俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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最近、モチベーションはあるけど時間が……


第115話 迫りくる超悪

 それはティアナの幼き日の記憶……

 ある日の観束家の出来事。

 

「コラァァァッ!! トゥアール!! また総愛相手に!!!」

 

「ちょっと何ですか愛香さん!? ただ抱きしめていただけですよ!?」

 

「だーかーらー!! 一々過剰だって言ってるでしょうが!! あんたがやると色々と危険な臭いしかしないのよ!! 早く総愛を解放しなさい!!」

 

 事の発端はティアナこと総愛に対するトゥアールのスキンシップであった。

 この頃、総愛は6歳を迎え一般的に幼女と呼んで差し支えない時期であり、幼女好きであるトゥアールのスキンシップは日常茶飯事となっていたのである。

 総愛の母親である観束愛香はその過剰すぎるスキンシップにいつも警戒しているのである。

 

「どこが過剰ですか!! こんなに可愛いんだから仕方ないじゃないですか!! ねー? 総愛ちゃ~ん。トゥアールお姉ちゃんは何も悪い事してませんよねー?」

 

「うん!! ちょっとくるしいけど……トゥアールママは……おねぇちゃんはわるくないよ」

 

 開き直った後、何も悪くないよねとばかりに語り掛けたトゥアールとそれに対して笑顔で返す総愛。

 しかし、愛香の顔は険しいままだ。

 

「ほら見てください!! 総愛もこう言ってくれているんですよ!!」

 

「どこがよ!! 言わせているだけでしょ!! それにちょっと苦しいって言ったわよ!!」

 

「ちょっとくらい何ですか!! この程度は誤差の半中ですよ!!」

 

 なおも開き直り続けるトゥアールに怒りのボルテージを上げていく愛香。

 こうなってしまったが最後、いつもいつもトゥアールは愛香の鉄拳制裁を喰らってしまうというオチになるのだ。

 なのにも関わらず毎度毎度行われるこの二人のやり取りは、言わば学生時代から続く一種のお約束であり、二人の仲の良さを表す物なのである。

 さて、話を戻そう。

 この時の愛香はいつも通りトゥアールを問答無用でブッ飛ばして無理やりにでも総愛を解放せんと拳を握りしめた。

 だが、この時のトゥアールはそれに対して待ったをかけた。

 

「それに前々から言ってますけど、私のおっぱいは人妻になってなお絶壁の愛香さんとは違ってやわらかいから総愛も気持ちいいはずです!!」

 

 総愛を抱きしめながら、その豊満とも言えるおっぱいを強調するトゥアール。

 それは貧乳コンプレックスである愛香の逆鱗に触れるものと言ってもいい。

 だがしかし、これについては少し愛香も思う所があったのか、言葉を詰まらせる。

 

「ッ!! そ……そんな事あるわけないでしょ!!」

 

「ならこの際です。どっちがいいか総愛に決めてもらいましょう」

 

「い、いいわ……!! やってやろうじゃない……!!」

 

 実はトゥアールは以前より、時に嫌がる総愛に対して私の方が愛香さんより気持ちいい筈ですと言い続けており、総愛はその度に子供ながら何かを察してあえて答えなかった。

 だが、この空気は今回は答えなければならない。

 子共ながらそう肌で感じ取る総愛。

 

「おかあさん……トゥアールママ……」

 

「総愛、いい? 何も嘘はつかなくていいからね」

 

「そうですよ総愛ちゃ~ん。この際だからバッサリと言っちゃいましょう」

 

 子供ながら困惑する総愛だが、もう逃げられない。

 愛香とトゥアールは貧乳と巨乳の意地をぶつけるかの如く、火花を散らしており、とてもじゃないが止まらない。

 もしこの場に父親である観束総二がいれば止めることが出来たかもしれないが、生憎この時の総二はツインテールに関する仕事で家にいなかったのだ。

 ちなみに祖母である観束未春はこの時のやり取りを陰からコッソリと見て笑っていたという。

 

「じゃあいくわよ、ほらおいで総愛」

 

 こうなってしまったらしょうがないと観念した総愛。

 対する愛香は恐る恐る優しく総愛を抱きしめる。

 

「ね、ねぇ総愛? お母さんとトゥアール、どっちが気持ちいい?」

 

 実の母の抱擁。

 それは息子や娘にとってはかけがえのない思い出である。

 幼き頃ならなおさらだ。

 

「おかあさん、きもちいいよ」

 

 不安気であった愛香の表情にホッとした笑みが生まれる。

 ほら見ろと勝ち誇りそうになる愛香。

 だが、次の瞬間、悲劇は起きた。

 

「でも……トゥアールママ、おねぇちゃんのほうがいい」

 

 ああ無常、この時の総愛はそれまでと違い、実に正直であった。

 総愛は愛香ではなく、本心からトゥアールの胸の方が気持ちいいと答えたのだ。

 

「なッ……!?」

 

「ププププププーー!!」

 

 ショックで固まる愛香と笑いをこらえきれないトゥアール。

 この出来事以降、トゥアールの愛香に対する貧乳いじりは学生時代を遥かに超える頻度になったのは言うまでもない。

 総愛は中学生へと進学するくらいの頃までずっとトゥアールの貧乳いじりを間近で見続けたのだった。

 

 

 

 

 一日の授業が一通り終わり、下校を促すチャイムが鳴り響く。

 ここから先は部活動に勤しむ者とそれ以外の活動をする為に学校に残る者を除けば、真っすぐ家に帰ってゆっくりと英気を養うのが一般だ。

 だが、残念な事に俺とティアナにはその一般的な考えは通用しない。

 テイルバイオレットとしての正体を隠して日夜エレメリアンからツインテール及びその他の属性力を守るべく活動している俺たちは今日もまた、エレメリアン対策の為に動かなくちゃいけねぇって訳だ。

 

「全く……ヒーローってのも楽じゃねぇぜ」

 

「和輝、あなた何言っているのよ……」

 

 そんな訳で、いつも通り新聞部部室にやって来た俺とティアナ。

 今までならこの部室内で悠香さんたちとあーだこーだ言いながらゴロゴロしているのが常だったが、トゥアールさんがこの学校に赴任してきてからは違う。

 トゥアールさんの超科学によって建造された巨大な地下秘密基地。

 そここそが俺とティアナ、テイルバイオレットにとってのホームだ。

 俺たちはそこに向かうべく部室内に隠されている特殊エレベーターを使い基地に向かった。

 

「ママ~、来たわよ」

 

「うーっす、来たぜっと」

 

「お疲れ~和くんにティアちゃん~」

 

「二人ともお疲れ様」

 

 程なくしてメインルームに到着した俺たち。

 中には一足早く来ていたであろう悠香さんと青葉さん、トゥアールさんと華先生らが待っており、悠香さんと華先生がいち早く出迎えてくれた。

 ちなみに他の男性陣であるおやっさんと匠の姿がないが、今の時間的におやっさんは店の片付けで忙しいので仕方ない。まぁ、匠は知らん。

 

「ねぇママ? 渡したい物があるって言ってたけど何?」

 

 エレメリアンが出現してもないのに俺たちが放課後真っ先にここにやって来たのは他でもない。なんとトゥアールさんが渡したい物を人数分用意できたから集まってくれと言っていたんだ。

 先日のマシントゥアールを俺にくれたトゥアールさんの事だ。

 今回も俺たちが度肝を抜くような超アイテムをくれるに違いない。

 俺はワクワクする気持ちでいっぱいだぜ。

 

「なぁに、総愛にはお馴染みのアレですよアレ」

 

「何よそれ、もったいぶってないで早く言ってよね」

 

 相変わらず妙にもったいぶるトゥアールさんとそれに対してイラっときたのか少しきつめの口調で急かすティアナ。

 トゥアールさんが来てからここ数日間、ティアナのトゥアールさんに対する態度は以前ほど優しくない。

 何か変な事をやらかしたらすぐにでも力づくで止めると言う強い意思がある。

 尤も、そうなってしまったのも全て、トゥアールさんの自業自得な側面もある。

 

「もう仕方ないですねー。少し早い気もしますがお披露目しましょうか」

 

 トゥアールさんはそう言うなり白衣のポケットからにゅるんと宅配ピザぐらいの箱を取り出すとみんなの目の前にドンと置いた。

 大きさから見て中に入っているのはそんなに大きくはないようだな。

 俺と青葉さんの期待する視線を受けながらトゥアールさんは箱を開ける。

 

「じゃじゃーん!! ヴァージョンアップにヴァージョンアップに重ねた自信作です!!」

 

 開けられた箱の中に収められていたのは色とりどりの長方形のアイテム。

 パッと見てスマートフォンか何かだろうか?

 

「何々? スマホ?」

 

 誰よりも真っ先にそう発言するのは悠香さんだ。

 どうやら悠香さんも俺と同じ考えらしい。

 

「惜しいですが違いますね~これこそツインテイルズ専用の連絡ツール。その名も――」

 

「トゥアルフォン。でしょ」

 

 トゥアールさんが言い切るよりも早くバッサリと言ってしまったティアナ。

 ティアナからすればそのトゥアルフォンとやらは特に驚くような物ではなく寧ろ見飽きた物のようだ。

 てか連絡ツールっつう事はスマホって事でいいわけだな。

 

「チッチッチッ、総愛、少し違いますよ。これはトゥアルフォンであってトゥアルフォンではない。そう、これは次世代型トゥアルフォン。その名も――」

 

「じゃあどうせトゥアルフォンmark2、もしくはver2じゃないの」

 

 またしてもバッサリと一刀両断するティアナ。

 トゥアールさんはその新しいネーミングとやらがばっちり的中していたのか、思わずズッコケる。

 出鼻をくじかれるとはまさにこの事だ。

 

「総愛ー!! どうしていい所を持っていくんですかー!!」

 

「だってわかりやすいんだもん。ママって男の子が喜びそうな単語使いがちだし」

 

 頷く一同。

 知り合ってまだそれほど時間が経っていないのにも関わらず、みんながトゥアールさんの特徴を熟知し始めている。

 中二病……とはいかないが、トゥアールさんはティアナの言う通り、男の子が好きな物という物を知っているのか自身の発明品の名称をそう言った物にしがちだ。

 あと、マシントゥアールやトゥアルフォンV2、スタートゥアールmark2と全部に言えるけど、やたらと自身の名前を含ませていやがるな。

 恥ずかしいと微塵も思ってなさそうなのがある意味凄い。

 

「まぁまぁ、m2とかV2とかの名称は兎も角、これってただの連絡ツールって訳じゃないんですよね? 観束先生?」

 

「はい!! よくぞ聞いてくれました華先生!! 実はこれにはですね……」

 

 そして始まるトゥアールさんによるトゥアルフォンV2の性能説明。

 宇宙空間や深海と言った到底使用が出来ないであろう場所で圏外にならないのは当然であるらしく、変声機能や成分解析機能などと言った様々な便利機能を搭載、マシントゥアールにもあったAIナビであるとぅあるんによるバックアップがあるのでどんな機械音痴でも絶対に迷わないらしい。

 その他ではありとあらゆるサイバー攻撃に対する対策もなされていたり、認識攪乱装置が組み込まれているのでこれを所持しているだけでエレメリアンに狙われなくなるなど細かいけどかなり有益な機能ばかりだ。

 

「へー、それだけ凄かったらこれからの活動が楽になりそうね」

 

「でもいいのかしら? こんなの勝手に作って……。マシントゥアールやこの基地もそうだけど、法律を破り過ぎているような気が……」

 

 新聞部としての活動含めたこれからの活動にワクワクする悠香さんとその無駄な真面目さ故に変な心配をする華先生と皆の反応はそれぞれだ。

 俺としては専用アイテムと聞いて純粋に嬉しいけどよ。

 

「凄い……、ゲーム制作ソフトもある……」

 

「え? マジで?」

 

 思わず声を上げた俺に青葉さんがいつの間にか手にしていたトゥアルフォンの画面を見せてくれた。

 そこには専門的過ぎてあまりよくわからないが、ゲーム制作用のアプリがあり、デモ用なのかトゥアールさんをモデルにしたと思しきいかがわしそうなゲームがあった。

 

「いい所に目を付けますね~。それには数億通りの音声データや画像データが入っていますので、上手く使えばあんな人やこんな人を題材にしたゲームだって作れますよ~。何なら配信する事だって出来ちゃいます」

 

 尤も、ゲームと言ってもアクションゲームではなくノベルゲームらしい。

 まぁ、トゥアールさんの事だし、実際はジャンル問わず作れそうではある。

 

「その他の追加機能としましてはもし異世界や過去に行ったとしても連絡をとれるような特殊回線の追加。他にはある程度の自衛機能などとまぁ色々です」

 

 宇宙とか深海とかだけじゃなくて異世界にもし言っても繋がるのは中々に便利そうではある。

 だけど、残念な事に平行世界間での通信は可能だが、平行次元クラスとなるとまだ不可能らしい。

 つまり、ティアナが元居た世界に住む総二さんらとの通信はまだ不可能って事らしい。

 

「一応、これからもヴァージョンアップは続けていくつもりなのであしからず。何なら要望をくれればどんな機能でも付けちゃいますよ~。あ、でも、望んだ夢を見られるような機能は安全の為にNGにさせてください」

 

 何そのピンポイントなNG。

 言い方からして過去にそれ関連で何かやらかしたとしか思えない。

 気になったので一応ティアナに尋ねてみたが、ティアナも何が何なのかわからないらしい。

 

「さて、説明もこのくらいにして、皆さんには実際に手に取ってもらいましょう」

 

 勝手に取って触っていた青葉さんを除く全員にトゥアルフォンもといトゥアルフォンV2が配られる。

 俺はいつも通り青紫のカラーでティアナのは赤紫。華先生は緑で悠香さんはオレンジだ。

 

「んじゃあ、ありがたく使わせてもらうぜ」

 

 一瞬の内に今まで使っていたスマホのデータを移行完了。

 俺専用のトゥアルフォンが誕生した。

 何つうか、これで俺もツインテイルズの正式な一員になれたような気がして少し嬉しいし誇らしい気分だ。

 

「皆さん、今後はこれを使って連絡を取り合ってくださいね。何となくですが、今後の戦いは更なる激戦になるような気がしてなりません。それにレイジがいつまた仕掛けてくるか……」

 

 トゥアールさんの顔つきが真剣な物になり、それにつられるようにみんなの表情が変わる。

 トゥアルフォンへの移行は俺たちの連携強化もあるが、それ以上に今後再び訪れるであろうアナザーテイルレッドへの対策の側面も強いようだ。

 今後はエクストリームチェインだけでなく、俺たち全員のチームワークがカギを握るようなそんな気がする。

 

 

 

 

「しっかし、トゥアールさんの準備の良さは相変わらずっつーか何つーか、兎に角頼りにはなるぜ」

 

「まぁね。ママはああ見えて先の事をよく見据えているのよ」

 

「確かにそれは違いないけどな」

 

 一足先に基地を後にした俺とティアナ。

 この後の予定としては特にないのでこのまま俺たちは家に帰って休む予定だ。

 トゥアールさんにはもっと基地内でゆっくりしていくか、転送装置を使って直接家に帰ればどうかなどと提案されたが、俺もティアナもその提案を丁重に断っている。

 何というか、トゥアールさんの技術に頼りっぱなしってのも申し訳ないってのと、二人きりの時間を少しでも大事にしたいって気持ちがあったからだ。

 俺とティアナはつい先日のアナザーテイルレッドとの一件以来、いずれ来るである別れの時までの時間を大切にしようと決めている。

 戦いの終わりは決して見えない。

 だけど、唐突にやってくる可能性はゼロじゃないのだからな。

 

「おーい!! お二人さーん!!」

 

「「ん?」」

 

 それはバイク置き場にてマシントゥアールを発進させて学校から出ようとした時だった。

 俺とティアナ、二人を呼ぶ声が聞こえて来たので振り返る。

 するとそこにはぜぇぜぇと息を切らしながらやってくる匠の姿があった。

 

「んだよ匠、何かあったのか?」

 

「というか何してたのよ」 

 

 先程、匠は基地に顔を出していなかった。

 いつもなら俺たちと一緒に部室に行くのが普通だったのにここ最近に至ってはホームルームが終わったと同時にいつの間にか消えていたのを思い出す。

 さっきは匠は知らんと無関心であったが、こう実際に会ってみると何故いなかったのかが気になるって訳だ。

 

「何かあったか? じゃねーよ、お二人さん。お前らこそこんな忙しい日に何してんだよ」

 

「はぁ? 忙しいって何だよ」

 

「おいおい、忘れたのかー? 来週末、学祭だろ?」

 

「「あ……」」

 

 そこまで言われてようやく気が付いた。

 そういや、来週末の土曜はアナザーテイルレッド襲撃によって延期していた文化祭の開催日じゃねぇか。

 アナザーテイルレッドやトゥアールさんの来訪のごたごたが重なった事もあってか、すっかり忘れていたぜ。

 

「お前らがいない間、発注していた物が届かなかったり何なりで大変だったんだからな!!」

 

 そういや、文化祭の手伝いは匠に丸投げしていたな……。

 通りでここ数日間、放課後に匠を見なかった訳だ。

 

「俺なんて、準備再会と同時に今までの遅れを取り戻すべく滅茶苦茶こき使われたんだぞ!!」

 

 俺たちが放課後、基地に顔を出したり、アラームクロックでコーヒー飲みながら駄弁ったり、家で二人揃ってゆっくりしていたりしていた中、そのしわ寄せが全部匠に来ていたのか、出し物をする上での中心メンバーに相当にこき使われたようだ。

 涙流しながら訴える姿は中々にくるものがある。

 まぁでも、これに関しては多分、匠自身が多くのバイトを経験してきた事による雑用としての能力の高さを買われたのだとも推測できるけどな。

 

「はは……そいつはご愁傷様なこって……」

 

「笑いやがってこの野郎!! ティアナちゃ~ん!! 何か言ってやってくれよ!! このダメ亭主にガツンとさぁ!!」

 

 涙ながらティアナにお願いする匠の姿は実に哀れだ。

 てかおい、誰が亭主だ。

 まだ結婚してねぇっつーの。

 

「るっせぇな。俺たちはいつまたエレメリアンが出るかわからない以上、んな事に現を抜かす暇はねぇんだよ。悪かったな匠」

 

「お前なぁ~!! それはそうだけど……そこを何とかよ~!!」

 

 実際、匠もそれをわかっているから今日に至るまで俺たちに特にこの事を言ってこなかったのだろう。

 つまり、余程大変だったようだな。

 まぁでも、だからと言ってそんな面倒ごとに付き合う義理は友人であろうがない。ちと心は痛むが、匠にはこれからも俺たちの代わりに頑張ってもらうとしよう。

 

「もう和輝……少しぐらいならいいじゃない。別に今は何もすることないわけなんだし」

 

「ちょ、おま……!!」

 

 このままとんずらしてやろうかと思った矢先、まさかのティアナが匠側についてしまった。

 これは不味い。 

 このままじゃ俺までパシられるのは確実じゃねぇか。

 俺は必至にティアナを説得しにかかるがこうなってしまったらティアナは止まらない。

 

「別にいいでしょ。それに学園祭は高校生にとって大切な思い出の一つなんだから。準備だってきっと素敵な思い出になるに違いないわ」

 

「でもよぉ……」

 

「流石はティアナちゃん!! いよっ、ツインテールの女神様~!!」

 

 俺の不満声を遮る匠のティアナを持ち上げる声。

 それを受けた事でティアナは少し上機嫌になりあれよあれよとこれから手伝いに参加することが決まってしまった。

 恐らく、このままコッソリ逃げたら後で痛い目に合いそうだ。

 

「たーっく、しょうがねぇな!! 俺も手伝ってやんよ……!!」

 

「流石は和輝!! 持つべきものは親友だぜぇ!!」

 

「るっせぇ!! 一応言っておくが、ガチで暇なときだけだかんな!!」

 

「わかってるわかってるって、抜けだす時は俺がフォローしておいてやるからよ」

 

「じゃあ決まりね。早速行きましょう」

 

 結局、俺とティアナも文化祭の手伝いに参加することになってしまった。

 実は俺、余りにも無関心すぎて何の出し物に決まったのかすら覚えていなかったりする。

 皆が活動しているであろう場所に向かう際にティアナに尋ねてみよう。

 

「なぁティアナ、俺たちの出し物って何だ?」

 

「何よ和輝、ツインテールメイド喫茶に決まったのに覚えてないの? ツインテールよ!! ツインテール!!」

 

 ツインテールを無駄に強調するティアナは相変わらずだ。

 俺個人としては馴染の女子クラスメイトのツインテールを見ても多分、そこまでテンション上がらない。

 

「おーい!! 人員追加だー!!」

 

 到着したのは家庭科室。

 中には委員長を中心にクラスメイトらが軒並み集合していやがった。

 匠曰く、家庭科室の貸し出しは今の時期、取り合いになっているらしいので皆がせわしなく動いていた。

 

「もう!! 川本君おっそい!! はい、今度はこれ買って来てね。よろしく」

 

「えぇ~!! またかぁ?」

 

「いいからさっさと行く!!」

 

 キツめの女子にそう言って再び駆り出された匠は俺たちを置いて早々に出て行った。

 俺もああやってこき使われると思うと嫌な気しかしない。

 

「って、橘さんと涼原君じゃん。何々? もしかして追加の人員ってあなたたち?」

 

「うん。さっき、匠に手伝ってくれって頼まれたから来ちゃった」

 

「マジ!? 助かる~!! アイツも結構やるじゃない」

 

 俺と違い、ティアナはその女子と仲が良いのか、すんなりと馴染んでしまった。

 隣にいる俺は早速蚊帳の外であり、少し腹が立つ。

 

「俺は仕方なく来てやっただけだからな」

 

「はいはい、あんたはあっちの方で指示貰ってね。それよりもねぇ橘さん、橘さんの家って確か喫茶店だよね? ちょっと料理の試作を味見して欲しいんだけど」

 

「わかったわ。私で良ければ」

 

 そう言うなり、ティアナはついて行ってしまった。

 俺は自身の扱いに雑さを感じてさらに不機嫌になりながらも、来てしまったもんは仕方ないので指示された家庭科室の隅に向かう。

 そこはいくつかのオタク男子と女子があーだこーだ言いながら衣装やウィッグについて議論していた。

 

「おい、あいつにここで指示貰ってくれって言われたから来たぞ」

 

「いや、違う。やっぱりここのフリルはこうで……」

「ダメよ、絶対にここは譲れない」

「もうちょっと露出を……」

 

 不機嫌さ全開で声をかけたが、全くと言っていい程聞こえてない様子。

 ツインテールでの議論はまぁ兎も角、メイド服の装飾一つでそこまで熱中するのは俺にはよくわからない。

 別に否定するつもりもないが、だからと言ってうんうんと適当な返しをしたくもない。

 

「って、涼原じゃないか!! いつから来てたんだ!!」

 

 着いてから数十分後、メンバーの一人である鈴木がようやく気付きやがった。

 鈴木はオタクグループのリーダーであり、テイルバイオレット関連で良く盛り上がっている事から俺も名前を知っている数少ないクラスメイトの一人だ。

 

「さっきからずっといたっつーの。おい鈴木、俺は何したらいいのか早く言ってくれ」

 

「何をしたらと言われても……」

 

 露骨に苦手そうな態度を取る鈴木とずっと無視された事もあって苛立ちをさらに募らせている俺。

 俺としてはさっさと仕事を終わらせてサボりたい。

 

「そうだ!! 確か涼原ってツインテール好きだよな!!」

 

「それはそうだが、どうしたんだよ」

 

「じゃあこのデザインについて何か意見をくれ!!」

 

 そう言って見せて来たのはメイド喫茶で使用するメイド服のデザイン画。

 ツインテールメイド喫茶というコンセプトの都合上、ツインテールとの調和を目指すデザインにしなければならないとの事で、今の今までそのツインテールという部分に対する有識者がいなかったらしい。

 俺としてはこういう事はティアナの方がいい意見を送れそうな気がするが、当の本人は現在料理の方で手一杯であり、とてもじゃないが意見を貰いなどいけそうにない。

 今回は俺がやるっきゃないようだぜ。

 

「そうだな……」

 

 あまり詳しくないが、メイド服つっても色々な種類がある。

 今回はオーソドックスなエプロンドレスタイプのようだ。

 市販されている物と比べて随分と扇情的な気もするが……

 

「うーん、中々にむずいな……」

 

「頑張れ涼原、お前の意見が頼りだ」

 

 鈴木たちの想いを一心に背負っていると思うと余計に難しい。

 こういう時、どうすればいいか……

 そうだ。こんな時はティアナや悠香さんたちがこの服を着ている姿を想像すればいいじゃねぇか。

 俺は普段使わない妄想力をフル活動させて頭の中にイメージを思い浮かべる。

 

(メイド服を着た悠香さん。快活そうな笑顔とポニーテール。それでいて大人らしさは随一だ。

 なら今度は華先生はどうだ? トゥアールさん程ではないが華先生は悠香さんに負けず劣らずご立派な物をお持ちだし、何ならツインテールも嚙み合っている。

 そしてトゥアールさん。言動こそ残念だけど、その美貌は間違いなくトップクラス。ツインテールに出来ないのが残念だが、それを補って余りある破壊力を秘めた物がある。

 残りのティアナは……)

 

 最後の一人、ティアナのメイド姿を想像した時、何というかそれまでにイメージしていた人たちとの差を強く感じてしまった。

 ツインテールは一番いい、だけどそれ以上に何か悲しくなってくる。

 このデザインが全体的に胸辺りを強調するデザインな事もあってか、かなり虚しくなってくる。

 

「ティアナじゃなぁ……」

 

「まぁ、橘さんはねぇ……」

 

 デザインした皆が一斉に頷いた。

 悲しい事に男子だけでなく女子も一緒だ。

 それほどにティアナの胸は悲しい物になっている。

 これをティアナに着させたら笑いものもいいところだぜ。

 

「ねぇねぇ和輝、呼んだ?」

 

「うおーい!?」

 

 どうしようかと悩んだその時、何も知らないティアナが不意に来てしまった。

 慌ててデザイン画を隠す俺たち。

 だけど、ティアナはそれを見逃さずにスッと奪い去った。

 

「何よ、何を隠しているのよ。ただの絵じゃない」

 

「いやまぁ、そうだけどよ……」

 

 良かった。ティアナは何も気づいていない。

 あとはどう誤魔化すかが重要だ。

 そう思ったその時、ティアナが口を開く。

 

「ねぇ和輝、私がもしこれを着たらどう思う?」

 

「え……」

 

 思わず口ごもる。

 ここで直ぐに似合っているとか可愛いとかの一言でも言えれば良かったのだが、生憎俺にそんなこっぱずかしい事は口が裂けても言えない。

 さらに言えばさっきそれを想像してこれはないと思った直後だ。

 

「ちょっとそれはどういう意味よ……!!」

 

 あからさまに不機嫌になるティアナ。

 誰がどう誤魔化そうかと責任のなすりつけ合いを始めようとするそんな中、悲劇は起きた。

 

「いやーこのデザインじゃ橘には似合わないだろ~だって胸がさぁ……」

 

「「「「なッ!?」」」」

 

 それを言ってしまったのはクラスのお調子者と思しき野郎。

 何もしらないソイツは、特に悪気があったわけじゃないのだが、ティアナの怒りを買うのには十分だ。

 

「何ですって……?」

 

「落ち着けティアナ!!」

 

「俺的にはこういう服は観束先生のような人に着て欲しいけどな~」

 

「「「「お前は黙れ!!」」」」

 

 鈴木ら含めた全員で止めにかかるがもう遅かった。

 ティアナは怒りの余り、そのデザイン画をビリビリに破ってしまった。

 幸いなのはまだ理性が効いたのか、その以上の何かするわけではなかった事だろう。

 だが、ティアナはそのまま何も言わず家庭科室から出て行ってしまった。

 

「すまねぇ、あいつの機嫌は何とかしてるみせるからよ。今日はまたな」

 

 俺はそう言い残して出て行くティアナを追っかける事しか出来ず、結局、その日一日中は一つも口を聞いてくれなかったのだった。

 

 

 

 

 一方その頃、アルティデビル秘密基地内のベリアルギルディの部屋では……

 

「久しぶりだな。ベリアルギルディ」

 

「最初に着いたのは貴様か、待ちくたびれたぞ」

 

 ベリアルギルディと向かい合うのは海竜(リヴァイアサン)の如き姿をした大柄のエレメリアン。

 そう、彼こそがベリアルギルディの精鋭部隊、七つの性癖(セブンス・シン)の一番手。

 その名も……

 

「嫉妬の性癖、レヴィアタンギルディ。期待しているぞ」

 

「任せろ。この世には大や中、ましてや小などと言ったちっぽけな区分が存在しないように、俺にとっては超成功の3文字しかない」

 

「フッ、流石だ……」

 

 股から生える巨大な触手。

 レヴィアタンギルディの魔の手がそこまで迫っていた。




レヴィアタンギルディ、その属性の正体に関しては今回の話の流れなどにヒントがあります(超絶大ヒント ○乳)。
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