俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第117話 暴乳警報

 11月になっている事もあり、遊びに来る人などひとりいない海水浴場。

 そこに現れたのはベリアルギルディにより選ばれし七つの性癖の一角、嫉妬のレヴィアタンギルディ。

 レヴィアタンギルディはかつてツインテイルズらによって倒されたリヴァイアギルディに酷似しているが、その戦闘力はリヴァイアギルディを遥かに上回っていた。

 苦戦するテイルバイオレット。

 レヴィアタンギルディの股間の触手がテイルバイオレットを着々と追い詰めていくそんな中だった。

 

「俺の愛する属性は巨乳属性(ラージバスト)を超えし超乳属性(スーパーラージバスト)!!」

 

 レヴィアタンギルディが宣言した属性。それは予想されていた巨乳属性(ラージバスト)ではなく超乳属性(スーパーラージバスト)だったのだ。

 様々な要因が重なった事でいつにも増して胸への怒りを抱いていたティアナ。

 その怒りが今爆発する!!

 

「何が……!! 何が超乳属性(スーパーラージバスト)よ!!」

 

 怒りのままに和輝から身体の主導権を奪ったティアナ。

 ティアナ人格のテイルバイオレットは拳を握りしめながらレヴィアタンギルディへと駆け出していた。

 

「何とッ!?」

 

 突如として変貌したテイルバイオレットの姿に驚愕するレヴィアタンギルディ。

 事実、目を血走らせ、自慢のツインテールを文字通り怒髪天を衝くかのように荒ぶらせるその姿は、とてもじゃないが正義のヒロインの姿ではないだろう。

 テイルバイオレットは握りしめた拳を力一杯叩きつけるかのように振り下ろす。

 

「くぬぅ!!」

 

 レヴィアタンギルディは身長4メートルを超える巨漢ながら素早く回避。

 空振った拳がそのまま砂で埋め尽くされた地面へとぶつかると、轟音と共に大量の砂を舞い上がらせる。

 

「避けてんじゃないわよ!!」

 

 理不尽すぎるテイルバイオレットの怒号。

 並みのエレメリアンならその威圧感に耐えられずに爆発四散したであろうその迫力は、実力者であるレヴィアタンギルディをも思わず息を呑む程である。

 

「小娘……!! 貴様、どれだけの怒りをその貧相な胸に……!!」

 

「まだ言うつもり……!!」

 

 今度こそは逃さない。絶対に拳を叩きこんでやる。

 燃え上がる怒りをぶつけんと荒ぶるテイルバイオレット。

 旋風と衝撃が巻き起こり、無人のビーチは急速にその姿を変えていく。

 砂が舞い上がり、波は荒れ、まるで台風のような災害にでもあっているかのようだ。

 レヴィアタンギルディは変わらず回避を続け、テイルバイオレットはそれを追いながら拳を振るい続けた。

 

「この!! この!! このぉ!!」

 

(馬鹿!! 少しは落ち着け!!)

 

 暴れ狂うテイルバイオレットの心の中。

 そこでは主導権を奪われ見ているしか出来なくなった和輝の人格が落ち着かせんと声を上げていた。

 しかし、テイルバイオレットことティアナは止まらない。

 何度も何度も当たらない拳に怒りを籠めながら振るい続けては避けられ、その度に更なる怒りを燃え上がらせるのだ。

 

(だから落ち着けって!! お前にはツインテールがあるだろうが!!)

 

 同じく胸へのコンプレックスから暴走しがちだった愛香との最大の違い、それはツインテールへの愛情がそのコンプレックスを超えている事であった。

 だからティアナはどんな状況でもツインテールを危険に合わせるような真似はしないし、ツインテールの事を想えば大丈夫。

 即ち、どれだけ馬鹿にされてもツインテールのためなら我慢することが出来る事を指していた。

 筈だったのだが……この時ばかりは様子が明らかにおかしかった。

 

『どうしたんですか総愛!! いくら何でも少しは落ち着きなさい!!』

 

「五月蠅い!! ママにはわからないのよ!!!」

 

 それは怒りか、はたまた憎しみか。

 ティアナの怒りは自身でも止めようがない状態へと陥っており、最早どうすればいいのか誰もわからない危険な状態となっていた。

 だが、そんな状況を楽しむ者が一人いた。

 

「フッ、やはり貧乳の嫉妬心ほど超面白い物はないな」

 

 この状況を楽しむ者、何を隠そうそれはレヴィアタンギルディだ。

 最初こそは予想を遥かに超える怒りに驚いていたのだが、今ではその怒り狂う姿をみて嘲笑う余裕すら見せている。

 

「内面くらいは少しくらい豊かになって欲しい物だ。おっと巨乳すらにもなれぬお前には無理難題だったかな?」

 

「黙れ黙れ黙れェェェッ!!!」

 

 拳が、蹴りが、レヴィアタンギルディ目掛けて放たれる。

 それはいつものティアナが行う型にはまった武術の一つではない乱暴な攻撃。

 威力こそ高いのだが、どこをどう狙うのかすらもバレバレかつ大ぶりな一撃はある程度の実力を持つ者には通用しない。

 怒りのボルテージが上がってより激しくなればなるほど、レヴィアタンギルディは余裕を持って回避しきり、反撃とばかりに自慢の触手を鞭のように叩きつける。

 

(ぐっ……!! にしてもおかしいぜ……。いくら何でも怒りすぎだ。元から不機嫌だったとは言え、ティアナがここまでなる筈がねぇ)

 

 テイルバイオレットがなおも獣の如くレヴィアタンギルディへ挑んではいなされるといった事を続ける中、心の中の和輝は異変に気が付き始めた。

 いくら要因があれど、ティアナがここまでになるなんておかしいのだ。

 

『和輝君!! 聞こえますか!?』

 

(トゥアールさん!?)

 

 テイルギアを通して通信を行うトゥアールは、現在心の中においやられている和輝に向かって話しかけて来た。

 和輝は返事を行うものの、人格の交代をしない限りは一体化していないトゥアールへ声は届かない。

 これはあくまでトゥアールから和輝への一方的な話である。

 

『少し気になって調べた所、どうやらレヴィアタンギルディの肉体からは特殊な念波が出ているようで、それが総愛の脳に作用しているようです!!』

 

(念波だって!?)

 

 そう、それこそがレヴィアタンギルディだけが持つ特殊能力。

 持たざる胸の嫉妬(ジェラシックバスト)

 これは嫉妬の罪を担う大悪魔たるレヴィアタンを象徴するかのような能力であり、この念波にあてられた者は、自身よりも大きな胸を持つ者への嫉妬心を駆られてしまい、もっと自身の胸を大きくさせようと躍起になって肉体への負担を顧みない手術や改造を行ってしまうようになると言う恐るべき物だ。

 人為的な巨乳及び超乳を促すこの恐るべき能力は、自然に育った美しい巨乳を愛する一般的な巨乳属性(ラージバスト)から見ても論外と言っても過言ではなく、同じ大きな胸を愛する者でありながら対立しあう一つの要因である。   

 こうなったのも超乳属性(スーパーラージバスト)という属性が愛する超乳と言う物が、自然ではない手術や改造を行わぬ限り生まれる事が殆どないからである。

 

(おいティアナ聞こえてるか!! お前は今な!! 奴の出す変な念波ってのに狂わされているんだよ!!)

 

『落ち着いてください総愛!! あなたのツインテール属性ならその程度の能力を無効にするなんて訳ない筈です!!』

 

 和輝とトゥアール。

 中と外から必死に止めんと訴えかける声が飛ぶ。

 だが、ティアナは聞こえていないのか、全く以て反応がない。

 戦闘における実力もさることながら特殊能力もここまで厄介な物だとは思ってもみなかったと悔しがる二人。

 そして遂に、暴れ狂うテイルバイオレットへトドメを刺すべくレヴィアタンギルディが動く。

 

「さて、そろそろ終わりだ。いい加減見苦しい」

 

 振るわれるのはその太く逞しい股間の触手。

 しなるバットのように全力でスイングされるその勢いはとても受け止めれる物ではない。ましてや今の暴走状態では避ける事など不可能だ。

 触手の一撃は暴れるテイルバイオレットへとカウンター気味に命中し、大きく吹き飛ばした。

 

「きゃあああああああッ!!!」

 

(うああああああああッ!!!)

 

 砂浜を抉りながら吹き飛ぶテイルバイオレットは数十メートル先の岩場に激突することでようやく止まった。

 巻き上がる砂煙。

 それが止んだ時、そこには倒れ込む和輝とティアナ二人の姿があった。

 

 

 

 

「ベリアルギルディの奴が随分と警戒していたが所詮はこの程度か。俺たちの敵ではないと言う事だ」

 

 変身解除して倒れ込む俺たち二人に近づくレヴィアタンギルディがそう呟く。

 俺もティアナもあまりのダメージ故に立ち上がる事はおろか、地べたを這う事すらできない。

 

「くッ……そ……!!」

 

「小僧、そう睨むな。俺の狙いは初めからそこの少女だけで貴様には微塵の興味もない」

 

 そう言い放ったレヴィアタンギルディは股間の触手を倒れたティアナの身体に巻き付かせて持ち上げる。

 

「うぅ……!!」

 

 締め付けがキツイのか、ティアナは苦悶の表情を浮かべる。

 ティアナは俺以上のダメージを負ったのか、俺と違って睨みつける事すらもできていない。

 

「おっとすまない。何分、あまりにも起伏がないのでな。少しでも力を抜けば滑り落ちてしまうのだよ」

 

 レヴィアタンギルディは勝ち誇るかのようになおもティアナの胸を嘲笑う。

 

「何を……!!」

 

「おっと、まだ喋るか貧しき小娘よ。ふんッ」

 

「あああああッ!!!」

 

 胸を馬鹿にされた事で少しばかり復活するティアナだったが、レヴィアタンギルディは抵抗する意思を刈り取るかのように触手に力を籠めてより強く締め上げる。

 ティアナの叫びが木霊する砂浜で俺はただ見ていることしか出来ない。

 

「てめぇ!! 放しやがれ!!」

 

「おいおい、お前たちは互いにもう少しおおらかで豊かな心を育んではどうだ? その程度の余裕の無さでは所詮ちっぽけな胸しか育たんぞ」

 

「何がちっぽけだこの野郎……!! 何でもかんでもデカけりゃいいってもんじゃねぇだろうが!!」

 

「いや違うな。何事も大きいが正義、古の時代より知的生命体はより大きい物に憧れて進化してきた。ならば男なら誰でも愛する胸だって大きければ大きいだけいいに決まっているだろう」

 

 確かにデカイおっぱいは男のロマンかもしれない。

 でも、だからってそれに満たない胸を嘲笑っていいわけがないのもまた事実だ。

 だが、そんな言葉がこの野郎に届くはずもない。

 

「故にだ。俺はお前たちのような輩のせいで、巨乳はおろかこのような残念な胸を愛する者を嫌うのだ。この世の中はあるかないかなどではない。超あるのかどうかが大事なのだ」

 

 そう締めくくったレヴィアタンギルディ。

 こいつの胸に対する異常性はある意味底なしだと理解したはいいけどこの状況をどうすればいいのかは全く以て見当がつかない。

 だけど、最低限の時間稼ぎはしたつもりだ。

 後はトゥアールさんたち他の仲間に託すしかない。

 

「フン、大いなるロマンを理解しない小僧など構うだけ無駄か……。さて、そろそろ帰らねばベリアルギルディの奴に何て言われるかわかったものではないな」

 

 ティアナを捕らえた状態で帰還しようとするレヴィアタンギルディが極彩色のゲートを開く。

 今まさに目的を完遂しようとせんそのタイミングにて遠くから声が響く。

 

「そうはさせないわ!!」

 

 風を切り裂きながら飛んでくる緑の矢。

 即座に反応してみせたレヴィアタンギルディはティアナを放すとフリーになった触手を振るいその矢を弾き飛ばす。

 

「何者だ!!」

 

 再び戦闘態勢に移行するレヴィアタンギルディ。

 俺は身体に無茶を言わせながらも、解放されたティアナを空中で抱きしめながらキャッチしてそのまま砂浜をゴロゴロと転がった。

 そしてそんな中、俺の仲間が到着した。

 

「母なる大地司りし緑の戦士、テイルブルーム参上!!」

 

「テイルブルームか、ほう…!!」

 

 カッコよくポーズを決めてツインテールを潮風でなびかせるテイルブルームとその姿を見てニヤリと笑うレヴィアタンギルディ。

 気絶こそしているがティアナの無事であり、それを確認した俺は相対する二人を見つめながら固唾を呑む。

 テイルブルームが先に動き、距離を詰めた。

 

「ハァッ!!」

 

 ドゴンと響くのはテイルブルームの放った掌底だ。

 レヴィアタンギルディは触手を盾にすることなくその大きな身体全体で受け止めて見せた。

 

「ふん、まぁ悪くはないが、良くて30点と言った所か。まだまだ理想には程遠い」

 

「くッ……!!」

 

 テイルブルームは渾身の力を籠めたであろうにレヴィアタンギルディは涼しい顔だ。まるで効果がないのがわかる。

 

「どれ、弾力はどうかな?」

 

 効果の無さを実感して怯むテイルブルームに対してレヴィアタンギルディは触手を振るう。

 それは戦士としてもかなりの腕を持つはずのテイルブルームでさえまるで捉えられない一撃であり、その触手は彼女の胸を揉むかのように触れた後に叩いて吹っ飛ばす。

 

「くぅッ……」

 

「うむ、中々の弾力だ。これならばさらに大きくなれる素質がある。喜べ女、お前の胸はまだまだ大きくなれる。いや……してやる事もできるぞ」

 

 力の差は歴然だ。

 テイルブルームは食らいつくのでやっとなのに、レヴィアタンギルディはテイルブルームの胸を揉んだりするセクハラ行為をサラッとやってのけるくらいには余裕がある。

 助けに来てくれた時の勢いは何処へやらと言わんばかりのワンサイドゲーム。

 俺たちのピンチは未だ継続中だ。

 

「悪いけど……私は大きな胸なんかに興味はないわ」

 

「フッ、中々のポテンシャルを持ちながら夢を抱かぬとは超嘆かわしい。ならばその素晴らしさを身をもって味わうのだな!!」

 

 触手の先端を注射器のように尖らせたレヴィアタンギルディはテイルブルームの胸を狙う。

 その触手を突きささんとしたその時、更なる声が響き渡った。

 

 

 

「はっはっはっは!! そこまでです!! その程度の胸で満足するなど私を見てからにしてもらいましょう!!!」

 

 

 

 

「ッ!? なんだこの途轍もなき大きな胸のオーラは!?」

 

 うろたえながら動きを止めるレヴィアタンギルディ。

 俺はその珍妙な台詞に少しズッコケながらも声をした方向へ向く。

 そこには目元だけを隠す小さなバイザー型マスクをつけた銀髪の女性……もといトゥアールさんが仁王立ちで構えていた。

 

「今度は何者だ!!」

 

「私は次世代を導きし美女――『テイルバイオレットの片割れの母』!!」

 

 言い終わると同時に『テイルバイオレットの片割れの母』ことトゥアールさんの背後で爆発が起こり、その派手な登場を彩って見せる。

 あんまりもあんまりな二つ名と演出に俺とテイルブルームは思わずズッコケる。

 ちょくちょくシリアス展開が壊れるのだけはどうにかして欲しい所だ。

 

「片割れの母!? そんなバカな!?」

 

「いいえ真実です!! 私はあの娘の母親同然です!!」

 

 気絶するティアナの胸とトゥアールさんの豊満な胸をしきりに見比べるレヴィアタンギルディは信じられないと言った表情をしてやがる。

 恐らく、ティアナを実際に生んだ愛香さんの胸を見たら納得するだろう。

 

「でもトゥアールさん……。どうして出てきたんだよ……!! 確かあんたはもう戦えない筈じゃ……」

 

「それはね、和くんたちを逃がす為よ」

 

 背後から聞こえてきた声。

 俺が振り返るとそこには珍妙なデザインの仮面を被った男女がいた。

 声からして悠香さんと匠だ。

 

「お前ら――」

 

「しッ!! 静かにして」

 

「そうだぜ和輝、俺たちはお前らを逃がす手伝いに来たんだからな」

 

 逃がす?

 あっけにとられる俺に手早く説明をしてみせる悠香さん。

 何でも、今の状況ではレヴィアタンギルディを倒すことは不可能らしく、トゥアールさんと華先生を囮にしてその間に俺たちだけでも退却する作戦らしい。

 テイルホワイトへの変身が制限されている今じゃそんな危険な真似させていいのかと抗議したくなるが、これも全てトゥアールさん自身が決めた事らしいので何も言い返せない。

 

「大丈夫よ、あの二人なら何とか逃げられるわ。だからあたしたちと一緒に行きましょう」

 

「くッ……仕方ねぇか。でも、俺はもう少し残るぜ」

 

 このままお荷物になるよりかずっとましなのは事実だ。

 だけど、このまま黙って逃げ出すのも性に合わない。

 その思いをくみ取ってくれた悠香さんたちに気絶しているティアナを託した俺は、逃走用の転送装置を受け取った後、ギリギリまで様子を伺い、奴の弱点を探る事にする。

 向こうではトゥアールさんが何とも珍妙なやり取りをしながらレヴィアタンギルディの気を引いていた。

 

「レヴィアタンギルディ!! あなたは胸を愛すると言いましたね!! なのにテイルブルーム程度の胸で満足するなど笑止千万!! 見なさい最近遂に110を超えた私の胸を!!」

 

 そう言って胸を張るトゥアールさん。

 確かにその大きさは俺の知る誰よりも大きい。

 でもあれ? 確かトゥアールさんってバストサイズは90ちょっとって言ってなかったっけ?

 

「おお……!! 中々の胸の大きさだ!!」

 

「そうでしょうそうでしょう。ならばその程度で満足しかけた己の恥を――」

 

「だが!! まだまだ物足りん!!!」

 

「へ……?」

 

 論破してやったりと得意げになっていたトゥアールさんだったが、どうやらレヴィアタンギルディの求める胸の大きさはそれを優に超えていた様子だ。

 

「いいか貴様!! 確かに貴様の胸は中々の物だ。さらなる成長を果たせばそれはもう立派な巨乳になるだろう。だがしかし!! 俺の求めるはその程度ではない!! 所詮貴様の胸など48点だ!! 超乳を侮るな!!!」

 

「なッ!? よ、48……!?」

 

 さしものトゥアールさんも自分の胸が50点にすら届かない事には衝撃を隠せていない。

 さっきまでの堂々とした態度は何処へやらだ。

 

「これ以上に大きくなったらそれはもうただのデブですよ!! 私の胸はこのくらいが一番美しいんです!!」

 

「フッ、笑止。貴様は所詮、井の中の蛙。大方、先の小娘のような貧相な胸を見て悦に浸っていたのだろうがまだまだだ!! 胸という物は大きく、より大きくなくてはならない!! 立っていても地面についてしまう程に巨大にな!!」

 

 ヤバい。完全に向こうのペースだ。

 幸いなのは奴らのターゲットであるティアナを逃がせた事だけど、このままじゃトゥアールさんと華先生が不味いぜ。

 

「ッ……!! 隙ありッ……!!」

 

「フン!! 無粋な真似を!!」

 

 今がチャンスをばかりに攻撃を仕掛けようとしたテイルブルームであったが、レヴィアタンギルディに蚊でも払うかのように弾き飛ばされて変身解除。

 気絶して横たわる華先生と後退るトゥアールさん。

 やっぱり、このままじゃ二人が……

 

「フッ……、だがどうやら、してやられたのは俺のようらしいな。貴様程度の胸に気を取られるとは俺もまだまだと言う訳か……」

 

 そのまま二人に襲い掛かると思っていたが、レヴィアタンギルディは背を向けた。

 どうやらトゥアールさんの陽動に引っかかった事に気が付いたらしい。

 このままなら見逃してくれるのか……

 そう思って安心したその瞬間、レヴィアタンギルディは触手を高速で伸ばし、トゥアールさんの胸にその先端をブスリと突き刺した。

 

「がっ……!!」

 

「これは俺からのご褒美だ。次に会う時を楽しみにしているぞ」

 

 そう言い残して姿を消したレヴィアタンギルディ。

 俺はすぐさま胸を押さえてうずくまるトゥアールさんに駆け寄った。

 幸い、傷は全くと言っていい程なく、ちくりと針で刺された小さな跡がある程度だった。

 

 

 

 

 戦いを終え、何とか無事に帰還する事が出来た俺たち。

 気絶してしまった華先生は俺とトゥアールさんが共に肩を貸す事で何とか連れて帰ることが出来た。

 先に帰還させていたティアナを含めた負傷者二人をベットに運んだ後、おやっさんを除いた関係者皆がコンソールルームに集まった。

 

「先ずはお疲れ様です。無事に帰還できたのも皆さんのおかげです」

 

「そんな事ないですよトゥアール先生。トゥアール先生のおかげであたしたちもティアちゃんたちを助けることが出来たんですから」

 

 開口一番に感謝の気持ちを述べて頭を下げたトゥアールさんにフォローを入れる悠香さん。

 実際、華先生とトゥアールさんが気を引いてくれたおかげで俺とティアナは退却する事出来たので、頭を下げるのはむしろ俺の方かもしれないくらいだ。

 

「ですが少し甘く見ていたのは確かです。今の二人ならどんな強敵が来ても大丈夫だろうと私も少し油断していました。でも偶然とは言え、まさか敵の能力の一つに貧乳に対するコンプレックスを刺激する力があったとは……」

 

「それについては俺の方が頭下げるべきだぜ。アイツの暴走を一番近くにいながら止めれなかったのは俺だからな」

 

 言い訳になるが、俺はアナザーテイルレッドの一件から敵への油断は無くしてはいた。でも、まさかあの状況でティアナが暴走しちまうとは思っても見なかったんだ。

 

「にしてもティアちゃんのコンプレックスを刺激する敵が相手ってのは厄介ね」

 

「そうですね。エクストリームチェインは総愛と和輝さん二人の身体と心を一つにして戦う都合上、どちらか一方の思考を乱してくるのは天敵と言っても差し支えないでしょう」

 

「さらに言えば肉弾戦の強さも華先生を超えていたし、冷静ではなかったとは言え暴れるティアナを軽々といなしやがったぜあの野郎」

 

 レヴィアタンギルディの厄介な点はその二つだ。

 ただ貧乳を馬鹿にしてティアナの思考を乱すだけなら、暴走したアイツが血祭りにあげてそこで終了だ。

 だけど、あの野郎のフィジカルはエクストリームチェインと互角かそれ以上とも言える。

 

「だったら切り札のバースト状態ってのを使えばいいんじゃねーか?」

 

「匠君、それは不可能です。エクストリームチェインバーストは発動するのにそもそも、通常の一体化状態よりもさらなる心のシンクロが必要だと思われますからね」

 

 匠には悪いがトゥアールさんの言う通りだ。

 切り札となるバースト状態は俺とティアナの心が寸分違わない程度にシンクロしていることが絶対条件となる都合上、さっきの戦いのようにどちらか一方の心が乱されれば変身不可能だ。

 

「でもそれならさ、和輝、お前も同じように怒ればなれるんじゃねーのか?」

 

「はぁ!? 何言ってんだおめぇは……って案外ありなのか?」

 

 つまりアレか。匠は俺がティアナと同じくらいの胸に対する怒りを抱けばバースト状態へ移行できるんじゃないかって事か。

 いくら肉弾戦も強いレヴィアタンギルディと言えど、バースト状態ならどれだけ冷静でなくてもゴリ押しでブッ倒すのは可能かもしれねぇ。

 

「いやでも、それってどうなんだ?」

 

「そうですね……、理論上は恐らく可能かもしれません。ですがそんな事をすれば二人の融合状態を解除できなくなる可能性が生まれてしまいます」

 

 バースト状態の危険性は以前語られた通り、長時間及び連続で使用すれば二人の融合状態を戻すことが出来なくなっちまう事だ。

 胸に対する怒りで俺という個を無くしてしまうなんて馬鹿馬鹿しすぎるぜ。

 

「ていうかそれもあるけど、もし二人がそのまま見境なく暴走しちゃったらヤバくないかしら?」

 

「最悪、この世の巨乳という巨乳が死滅しますね」

 

 悠香さんの疑問に対してサラッとヤバい事を口にするトゥアールさん。

 この世の巨乳を全て滅ぼすまで終わらない程の怒りって一体何なんだ。

 ツインテールで世界が滅びるのもかなり馬鹿馬鹿しいが、これについてはそれよりもさらに上のレベルだぜ。

 

「そ、そうっすよね……」

 

「でも、目の付け所はいいかもしれません。今考えられる対策としては総愛の胸に対するコンプレックスを解消するか、もしくはある程度暴走しつつも敵を圧倒できるくらいの実力差をつけるかのどちらかです」

 

 そう結論付けるトゥアールさんだけど、俺としてはそのどっちもがかなり難しいと言わざる得ない。

 ティアナの胸に対する憎悪はそんじょそこらの物じゃねぇし、バースト状態を無しでの急激なパワーアップなどそれこそ無理だ。

 

「胸の恨みは恐ろしい……」

 

「そうね青ちゃん。女である以上、誰もが求める要素よね……」

 

「でも、大きすぎるのも考え物ですからね」

 

 トゥアールさんはレヴィアタンギルディに胸の大きさを酷評されたのを未だに根に持っているのか、悠香さんと青葉さんに釘を刺した。

 デカいのは確かにいいけど、デカすぎるのも駄目ってのはある意味真理であり、ある種の矛盾的ややこしさと言えるだろう多分……。

 

「うーん、どうしたもんかねぇ……」

 

 匠の奴がそう言って天井を仰ぐ。

 いつまた攻めてくるかわからない以上は早急な対策が必須なのにこのままじゃ不味い。

 そんな事を思い始めた時、コンソールルームの扉が開いておやっさんが顔を出した。

 

「どうしたどうした? 随分と辛気臭いじゃないか~」

 

「おやっさんは何も知らねぇから、んな事言えんだよ……」

 

「ん? どうした和輝?」

 

「実はかくかくしかじか……」

 

 これまでの流れを知らないおやっさんへと説明をするトゥアールさん。

 事の重大さを知ったおやっさんもやっとこさ納得した様子だ。

 

「成程な。確かにそいつは大変だ」

 

「だろ? だったらおやっさんも――」

 

「ならさらなるパワーアップをすればいいんじゃないか?」

 

 サラリと言ってのけたおやっさん相手に俺は「はぁ!?」と声に出さざる得ない。

 この中年オヤジは一体何を言っているのか。

 そんな事が出来たら苦労はしないぜ。

 

「だーかーら!! それが出来たら苦労は――」

 

「テイルアーマーだったっけか? それをエクストリームチェインの状態でも使えばいいんじゃないか?」

 

「「「え……!?」」」

 

 おやっさんのアイデアに皆が驚いた。

 ブレイブチェインやエモーショナルチェインを起動させていた追加装甲テイルアーマーをエクストリームチェインの状態で使用するなんて思ってもみなかったからだ。

 

「そ、そうですね……その手がありましたね!!」

 

「マジ!? てか可能なのかよ!!」

 

「テイルアーマーはそもそもレイジが総二様と愛香さんのデータを元に作り上げた物です。私が再調整すればエクストリームチェインの状態でも使用できるようにすることなど造作もありません」

 

 希望が見えた事もあり、さっきまでの辛気臭い空気が一変する。

 トゥアールさんは善は急げとばかりに俺からテイルブレスⅡを受け取ると調整すべくコンソールルームを後にしようとする。

 その時だった。

 

「う゛っ……!!」

 

「トゥアールさん!!」

 

 突如胸を押さえて苦しみだしたトゥアールさん。

 俺はレヴィアタンギルディが去り際に何かを仕掛けた事を思い出し、皆と一緒に駆け寄った。

 

「大丈夫かよ!! おい!!」

 

「トゥアールちゃん!?」

 

「先生!?」

 

 急変に皆が心配する中、トゥアールさんは苦しみを押さえながら返事をする。

 

「私なら大丈夫です。ただちょっと、疲れがでただけですから心配なく」

 

 数秒後、何事もなく立ち上がったトゥアールさんはすたすたとコンソールルームを後にした。

 俺はその後ろ姿から言いようのない不安を感じ取った。




個人的な強さとしてはレヴィアタンギルディは終の零星(フォー・ヴァリス・ジョーカー)以下、神の一剣(ゴー・ディア・ソード)以上くらいの実力だと設定しています。
後、誰がトゥアールのバストサイズが成長していないと言った?


キャラクター紹介23

 レヴィアタンギルディ
 身長:478cm
 体重:476kg
 属性力:超乳属性(スーパーラージバスト)

 七つの性癖(セブンス・シン)の嫉妬の性癖を担うエレメリアン。
 姿こそかつてのアルティメギル幹部リヴァイアギルディと似ているが、その実力は数倍以上。好きなバストサイズも数倍以上。
 リヴァイアギルディと同様の股間の触手は再生可能且つ、搦め手として持たざる胸の嫉妬(ジェラシックバスト)をはじめとしたいくつかの能力も持っている。
 彼が襲撃した世界は乳が異常に大きくなった者しか残らないと言われている。
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