ!! トォッ!!」

 

 そう言うや否やムルムルギルディはバッタ特有のジャンプ力を生かして大きく跳躍。往年のアクション俳優顔負けの見事すぎるフォームで飛び蹴りを放ってきた。

 だが、エクストリームチェインへと極限進化を果たした俺にとっては今更この程度のキック、躱すのなど造作もない。

 

「当たるか――」

 

(待って和輝!! このまま避けたらまだ逃げ遅れた人たちが!!)

 

 んだとぉ!?

 そう言われて一瞬振り向くとそこにはまだ逃げきれていない人が数人いやがった。

 いくらテイルブルームが必死の救助活動をしていたとしても流石に数が多すぎるんだと気づいた俺は、躱すのをやめて受け止める方針に切り替える。

 

「くッ……!!」

 

「何ッ!?」

 

 本来ならば間に合わないであろう防御だが、エクストリームチェインによって強化された反応速度及び装甲の頑強さなら可能だ。

 俺はムルムルギルディの脚を掴んで受け止めると誰もいない方へと投げ飛ばした。

 

「むぅ……」

 

 アスファルトに叩きつけられるもビクともしていないムルムルギルディ。

 当たり前だ。全力で投げ飛ばしたらその時に発生する衝撃で周りの奴らを巻き込みかねないからな。

 俺は暴走族の奴らが安全圏にいくまで防戦する事に決め、ムルムルギルディの出方を伺う。

 するとムルムルギルディは怒りの声を上げはじめる。

 

「やはりだ……、やはり……貴様だけは気に食わんッ!!」

 

「んだよ急に……。てか何怒ってんだよさっきからよぉ」

 

 さっきからずっと怒っていたが、このムルムルギルディの怒り。

 こいつはちょっとやそっとの物じゃないぜ。

 時間稼ぎにもなるし丁度いいのでムルムルギルディの怒りを聞いてみる事にする。

 

「いいか!! 俺はなッ!! 乗り手属性(ライダー)を愛すると同時にテイルレッドたんが大好きだッ!! いつかは共にツーリングを楽しみたいという夢もあるッ!!」

 

「はぁ……」

 

「レッドたんは高潔で礼儀正しく、それでいてどんな悪をも許さぬ無敵のヒーロー!! 俺たちエレメリアンは皆がレッドたんに敬意を示す程だッ!! それは例え、仲間であるテイルブルーら他のツインテイルズの奴らも変わらないッ!! 何故なら彼女たちは皆、何かを愛し何かを守る為に戦っているからだッ!!」

 

(いや、お父さん以外には余り敬意を払ってなかったでしょ……)

 

 俺の中で鋭くツッコみを入れるティアナ。

 どうやらこのムルムルギルディ。結構、面倒な性格をしているようだ。

 何だか、面倒くさくなってきた。

 

「だがそれに比べてテイルバイオレットッ!! 貴様は何だッ!! 貴様はあのような屑どもを守り、あまつさえこの俺相手に手加減をしているッ!! それにそれに何だ何だッ!! その無駄にゴツイ姿はッ!! いつの間にか俺の知らない姿にイメチェンしやがってッ!!」

 

「何だよ!? 見た目に関しては別にいいだろがそれはよ!!」

 

「五月蠅いッ!! 兎に角ッ!! 貴様のようなヒヨッ子をツインテイルズの一人だと認めるわけにはいかんッ!!」

 

 もう無茶苦茶だ。

 このムルムルギルディとかいう奴、もしかして結構どころかかなり面倒な性格なのかもしれない。

 色々と間違っているし、いいがかりもいいとこだ。

 

「行くぞグリュープス号ッ!! テイルバイオレットをぶちのめすぞッ!!」

 

 怒り心頭のムルムルギルディは肉弾戦では敵わない事に気が付いたのか、愛車であるグリュープス号に跨ると、俺に向かって突っ込んできた。

 そのスピード、そのパワー、まるでジェット機や戦車を相手にしているかのようであり、流石のエクストリームチェインでも防戦一方のままでは厳しい物がある。

 

「クッソ……!!」

 

 グリュープス号の体当たりに弾き飛ばされた俺はアスファルトに叩きつけられる。

 ムルムルギルディは好機と見たのか属性力を奪う金属の輪を作り出すと、それをすれ違いざまにくぐらせんと疾走する。

 

「トドメだッ!! テイルバイオレットッ!!」

 

 いくらエクストリームチェインという最強クラスの力を手に入れようが、力の源である属性力を奪われてしまえば勝負は決まる。

 だが、勝利の女神はまだ俺を見捨ててなどいない。

 

「バイオレット!! 避難は無事完了したわ!!」

 

 聞こえてくるテイルブルームの声。

 ちらりとその方向を見ると遠くの草原で暴走族の男たちが皆、腕で大きく丸を作って俺たちはもう大丈夫だと合図を送ってくれていた。

 

(和輝、そろそろ反撃開始よ)

 

 みてぇだな。

 俺は即座に起き上がり態勢を整える。

 その急変に驚くムルムルギルディだが、もう手遅れだ。

 俺の倒すチャンスはもう巡ってこないって所を教えてやる。

 

「うおらぁッ!!」

 

「おぶぅッ!?」

 

 突っ込んできたムルムルギルディ相手に今までのお返しとばかりに跳び蹴りを見舞う。

 ムルムルギルディはグリュープス号と共に大きく吹き飛びアスファルトを抉る。

 

「な、なんて力だ……!! こんな力があるなど……聞いていないぞ……!!」

 

「たりめぇだ。何てったって、この力(エクストリームチェイン)をてめぇらエレメリアンに見せるのは初めてだからな」

 

 今までの優勢が、俺が周りを気にして全力を出せていなかったからという事にようやく気が付いたムルムルギルディの顔が絶望に染まる。

 ムルムルギルディは先程までの威勢は何処へやら、グリュープス号に慌てて跨ると、来た道を戻るかのようにアクセルを全開にして逃走を開始した。

 

「野郎……!! 逃げやがって……!!」

 

 悔しいがグリュープス号のスピードはかなりの物だ。

 いくらテイルギアで強化された脚力を生かそうが到底追いつけない。

 このままでは逃がしてしまうと思ったその時、通信が聞こえて来た。

 

『どうやら新兵器をお披露目する時が来たようですね』

 

(ママ!?)

 

 通信の相手、それはトゥアールさんであった。

 今の今まで通信が来なかった事もあり、そう言えば俺たちの戦闘風景が基地で見られている事をすっかり忘れていたぜ。

 てか、新兵器ってなんだ?

 もしかしてあの超巨大ロボットの事か?

 

『今そちらに転送します。大丈夫、最終調整はある人に頼んで済んでいますので、思う存分かっ飛ばしてください』

 

 思う存分かっ飛ばす?

 最終調整はある人物に頼んだ?

 何が何やらわからずに困惑するそんな中、目の前の空間がぐりゃりと歪み、その新兵器とやらが姿を現した。

 

「こ、こいつは……!!」

 

『名付けてマシントゥアール。テイルバイオレット専用のスーパーバイクです』

 

 流線形のフォルムが印象的な白と紫で彩られたオンロードタイプのスーパースポーツバイク。

 新兵器マシントゥアールの誕生だ。




はい。と言う訳で新兵器の登場です。
次回はテイルバイオレットがマシントゥアールに乗って疾走します。
ぶっちぎるぜ!!
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