俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第114話 超マシン対決

『名付けてマシントゥアール。テイルバイオレット専用のスーパーバイクです』

 

 逃走を選択したムルムルギルディ相手にどうしたらいいものかと途方に暮れかけた俺たちへとトゥアールさんが送ってくれた新兵器。

 それは特撮ヒーロー物でよく見るオンロードタイプのスーパースポーツバイク。製作者であるトゥアールさんや乗り手である俺たちそれぞれのイメージカラーである白銀と紫で塗装されたその流線形の車体フォルムはバイク好きなら誰もが憧れるような王道のカッコよさであり、俺は思わず目を輝かせる。

 

「おいトゥアールさん!! マジでこんなの使っていいのか!?」

 

『勿論です。あと、名前はこんなのではなくてマシントゥアールなのでその辺りはキチンとしておいてください』

 

 バイクをマシントゥアールと呼ぶように念を押すトゥアールさん。

 正直、俺としては製作者の名前がガッツリ含まれているダサいその名前は、カッコいいバイクの見た目とのギャップを生んでいる事もあり、お世辞にも喜べる物じゃない。願わくばもっといい車体名をしてほしかったものだぜ。

 まぁでも、こんなカッコいいバイクを貰えるのならばその程度は些細な事だ。

 

「はいはい、わーったわーった。よろしく頼むぜマシントゥアール」

 

『よろしくお願いします!! マスター!!』

 

「(喋ったぁ!?」)

 

 車体をポンポンと叩いたその時、メーターと思しきディスプレイ部が点灯し、トゥアールさんの声を幼く高くしたような可愛らしい声が返事をして来やがった。

 この不意打ちには俺もティアナも同じタイミングで驚き声を上げる。

 ディスプレイ部分にはトゥアールさんをアニメチックにデフォルメしたキャラが表示されており、これがその声の主だとわかる。

 

「おいトゥアールさん!? んだよこれ!?」

 

『それは電子妖精(エレクトロフェアリー)とぅあるんを一部流用して作成したAIナビです。目的地や目標への最短ルートなどをアシストしてくれるだけでなく、逃走するエレメリアンの反応を補足しリアルタイムで特定する優れものですよ~』

 

 一見するとバイク自体に意思を持たせた所謂人工知能のように見えるが、厳密には人工知能などないただのナビであり、意思のような物ではないとの事。

 先程の台詞もただのナビ起動音の一種のような物であり、言ってしまえば既に搭載されてある数ある台詞の中から最適となる言葉をチョイスしてあるだけらしい。

 どうしてこんなナビを搭載したのかについてはトゥアールさん曰く、製作をする上での協力者が美少女ボイスのAIナビをぜひつけて欲しいとせがんだ結果らしい。

 

「ったく、その協力者ってのは何処のどいつだよ……」

 

 話からしてその協力者ってのは相当なオタクだと推察できる。

 トゥアールさんが自信満々に最終調整を頼んだ相手だから悪い奴じゃねぇのは確かだが……

 

(ねぇ和輝、そんな事よりも早く追いかけましょう。反応からして今ならまだそう遠くないけど、どんどん離れていっているわ)

 

 一体化しているティアナがそう催促する。

 ティアナはエクストリームチェインへと進化した事で、どんなエレメリアンでも強弱関係なく発するであろうツインテール属性を感じ取ることが出来るようになっている。

 その為、エレメリアンの大体の位置がわかるって訳だ。

 ……って、それならエレメリアンの補足するナビっていらねぇじゃん。

 俺はそう心の中でツッコミをいれながらバイクに跨った。

 

「行くぞティアナ。ナビは頼んだぜ!!」

 

(わかったわ。そっちこそ運転の方は任せるからね!!)

 

 俺は前を見てバイクを運転することだけに集中し、ティアナはディスプレイに映ったナビの内容及び自身で感知できるエレメリアンの反応を俺に伝える。

 一つの肉体に二つの人格を宿す俺たちだからこその協力プレイ。

 猛スピードで逃げるムルムルギルディに追いつくにはそれしかない。

 俺はハンドルを握り、アクセルを全開。響く音を轟かせたマシントゥアールは通常のバイクでは到底出ないであろう初速で一気に発進した。

 

「ッ!? なんつースピードだ!?」

 

 ハイウェイを爆走するマシントゥアールは加速し続け、その速度は生身であれば到底耐えられない殺人的な速度を生む。

 初速でさえ驚かされたって言うのに、加速力への驚きはその比較にもならない。

 

『マシントゥアールの最高時速は2000キロ、その車体強度はアンチアイカシステムで積み重ねた私の20年近い想いの結晶であり、例え核爆発に巻き込まれたとしてもビクともしません。なので事故なんて気にせず遠慮なくブッ飛ばしてください』

 

 なんかもう無茶苦茶だな。

 疾走する中で聞こえてくるトゥアールさんご自慢のマシントゥアールの厨スペックっぷりに少し食傷気味になりながらも、俺はハンドルを握り続けながらムルムルギルディを追いかけ疾走する。

 尤も、流石の俺も時速2000キロなんて速度はシンプルに危険なのである程度は自重した速度を保つ。

 途中、ハイウェイを利用している一般の車両を何度も脇から追い抜きぬいて爆走する様は正にハイウェイを駆け抜ける一陣の風だ。

 

「うぉっ!? 今度は何だ!?」

「テイルバイオレットだぁ!!」

「パパ―!! テイルバイオレットがバイク乗って走ってたよー!!」

 

 爆走する俺の姿を見て驚く運転手と窓に顔をこすりつけて喜ぶその子供たち。

 近年の特撮ヒーローではめっきり見なくなったとおやっさんが嘆いていた光景が現実にて展開されるのは何つうか凄く爽快だ。

 ヒーローとしてどうかとは思うが、やっぱし交通ルールだとかのしがらみを取っ払いながら爆走するのは最高と言わざる得ない。

 

(気持ち良くなるのはいいけど、事故だけはしないでよね)

 

「大丈夫だっつーの。おやっさん仕込みのバイクテクなめんなよ!!」

 

 ギャグマンガならお約束のように扱われる盛大な事故フラグであるが、今の俺には何の意味もない。

 これは俺の今まで培ってきたおやっさん仕込みのバイクテクもさることながら、それ以上にマシントゥアール自体がまるで俺の手足かと錯覚してしまう程に相性がいいのもある。走行する際の細かな癖を計算した上で調整された車体自体の性能は、かつての愛車と遜色がないどころか、元々のマシンスペックを合わせて遥かに凌駕していると言っても過言ではない。

 結果、本来ならばあまりの加速故に初めてでは到底乗りこなせいであろうこのマシンを俺は難なく乗りこなせているって訳だ。

 

(和輝!! 前方数十メートル先、ムルムルギルディが見えたわ!!)

 

「ああ、俺にもバッチリ見えているぜ!!」

 

 数十メートル先で同じく爆走するムルムルギルディ。

 それを捉えた俺は更なる加速の下、その背中を肉薄する。

 

「何ッ!? テイルバイオレットが追いかけてきただとッ!?」

 

 ミラーに映る俺の姿を見たムルムルギルディが驚愕の声を上げる。

 今までバイクに乗った状態で追いつかれた事がないのか、ムルムルギルディの焦りは表情こそ見えなくても手に取るようにわかる。

 

「この俺相手にバイクチェイスとは舐めた真似をッ!!」

 

 ムルムルギルディはアルティデビル最速のライダーの名を守るが如く、グリュープス号のスピードを上げて俺を引き離さんとしやがった。

 

「野郎!! 待ちやがれ!!」

 

 俺は負けじと追いかける。

 俺とムルムルギルディ、互いのバイク乗りとしての誇りをかけたバイクチェイスが今始まった。

 

 

 

 

 まだ昼過ぎにもなっていない午前のハイウェイ。

 そこを爆走する二人の影。

 一人は追い抜かれないように逃げる者であるムルムルギルディ、もう一人は追いつかんと追跡する者であるテイルバイオレット。

 二人の熾烈な争いの舞台は草原地帯をあっという間に抜けて、次の舞台である山岳地帯へと移行していた。

 

「くッ……!!」

 

「待てっつってんだ!! この野郎……!!」

 

 山と山の間の道を疾走する二人。

 自然あふれるその道は本来ならば穏やかな気持ちにさせてくれるのであろうが、バイクチェイスに燃える二人には関係ない。

 逃げ切りを狙うムルムルギルディはある思惑の下、都市部へと向かうトンネルに目を付けて突入する事を選択。

 テイルバイオレット操るマシントゥアールもそれを追う。

 前述の通り、このトンネルは山岳地帯を抜けて都市部へと入る上で必要な物であり、ここら近辺から都市部へと入るには自然とこのトンネルを利用する事となる。つまり、それは一般の車両が先程までより増える事を意味していた。

 

(和輝!! このままのスピードじゃぶつかっちゃう!!)

 

「わかってる!! でもこのスピードじゃ……!!」

 

 決して明るいとは言えないトンネル内。

 増え始める一般の車両の群れを少しの減速もせずに猛スピードで駆け抜けるのは至難の業だ。

 これはいくら和輝自慢のバイクテクであろうとも厳しい物がある。

 対するムルムルギルディは人知を遥かに超越した存在であるエレメリアン且つバイク乗りのスペシャリスト。誕生したその時からライダーという物を考えて生きて来た者と比べると経験値の差は如実に表れるのだ。

 殆どの減速無しで車両と車両の間を潜り抜けて走り去るムルムルギルディ。

 テイルバイオレットとの差は着々と生まれていた。

 

「クッソ……!! トゥアールさん!! 何とかならねぇのかよ!!」

 

『今、都市部の交通情報に介入して一般車両の退避を促していますが、トンネル内は流石に間に合いません!!』

 

 通信先のトゥアール曰く、トンネルさえ過ぎれば一般車両の数は一気に減るらしいが、それでは間に合わない。

 このままでは逃げ切られてしまう。

 そうよぎった和輝の脳内にある策が閃いた。

 

「なぁティアナ、ちょいとばっかし荒っぽい走りになるが、それでも構わねぇよな?」

 

(ちょっと和輝、それってどういう……)

 

「なぁに心配すんな!! この極限進化した俺たちに!! 不可能はない!!」

 

 そう言うや否や、一般車両レベルまで減速していたマシントゥアールが再び加速を開始する。

 そのスピードは最高速に到達しうる程の中々の物だ。

 だがしかし、それは非常に危険な行為に他ならない。

 

(ちょっと和輝!! ストップ!! ストップ!! ストーーーップ!!)

 

 あまりのスピードに心の中で悲鳴を上げるティアナ。

 だがテイルバイオレットは止まらない。

 目の前に大型トラックの背中が迫る。

 危うくぶつかりそうになる次の瞬間、マシントゥアールを操るテイルバイオレットはとんでもない走行を披露する。

 

「うおらぁっ!!」

 

 裂帛の気合と共に加速するマシントゥアールはなんとそのスピードを維持したままトンネル側面を走り出し、遂には天井に張り付いて逆さまになりながら走行し始めたのだ。

 

「何ッ!?」

 

 F1マシンでは理論上可能とされるその脅威の走行方法はムルムルギルディの盲点を突くのには最適であった。

 一切の減速をしなくてよくなったマシントゥアールは引き離されていたムルムルギルディとの距離をみるみるうちに縮めていく。

 そして、両者がトンネルから出たその時、その差は殆どない物となっていた。

 

「ムルムルギルディ!! 鬼ごっこはもう終わりだ!! お縄に着きやがれこのクソ野郎!!」

 

「ぬぅ……!!」

 

 そして追走劇は都市部へと移行する。

 ここでは徐々に先程のトゥアールの言葉通り、一般車両が全くない完全に二人だけの道になっていっており、一般道路数十メートル上にある都市部高速道路は正しく天空に広がるサーキットコース。

 障害物が無くなってしまえば、物を言うのはテクニック以上にマシンによる性能差であると言ってもいい。

 僅かではあるがマシンスペックを上回られているムルムルギルディの敗北はもう寸前に迫っていた。

 

「この俺が負けるだとッ!? あのようなヒヨッコに……!?」

 

 ムルムルギルディに残された勝ち筋はこのハイウェイを降りて一般道路に逃げ込む他ない。一般道路ならばトゥアールによる一般車の退避命令が出ておらず、障害物となる車が多数存在しているからだ。

 だが、生粋のライダーたるムルムルギルディにとって、ハイウェイを先に降りるなど最早自分から負けを認めているような物であり、プライドの高さがそれを邪魔をする。

 しかし、このままでは追いつかれるのは確実。

 だからと言ってハイウェイを先に降りるような真似だけはしたくないムルムルギルディ。

 追い詰められたムルムルギルディはある秘策を思いついた。

 

「俺は負けんッ!! バイク乗りとしての誇りと意地ッ!! そしてテイルレッドたんとツーリングを果たす夢の為ッ!! 俺はどんな手を使ってでも逃げ切るッ!!」

 

 そう宣言したムルムルギルディは走行するバイクをそのままに身体だけを追いかけるテイルバイオレットへと向きなおす。

 そして、ムルムルギルディは離した手にエネルギーを溜めるとそれを一つの光弾として走行するテイルバイオレットへとぶつけ始めたのだ。

 

「野郎……!!」

 

 直撃して爆散する光弾だが、エクストリームチェインへと進化したテイルバイオレットはおろか、マシントゥアールにさえもまるでダメージにならず目くらまし程度にしかならない。

 それを見たムルムルギルディは再度作戦を変更。

 今度はテイルバイオレットやマシントゥアールにぶつけるのではなく、走行している道路へ向かって攻撃を開始し始めた。

 

「何の真似だてめぇ!!」

 

(待って和輝!!)

 

「ッ!?」

 

 最初はただの苦し紛れの妨害かと思っていたテイルバイオレットであったが、一体化しているティアナの言葉を聞いてハッとする。

 そう、ムルムルギルディの狙いはこのハイウェイそのものだ。

 腐ってもエレメリアンであるムルムルギルディの攻撃は例えテイルバイオレットに歯が立たなくても道路その物を崩して倒壊させるのは訳ない。

 ひび割れ衝撃に耐えきれなくなった道路は走行するテイルバイオレットを地上へと落とす形で崩れ落ちたのだ。

 

「うあああああッ!!」

 

「さらばだッ!! テイルバイオレットッ!!」

 

 崩れ落ちる道と一般道路へと落ちていくテイルバイオレットを見て笑みを浮かべるムルムルギルディ。

 ムルムルギルディは勝利宣言をするかのようにグリュープス号の爆音を轟かせて立ち去るのだった。

 

 

 

 

「うあああああッ!!」

 

(きゃああああッ!!)

 

 ムルムルギルディの攻撃によって崩れ落ちるハイウェイ。

 狙いに気づくのが遅れた事もあり、俺とマシントゥアールはなすすべなく崩壊するハイウェイに巻き込まれ落下している。

 言っておくが、テイルバイオレットへ変身している今の状態なら下に広がる一般道路に墜落しようがダメージなど負いはしない。

 だが、このまま落下し続けてしまえばムルムルギルディの逃走を許す事はほぼ確実と言える。

 いくらマシントゥアールの性能がよくても一度完全にコースアウトした状態から復帰して奴に追いつくのはどうあがいても不可能だ。

 

「クッソ……!!」

 

 あの気難しい性格をしたムルムルギルディの事だ。ここで取り逃がせば、今後も自身が気に食わないと判断したライダーたちへ制裁と言う名の苛烈な攻撃を加えるに違いない。

 自身が好きな属性のイメージを改善する為とは言え、あんな乱暴なやり方では攻撃対象がどれ程クズであったとしても、到底許される行為ではない。俺も同じライダーの端くれである以上、奴の暴走は絶対に止めなくてはいけないって言うのに……

 

「ダメなのか……? このまま奴を取り逃がしちまうってのかよ……!!」

 

 万策尽きた事で悔しさが俺の心を支配する。

 それはアナザーテイルレッドにコテンパンにやられた時とはまた違う悔しさだ。

 

「せめて……奴を追い越せるスピードで空を飛ぶ事が出来るのなら……」

 

 叶わぬ願い。

 諦めかける俺は思わずそう口に出してしまう。

 しかし、その瞬間、

 

『フッ……、そう言うと思ってましたよ。なぁに、マシントゥアールはこんなもんじゃありません!!』

 

 耳に響くのはトゥアールさんの自信ありげな声。

 そして、共に落ちるマシントゥアールのディスプレイ部分の表示が変化する。

 

戦闘機形態起動(ストライカーモードオン)

 

 ライトが眩く光ったと思うとマシントゥアールはその姿を変化させる。

 車体は全体的に前後に伸び、タイヤは両方ともが地面に平行になるようにスライドして収納、シート内に折りたたまれていたウイングは変形と同時に展開し、マフラーはジェットエンジンのような推進機構へと形を変える。  

 その姿はバイクと言うよりもまるで超小型のジェット機だ。

 変形し終えたマシントゥアールは底部にあるホバー装置を使い、ピタリと落下状態から制止することに成功。俺は変化したマシントゥアールのシート部分に降り立ち、サーフボートを操るサーファーかの如く搭乗した。

 

「す、すげぇ……!! トゥアールさん、こいつは一体?」

 

『よくぞ聞いてくれましたね。これこそがマシントゥアールの真の姿!! 名づけてマシントゥアールストライカーモード!! 敵がどれだけ高く逃げようとも大気圏を超えて追いかける事が可能な超高速戦闘機形態です!!』

 

 ジャジャーンとでも聞こえてきそうなトゥアールさんの大発明。

 マシントゥアールストライカーモード。

 バイクから戦闘機、漢のロマンをくすぐる最高のトランスフォームに俺は興奮を隠しきれない。

 さっきまでの悔しさは何処へやら、俺は再度マシントゥアールに夢中だ。

 

「すげぇ!! 流石はトゥアールさんだ!! あんたの事、見直したぜ!!」

 

『いや~、この程度なら私にとってはお茶の子さいさいもいい所ですよ~。いずれやってみたいとアイディアを温めておいたかいがありましたね~。好評であれば今度はロボットモードへの変形機能を追加しましょうか?』

 

 マジでか!? もしそれが可能なら戦う上で滅茶苦茶頼もしいパートナーが出来るって事じゃねぇか!!

 男の子が喜ぶ物というのをわかっているトゥアールさんの底なしのアイディアは思わず脱帽しちまう物だぜ。

 

(何言ってるのよ。絶対、メガネさんの変形機能をパクったでしょ……)

 

 何かを知っているのか、心の中でチクリと刺すティアナ。

 これ以上幻滅したくない俺はその発言を聞かなかった事にすると、気を取り直してストライカーモードの操作方法を尋ねる。

 ストライカーモードは見ての通り、バイクではないし、乗り方もシートに跨るのではなく、シートの上に立つという一見するとどう動かしていいのかわからない物だ。

 

『それならご安心を。ストライカーモード時は搭乗者の脳波を読み取り、頭の中でイメージした通り自在に飛行します。ただし、操作には高い集中力を要するので操りながら同時に戦闘をこなすのは難しいかもしれません』

 

 その後のトゥアールさんの説明曰く、幸いな事に、脳波を読み取り動く性質上、表に出ていない人格でも操作は可能のようだ。

 つまり、俺とティアナ、そのどちらかがマシントゥアールをコントロールし、コントロールしていない方が戦闘を行う分担作業をこなす必要があるって事に他ならない。

 一応、唯一の足場となるシート部分には、搭乗者自身の意思でオンオフ可能且つとても強力な重力発生装置があるので、どんな荒っぽい操作をしようが搭乗者が振り落とされるような真似は起きないらしいが、だからと言って二人の息を合わせない状態ではとても戦闘を満足に行えるとは思えない。

 要するにこれは俺とティアナ、二人のコンビネーションが物を言うマシンだ。

 

「よし、なら表は任したぜ。操縦は俺に任せな」

 

 上手くいかないかもしれないなんて言う不安なんて物はこれっぽちもありはしない。

 俺が操り、ティアナが倒す。

 極限のツインテールへと進化した俺たちに不可能なんて物は存在しないって所を見せてやるぜ。

 そう意気込む俺は身体の主導権をティアナへと譲渡する。

 

「わかったわ。操縦は頼むわよ!!」

 

 和輝とバトンタッチし、表へ出てきた私はエクストリームチェインの専用武器である極限双房銃テイルバスターを構え発進の準備を整える。

 ムルムルギルディを打ち倒す為の二人一緒のコンビネーションアタック。

 ぶっつけ本番だけど、成功させてやるんだから!!

 

(おう!! 任せとけ!! 飛ばしていくぞ!!)

 

 瞬間、ホバリング状態から瞬時に加速し飛翔するマシントゥアールストライカーモード。

 マッハへと至る速度へ加速する私たちの姿は、ツインテールが羽ばたいているかのようだった。

 

 

 

 

 高層ビルが多数建ち並ぶ街中、その建物と建物の間を縫うように建築されたハイウェイの上を爆走する異形の影。

 その影ことムルムルギルディは、愛車グリュープス号を操りながら勝利の雄たけびを上げていた。

 

「フハハハハハッ!! 誰もこのムルムルギルディを追い抜ける筈が無いのだッ!!」

 

 トゥアールによって交通規制されたハイウェイはムルムルギルディだけが走ることが出来る一人だけのサーキットと化している。

 テイルバイオレットを振り切った今、ムルムルギルディを止める者は誰もいない。

 そう思われた時だった。

 

「見つけたわ!! ムルムルギルディ!!」

 

「むっ!? この声はテイルバイオレット!?」

 

 ムルムルギルディの耳に聞こえて来たのはテイルバイオレットの声だ。

 口調こそ先程まで聞いていた男っぽい物ではなく、女の子らしい物になっているが、聞き間違えるはずなどない。これはテイルバイオレットの声だ。

 そんなバカな……テイルバイオレットなら確かに下に叩き落したはずだ……こんな短時間で追いつける訳がない。

 そう思うながらもムルムルギルディは爆走しながら背後を振り返る。

 案の定、背後には先程駆け抜けたがらんどうの道路が広がっており、テイルバイオレットの影はどこにも見えない。

 

「幻聴か……? いやしかし……まさか!?」

 

 ハッと何かに気が付いた様子のムルムルギルディ。

 ムルムルギルディは突然、上空を見上げた。

 

「上か!?」

 

 上空、そこにはムルムルギルディの度肝を抜く光景があった。

 なんと、さっき振り切った筈のテイルバイオレットが空中にて超小型のジェット機のような形へと変形したバイクをサーフボートを操るかのように乗りこなし、こちらへと迫っていたのだ。

 

「バ、バカな!?」

 

 変形し空を飛ぶバイクなど聞いた事も見た事ないムルムルギルディにとっては正に驚愕の一言。

 ムルムルギルディの開いた口が塞がらない。

 テイルバイオレットはそんな中、上空にて自身の武器であるテイルバスターをバスターライフルモードへと変形させるとムルムルギルディを撃ち抜かんと引き金を引いた。

 

「なんのッ!!」

 

 だがしかし、そこは流石のムルムルギルディ。

 スピードを一切落とさない状態での蛇行運転を即座に行う事で上空からの狙撃を躱してみせた。

 テイルバイオレットはそれを見て今度こそとばかりに狙撃を再開するが、ムルムルギルディの巧みなバイクテクニックの前に掠りもしない。

 

「もう!! 何よアイツ!! 全然当たらないじゃない!!」

 

 思わず悪態突くテイルバイオレット。

 それほどまでにムルムルギルディは手強い。

 マシントゥアールをストライカーモードにしてもそう易々と倒されてくれる相手ではないのだ。

 

(くっそしゃーねぇ、こうなったら接近して直接叩き斬るしかねぇみたいだな!!)

 

「そうね、丁度私もそうしようと思った所よ!!」

 

 心の中で頷き合う二人。

 避けられるのであれば絶対に避けられない攻撃をするまでだ。

 テイルバイオレットはテイルバスターのグリップ部分を縦に倒す事でバスターライフルモードを更なる形態へと変形させる。

 銃身部分が刀身となり、グリップ部分含めて一本の長物となったその形態こそテイルバスターバスターソードモードだ。

 テイルバイオレットはマシントゥアールの速度をトップスピードまで加速。

 ムルムルギルディを一気に追い抜くと前方約数十メートル先でストライカーモードを道路スレスレでホバリングさせて待機する。

 

「成程ッ!! 真正面から迎え撃つつもりか!! 面白いッ!!」

 

 そう、テイルバイオレットの狙いは通り過ぎるムルムルギルディをすれ違いざまに叩き斬るの一点にある。

 勿論、それはムルムルギルディがUターンして逃げなかったらの話だ。

 だが、ムルムルギルディはならばとばかりに迎え撃つ構えを見せる。

 ムルムルギルディにとって形はどうあれ一度追い抜かされた以上はUターンして逃げるなどプライドが許さない。

 

「いいだろうッ!! 俺のプライドッ!! 俺のライダー魂をかけッ!! 貴様を轢き倒してくれるッ!!」

 

 ムルムルギルディは暴走族の男たちに見舞ったようにグリュープス号をウィリー状態へと移行、さらに左手には属性力を奪うあの輪を構える。

 己をプライドを守るが為にグリュープス号は最高速へと到達する。

 

「行くわよ和輝!!」

 

(ああ!! ブチかませ!!)

 

 対するテイルバイオレットもテイルバスターバスターソードモードを構える。

 極限のツインテールの力が今、解き放たれる。

 

完全開放(ブレイクレリーズ)!!」

 

 バスターソードの銃口部分からあふれ出す巨大なエネルギーが剣状に纏まり、全長数十メートルの巨大な刃を形成する。

 紫の旋風を身に纏ったテイルバイオレット及びマシントゥアール。

 マシントゥアールは和輝の操作を受けて超スピードへと瞬間加速。

 迫りくるムルムルギルディ及びグリュープス号を迎え撃たんと発進した。

 

「はあああああああッ!!」

 

「とぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 勝負は一瞬。

 すれ違い、交錯する二人の戦士と二つのスーパーマシン。

 ムルムルギルディが属性力を奪わんとするよりも先にテイルバイオレットはテイルバスターを振るう。

 

「ぬぐぅ!?」

 

「エクストームブレイザァァァーーーッ!!!!」

 

 紫電一閃。

 テイルバイオレットは見事、必殺のエクストームブレイザーですれ違いざまにムルムルギルディをグリュープス号ごと斬りさばいてみせた。

 

「バカなッ!? 最強のライダーと謳われたこの俺がッ!! テイルバイオレット如きにッ!! ま、負けると言うのかッ!?」

 

 言葉虚しく上半身と下半身が真っ二つに分かれたムルムルギルディは同じく真っ二つとなったグリュープス号と共にハイウェイの上を勢いそのままにブッ飛んでいき、数メートル先の道路にて打ち捨てられる。

 そして、ムルムルギルディとグリュープス号の残骸はそのまま飛び去るテイルバイオレット及びマシントゥアールの背後で大爆発を起こしたのだった。

 

 

 

 

 ナビの指示通りに街中を進み、トゥアールさんが作った秘密の出入り口を通る事で基地内へと帰還する。

 

「うし!! 到着!!」

 

「もう和輝、ちょっと五月蠅い」

 

 ムルムルギルディを倒し終えた俺たちは無事、マシントゥアールに乗ったままトゥアールさんの基地へと帰還。バイクを押しながら皆がいるであろうコンソールルームへと向かう。

 ちなみに今の俺は欲しかったバイクが手に入った事もあり、最高に上機嫌であり、ティアナが苦言を呈する程だ。

 そして、そんなこんなで到着したメインルーム。

 SFチックな扉が開き、中の様子が露わになる。

 そこは予想通りのハイテク設備のオンパレードであり、トゥアールさん一人が椅子に座って待っていた。

 

「お疲れ様です。総愛、和輝君」

 

「あれ? みんなは?」

 

「まぁまぁティアナ、今はんな事よりもマシントゥアールだ。なぁトゥアールさん!! このバイク、マジで貰ってもいいんだよな!!」

 

 先に帰還しているであろう華先生含めた悠香さんら皆がここにいない事が気になる様子のティアナだが、俺はそんな事よりもマシントゥアールを優先する。

 なんせ無くして以降、ずっと欲しかったバイク。それもトゥアールさんお手製のスーパーマシン。認識攪乱機能によって普段使いしても正体がバレないのなら頂くっきゃないって訳だ。

 

「え、ええ……!! それはまぁ……」

 

「いよっしゃあ!!!!」

 

 余りに高いテンションに若干引き気味のトゥアールさんを尻目に俺は喜びの雄叫びを上げる。

 これで苦痛だった歩き通学とはおさらばだぜ。

 

「おいおい、えらい喜びようじゃねぇか和輝」

 

 ガッツポーズを取りながら喜んでいたその時だった。

 背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 俺とティアナは揃って振り返る。

 するとそこには見覚えしかない中年男性が立っていた。

 

「よっ!! 二人ともカッコ良かったぜ」

 

 

「おやっさん!?」

「正樹さん!?」

 

 その人物、それは俺の父親代わりであり、ティアナがこの世界で最も世話になった男。橘正樹、通称おやっさんだった。

 予想をしていなかったおやっさんの登場に驚く俺たち。

 対するおやっさんはガッハッハッハと豪快に笑っている。

 

「どうしておやっさんがここにいんだよ!?」

 

「そうよそうよ!! ねぇママ!! どうして正樹さんがいるのよ!!」

 

 二人してそれぞれに問い詰める。

 するとトゥアールさんがサラッと言ってのける。

 

「いや~、拠点を作るにあたってこの世界でも未春将軍に並ぶ協力者が欲しかったので探していたら、偶然巡り合って意気投合しちゃったんですよ。何でもテイルバイオレットの事なら正体含めて誰よりも知っていると豪語してたくらいですから」

 

「「はぁ!?」」

 

 おい、どういう事だそれは。

 トゥアールさんの発言通りならおやっさんは俺たちがテイルバイオレットとして正体を隠しながら戦っていた事を知っていた事になる。

 俺は即座におやっさんの首根っこ掴んで問い詰める。

 

「おやっさん!! 俺たちの事を知っていたってどういう事だよ!! てかいつから気づいてやがった!!」

 

「そうだな……。4月頃からだったかな?」

 

「最初も最初じゃねぇか!!」

 

 つまり、俺たちがおやっさんにバレぬように必死になって隠していたのは全部無駄だったとでも言うのか……。

 身体からドッと力が抜ける感覚を味わう俺は床にへたりこむ。

 

「でも、どうして正樹さんはその事を隠していたの?」

 

「そんなの、最終決戦付近でお前たちが正体を明かした時に実は知っていたぞと小粋な返しをする為に決まっているじゃないか」

 

 あーそうですかそうですか。

 通りで妙に事件解決のヒントになるような事を口にしてた訳だぜ。

 このおやっさん、忘れていたが隠れた中二病患者だったぜ。

 

「ま、予定は変わったが、これからは俺もちゃんと協力するからよろしくな和輝」

 

「勝手にしろ……」

 

 もう好きにしてくれと俺は投げやりな態度を取る。

 正直、これからの戦いが何故か不安で不安で仕方ない。

 

「てか和輝、んな事より授業は行かなくていいのか? もう始まっているぞ?」

 

 何!? 

 そう言われた俺はスマホで時刻を確認。

 時間的に4限目であり、確か担当教員は堀井だったはず。

 つまり、授業が終わる最後までサボったら放課後面倒な事になるのは確実……!! 授業が終わるまであまり時間は残されていない。

 だがしかし、確かトゥアールさんの施した質量を持った立体映像が俺たちの代わりとして授業を受けているはず……

 

「言っておきますけど、エレメリアンを倒した以上、立体映像装置の電源は切っていますからサボっちゃ駄目ですよ。一応、私も今日からここの教師なので」

 

「それを先に言え!! クッソ、通りでみんないない訳だよ全く!!」

 

「急ぐわよ和輝!!」

 

 ムルムルギルディとのバイク対決を制したのも束の間、今度の俺たちは時間との勝負に追われるのであった。




初めてバイクに乗った状態の戦闘を書きましたがいかがでしょうか。
マシントゥアールが変形含めてもろマシントルネイダーだったり、色々なパロディをするにあたってムルムルギルディの性格がエレメリアンらしくないアレな感じなってしまったのはご愛嬌という事で……
次回は遂に七つの性癖の一人目が登場する予定です!!
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