俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第116話 血の運命

 あの日以降、ティアナは俺の家に住み続けている。

 本来ならティアナが俺の家に泊まるのは当分の間だけの筈であり、しばらくしたらおやっさん家に戻る、もしくはトゥアールさんが暮らす地下秘密基地に移動するかのどちらかだったのだが、いつの間にかその話は流れてしまった為の結果だ。

 親父とお袋が亡くなって以降、ちょっとした物置と化していた二人用の寝室も今では俺とティアナ専用の部屋となっていたりと、最早ただ結婚していないだけの同棲しているカップルと言っても差し支えない生活を送っている。

 そして、今日もいつも通り朝に弱い俺が爆睡中に叩き起こされ、そのままぶー垂れながらもティアナの作る朝ご飯を食べた後に二人で学校へと登校する。

 その筈だったのだが……

 

「クッソ……全然眠れなかった……」

 

 いつもならまだまだ爆睡しているような時刻だって言うのに、ろくに寝付けなかった俺の目は既に醒め切っており、結果的にいつもよりもかなり早い時間の起床となってしまった。

 原因は昨日学校で起きた出来事。文化祭の準備中に名も知らぬクラスメイトの一人がティアナの胸の事をからかった事を発端とするティアナの機嫌の悪化だ。

 俺があの後碌なフォローを入れる事が出来なかった事や、結局怒りを誰にもぶつける事が出来なかったってのもあるが、昨日のティアナの不機嫌っぷりは凄まじかったのを覚えている。

 家に帰ってからも何一つ口を聞いてくれないわ、夕飯を食い終わると直ぐに寝室に籠っちまうわ、挙句の果てに婆ちゃんに今度何して怒らせたんだとからかわれる始末。暴れまわる方がまだわかりやすくていいなと思った事なんて初めての気分だったぜ。

 

「そういやティアナは……」

 

 今更ながら同じベットの隣で寝ている筈であるティアナの姿がない事に気が付いた。

 いくら早起きのティアナと言えど、まだ太陽の昇り始めたばかりのこの時刻に起きているとは到底思えない。

 もしかしてトイレにでも行ったか? 

 そう少し思いながらも俺はベットから出てリビングへと向かう。

 するとそこには制服姿のまま一人朝ご飯をつつくティアナの姿があった。

 

「あ……」

 

「何?」

 

 俺を睨むティアナ。

 だけど心なしか、昨日よりかはやや柔らかい印象を受ける。

 総二さんやティアナを真似するわけじゃねぇが、揺れるツインテールからも昨日程の怒りを感じない。

 

「いや……おはよう……」

 

「うん。おはよう和輝」

 

 昨日の今日なのでどこか会話がぎこちない。

 余計な事を言ってまた機嫌を悪化させても嫌なので俺としては慎重に言葉を選ばざるえない。

 

「にしても早いな。何かあったのか?」

 

 その瞬間、ティアナの雰囲気が昨日程ではないにしろ少しぴりついた物へと変わる。

 ツインテールが少し逆立って見えた程だ。

 

「別に早くないわよ。この時間に起きてご飯を食べるのなんていつもの事。いつもいつもそんな事も知らずに起こすまで呑気に寝ている和輝にはわからないでしょうけどね」

 

 少しばかりカチンとくる言い方ではあるが、ぐうの音もでないので言い返すことが出来ない。

 それにここで言い返しても話しが余計こじれるのなんざ目に見えてる。

 俺は嫌々ながらもごめんと小さく返すとキッチンに用意された朝ご飯を運びながらテーブルにつく。

 玉子焼きと味噌汁と白ご飯。今日の朝食もティアナが作った物だ。

 

「いただきます」

 

「どーぞ。折角早起きしたんだしさっさと食べなさいよ」

 

「はいはい、わーってるよ……」

 

 まだ温かい玉子焼きを口に運びながら黙りこくる俺とティアナ。

 こういう微妙な空気の時、総二さんたちはどのようにして空気を和らげるのだろうかとふと思う。

 以前、ティアナが言ってくれたが、未来における総二さんと愛香さんの夫婦も多少なりとも夫婦喧嘩をした事はあったらしい。

 俺はガキの頃から親父やお袋がいないのが当たり前の生活を送っていたのでこういう時にどうやって乗り切るのかがわからないのが辛い所だ。

 頼みの婆ちゃんは気持ちよく爆睡してやがるのがこんなにもキツイと思った事はないくらいにはな。

 

「……」

 

「……」

 

 そのまま黙々と食べ続ける俺たち。

 食べ始めたのは俺よりも早いティアナだが、ティアナの食べる量は常人のそれとは比べ物にならない+俺自身がかなり早食いな事もあり、食べ終わったのはほぼ同時と言えるタイミングであった。

 俺はティアナに言われるよりも先に食べ終わった食器を片付け、ティアナもそれに続く。

 

「なぁ……」

 

「何よ……」

 

 そのまま制服へ着替え終え、家を出るまでの間ようやく一息つけるようになった所で俺はティアナに声をかける。

 洗面所にて黙々とツインテールをいじるティアナは少し振り返りながら返事をした。

 俺は前々から気になっていた事を告げる。

 

「いや、そのよぉ……前々から思っていたんだけどよぉ、お前ってどうしてそんなにも胸の大きさに拘るんだ? いくら何でも怒りすぎだぜ」

 

「あ゛?」

 

 溢れ出る殺気。

 凄まじい怒りのオーラって奴を感じる。

 それはまるで百獣の王たるライオンの如き迫力だ。

 俺はそれに一瞬ビクつきながらも逃げる事無く再度問いただす。

 するとティアナは少し落ち着きを取り戻しながら口を開いた。

 

「逆に聞くけど、女子の胸をいじられて怒らない人がいると思ってるの?」

 

「いや、それはそうだけど、限度ってのがあるだろ?」

 

 ティアナの発言はそれはもうごもっともな物だ。

 誰だって自分の気にしている部分をいじられれば怒る。当たり前だ。それも女子の胸だなんて一歩間違えればただのセクハラにしかならない箇所なので余計にそうと言える。

 だけど、それにしても怒りすぎであるのは事実だ。

 昨日だって、あそこで止まったからいい物の、あれ以上何かを言われていたらあのまま感情のままに大暴れをしてしまっていたのは想像に難くない。

 

「あれか? お前が愛香さんの娘だからなのか?」

 

「違う。お母さんは関係ない」

 

 きっぱりと言い切るティアナだけど、愛香さんの血が少し影響を及ぼしているのは事実で間違いないだろう。

 それほどに愛香さんは貧乳を恥、巨乳を恨んでいたからな。

 

「でも、そうなっちまったのは理由がある筈だよな。特にお前くらいツインテールを愛せるならどうしてそこまで胸にも拘るかがまるでわからねぇぜ全く」

 

 愛香さんの娘だから胸にコンプレックスを抱くのなら、総二さんの娘としてそんな事も気にせずにツインテールを愛でる感性があってもおかしくないだろう。

 なのにティアナは普段こそ総二さんよりだが、一度スイッチが入ると途端に愛香さんよりの考えになっちまう。

 何つーかわけがわからない。

 

「ま、いいや。兎に角、そんなに気にすんなよ。お前には誰にも負けないツインテールがある。そうだろ?」

 

「それはそうだけど……」

 

 何かが引っかかっている様子を見せるティアナ。

 まるで何かに怯えているかのようだ。

 一先ず、これ以上の追及は意味がないし、折角少し良くなった雰囲気を壊すのもアレなので、この話はおしまいにしようと思う。

 やはり、ティアナの機嫌を戻すにはツインテールを褒めるのが一番なのかもしれない。

 

「んじゃあ、さっさと気合い入れ直してさっさと学校にでも行こうぜ。ちょっとばかし早いけど、たまには悪くねぇだろ?」

 

「もう和輝ったら……ちょっと早起きしたからって調子いいんだから……」

 

 少しばかりカッコつけた俺を見て呆れるティアナ。

 だけど、俺たちの間の空気はさっきまでの微妙な物ではなくなった。

 やっぱし、俺たちはいつもこの調子なのかもしれない。

 

「じゃあ先にガレージで……」

 

 マシントゥアールを用意せんとしたその時だった。

 俺とティアナ、二人のトゥアルフォンから聞きなれたブザー音が聞こえてくる。

 

『いい感じの雰囲気の所に悪いですが、エレメリアンが出現しました!!』

 

 ブザー音と共に聞こえてくるトゥアールさんの声。

 俺たちが何やっていたのかについて把握しているようなその口ぶりに少し恥ずかしさを覚えながらも、俺とティアナは顔を見合せ頷き合う。

 

「ママ!! 場所は!?」

 

『マシントゥアールに出現ポイントの座標を送ります。それと、この反応は只者ではありません。十分な警戒をしてください総愛、和輝君』

 

 只者ではない。

 つまり、アルティデビルの奴らも予想していたとおり、更なる戦力を追加してきやがったって訳だ。

 奴らの狙いは皆の属性力とティアナ自身。

 どちらも守るためにも俺たちはあえて真正面からブッ叩く。

 エレメリアンを倒すべく俺たちはマシントゥアールを駆って疾走する!!

 

 

 

 

 マシントゥアールのナビを頼りにエレメリアン出現地点へと急行する。

 ティアナ曰く、目的地に近づく度にその属性力の反応は強くなっているらしい。

 万が一の事も考え、俺たちはエクストリームチェインへと変身した状態で向かう事にした。

 これなら即座に戦闘に移すことが出来るってもんだぜ。

 そしてマシントゥアールをとばすこと数分、俺たちは目的地にたどり着いた。

 場所は既に季節外れとなり誰もいないビーチだった。

 

「見た所、野郎はいねぇようだな……」

 

(でも、注意して。反応は前回の奴の比じゃないわ)

 

 見渡す限りの無人ビーチでエレメリアンを探す俺へとティアナの忠告が飛ぶ。

 覚醒したティアナと違って俺自身はエレメリアンの持つ大小様々なツインテール属性を感知する事は出来ないのだが、見えないプレッシャーだけはここに来た時点でひしひしと感じることが出来る。

 アナザーテイルレッドやメフィストギルディらといったかつての強敵たちとなんら変わらない可能性があるだなんて何事だっつーの。

 

「まさか空……? いや、海の中か?」

 

 この近くにいて姿が見えないのなら空か海かに姿を隠しているしかない。

 そう思い、先ずは空からとばかりにおもむろに空を見上げ、空に何もないのを確認し終えてそのまま海の中へと胸元辺りまで浸かった瞬間だった。

 

「フッ、超隙だらけだな」

 

 聞こえて来たのは独特の渋さが特徴の所謂イケボと分類できる声。

 それが聞こえたと同時に途轍もない殺気が海の中から出ている事に気が付いた。

 

『危険です!! 二人とも避けてください!!』

 

(和輝!!)

 

「ッ!!」

 

 トゥアールさんとティアナの声。

 俺は咄嗟にその場から飛び退いて砂浜へと帰還。波打ち際から離れる。

 俺がさっきまで浸かっていた場所は凄まじい轟音と共に大きな水しぶきが巻き上がった。

 

「クッソ、野郎は海か……!!」

 

 一瞬見えたのは海中から突き上げてくる巨大な丸太のような太い何かだ。

 恐らく、相手は海中に潜みながら俺が入って来るタイミングを伺っていやがる。まるで釣り針にかかる魚を待つかのようにジッと狙っているんだ。

 このまま不用意に近づけば先程の巨大な太い丸太のような何かに貫かれる可能性が高い。

 そうなればいくらエクストリームチェインの重装甲と言えどひとたまりもないだろう。

 

『エレメリアンの反応は海中。それもかなりスピードで動き回り、現在は波打ち際から遠く離れています!!』

 

(だってさ和輝。どうする? 飛び込むのは危険よ?)

 

「なぁに、だったらこうするまでってな!!」

 

 俺はフォースリヴォンを触れてウインドセイバーを一振り精製。

 エクストリームチェインによって強化された風のエネルギーを刀身へと纏わせると、そのまま大きく海に向かって縦に一振り。

 解き放たれた暴風の如き斬撃波は海を割って見せた。

 

(無茶苦茶ね……)

 

「うっせぇ、別にいいだろ別に」

 

 荒っぽいかもしれないが、これなら邪魔な海水を一時的とは言えどかすことが出来る。

 ティアナの苦言を聞き流した俺は、海が割れた事で出来た道を凝視して敵エレメリアンがいないかを確認。

 無茶苦茶且つ当てずっぽうのやり方ではあったが、無事に敵の姿を捉えることが出来た。

 

「なんと……随分と荒々しいおなごだ。このようなやり方で俺の姿を捉えるとはな……!!」

 

 そこにいたのは魚のような竜のような、例えるならファンタジー世界の海で出てくる海竜のエレメリアン。

 全身を覆う鱗は遠目から見ても硬そうであり、トゲトゲした鰭が尻尾から鶏冠まで背中全体から無数に生えている。

 さらにぐにょぐにょと蠢く何かが腹部を中心に巻き付いていて生理的嫌悪感を刺激する。

 

「ならば仕方あるまい。俺の超雄姿!! 貴様らにはっきりとおがませてやろう!!」

 

 海竜のエレメリアンがそう叫ぶと、大きく跳躍して俺が立つ砂浜へと着地する。

 轟音と共に舞い散る砂。

 割れていた海が閉じて再び元の海が帰って来たそのタイミングでその巨大な姿が目の前に現れた。

 

「でけぇ……!! 普段の奴らの倍あるぞおい!!」

 

(3、4メートルくらいはあるわね!!)

 

「ふん、見たか矮小なる小娘。これが我がレヴィアタンギルディ様の超雄姿だ!!」

 

 高らかにそう叫ぶエレメリアンもといレヴィアタンギルディとその巨躯に驚く俺たち。

 だが、そのエレメリアンの姿を基地から見ていたトゥアールさんは別の点に驚いた。

 

『あれは……!! リヴァイアギルディ!?』

 

「リヴァイアギルディ?」

 

 俺とティアナ、互いに聞き覚えの無いエレメリアンの名前だ。

 俺はそのエレメリアンが何者なのか、そしてこの目の前のレヴィアタンギルディと名乗るエレメリアンと同一人物なのかを聞いてみた。

 

『かつて、愛香さんと総二様が倒したアルティメギルの幹部エレメリアンです。姿、形からして恐らくそれに近い同種のエレメリアンだと推測されますが……この反応はリヴァイアギルディを優に超えてます!!』

 

 アルティメギルの幹部エレメリアンと同種且つそれ以上の属性力を有する相手。それが今回の相手であり、アルティメギルの隠してた更なる強敵って訳か。

 それを聞いた俺は警戒しつつ身構える。

 そんな中、レヴィアタンギルディはリヴァイアギルディと言う名前に反応を示した。

 

「リヴァイアギルディだと? 随分と懐かしい名だ。あの程度の半端者……かなり前にくたばったと聞いたがな」

 

 レヴィアタンギルディはリヴァイアギルディを知ってこそいるようだが、半端者と呼ぶようにあまりいい関係とは言えないようだ。

 同種という事もあり、恐らくリヴァイアギルディとレヴィアタンギルディの愛する属性は似通っているが、何か致命的な違いがあるに違いない。

 

「ふん、まぁいい、とりあえず俺の役目は貴様を倒して、貴様と一体化している少女の身柄を押さえる事だからな」

 

「ッ!! わかってはいたが、やっぱバレているよな!!」

 

(来るわよ和輝!!)

 

 やはり、敵の狙いは俺と一体化しているティアナであり、ティアナが俺と一体化してテイルバイオレットとなっている事を把握しているみてぇだ。

 ティアナが心の中で警告すると同時にレヴィアタンギルディはその巨躯を活かして腕を振り下ろす。

 先程までの攻撃からエクストリームチェインでも受け止めるのが厳しいとわかっているので、俺は素早くバックステップを踏みレヴィアタンギルディから距離をとる。

 だが次の瞬間、奴の腹回りで蠢く何かが動き出す。

 

「甘い!!」

 

「何ッ!?」

 

 その何かが動いたと理解したと同時に俺が立っている砂浜の下から何かが突き上げてくるのがわかった。

 咄嗟の判断でウインドセイバーを捨てながら体を捻って回避しようとするが、そのスピードが思っていたよりも遥かに速かった為に完全に回避しきれずに肩の装甲の一部を抉られてしまった。

 

「ほう、意外とやるな……。仕留めきれぬとはな」

 

「くッ……!!」

 

(ッ……!! 大丈夫? 和輝?)

 

 装甲の一部とは言え、その衝撃はかなりの物だ。

 一体化しているが為に痛覚も共有中のティアナにもその衝撃は伝わったのか、俺を心配しながらも心の中で苦悶の声を漏らした。

 

「大丈夫だっつーの。この程度でやられるかよ。てかそれよりも今のは……」

 

 俺の目の前、つまりさっきまで俺が立っていた場所にぽっかりと開いた大きな穴。

 よく見るとレヴィアタンギルディの目の前にも同じくらいの穴が開いており、そこから何かを通して俺側の穴へと攻撃してきたのは違いない。

 だけどその正体は未だわからない。

 ビームのような何かか? まさか奴の尻尾? それとも……

 

『和輝君、今のは恐らく、リヴァイアギルディと同種である事から推測するに奴の操る触手だと思われます』

 

 触手だぁ!? 

 その単語に生理的嫌悪感を強く抱く俺であったが、レヴィアタンギルディの攻撃が現実へと連れ戻す。

 再び砂浜の下から突き上げてくる何か。

 トゥアールさん曰く触手らしいが、俺はそんな筈はありませんようにとばかりに再びサッと回避してみせる。

 ドゴンと大きな音と共に何かが突き上げてきては即座に穴の中へと引っ込んでいく。

 あまりに一瞬の出来事且つ砂が舞い散りまくったのでその正体はまたもや掴めない。

 

「仕方ねぇ……!! こうなったら全力で引っこ抜いたらぁッ!!」

 

 いつまでも避け続けてもキリがない。

 俺はなおも下から突き上げてくる何かを受け止めて引っこ抜かんと覚悟を決め、次の一撃を回避すると同時に身体全体を使って掴み掛かる。

 

「ッ……!!」

 

 掴んだそれは海産物特有の磯臭さと独特のぬるぬるした気持ち悪い感触。

 思わず顔をしかめちまいそうな感じではあるが、ここで逃がす訳にはいかない。

 俺は抱きしめるかのように気合で掴みきり、そのまま砂浜に背中から倒れ込みブリッジでもするかのように反動を付けながら一気に穴の中から引っこ抜く。

 

「ヌッ……!?」

 

「でりゃああああああああッ!!!」

 

「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 

 ブチンと太い何かがちぎれる鈍い音とレヴィアタンギルディの凄まじい絶叫が木霊する。

 俺はそんなレヴィアタンギルディよりも引きちぎったその何かを確認すべく、引っこ抜くと同時に投げ飛ばしたソレがある方向を向く。

 そこには超巨大なミミズを思わせる触手がうねうねと蠢いていた。

 

(な、何あれ……き、気持ち悪い……)

 

「マジで触手だったのかよ……」

 

 ローションでも塗っているのかと思うくらいにその触手はテカテカとした光沢を持っているのが余計に気持ち悪い。

 18禁漫画で出てくる触手その物じゃねぇかと吐き気がするくらいだ。

 余りの気持ち悪さに顔を背けた俺は、なおも絶叫し続けているレヴィアタンギルディへと向きなおる。

 レヴィアタンギルディは股間部分を押さえており、まるで金的でも喰らったかのように悶絶している。

 

『うわー……、和輝君は男なのに容赦ないですね……』

 

「トゥアールさん、それどういう意味だよ」

 

『いや、あの触手は股間から生えていた物なので……ねぇ?』

 

 同族のリヴァイアギルディも同様に股間部から触手を生やして攻撃を仕掛けて来たと告げられた俺は思わず言葉を失った。

 何? つまり俺はあいつのチ○コを引きちぎったってのか?

 考えただけでもゾッとするし、痛い。

 今現在、テイルバイオレットへと変身している為に俺のアソコは綺麗さっぱりツルツルだけど、その辛さはよーくわかるぜ。

 

『マウントポジションで撲殺した愛香さんよりもある意味では和輝君の方が酷いですね』

 

「レヴィアタンギルディ、何かその……すまんな」

 

「こ、小娘の分際でぇ……!!」

 

 不慮の事故とは言え一応謝っておいたのだが、当のレヴィアタンギルディは全く以て許してくれる様子はない。

 心の中でティアナが何故謝るのかと言っている気がするが、今回ばかりは男にしかわからないだろう多分。

 

「許さん……許さんぞ……俺自慢の槍を引き抜くとは……!!」

 

「自慢の槍って言うな、槍って。卑猥に聞こえるだろうが」

 

 そんな俺のツッコミを聞かずにわなわなと怒りのオーラを上げながらレヴィアタンギルディは立ち上がる。

 その股間部の根本では元々あったであろう触手が見るも無残に引きちぎられた痕となっているばかりだ。

 俺が思わず目を背けてしまいそうになる次の瞬間、レヴィアタンギルディは裂帛の咆哮をあげて力を籠める。

 すると……

 

「ヌぅんッ!!!」

 

「生えたぁッ!?」

 

 断面図から新しい命が芽吹くように飛び出る触手。

 何と引きちぎられて無くなった筈の触手が勢いよく生え変わったんだ。

 大きさと太さこそさっき引っこ抜いた触手よりも遥かにみすぼらしい物だけど、その独特の光沢とうねうねした動きは健在だ。

 俺たちはその衝撃映像に対してただただ驚きの声を上げるしかない。

 

(嘘でしょ……再生しちゃった……)

 

「ざっけんな!! キモ過ぎんだろ!! トカゲかてめぇは!!」

 

「失敬な!! 俺をトカゲなんぞと一緒にするな!! いいか!! 俺の槍は何度引きちぎられようがその度に強くなり生え変わるのだ!!」

 

 威風堂々と仁王立ちを決めながらそう宣言するレヴィアタンギルディ。

 正直、この状況はかなり不味い。

 奴の最大の武器である触手は再生可能なので部位破壊は通用しない癖にその破壊力はとんでもねぇぜ。

 俺は次にどんな攻撃を仕掛けてくるのは警戒を行う。

 再生能力があるとわかった以上、迂闊に攻めるのは危険だからだ。

 だが、レヴィアタンギルディは攻撃を再開するでもなくただ俺を睨みながらブツブツと何かを言っている。

 

「しかし……!! だがしかし……!! この屈辱だけは忘れんぞテイルバイオレット……!! 俺自慢の槍をその程度の貧相な胸で抱きしめるとは……!!」

 

「は?」

 

 聞き耳を立てて聞いてみると何やら意味不明な事を言っていやがった。

 貧相な胸がとか抱きしめるとか何とかってな。

 確かに俺はさっき触手を引っこ抜く時に抱きしめるような形になったけど……ってまさか!?

 

「なぁトゥアールさん? つかぬ事を聞くけどよぉ、愛香さんらが倒したって言うリヴァイアギルディって野郎の属性って……」

 

『……巨乳属性(ラージバスト)です』

 

 静かにそう告げたトゥアールさん。

 いくら姿や形が似通った同族タイプのエレメリアンであろうとも属性まで一緒な筈はないのだが、さっきの妄言から推理するにコイツの属性はそれに近い何かの可能性が高い。

 てかにしても巨乳属性かぁ……

 メジャーと言えばすげぇメジャーだけどよぉ、意外と戦った事がなかったタイプの属性の持ち主だな。

 大方、奴の持つ夢とか願いってのはその逞しい股間の触手を巨乳に抱きしめてもらう事……って、それってつまりパイz――

 

(ら、巨乳属性(ラージバスト)……ですって……!?)

 

 あ、不味い……

 つい最近、というより出撃する数秒前まで胸で拗らせていたティアナにとってその単語は禁句中の禁句だ。さっきまで黙っていた筈のティアナがその単語を聞いた事で反応をしてしまい、一体化している影響もあってか、ティアナの湧き上がる巨乳への怒りや憎しみが伝わって来る。

 そして、俺の意識は心の中へと引っ込められ、強制的にティアナの人格が身体の主導権を奪う。

 

「ちょっとあんた……あんたもしかして、巨乳属性(ラージバスト)のエレメリアンじゃないでしょうね……!!」

 

 湧き上がる感情と共に和輝から身体の主導権を得た私は低い声でレヴィアタンギルディへと問いかける。

 するとレヴィアタンギルディは鼻で笑うかのような仕草を見せて告げる。

 

巨乳属性(ラージバスト)ぉ? ふん、そんな程度の属性をこの俺が愛するとでも思ったか? 無論、違うな。俺はそんなちっぽけな属性ではない!!」

 

「じゃあ何なのよ!! 早く言いなさいよ!!」

 

 何がちっぽけよ。

 巨乳がちっぽけなら私は一体何なのよ。

 溢れ出る怒りは止められず、心の中で和輝が落ち着けと言っているけど届かない。

 私は感情のままに声を荒げた。

 するとレヴィアタンギルディは私の胸をあざ笑いながら高らかに宣言する。

 

「いいか!! 俺はレヴィアタンギルディ!! 俺の愛する属性は巨乳属性(ラージバスト)を超えし超乳属性(スーパーラージバスト)!! 貴様のような貧しい胸はおろか、そこらの巨乳とチヤホヤされるだけのちっぽけな存在には芽生えぬ、まさに選ばれし属性なのだ!!」

 

 その瞬間、私は拳を力一杯握りしめながら駆け出していた。




湧き上がる怒り……
野獣の如きティアナの怒りの鉄拳がレヴィアタンギルディを襲う。
果たして和輝は止められるのか……レヴィアタンギルディの運命はいかに……!!
次回、『暴乳警報』に……テイルオン!!
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